異民族を斬る
8月2日昼
ナイトレイドのアジト内でサヨは一枚の紙をじっと見つめている。
「・・・カグラ、手配されちゃたわね、しかもナイトレイドとして」
エスデスはカグラをナイトレイドの新メンバーと判断して手配書を帝都に貼ったのであった、実のところカグラはナイトレイドではないのだが。
「まあ、カグラはナイトレイドに入りたかったんだし、別にいいかな」
サヨは手配書をしまって会議室に移動した、もうじき本部から隊員がアジトにやって来るからである、地方のチームが壊滅したために本部から地方へ隊員を派遣して処理をするためである。
「本部の隊員か・・・どんな人だろう」
サヨは少し楽しみであった、本部の人と関わることはそうないからである、そうしているうちにドアが開いた。
「皆さん、初めまして、私は本部から派遣されたカーコリッテと申します、以後よろしくお願いします」
現れたのは浅黒い肌の女の子だった、歳はサヨと同じくらいであろう、そして何より目立ったのがぐるぐるメガネであった。
(カーコリッテの声は小松未可子さんをイメージしてください)
これが革命軍の軍服か・・・なかなかビシッとしてるわね、にしてもこの娘の肌、南部の人かな?
サヨがカーコリッテを観察しているとラバが彼女の元に近づいた。
「ねえ、君、どこかで会ったことない?」
「え?・・・会ったことありませんよ・・・」
ラバの奴早速ナンパなの?それにしても彼女の様子が・・・
「ラバ、早速ナンパ?」
「そんなんじゃないよ」
ラバの顔が真剣だった、少なくともナンパじゃない。
「ねえ、そのメガネ取って顔を見せてよ」
「そ、それはちょっと・・・」
明らかに彼女は動揺していた、何故だろう?
「いいから見せてよ」
ラバは強引にメガネを取ろうとしている、彼女も必死に抵抗している。
「困ります、やめてください・・・ああ!!」
ラバは一瞬の隙をついてメガネを奪い取った、メガネを取られた彼女は必死に顔を隠そうとしている。
「やっぱり君どこかで・・・」
ラバはどこで彼女に会ったのか思い出そうとした、すると、ラバはそれを思い出した。
「あー!!あの時のアジトに侵入しようとしていた女アサシン!!」
一同に緊張が走った、アジトに侵入しようしていた人間がここにいるのだから。
「ちょっと待ってよ、私、本当に革命軍の一員なんだから!!」
カーコリッテは必死に訴えている、もちろん簡単に信じるわけにはいかない。
「嘘つくならもっとマシな嘘つきなよ」
「本当だってば!!」
カーコリッテはどうやって信じてもらおうか必死に頭を巡らせている、そして考えはまとまったようである。
「レオーネ、この前のシヴァの往診の時に歯の治療で失神したでしょ!?」
「何故それを・・・」
「イエヤス、あなたこの前、ホーラーさんの新発明で遥か彼方に吹っ飛ばされたでしょ!?」
「まあな・・・」
二人にとってはあまり思い出したくない出来事なので眉をひそめている。
「どうやら本物のようだな」
ナジェンダはカーコリッテが本物だと判断した、偽物がそのことを知っているわけがないからである。
「よかった、やっと信じてもらえた・・・」
カーコリッテは胸を撫で下ろした、殺されずにすんだからである、ただナジェンダは何か腑に落ちない様子を見せていた。
「ひとつ聞くがお前、なんで生きているんだ?」
それを聞いたイエヤスとラバはとても動揺した。
そういやそうだ、なんで生きているんだこいつ・・・
さすがナジェンダさん、やはり気がついたか・・・
二人には心当たりがあるようである、とてもまずい心当たりが・・・
「ああ、それはですね・・・」
カーコリッテはその理由の説明を開始した。
4月3日
ナイトレイドのアジトに侵入者が近づいてきているとラバからの報告に一同は臨戦態勢をとった。
「人数は?」
「はい、8・・・いや、16です」
「16か・・・多いな、皆聞いての通りだ、全員出動だ、一人も生かして還すな、全員殺せ!」
「了解!!」
