問題児たちと一緒にただのオッサンも来るそうですよ?   作:ちゃるもん

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投稿です。

……問題児要素どこいった?(今更

あと、短めです。
マイクラしてたら時間が飛んでてな?(白目

では、どうぞ。


第13話 定植

 ミニトマトの苗の植え方として、種からなら三月から四月、苗からなら五月から六月に植えるのが一般的である。今回は五月下旬。つまりは植え時だ。

 

 義仁の目の前には三つのプランターと培養土。そしてミニトマトの苗が三つ。プランターはノーネームに元々あったもの。培養土とミニトマトの苗はつい先程レティシアがゲームに勝ち手に入れたものだ。

 

 リリの指示に従い義仁は作業を進めていく。レティシアは仕事があると言って屋敷内へと戻っていた。

 

「まずは、プランターの底に土が漏れないよう軽石を詰めて、培養土を八分目位まで入れて下さい。この培養土は元肥(もとごえ)が既に混ぜこまれているみたいなので、そのまま入れて下さい」

 

 元肥とは、植物を育てる前に、事前に畑などへ肥料をやっておくことを指す。この培養土には既に混ぜこまれているので、今回は義仁達が元肥を混ぜ込む必要性はない。

 

 培養土の袋から培養土を取り出しプランターの中へと移していく。それを三回。太陽の光がジリジリと義仁の体力を奪っていく。まだ最初の作業だと言うのに義仁の額には大粒の汗が浮かんでいた。

 

「次に定植(ていしょく)をやります。まずやってみますね。まずは土を掻き分け苗の根鉢、このポッドに植わっていた根の部分が隠れるように植えます。そして覆土(ふくど)、土を上から被せ軽く押さえる。この時あまり強くしすぎないように気を付けて下さい。そして最後にウォータースペースと言う輪っかを土の上に作ります。これは苗の周りを掘り下げるような形で作ってもらえれば大丈夫です。では、やってみましょう!」

「えっと……」

 

 義仁はたどたどしい手つきでリリの行った手順を繰り返していく。土を掘り返し、苗をその中へ。茎の下、根っこの部分が隠れるように覆土。そして最後にウォータースペースを作る。

 

 何とか出来た定植。義仁は自分の作った物と、リリの作った物を交互に見る。リリのものは太陽に届けと言わんばかりにまっすぐと綺麗に伸びているのに対し、義仁のものは少し斜めになってしまっていた。

 

「やっぱり難しいものだね」

 

 笑いながら誤魔化すように言う。すると、リリはこう返した。

 

「当たり前です」

 

 と。

 

「私たちが今相手にしているのは一つの命。見よう見まね、ただの知識だけで農業が上手くいくはずもありません」

「そっか……この子達も、生きるために必死なんだな」

 

 義仁はそこから何も言わずもう一つのプランターに最後のミニトマトを定植し始める。

 

 先程と比べれば手際は多少良くなっている。が、斜めになってしまう。真っ直ぐと太陽目指して伸びてほしい。そんな思いが義仁の技術不足と農業に対する甘い認識を実感させた。

 

「次は支柱(しちゅう)を立てましょう。とは言ってもまだまだ小さいので……このお箸で代用します。苗の近くに箸を刺して……茎の方から入って、茎と支柱の間で一度紐をクロスさせます。そして、支柱側で結ぶ。この時、茎の方は少し余裕を持たせて置いてください。指が一本入れば大丈夫です。植物が成長していくにつれてこの隙間が無かったら成長の妨げになります」

 

 植物側から、支柱との間でクロス……8の字を描くような感じで最後に支柱側で結ぶ。

 

「この結ぶのはどんな結び方でもいいのかな?」

「どんな結び方でもいいですよ。取れなければ大丈夫です。ちなみにこの作業の事を誘引(ゆういん)と言います」

 

 同じようにもう一つの苗にも誘引をしていく。

 

「よし、出来た」

「お疲れ様です。取り敢えず定植作業はこれで終わりです。後は水やりをして……場所はこのまま玄関前の日当たりが良いところでいいでしょうから……壁寄りに少し移動しましょうか」

 

 六リットルのジョウロに水を入れ、先に移動先に置いておく。そして、ミニトマトを移動させるのだが既に二つはリリが移動させており、残り一つをリリと一緒に移動させた。足を怪我している人に対して移動の作業はやはり辛いものがあったため、義仁は素直にお礼を言った。

 

「ありがとう。最後のやつは私が運ぶよ」

「いえ、義仁さんは休んでいて下さい。運ぶことくらいなら私がやっておきますから」

「いや、今日はリリちゃんに色々協力してもらってるからね。私が」

「それじゃあ、一緒に運びましょう?」

「それは……いや、そうだね。そうしようか」

 

 効率が悪い。その気持ちを押し込め、プランターの片側を持ち、リリがその反対側を持つ。こんな期待されたような瞳を見たら断ることも出来まい。現にリリは嬉しそうにプランターを運んでいる。

 

 プランターを運び終え、水をやり今日の作業は全て完了した。

 

「これで本当に作業は終わりですね」

 

 服はしっとりと汗で濡れ、今なお額には大粒の汗が頬を流れる。しかし、不思議と気持ち悪さは感じなかった。

 

「……元気に、育って欲しいな」

「そうですね。ただ、義仁さんがそう思っていればきっとこの子達も元気に育ってくれると思いますよ。さ、部屋に戻りましょう。先にお風呂で軽く汗を流した方がいいかな? その間におにぎりでも作っておけば直ぐに食べれるよね」

 

 リリが一人今後の予定を呟いているのを横目に義仁はもう一度ミニトマトの苗を見ていた。

 

 葉についた水滴が太陽の光を反射しキラキラと輝く。全身で太陽の光を受け、必死に生きていこうとしている。

 

「義仁さん?」

「あ、何かな?」

「先にお風呂に入って汗を流した方が良いと思うと言っていたのですが」

「そうか、そうだね。このままじゃ風邪をひきそうだ」

「……何か気になることでもあったのですか?」

「……いや、何でもないんだ。なんでもない」

 

 だって、言えないじゃないか。何度も、何度も助けられて、今になって漸く生きている事が大変なんだってことを思い出せたなんて。必死に生きている君たちに、面と向かって……言えるわけが、ないじゃないか。

 




お読みいただきありがとうございます。

まあ、タグを見ていただいたら分かる通り、この小説は農業が中心です。まともな戦闘は殆どありません。
そして、今回から漸く農業できる……!

誤字脱字報告、感想、アドバイスが等あればよろしくお願いします。

出てきた専門用語で分からない所がございましたら、感想なりメッセージなりを頂ければできる限りわかりやすくお答えします。

では、また次回~
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