恩人を斬る(前編)
ウェイブは頭に粘着性のあるガム状の火薬を張り付かされ、頭を炎上されて呼吸を封じられていた。
「あああああ!!」
ウェイブは呼吸ができず窒息寸前だった、ボルスはてをこまねいているわけにはいかなかった。
こうなったら直接手で引きはがします!
ボルスの体は火耐性をあげる儀式を受けており多少火に強かった、ボルスはウェイブの元へ駆け寄ろうとすると。
「させないぞ!」
ローグはボルスに爆弾を発射した、ボルスは炎を発射して空中で爆発させた、砂ぼこりが辺りに撒き散った、ボルスは目に砂が入らないように手で覆った、その瞬間、ローグはボルスの懐へ移動していた。
「しまっ・・・」
ボルスが防御をする前にローグは地獄突きでボルスの喉をついた。
「がはっ!!」
ボルスは吐血をして膝を地についた、ボルスも呼吸が思うようにできなかった。
「前にも言ったが、そのデカブツは連射ができない、懐に入られたら終わりだと、お前はあいからわず戦いのセンスがないな」
・・・確かに、私にはセンスがありません・・・私の取り柄はタフなことだけです・・・
ボルスは力を振り絞り立ち上がった、ローグはさほど驚いていない。
「タフさだけはたいしたものだ、次でけりを付ける」
ローグは銃口をボルスに向けた、一方、ウェイブは呼吸ができず窒息寸前だった。
・・・俺はここで終わっちまうのか・・・母ちゃん・・じいちゃん・・・みんな、すまねえ・・・
ウェイブが観念したその瞬間、突然ウェイブの頭が氷に包まれた。
何だ!?これはまさか・・・ウェイブは確信した、あの人がやってきたんだと・・・
セリューを取り込んでいたスライムも一瞬で凍り付いていた、セリューの生死はわからない、多分生きているだろう、ウェイブは氷を拳で砕いて深呼吸をした、空気がとてもうまかった。
「全く、ふがいないぞ」
その場にいた全員が声がした方角を向いた、そこには帝国最強の将軍エスデスがいた、ただ立っているだけで圧倒的な威圧感があふれていた。
「隊長、すいません、助かりました」
「礼はいい、後で鞭打ちだからな」
「えっ!?」
ウェイブにとっては一難去ってまた一難である、一方、エスデスを見たピエールはすっかり青ざめていた。
「な、なんてことだ・・・エスデスが来てしまうとは・・・」
手柄が欲しいピエールもさすがにエスデスと戦うのは絶対避けたかったのであった、エスデスが来る前にイェーガーズの首をとって退散するつもりだったのであった、だが、ローグはエスデスの姿を見て笑みを浮かべていた。
「エスデスか、帝国最強の女か・・・相手にとって不足はないぜ!!」
ローグはエスデスに向けて爆弾を発射した、爆弾はエスデスに向かって飛んでいく、だが突然爆発した。
「何だ!?」
ローグが辺りを見渡すと空中に人影があった、翼を大きく広げた人がいた、それはまるで天使のようであった。
「空を飛んでいる・・・あれも帝具か?」
文献で見たことがある、帝具マスティマ・・・空を飛ぶことができる能力である、イェーガーズにそんな奴もいるとは・・・面白い!!
