問題児たちと一緒にただのオッサンも来るそうですよ? 作:ちゃるもん
光って希望とかに例えられるけど、たまに絶望を直視させるためにも使われますよね。
では、どうぞ。
「僕は〝アンダーウッド〟のコミュニティ所属ロオタス。助けてくれてありがとうございます」
「私は〝ノーネーム〟出身の木島義仁。よろしくねロオタス君」
暗い部屋に二つの影。天井の大穴は瓦礫で塞がり、出口の扉は反対側に重しでもあるのかびくともしなかった。
「幸いなことに水と食料はあった。どれ位持つかは分からないけど、二人で頑張ろう」
※
敵は四体、笛の音色で相手を操る〝ラッテン〟
身の丈を超える巨大笛を巧みに操る〝ヴェーザー〟
ゲーム開始時に街を破壊した〝シュトロム〟
そして、魔王〝ペスト〟
彼等が敵。たった四人。そのたった四人に北側は壊滅まで追い込まれていた。
うん千といる戦える者の八割近くが魔王の力〝
それに加えシュトロムの攻撃により行方不明者も百単位で出ている。
なんとかジンたちがもぎ取った準備期間は一週間。それも、決定打を残さぬまま五日の時が過ぎていた。
そして、ペストの放った〝黒死病〟によって、初めての死者が出た報告と共に、六日目の朝が来た。
※
(大丈夫……だいじょうぶだ。僕が絶望してどうする。僕が立たなくてどうする……)
洗面台にぶちまけられた透明な液体。口に残る嫌な酸っぱさ。目の下には酷い隈が見られ、目は充血していた。
(ぼくはリーダーなんだ……黒ウサギの、リリたちの、レティシアの、十六夜さんの、耀さんの、飛鳥さんの、義仁さんの……りーだー、なんだ……)
洗面台の汚れを流し、本の山へと戻る。
「もう、こたえはでてるんだ……」
本のページを捲り、頭の中でピースを当てはめていく。
ラッテン=ドイツ語でネズミを意味する。ネズミと人心を操る悪魔の具現
ヴェーザー=地災や川の氾濫、地盤の陥没などから生まれた悪魔の具現。
シュトロム=ドイツ語で嵐を意味する。暴風雨などによる悪魔の具現。
ペスト=斑模様の道化が黒死病の伝染元であったネズミを操ったことから推測。黒死病による悪魔の具現。
偽りの伝承・真実の伝承が示すもの。一二八四年六月二十六日のハーメルンで起きた事実を〝ラッテン〟〝ヴェーザー〟〝シュトロム〟〝ペスト〟の四つから選択するものと推測できる。
そして、これを区別する方法が、殺害方法と殺害された130人の子供に当てはまらないものになる。
そこで、最も怪しいのがペストだ。
ハーメルンの碑文が、一二八四年。
黒死病の大流行が始まったとされるのが、一三五〇年以降。
つまり、ハーメルンの碑文と、黒死病の最盛期は時代背景が合わないことになる。
そこから推測するとペストとハーメルンの碑文は無関係の時代から来た悪魔と考えられる。
さらに言えば、何故か封印された白夜叉。この謎も直ぐに解ける。黒死病が大流行したのは十四世紀の寒冷期。太陽が氷河期に入ったのが大きな原因と考えられている。つまり、白夜叉は氷河期に入ったとされ封印されているのだ。
この説を提示すると、彼等はグリム童話上の〝ハーメルンの笛吹き〟となる。あくまで、彼等は本物ではないのだ。
本物を〝一二八四年のハーメルンの笛吹き〟だとすると、彼等は〝一五〇〇年代以降のハーメルンの笛吹き〟となる。
―――一二八四年 ヨハネとパウロの日 六月二十六日
あらゆる色で着飾った笛吹き男に130人のハーメルン生まれの子供らが誘い出され、丘の近くの処刑場で姿を消した―――
ハーメルンの伝承の碑文である。一体何処にネズミを操る道化師が存在しているのか。
そして、一五〇〇年の童話にはネズミを操る道化師が描かれている。
この時点で〝ラッテン〟と〝ペスト〟は同じくくりに部類できる。
〝ヴェーザー〟は、丘の近くの処刑場で姿を消した、この〝丘〟とは、ヴェーザー河に繋がる丘を指し、天災で子供達が亡くなった象徴とされる。天災……つまりは〝シュトロム〟も、ヴェーザー河の存在を指す。そして、〝ヴェーザー〟本人がいるから〝シュトロム〟もまた外れ……つまりは偽物。
つまり、〝ヴェーザー〟が真実の伝承となる。
そして、彼等は北側の祭典に美術工芸の出展者として侵入している。それも、100枚を超えるステンドグラスの展示者として。
100枚のステンドグラスから真実の伝承、ヴェーザー河の描かれている物だけを掲げ、それ以外は砕く。たった、それだけの事だ。
「僕は、生きる。そして、勝つんだ」
謎は解けた。何十と説を組み立てたが、これ以上このゲームに当てはまるものは無い。
(大丈夫……僕は間違ってなんかない……これであっているんだ)
何度も何度も、自分にそう言い聞かせながら、ジンは部屋を出る。ふらふらと、足を動かし、震えながら。何かに縋りたくて、前えと足を進めた。
※
一体どれ程の時間が過ぎたのだろうか。出口は塞がれ、食料も刻一刻とその量を減らしていく。
(だるい……キツい……熱い……)
隣に寝ているロオタスの手を握る。その手は熱く、汗でグッちょりとしていた。
(こんな時に限って風邪でも引いてしまったか?)
ぼんやりとする頭で考えようとするが、頭痛が酷くそれどころではない。
結果論として、二人して風邪をひいてしまった。それで思考を辞めた。今はただキツい。何もしたくない。
もし此処に他の誰かがいれば、蝋燭でもマッチでも良いからその場に光源さえあれば、二人の異変に気が付くことが出来たのだろう。
ふらふらしている義仁。息を荒くし寝込んでいるロオタス。暗闇の中では見つける事が困難な黒い斑点は身体中に湧き出て二人を蝕んでいく。ひっそりと、確実に……。
しかし、二人は気付かない。暗闇の中で見つける事が困難な上に、そこまで意識を持っていけないから。
そして、世界が変わった。
まるで新築かと思うような綺麗な内装には勿論明かりがあり、ずっと暗闇にいた義仁は思わず目を閉じてしまう。
何が何だか分からない。
しかし、一つだけ分かったことが、分かることがある。
助かるかもしれない。
助けられるかもしれない。
そんな希望が義仁の中で生まれた。
そんな希望が―――
「えっ? なんだ、この、黒いの……?」
―――生まれてしまったのだ。
お読みいただきありがとうございます。
身体中に黒い斑点とか……軽くトラウマものですよね。
それと、ジン君の絶望を書けて個人的に満足。
最後適当になって申し訳ない。眠かったんや……
誤字脱字報告、感想、アドバイス等がありましたら、よろしくお願いします。
謎解きに矛盾とか、これ違うぞとかありましたら、教えて頂けるとありがたいです。
では、また次回~