サヨが斬る!   作:ウィワクシア

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第六十一話

    復讐を斬る

 

 

8月7日

 

 

サヨは食堂の椅子に座り何か考え事をしていた、レオーネがサヨに声をかける。

 

 

「どうしたんだ?」

 

「うん、ちょっとね・・・ナイトレイドの殺しって依頼がないと実行しないのよね?」

 

「そうだよ、いまさら何言ってんの?」

 

「ふと思ったんだけど、アリア達を殺す依頼をしたのって誰だったのかなあって思って」

 

「ああ、それはな・・・」

 

 

その時ナジェンダから会議室へ集合するようにとの号令がかかった、サヨ達も会議室へ行った、すると会議室に見覚えのない男二人がいた、一人は革命軍の軍服を着ており両腕が義手であった、もう一人はマントで体を覆った男であった、おそらくこのアジトで一息つけるために訪れたのであろう。

 

 

「なあ、さっきの話の続きなんだけどな・・・」

 

「続き?」

 

「あいつだよ、あの義手の男が暗殺の依頼をしたんだよ」

 

「あの人が!?」

 

サヨは思わず大声で叫んでしまった、皆サヨの方を振り向いた。

 

 

「どうしたサヨ?」

 

「す、すいません・・・その人がアリア達の暗殺依頼をしたことを知ってびっくりして」

 

サヨは心の底から驚いていた、まさか自分の目の前に現れるなんて思ってもみなかったから。

 

 

「まあ、無理はないな、普通依頼後に依頼主に会うことなどないからな」

 

 

確かに・・・恨みを晴らしてくれたとはいえ殺し屋と再開したいとは普通は思わない。

 

 

「あいつの名前はグレイグ、あいつらにダチを殺されてあいつ自身も両腕を失ったんだ、一瞬の隙をついて命からがら逃げ出すことに成功したんだ、力つきて倒れているところを密偵チームに助けられたんだ」

 

 

友達を殺された・・・その悲しみよくわかる、私達もタツミを殺されたから・・・

 

 

「あの・・・ありがとうございます、あなたが依頼をしてくれなかったら私達は・・・」

 

「礼はいい、お前達のためにやったわけではないからな」

 

 

確かにそのとうりね・・・でもそのおかげで助かったのは事実だから。

 

 

「ところでお金はどうしたんですか?」

 

「とある新薬の実験台を務めることで稼いだ、詳しくはいえんがな」

 

新薬・・・一体どんな実験何だろう・・・サヨは聞かないことにした。

 

 

「ところでその義手はどんな性能なの?」

 

 

グレイグの義手は左右異なっていた、当然性能も異なるであろう、サヨは興味があった。

 

 

「ここではお披露目できないな、特に左腕はな」

 

左腕は?気になるけど無理強いできない、機会があれば見ることもあるだろう、隣にいるマントの男も気になった、見た感じこの地域の人間ではなさそうである、南部の人間だろうか。

 

 

「あの・・・」

 

サヨが声をかけると鋭い目つきで睨みつけてきた、何?睨みつけることないじゃない・・・サヨが不満げにしているとレオーネが声をかけてきた。

 

 

「あんまりあいつには声かけない方がいいぞ」

 

馴れ合いが嫌いなのかな、それにしてもあの態度は・・・

 

 

「まあ、あいつの気持ちもわかるからな」

 

「それってどういうこと?」

 

「あいつの名前はガザム、バン族の生き残りだよ」

 

 

バン族・・・たしか数年前に帝国に反乱を起こして壊滅された民族・・・その生き残りが革命軍に・・・帝国に復讐するためなんだろう。

 

「それにしてもあの人軍服着てないけど」

 

「ああ、あいつは革命軍に入ったわけじゃないからな、敵が共通してるから共に行動してるだけだよ」

 

 

まあ、戦う理由は人それぞれだし、私も村へ仕送りするためにナイトレイドになったんだし。

 

 

「まあ、他にも理由あるんだけど」

 

サヨがレオーネにその理由を聞いてみようとしたその時、鳥の危険種が会議室に入ってきた、脚には手紙がつけられている、ナジェンダはその手紙を読んでみた、その手紙の内容は本部からの指令であった、帝国のパトロール部隊の殲滅であった、そのパトロール部隊は帝都に向かう商人を盗賊を装い襲って殺して金品を強奪しているらしい、なお、その任務はたった今到着した二人にやらせるようにということだ。

 

 

「やれやれ、あの人も人使いが荒いな」

 

グレイグはぼやきながらも準備に取り掛かる、ガザムは小声でぽつりとつぶやいた。

 