「アタシが叩き落としてやるよ!」
ローグは爆弾を無数打ち出した、翼の男目掛けて爆弾だ飛んでいく、その時、翼から大量の羽が舞い上がり爆弾に目掛けて飛び出した、羽は爆弾を貫き爆発が起こった、辺りに黒煙が舞い上がった。
「ちっ、やるじゃないか、エスデスの前にお前を血祭りに上げてやる!!」
ローグの標的は翼の男になった、ローグは爆弾をさらに打ち出した、翼の男も迎撃する、空が爆発で埋め尽くされていく、壮絶な花火大会が開始された。
「ラン、そいつは任せたぞ」
「了解しました」
エスデスはランに命令を下し周囲を見回した。
・・・さて、どいつから蹂躙してやるか、久しぶりの帝具戦だ、思う存分楽しもう・・・
エスデスから凄まじい殺気があふれていた、周囲の森から動物や鳥が逃げ出している。
「化け物だ・・・」
「やってられるか!」
「逃げるぞ!」
三人の囚人兵はエスデスの殺気に怖じけづいた、そして一目散に逃げ出した。
「逃がさん!」
エスデスは目にも止まらぬ速さで三人の前を阻んだ、三人の表情には絶望しかなかった。
「こ、降参する、帝具も渡す、だから・・・」
三人は恥も外聞もなく命ごいをした、だがエスデスは聞く耳を持たなかった。
「降参は弱者の行為、そして弱者は淘汰されるものだ!」
弱肉強食こそエスデスの絶対の信念であった。
降参を跳ね退けられた三人の囚人兵は絶望した、だが、戦わなければ死あるのみだったから・・・
「こうなったらヤケクソだ!!」
囚人兵Bは斧を二つに分けてその一つをエスデスに投げつけた、エスデスはほとんど体を動かさずにかわした、そしてもう一つの斧を投げつけた、最初に投げた斧は180度曲がってエスデスの頭部に向かっている。
前後からの同時攻撃・・・避けられまい・・・
囚人兵Bの笑みを見て思惑を察したエスデスは鼻で笑った。
この程度の攻撃・・・避けるまでもない、エスデスは両手を使って向かって来る斧をパシッと受け止めた。
「バ、バカな・・・」
囚人兵Bは開いた口が塞がらなかった、人間技ではなかったから。
エスデスは斧を見つめていたが斧を手にしておもいっきり振り上げた。
「まさか、その帝具を使う気か!?一人で二つの帝具は使えないはずだ!!」
「確かに・・・私はこの帝具を使うことはできん、だが・・・」
エスデスは斧を力まかせに投げつけた、そしてそのまま囚人兵の胸に直撃した、ただし刃の部分ではなく柄の部分であるが・・・
「物としてぶつけることは可能だ」
囚人兵Bは吐血をしてそのまま動かなくなった、死体を見て残りの二人は呆然としていた。
「・・・」
エスデスは斧の帝具ベルヴァークを見て思い出していた。
「鍛練に精が出るな、ダイダラ」
「俺は最強になる夢をまだあきらめていませんぜ」
「ふっ、お前らしいな」
「いつの日か武人として手合わせをお願いしますぜ!」
「手は抜かんぞ」
「もちろんでさあ!」
「・・・あいつとの約束結局果たせなかったな」
エスデスはすぐに気持ちを切り替えて構えをとった、その有様を見てダンは今すぐエスデスに向かおうとした、その瞬間クロメが後ろから切りつけた、ダンはとっさに装備していたナックルで防御した。
「隊長の邪魔はさせない」
クロメ、アカメの妹だけあって強い・・・ダンは戦慄を感じていると右側から刃が向かってきた、ダンは後ろに下がって回避した、刃の向こう側にはマスクをした青年がいた、青年の武器はなぎなただった、ただそのなぎなたはただのなぎなたではない、柄が長い伸びていたのだ。
「あれは帝具?それとも臣具?どっちにしてもやっかいですね」
その間にもクロメの猛攻が続いた、防御だけで手一杯だった。
その頃、囚人兵Aはエスデスに向かって笛の帝具スクリームを使用した、音色が鳴り響いている、エスデスは無言で立ち尽くしていた。
「効いてる、このままエスデスを・・・」
突然囚人兵Aの首が胴体から切り飛ばされた、首があったところから血があふれ出ている。
「・・・ひどい音色だ、聞くに耐えん」
エスデスはひどい音色に不快をあらわにしていた、そしてスクリームを見つめている。
「どうですか、エスデス様?」
「何度聞いてもよくわからんな」
「まあ、急ぐ必要ありませんよ、少しずつゆっくり音色のよさをわかってください、時間はいっぱいあるんだから」
「私の気が向いたらまた聞かせてもらうぞ」
「はい、喜んで!」
「・・・あいつの音色、もっと真剣に聞いてやればよかったな」
そう思いつつもエスデスは残りの囚人兵に狙いを定めた、ピエールは二人やられて焦っていた。
「まずい、このままでは・・・」
ピエールがエスデスに不意打ちをかけようとした、するとウェイブがそれを阻んだ。
「させねえよ!!」
ウェイブはピエールに拳のラッシュを繰り出した、ピエールはのらりくらりと回避した、ピエールはウェイブにとても卑猥な言葉で挑発した、ウェイブは逆上して突っ込んで行った。
「全く単純な奴じゃわい」
ピエールはウェイブの口元に狙いを定めて紙を飛ばした、口元に紙が張り付いていく、ウェイブはたちまち息苦しくなった。
やべえ・・・また・・・だが隊長が今度も助けてくれるとは限らねえし、自力で切り抜ける!