ナジェンダの号令で一同は出動し侵入者を始末していった、そんな中洞窟内を三人の侵入者が駆けている、その中にカーコリッテもいた。
「この洞窟を抜ければナイトレイドのアジトは近いはずだ」
「それだけでも貴重な情報だぜ」
「そういうことだ急ぐぜ!」
男達は全速で走り抜けようとした、だが、カーコリッテは何か不安を感じた。
「ねえ、何かおかしくない?誰も洞窟にいないなんて」
カーコリッテの杞憂に男達は鼻で笑った。
「まさか洞窟を通るなんて奴ら予想もしていないんだろ」
「腰抜けは引っ込んでろ」
男達はカーコリッテに構わず洞窟を全速力で抜けようとした。
「ま、待ってよ!」
すると突然男達の悲鳴が洞窟内に鳴り響いた、男達は血まみれで空中に浮かんでいた。
「こ、これは?」
カーコリッテは恐る恐る凝視すると、男達は細い糸で捕われていた、すると洞窟の奥から誰かが近づいてきた。
「二人かかったな、男の悲鳴を聞く趣味はないんで早速仕留めさせてもらうぜ」
ラバが糸を巻き戻すと男に巻きついている糸が男達を締め付けてずたずたに切り裂いた、男達はそのままいきたえた、カーコリッテはその様を見て恐怖に捕われて一目散に逃げ出した。
「何あれ・・・あんなの相手にしたら命がいくつあっても足りない!!」
逃げ出したカーコリッテを見てラバは即座に帝具を構えた。
「逃がしは・・・」
「逃がしはしねえぜ!!」
イエヤスがカーコリッテの追撃を開始したのであった、ラバはそれを見て。
まあ、あいつ一人でも大丈夫だろ・・・それに可愛い女の子を殺すのも死ぬのを見るのも後味が悪いしな・・・
ラバはそのまますたすたとその場を離れていった。
一方、カーコリッテは必死に逃げ、それをイエヤスは追撃する、カーコリッテは洞窟を抜けて見晴らしのいい崖にたどり着き逃げきったと思った瞬間右脇腹に激痛が走った、イエヤスがナイフを投げて突き刺さったのであった、カーコリッテは激痛でよろめいた。
「は、早く逃げないと・・・」
カーコリッテはよろめく足で必死に逃げようとした、すると足元が崩れて崖から滑り落ちた、そしてそのまま川へ落下した、その川には魚の大型危険種が待ち構えており、カーコリッテを丸呑みした。
「よし、片付いたぞ、次だ次!」
イエヤスはカーコリッテが丸呑みされるのを確認するとその場を離れて残りのアサシンを片付けに向かった。
「な、何!?」
カーコリッテは自分に何が起こっているのか一瞬分からなかった、だが、目の前の危険種の食道を見て丸呑みされたことを察した。
「私は・・・こんなところで・・・死んでたまるか!!」
カーコリッテは腰のナイフを食道にグサグサ刺し始めた、すると危険種はたまらず彼女を吐き出した、川に投げ出された彼女はそのまま気を失い流されていったのであった。
「そして気がついたら下流に流されていたんです」
「そんなアンビリーバボーな!!」
イエヤスはカーコリッテの説明を聞いてビックリ仰天した、すると説明を聞いたナジェンダは・・・
「・・・つまり、お前達みすみす逃がしてしまったということだな?」
ラバとイエヤスはナジェンダの怒りのこもった問いに心底からギクッとした、その瞬間、ナジェンダはラバとイエヤスにアイアンクローをかけた、二人はあまりの痛さに悶えている。
「イエヤスは論外だがラバお前もだ、大方女を殺すのも死ぬのを見るのも気が引けたのでさっさとその場を離れたんだろ?」
「は、はい・・・」
ラバは即答した、さらにアイアンクローの力が強まっていく。
「下手したらどうなっていたかわかるな?」
「は、はい・・・」
「ほ、ほんと面目ないッス!!」
「ナジェンダさん、このラバック深く深ーく反省しております!!」
二人はアイアンクローの痛みに耐えながら必死に陳謝した。
「・・・今回は大目に見てやろう」
「どうもッス!!」
「ありがとうございます!!」
アイアンクローから解放された二人は心から安堵した。
「全くあなたはほんとズボラなんだから!」
