サヨが斬る!   作:ウィワクシア

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第五十四話

   巻き返しを斬る

 

 

ナイトレイド一同はアジトに帰還していた、全員の表情は重かった、チームカプリコーンの確保を行う前にエスデス率いるイェーガーズに全滅させられ貴重な帝具を六つ失い、しかもそのうち三つを強奪された、帝具の所有数は完全に帝国の方が上回ったであろう、しかも、西の異民族との交渉が決裂し、総大将も意識不明のままである、革命軍の戦略は完全に白紙状態になってしまった。

 

 

 

「これからどうすんだよ」

 

「どうするって?」

 

「かなりやばいんだろ?」

 

「お前に言われなくてもわかってるよ」

 

 

イエヤスの質問にラバもなんて答えたらわからなかった、それだけ深刻な状態なのだ。

 

 

「アンタ達男のくせにうろたえるんじゃないわよ」

 

マインはいつも通り強気である、だが、西の異民族との交渉が決裂して心境が穏やかなはずがなかった。

 

 

「でもマイン、お二人が不安になるのも無理は・・・」

 

「何言ってるのシェーレ、アタシ達がうろたえてもしょうがないでしょう」

 

「そうですね、マインの言う通りです、あの娘達も頑張っているのですから」

 

 

 

 

 

 

 

ナイトレイド一同はカプリコーンが全滅したのを確認するとエスデスに気付かれる前に全速力で退却した。

 

 

「こんなに早く全滅してしまうなんて・・・」

 

「いくらカプリコーンの連中が予想よりも早く帝都に到着したとはいえ・・・」

 

 

サヨとラバはイェーガーズの強さを改めて思い知ったのであった、イェーガーズよりも早くカプリコーンに遭遇していればエア達の帝具で眠らせてすんなり確保できたのだが、現実はそううまくいくものではなかった、森の中へ入ったところで一時待機した。

 

 

「しくじっちまったな・・・」

 

「イェーガーズの強さは予想以上だな・・・」

 

 

ジャドもナジェンダも事態の深刻さに頭を抱えている、帝具を六つ失い、しかも三獣士の帝具を奪取されてしまったのだから・・・

 

 

「とにかく俺達は一度本部に戻る」

 

「そうだな」

 

「お前達は本部の指示があるまで今までどうり暗殺任務に徹しろ」

 

「わかった」

 

 

ジャドとナジェンダは落ち着いていた、できる限り落ち着こうとしていた、自分達まで取り乱したら動揺が広まるから。

 

 

 

「ねえ、ジャドさん一晩アジトに泊まっていこうよ、みんなといろいろ話したいし」

 

「ダメだ、一刻も早く本部に知らせないといかんからな」

 

「それなら鳥を使えばいいのではないでしょうか」

 

「鳥はもちろん使う、だが俺達がのんびりしていい理由にはならない」

 

「ファル、ルナ、仕方ないよ、こういう事態だし・・・」

 

ファルとルナはエアの耳元に近づき小声で話しかけた。

 

 

「何言ってんの、エア、久しぶりにラバさんに会ったんだよ」

 

「そうです、いろいろ話があるんでしょう」

 

その瞬間エアは頬が赤くなった、チェルシー以外はそのことに気付かなかった。

 

 

「もう、いい加減にしてよ!」

 

 

エアは思わず声を荒げた、ラバがどうしたのと声をかけるとエアは何でもないです、と大きく手を振ってごまかした、それを見てチェルシーはニヤニヤしている。

 

 

「とにかく今すぐ本部に帰還する」

 

 

「ふう、再びキツイ任務の日々か」

 

 

ファルがやれやれのポーズをしているとジャドは苦虫をかみつぶしたような表情になった。

 

「・・・何がキツイだ、お前らはただ帝具を使っているだけだろ・・・作戦や帝具を使うときのキーワードは全て俺が考えているんだぞ」

 

 

「でも、私達の疲労も相当なものですよ」

 

「だからお前達にはご馳走食わせているんだろ、俺なんか常に麦飯だぞ・・・」

 

 

ジャドの姿に哀愁が漂っていた、とても密偵チームの隊長には見えなかった。

 

 

「もう、二人ともジャドさんに悪いよ、持ち合わせが少ない財布でご馳走してくれるのに」

 

「・・・お前が一番ひどくないか?」

 

 

三人の相手でジャドはすっかりげんなりしていた、密偵チームの隊長は別の意味で過酷であった。

 

 

 

「とにかく俺達は本部へ帰還する、帝都は任せたぞ」

 

「わかった・・・一つ聞くが地方の暗殺チームは全滅してしまったがそれはどうなるのだ?」

 

「それは本部から人員を派遣して対処する、お前達のアジトにやっかいになるかもしれんぞ」

 

「それは構わない」

 

「そうか、その時は頼む、じゃあな」

 

ジャド達は南の方角へ去って行った、本部は南にあるのであった。

 

 

「では、私達もアジトへ帰還するぞ」

 

「了解!」

 

ナジェンダ達はアジトへ駆け足で引き上げて行った、そして今に至る。

 

 

 

 

 

 

「とにかく今は任務の遂行に集中しろ、今後の戦略は本部に任せるしかない」

 

 

ボス・・・さすが落ち着いているわね、さすが百戦錬磨、私達も見習わないと・・・

 

 

サヨはナジェンダを見てさすがと思った、無論ナジェンダも動揺していないことはないが表情には決して出すことはなかった。

 

 

確かに形勢は不利だがくじけたりはしない・・・瀕死の重傷から立ち直った私だ、ここから巻き返す!

 

 

「レオーネ、帝都へ情報収集に行ってくれ」

 

「了解!」

 

「他の者は鍛練に励め」

 

「了解!」

 

ナジェンダの号令で一同は気合いを入れ直した、ここからナイトレイドの巻き返しが始まるのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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