ウェイブはピエールに仕掛けて行った、ピエールの身体能力が他の二人よりも劣ると判断して息があるうちに仕留めようとした、ピエールもこれは予想しておらず戸惑っていた。
「ちっ、攻撃に転ずるとは・・・こいつ思った程バカじゃないのか・・・ならば!」
ピエールはウェイブが息切れるまで粘る戦術を選んだ、ウェイブの攻撃を紙一重で回避している。
一方、最後の囚人兵は水を操る帝具ブラックマリンを使用した、無数の水の槍が造りだされていく、そしてエスデスに向かって行った、エスデスに次々と槍が直撃していった。
「やったぞ、エスデスを仕留めたぞ!」
そう叫んだ瞬間、エスデスに刺さった槍は瞬時に凍りついた、囚人兵は驚く間もなく一瞬で凍りついた、指輪をはめた右手を残して、そしてエスデスが指をパチンと鳴らすとコナゴナに砕け散った。
「くだらん・・・子供の水遊びの方がよほど興があるぞ」
エスデスは指にはめられたブラックマリンを見て思い出していた。
「いかがですか?」
「・・・」
「エスデス様?」
「・・・ああ、今回もなかなか強烈だったぞ」
「ありがとうございます、今回の料理に隠し味としてエビルバードのよだれを入れました」
「・・・そうか」
「次の料理はトリケプスのフルコースを予定しております」
「・・・そうか、楽しみにしているぞ」
「はい」
「・・・あいつの料理、あれはあれで趣があったな」
エスデスが囚人兵全員を仕留めてローグは決断をした。
「これはやばいな・・・早いとこあいつを仕留めるか」
ローグはランを仕留めるため、奥の手を使うことにした、銃口をランに向けた、だが、何も発射されない。
「!?」
ランは首を傾げた、何故攻撃をしてこないのか?帝具の故障か?下降して一気に猛攻をかけるべきか・・・そう判断しかけた瞬間、ランはゾクリとするものを感じた、この空域にとどまるのはまずい、ランは反射的に上昇した、すると、ランがいた空域に大爆発が起こった、ランは直撃は免れたものの体のあちこちにやけどを負った。
「一体何が・・・彼女は何も撃っていなかったはず・・・」
これこそバハムートの奥の手である、無色無臭の火薬を粒子にしてランの元まで飛ばしたのである。
ランはやけどの痛みで顔が歪んでいた、ランも決断すべきか迷っていた。
・・・奥の手を使いますか・・・いえ、今はまだその時ではありません。
ランは通常技で何とか持ちこたえる戦術を選んだ、すると・・・
「ランさん、私に任せて下がってください」
地獄突きから回復したボルスが立ち上がった、ランもこれに同意してボルスに託すことにした。
「いい度胸だな、いいぜ、相手になってやる!」
ローグはボルスに銃口を向けた、ボルスとの決着をつけるために。
まともに戦っては不利・・・ならば奥の手を!
ローグは爆弾を発射した、ボルスに向かってまっすぐ飛んでいく、ボルスも銃口から炎を発射した、だが、その炎は球体だった、ルビカンテの奥の手、マグマドライブ、長距離の敵を攻撃できるのである。
マグマドライブは爆弾を貫通した、それを見てボルスはおかしいと思った、何故、爆発しないのか?
