Giocato La Divina Commedia Doc Ju Mente 奏でよ、神曲を。謳え、汝の心を   作:天神神楽

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ACT2 SHINRA’s DAUGHTER (2)

「私、シンラ・クレモナと申します。こちらは私の契約精霊のリチェルカーレ・ジャス・フーガです。皆さま、よろしくお願い致します」

 優雅にお辞儀をするクレモナ。だが、ユフィンリーはポッカーンとしていた。返事がないことを不思議に思って首を傾げていたクレモナを見て、ブライトは呆れたように助け船を出した。

 「クレモナは帝都随一の神曲楽士だ。で、名前の通り出身は正真正銘の七楽門『シンラ家』だ。なんでここにいるかは知らないがな」

 「そんな……ブライト様を追ってきたのです。お父様からもお許しを頂いています」

 ニコニコしながら言う姿を見て、ブライトは頬を引きつらせた。だがすぐに諦めたようにため息をつくと、疲れたように深々とソファに腰かけた。

 「で、今はどこで暮らしてるんだ?」

 「今はホテルに泊っています。どこかマンションを探すつもりです。あ、ブライト様とご一緒してもいいのなら……」

 「狭いから駄目だ」

 顔を赤らめているクレモナをあしらいつつ、話をしていると、時計は十時少し前を指していた。

 「っと。そろそろ時間だな。んじゃ、所長。学院に行ってきますね」

 ブライトが立ち上がって準備をしようとすると、クレモナが首を傾げた。

 「ブライト様、どこかに行かれるんですか?」

 「トルバス神曲学院で特別講師やってんの」

 ブライトはそう言うと準備を終えたのか鞄を持った。それと同時にクレモナも立ち上がる。

 「……ついてくるつもりか?」

 「はいっ」

 「…………行くぞ、アルト、ヴィーラ」

 「はい」

 「……あんたも大変ね」

 ブライトは諦めたようで肩を落としながら事務所を出て行った。クレモナとリチェルカーレはどこか楽しそうにその後を着いて行ったのであった。

 

 

 

 

 

――――キーンコーンカーンコーン

 「はい、今日はこれまで。次もこの続きからだから、復習忘れるなよ」

 授業が終わると生徒達は、ブライトの所に質問しにやってくる。そんな中メディアとルーミアは質問が特になかったので、皆より一足先に教室を出ていた。

 「ふぅー、お腹すいたー」

 「もぅ、メディア。少しは慎みを持ちなさいって」

 「そんなこと言われてもー」

 おしゃべりをしながら歩いていると、メディアは廊下でオロオロしている女性を見つけた。

 「ねぇ、ルーミアちゃん。あの女の人、どうしたんだろう?」

 「うーん……なんか道に迷ってるみたいだけど……」

 「それじゃ、話しかけてみよっか!」

 「え? あ、メディア! あぁ、もう」

 ルーミアの制止も聞かず、女性の元へ行ってしまうメディア。ルーミアもそれを追っかける。

 「あの、どなたかお探しですか?」

 「え? あ、はい。ここに来たのは初めてでして。カグヤ・ブライト様がどちらにいるか、ご存知でしょうか?」

 「へ? ブライトさんですか? ブライトさんならあっちの教室ですから……案内しますねっ!」

 「まぁ、それはありがとうございます。それではお願いしますね」

 「はい。こっちです」

 そうしてメディア達は、先ほどまでいた教室に戻った。とはいえほんの数分の距離。三人はあっという間についてしまった。

 「ブライトさん、お客さんですー」

 教室の中では、ブライトが授業の片づけをしていた。メディアとルーミアが教室を出たときにはまだ残っていた生徒達も、質問が終わったのか今はブライトしか残っていなかった。

 「ん、あぁ、メディアか。どうした、客って、クレモナか。どうした?」

 「そろそろお昼ですし、ご一緒にどうかと思いまして」

 「そうだな。なら、ちょっと学院長に一声かけてくるから、先に食堂に行っててくれ。2人とも、クレモナのこと、頼んでもいいか?」

 「はい。元々そのつもりです!」

 メディアが了解すると、ブライトは荷物を持って先に教室を出た。

 「それじゃあえーっと」

 「シンラ・クレモナです。クレモナとお呼びください」

 「あ、それじゃあ私のことは、メディアって呼んでください」

 「ち、ちょっとメディア!あ、すみません……」

「大丈夫ですよ。それより、あなたのこともルーミアちゃんって、呼んでもいいかしら?」

「はい! もちろんです」

「ふふっ、それじゃあよろしくね、メディアちゃん、ルーミアちゃん」

美人のクレモナにニッコリと微笑みかけられた二人は、同性であるにもかかわらず、思わず顔を紅くしてしまった。

「じゃ、じゃあ、食堂に案内しますね!!」

メディアは、気を取り直すと、元気に声を出してクレモナを案内した。ルーミアもメディアについていく。

そんな二人のチョコチョコした動きを見て、クレモナはニコニコとしていたのだった。

 