 

・・・帝国軍の奴らを殺せる・・・

 

 

ガザムは陰気な笑みを浮かべクククと笑っている、サヨはこの光景を見てゾッとしたが同情もした、故郷を帝国に滅ぼされたのだからその気持ちわからなくはなかった。

 

 

 

帝都から南へ15キロ離れた街道、そこに例の部隊が現れるそうだ、本部がニセの情報を流しておびき寄せるのである。

 

 

「そろそろ時間だな」

 

グレイグが時計を確認する、すると、北の方から帝国軍の集団が現れた、ニセの情報にまんまと釣られたのであった。

 

 

「じゃあ、行くか」

 

グレイグは武器を構えた、彼の武器はナギナタに似た臣具であった、刃は突撃真っ赤になった、ナギナタから高熱が発したのであった、これなら鉄の鎧も簡単に切り裂くことができるだろう、義手でなかったら手で持つことはできないであろう。                                              (この臣具はビームナギナタをイメージしてください)

 

 

「ぶった切ってやるぜ!!」

 

 

ナギナタを握った義手が激しく回転し始めた、グレイグは単身で切り込んだ、そして帝国兵を片っ端からバラバラに切り刻む、帝国兵の肉片が次々と地面に落ちていった。

 

 

「な、なんだコイツ・・・お前ら囲んでコイツを殺せ!!」

 

 

おそるおそる隊長が号令を出してグレイグを取り囲もうとしている、グレイグはこれに動じることもなく左腕を突き出した、すると左手首が外れ義手に仕込んだ大砲が轟音とともに火を吹いた。

 

 

ドオオン!!

 

 

木っ端みじんに吹き飛ばされた帝国兵の肉片がボロボロ落ちていく、その光景を見て隊長は戦意を失い逃げ出した。

 

 

「冗談じゃない、やってられるか!!」

 

他の帝国兵も隊長とともに逃げ出していく、その先にはガザムが待ち構えていた、ガザムはマントを脱ぎ捨てた、するとガザムの異様な体があらわになった、彼の体は筋肉が盛り上がり、所々に穴が空いていた。

 

 

「逃がさねえぞ、喰らえ!!」

 

 

ガザムの体の穴から無数の虫が飛び出した、虫は次々と帝国兵を貫いていく、その光景を見てサヨは度肝を抜かれた。

 

 

 

「な、何ですかあれ・・・」

 

「ああ、彼の体内には鉄の甲殻を持つ虫を生み出す臣具が埋め込まれているんだ、自分の体をエサにしているようなものだ」

 

「自分の体を!?」

 

「彼自身が決めたことだ」

 

 

サヨはナジェンダの説明にア然としていた、復讐のために自分の体を虫のエサに・・・でも彼の怒りと憎しみはそれほどのものなのだと、自分には彼の行動を否定する権利はない、サヨはそう思わずにはいられなかった。

 

 

その間にもガザムは帝国兵を殲滅していく、そして隊長を残し帝国兵は全滅した、残った隊長は必死に命ごいをしている。

 

「た、助けてくれ・・・金ならいくらでも・・・」

 

ガザムは言い終える前に隊長の頭を撃ち抜き隊長の顔に唾を飛ばした、ガザムにとっては帝国兵はゴミ以外のものではなかった。

 

 

・・・

 

 

ガザムは襲いかかる激痛に耐えていた、臣具の代償であった、けれでもガザムにとっては何でもなかった、あの時の屈辱に比べれば・・・

 

 

 

数年前、ガザムの故郷であるバン族の街は帝国軍によって焼き払われていた、同胞も次々と殺されていく、ガザム自身もエスデスに頭を踏み付けにされていた。

 

 

 

「悔しいか?覚えておけ、弱者はこうなって当然なのだ、悔しければ強くなってみろ、そして私を殺しに来い、いつでも相手にしてやるぞ」

 

 

 

ガザムは涙した、自分自身の無力さに悔しくてたまらなかった・・・ガザムはその時より力を求めた、そして強力だが命を削る臣具もためらいなく体内に取り込んだ、すべてはエスデスに復讐するためである、差し違えてでも。

 

 

エスデス・・・あの時俺を殺さなかったことを後悔させてやる!!

 

 

 

ガザムの目は復讐の炎で満ちあふれていた、その炎が自身を焼き尽くすことになってもガザムはかまわなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回はバン族の生き残りを登場させました、バン族は主人公サイドでは登場しなかったので出してみました、今後ももっとキャラを登場させます、これからも応援お願いします。

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