ボルスがそう思った瞬間、ローグはマグマドライブをかわして突撃してきた。
「そうくると思ってたぞ!」
ボルスは愕然とした、まさか読まれていたとは・・・やはり自分ではあの人に敵わなかった・・・
ローグはボルスを仕留めるべく銃口を向けた、そして引き金を引いた・・・
バキャ!!
突然何かが壊れた音がした、それはバハムートが壊れた音だった。
「なっ!?」
何故壊れたのだ・・・ローグが思い返していると一つ心当たりがあった、首を失ったヘンターの攻撃をバハムートで防いだ時であった。
「あの時に亀裂が・・・帝具を使い続けて亀裂が大きくなったのか・・・」
ローグは壊れたバハムートを呆然と見ていた、そして自分は終わったと確信した。
「ローグさん・・・」
「何をしている、さっさとかたつけろ」
「・・・」
「教えたはすだ敵は殺せる内に殺せとな」
「わかりました・・・」
ボルスは銃口をローグに向けた、ボルスには喜びはなかった、ボルスにとっては命の恩人であるから、だが、帝国軍人として反乱軍を見逃すわけにはいかない、ボルスは引き金を引く決心をした。
「最後に言っておく、焼却部隊の人間はろくな死にかたをしないぞ!」
「わかってます!」
ボルスは引き金を引いた、ローグに火炎が襲い掛かる、その瞬間あることを思い出していた。
お前またフラれたのか
はい、これで身を引こうと思います
はあ!?お前、そいつに一目惚れじゃなかったのか?
確かにそうですが、これ以上は迷惑をかけます・・・
ドガッ!!
痛っ!!ローグさん、何を!?
お前何いい人ぶってるんだ、焼却部隊のろくでなしがいい人ぶるな!!
でも・・・
お前、それは本心か!?
・・・いえ、
だったら図々しくしろ!!
・・・わかりました、もう一度アタックしてみます。
ローグさん、彼女がお付き合いをOKしてくれました!!
そうか、せいぜい尻に敷かれな!
はい!!
ローグさん、私に子供ができました!!
そうか、お前に似ないことを祈るんだな
・・・はい!
あなた、女の子ですよ
この子が私の子供・・・
あなたが名前をつけてくれませんか?
私が!?
はい
(どうしましょう・・・女の子の名前を私なんかが考えつくことができるでしょうか?・・・ダメです、名前は思いつきますがピンときません・・・ええと・・・頭がこんがらがってきました・・・)
あなた?
・・・ローグ
ローグ?
あっ、いえ、今のは頭に浮かび上がった名前をつぶやいてしまったんです。
ローグって確か以前あなたの命を救ってくださった人・・・
はい
・・・
(怒らせてしまいましたか・・・当然ですね)
ローグ、いいんじゃないですか?
えっ、でも・・・知り合いの女性の名前を・・・他の名前を・・・
その人がいなければあなたは命を失っていたんです・・・それに私達が結ばれたのもその人があなたの背中を押してくれたから・・・私達が結ばれなかったらこの子も生まれてくることができなかった・・・
・・・私にとってもこの名前は特別な思い入れがあるのです
それでは・・・
あなたがよければこの名前で
はい、あなたの名前はローグ、ローグよ
ふつつかな父親ですがよろしくお願いします、ローグ
ルビカンテの炎がローグを包みこんだ、その瞬間、大爆発が起こった、轟音が鳴り響き黒煙が立ち込めた、小石がパラパラ降ってきている、そしてバハムートの残骸が地面に落ちてきた。
ボルスは残骸を無言で見つめている。
とうとう命の恩人まで手にかけてしまいました・・・けれどもこれが私のお仕事です。
ボルスのマスクの目の辺りに光り輝くものがあった。
今回もバトルシーンが多かったですが、今回も上手に書けなかったです、やっぱりバトルシーンが特に難しいです、これからも応援お願いします。