 

 

そして、食堂に到着した三人。お昼時なので食堂の中は賑わっていたが、そんな中、クレモナの存在は、ひと際目立っていた。とはいえ、それも当然といえば当然か。クレモナ自身の外見の良さもさることながら、彼女は、帝都でも随一の実力を誇る神曲楽士。更には七楽門の一、シンラ家の令嬢である。少しでも神曲楽士というものに志があるものならば、知らない者はいない。そんな彼女が、普通に食堂にいるのだ。注目されないわけがない。

さらに、それも当然というべきか、隣に入るメディアとルーミアも注目されており、特にルーミアは小さくなっていた。

「そ、それじゃあ、クレモナさん。混んじゃいますから、先にご飯を取っちゃいましょうか」

「はい。でも、どうやって注文すればよいのでしょうか?」

「ふえ? じゃあ、一緒に行きましょう。簡単ですから大丈夫ですよ」

一方餘視線を気にしていないメディアは、クレモナの腕をニコニコしながら引っ張る。クレモナも、どこかわくわくしている様子だった。ルーミアは、一人にならないようにと慌てて後を追った。

「まぁ、たくさんの種類があるのですね」

「はい。ここは色んな所から人が来ますから。いっぱい種類があるんです!」

何故か、自分のことのように胸を張るメディア。

「こんなにいっぱいあると迷っちゃいます。どれにしましょう?」

「それなら、日替わり定食がお勧めですよ! シェフの匠が光る逸品ですから!」

ねー、と奥にいるシェフに同意を求めると、おうよ、と返事を返すシェフ。

「でしたら、それにしましょう。こちらで頼めばいいのですね?」

メディア達に聞きながら、注文をしていくクレモナ。なんとか無事に注文をすると、空いている席についた。

すると、ちょうどよくブライトがやってきた。

「お、ちゃんと注文できたんだな」

「からかわないで下さい。私はそこまで世間知らずではありません」

ブライトのからかうような言葉に、クレモナは苦笑しながら反論する。

「わるいわるい。っと、二人も案内ありがとう」

「そんなっ。クレモナさんと仲良くなれましたし、こちらこそありがとうです!」

「はい。私もクレモナさんとお話出来て楽しかったです」

「なんだか、すごく仲良くなってるみたいだな」

二人と仲良くなっているのをみて、ブライトは少し驚いていた。クレモナはそんなブライトを見て、自慢するように、隣のメディアを抱きしめる。

「ふふふ、私達、凄く仲良くなったんです。ね、メディアちゃん、ルーミアちゃん」

「はい! とっても仲良しです!」

メディアは抱きつかれたことに喜んでニコニコしながら答えたが、ルーミアは照れてしまい、それでも、小さく頷いた。

「クレモナと友達か。多分、コイツとつき合うの大変だから頑張れよ」

「あら、酷いです。ブライト様こそ、つき合うのが大変ではありませんか。再会するのに、どれだけ大変だったか、御存知ないでしょう?」

どこか責めるような視線に、ブライトはお手上げといって手をあげる。

と、クレモナの言葉に、ルーミアが反応した。

「あれ? お二人は、ずっと一緒だったのではないんですか?」

「はい。10年以上もあってくれなかったんですよ、ブライト様は」

この言葉を聞いたメディアは、ブライトに向かってぷんぷん怒りだした。

「ダメですよ、ブライトさん! 女性を待たせるなんて、男性失格です!」

本人は怒っていますよ、という感じなのだが、小さくて可愛らしいメディアがそのような表情をしても、やはり可愛らしいだけだった。

「そう言われると、言い返せん。けどまぁ、色々と事情もあってな。許してくれ」

ブライトは子の話は終わりだと言って、メディアの頭をよしよしと宥めるように――誤魔化すように――撫でる。案の定というべきか、メディアはそれであっという間に大人しくなってしまった。

「メディア……」

「ふぇ? なぁにルーミア?」

親友の情けなさに、げんなりするルーミアなのであった。

 

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