秘境を斬る(後編)
私達は幻のキノコが生えている洞窟へ急いでいた、先頭を走るのはガザムさんである、彼はバン族の生き残りである、確かバン族の街はここからそう遠くに離れていなかったような。
「急げ、キノコが生えている洞窟はもうすぐだ」
「やっぱり知っているんですね」
「ああ、かつてはこの辺りまで狩りに来たものだ」
口には出さないがやはり寂しそうな雰囲気を感じる、無理もない滅んだ故郷のことを考えれば・・・
そうしている間に後ろから殺気を感じた、後ろを振り向くとそこには特級危険種デスジャッカルの群れがいた、この危険種は群れで連携して獲物を襲うのである。
「かなりの数ねまともに戦えばてこずりそうね」
ざっと見たところ40を超えていた、決して楽に勝てないだろう、するとその時。
「先に行ってください、私達が何とかします」
名乗り出たのはエアであった、正直驚いたこの娘は積極的に名乗り出るタイプと思っていなかったから。
「大丈夫なの?」
「はい、あの危険種なら多分大丈夫です、それにラバさんとスサノオさんもいますから」
「じゃあ先に行くね、ラバ、スーさん三人を守ってね」
「ああ」
「わかった」
私達はエア達をそこに残して先を急ぐことにした、とても心配だけどエアの真剣な目を見て反対するわけにはいかないと思ったからである。
「大丈夫かい?」
「はい、あの危険種は私達の帝具で操れます、確認済みですから」
「その帝具危険種も操れるんだ」
「操れるといっても13種類だけです」
ルナはかばんからノートを取り出し操れる危険種を確認した。
「それでもすごいよ人間と危険種両方操れるんだから」
ラバはこの腕輪の帝具リフレクターの脅威を誰よりも知っていた、ラバ自身もかつて操られて痛い目にあったからである。
「そうでしょそうでしょ、ふふん」
「ファル何自慢げにしているのですか?結局私達ナイトレイドの皆さんに捕まったのですよ」
「それはまあそうだけど・・・」
ファルが苦笑いしているとデスジャッカルの群れは今にもエア達に飛びかかりそうであった。
「じゃあ頼むよエア」
「うん」
エアは腕輪に精神を集中している、タイミングがずれると全部に暗示をかけられないからである。
・・・大丈夫、大丈夫、落ち着いて私、エアは深呼吸をして落ち着こうとした、その瞬間デスジャッカルの群れは一斉に襲い掛かった。
「眠って!!」
エアの腕輪の宝玉が光り輝きデスジャッカルの群れに光が浴びせられた、するとデスジャッカルの群れは全て眠りに落ちいびきをかき始めている。
「ひゅーあれだけの数の危険種をすごいね」
「い、いえ私がすごいんじゃなく帝具がすごいんです」
エアは謙遜したがラバはたいしたものだと思っている、敵を必ず眠らせる能力は必勝に匹敵すると言っても過言ではない、眠っている敵を仕留めるのは赤子の手をひねるようなものであるから。
「二人とも次が来たぞ」
スサノオが指さした先には別の危険種の群れがいた、それはダチョウの危険種デッドペカーであった、瞬く間に襲い掛かってきた。
「あの危険種は操れません、ラバさん、スーさんお願いします」
「ああ」
「任せろ」
ラバとスサノオはデッドペカーの群れに突っ込んで行った、そして次々と仕留めていく、仕留めた数は明らかにスサノオの方が多かった。
「さすがだぜ、だが俺も負けてられないぜ!」
ラバはスサノオに対抗意識を多少なり持っていた、スサノオには恋愛感情はないことは知っている、だがいつ目覚めるかわかったものではなかった、そうなれば強大な恋のライバルになりかねないのである。
ラバ達が奮戦している頃サヨ達は別の敵に遭遇していた、それは人間であった、それも見覚えのある衣装の人間である、目の前にいる連中は南の異民族であった、でもなんでこんなところに?まあだいたい検討つくけど。
「あのキノコいくら出しても欲しがっとる奴らぎょうさんおるからな」
やっぱりか、まあそうでなければこんな秘境に来るわけないか。
「・・・」
カーコは連中を見て驚いている、無理はないカーコは南の異民族なのだから。
「ねえ、カーコ」
「何を言いたいのかわかるよ、同じ民族同士なのだから戦えないんじゃないのってことでしょ?」
「まあ・・・そうだけど」
「大丈夫よ、それぞれ別の依頼で雇われて同族同士で殺しあったことはあったから」
同族同士で殺しあい!?南の異民族はそこまで困窮しているんだ・・・
そうしている内に隊長格の男がカーコに罵声をあびせてきた。
「カーコ!!てめえが任務に失敗したおかげで俺達は帝国から切り捨てられたんだぞ!!」