「ホント女が絡むとアンタダメダメね!」
サヨとマインの手厳しい言葉に二人は返す言葉がなかった。
「それにしてもあなたなんでアジトの情報を持って帝国へ行かなかったの?」
サヨは腑に落ちなかった、アジトの情報だけでも手柄になるはずだから。
「・・・私はそれだけではダメなのよ、あなた達の首を持って帰らないと・・・そうしないと私売春婦として売られちゃうのよ」
カーコリッテは悲痛の思いで語った、彼女の思いが伝わってくる、だがイエヤスは考え無しに尋ねた。
「アサシンよりは売春婦の方が死なずにすむんじゃないのか?」
「馬鹿ね、売春婦は死亡率高いのよ、性病にかかったらほぼ命を落とすわ、私の知り合いで売春婦になった娘はほとんど生きていないわよ、第一ゲスな男に弄ばれるなんて死んでもいやよ!!」
彼女は呼吸が荒くなり興奮していた、同じ女の子として彼女の気持ちはよくわかる。
「ワリイ・・・」
イエヤスは自分の軽はずみさを恥じて詫びをいれた、するとイエヤスはカーコリッテの衣装に目がいった。
「その服革命軍の軍服なんだよな?」
「そうだけど」
「結構スカート短いな」
イエヤスはミニスカートをじろじろ見つめている、カーコリッテはその視線に気づき頬を赤めた。
「ちょっとじろじろ見ないでよ、嫌らしいわね!!」
カーコリッテはイエヤスを鋭く睨みつけたその瞬間サヨはイエヤスをぶん殴った。
「下品!!」
「いってえ・・・けどお前、侵入した時露出の高い衣装着てたじゃないか?」
イエヤスに突っ込まれてカーコリッテは再び頬を赤くした。
「・・・団長に命令されたのよ、目の保養になるからって」
この娘ずいぶん苦労したのね・・・サヨはそう思わずにいられなかった。
「でもこの衣装はとても気にいってるけどね」
そういえば革命軍の軍服って結構しゃれてるわね・・・この娘が気に入るのもわかる。
「ところで話は変わるけどあなた一人で任務大丈夫なの?」
「大丈夫よ、私には取っておきの武器があるから」
「それって臣具?」
「そうよ、今見せるから」
カーコリッテは袋から臣具を取り出した、見た目は魚の模型であった、魚の背中にファンがついている、一体どんな性能何だろう?
「どんな性能か気になる?」
「うん」
「じゃあ見せてあげる」
カーコリッテとナイトレイド一同は野外に出た、彼女は左腕にその臣具を装着した、左腕を適当な木に向けた。
「じゃあ、いくわよ」
ファンが勢いよく回転し空気を取り込んでいる、そして魚の口から三連装の銃口が飛びだし発砲した。(この銃口はドライセンのビーム・ガンをイメージしてください)
ダダダダダダダダ!!
凄まじい射撃だった、あっという間に枝が撃ち落とされていく、弾切れする気配はなかった。
「どう、私の臣具バラクーダなかなかのものでしょう」
確かにすごい・・・これなら一人でも多数の敵と戦える。
「でも、一つ大きな弱点があるの・・・雨の日だと使えないのよ」
なるほど・・・臣具は何か欠点があることが多いしね、仕方ないか。
「長所は弾切れがないことよ、空気を圧縮して弾丸のように打ち出しているから」
天気さえ気をつけていればこの臣具かなり強いわね、本部には他にもこのような臣具あるのかな?
「このくらいでいいわね」
カーコリッテは射撃を停止した、銃口が口の中に収まりファンも停止した。
「悪いけど何か食べさせてくれないかな?」
「構わんぞ、今から作る」
スサノオがアジトに戻っていった、他のメンバーもアジトに戻っていく、昼食がまだであったから。
「ねえ、カーコリッテ、あなたの今までのこと教えてくれない?」
「いいけど、そうだ、私のことカーコでいいわよ」
「わかった、カーコ」
その後サヨはカーコリッテから南の異民族のことをいろいろ教えてもらったのであった。
今回はアニメ第三話で登場した美少女アサシンを登場させました、なかなか可愛いかったので死なすのは惜しいので生存させました、これからもどんどんキャラが登場しますので応援お願いします。