「私だけのせいじゃないでしょ、そもそもナイトレイドを私達だけで仕留めること事態無茶だったのよ」
「俺に生意気な口を叩くとはいい度胸してるじゃねえか!!」
「もうあなたは私にとって隊長じゃないわよ!!」
「言ってくれたな、てめえは俺直々になぶり殺しにしてやる!!」
「こうなったら仕方ないわね、腹をくくるか」
カーコが真っ向勝負に挑むなんて、ちょっと意外、あの隊長に相当恨みがあるのね・・・
「じゃあウチらは洞窟に行くわ、ここは頼むで」
まあシヴァ達がいても足手まといになりかねないし、ここは戦える者が残るべきね。
「わかった、気をつけて」
「ああ」
シヴァ達は全速力でキノコがある洞窟へ駆けて行った、連中はシヴァ達を阻止しようとしたがガザムの虫の弾丸の一斉射撃であっという間に蜂の巣にされた。
「俺達を無視するな」
「くっ・・・ならば先にこいつらを片付ける、かかれ!!」
隊長の号令で南の異民族のアサシン達は一斉に仕掛けてきた、私達も迎撃態勢をとる、その最中レッドさんは仮面のようなものを被りはじめた、するとレッドさんはけたたましい雄叫びをあげて突っ込んで行った、彼は手にした長い棒で力まかせに片っ端から殴り殺していく、この前に本人から聞いていたが彼の臣具は力を二倍にする仮面の臣具なのである、ただしこの仮面を身につけると敵味方の区別がつかなくなるらしい、まさに今の彼はバーサーカーである、そうしているうちに数人の男が私を取り囲んできた。
「俺達が相手だぜ」
「なかなか可愛いじゃねえか、殺った後に・・・」
男達の一瞬の隙をついて私は喉元を切り付けた、傷口から大量の血があふれ出して男達は息絶えていった。
「油断大敵よ」
サヨは自身の剣の速さが増した実感はあったがアカメにはまだまだ遠く及ばないこともわかっていた。
「もっと鍛練しないと、アカメに少しでも近づかないと・・・」
自分ではアカメのような働きはできない、それでもやるしかない、サヨは心から痛感していた。
その時カーコはかつての隊長と戦っていた、形勢はカーコがおしはじめている、カーコ自身も予想していなかったことであった。
「隊長ってこんなに動き遅かったっけ、それに攻撃も十分かわせる、私の記憶にある隊長はもっと強かったはずなんだけど・・・」
カーコはいつの間にかかつての隊長を凌駕するほど強くなっていたのである。
「くそっ、どうなってやがる!?あのカーコが俺より強いだと、そんな馬鹿なことが・・・」
隊長は認めるわけにはいかなかった、顔が可愛いだけの小娘が自分よりも強いなどと・・・
「くそおおおお!!!」
隊長は捨て身の特攻を仕掛けてきた、カーコも尋常ならない気迫を感じた、まともに受けたらまずい、そう直感し回避に専念した、特攻を紙一重でかわし無防備になった背中に臣具バラクーダの射撃を浴びせたのであった。
「ぐおおおおお!!!」
隊長の体は蜂の巣になり地面に倒れ息絶えたのであった、カーコはかつての隊長を飛び道具で倒したことに少し思うところもなくはなかったが自分達がいる世界は勝利が全ての世界であるとカーコは自分自身に言い聞かせたのであった。
「正直あなたのこと嫌いだったけど一応世話になったわ、さようなら」
カーコは隊長の屍にお別れの言葉を言った、彼女にとっては一応同族なのだから。
「他のみんなも片がつきそうね、ん?」
カーコは隊長の屍に蛇がまさぐっているのを見た、カーコはその蛇に見覚えがあったのである。
「マムシ何やってるのよ?」
カーコが声をかけると突然蛇が返事したのであった。
「金目のもんないか調べてたんだよ」
その蛇は実はマムシの左腕であった、マムシの左腕は生物型臣具なのである、ただしチホシやキャスカのと違って装着型ではなく腕に結合しているのである。
「死体をまさぐるなんて悪趣味よ」
「うるせえ」
「第一あなた今まで隠れてたの?」
「ふん、俺達のの仕事はキノコの回収だ、戦いなんかまっぴらごめんだ」
相変わらずねこの人、偉そうな割には臆病なのよね・・・まあよけいなこと言う必要ないわね。
「さてシヴァ達キノコ回収できてるといいけど・・・」
もし失敗したらあの女に何を言われるか・・・考えたくもないわ。
カーコは心から回収の成功を祈るのであった。
今日でサヨが斬るを書き始めてちょうど一年が経ちました、一年ってあっという間に経つものですね、一年も経つのに文章が全然うまくならないのは少しへこみます、とにかくこれからもサヨが斬る応援お願いします。