問題児たちと一緒にただのオッサンも来るそうですよ? 作:ちゃるもん
いや、その……ね?
本当なら、ね?
では、どうぞ。
ふらふらと廊下を一人の少女が歩く。髪の毛は無く、その代わりと言わんばかりに緑色の美しい葉と大きな花がその頭を覆っていた。瞳も生物にある黒目と白目のようなものは無く単色。しかし、生物一般に言えば気色悪い筈のその見た目も何処か大木を前にしているかのような力強さと安心感があった。
だが、今は違う。青々とした美しい筈の葉は泥水のような茶緑色をしており、頭の花は萎れていた。
少女には弟がいた。血は繋がってはいなくとも、血よりも固いもので結ばれた弟が。
この箱庭でも孤児はさほど珍しくはない。魔王に殺されたものや、虐待を受け逃げた者。人種を問わず、それぞれの問題を抱え孤児は存在する。
少女の弟はそんな問題を抱えた人間の子だった。
初めて彼と出会ったのは少女が買い物から帰る途中だ。自分の持つお小遣いでお菓子を買って、家に帰る途中、少女は少年とぶつかった。その衝撃で少女は持っていたお菓子を落としてしまう。それの一部を掴んで少年は逃げ出そうとした。結局は、店の目の前でそんな盗み行為を働いた少年は店の店主に捕まってしまったのだが。そんなこんなで、少女と少年は邂逅したのだ。
それから少女と少年は共に過ごすことになる。幸いなことに少女の家族、コミュニティは裕福。今更一人二人人員が増えた程度では傾かない。
少女と少年は仲が良かった。そりゃあもう、少女の姉妹が軽く嫉妬する程度には。少年は両親に捨てられたと少女に告白した。少女はそんな少年とずっと一緒にいた。家族の温もりを教えるんだと子供ながらに奮起して。そうして接して行けば仲が良くなるのも頷けない話ではない。現に少年はそれ以降少女の事を姉としてずっと慕ってきた。
そうして、少年と少女が出会って六年。少年は少女に告白をした。弟としてではなく、一人の男として。両親を自分のこの手で殺したと。
六年を共にした少女も、流石に目を見開いた。少年はそんな少女の顔を見らず、見れずに話を続ける。
少年の両親は人間では無い。獣人だった。だから自分も獣人だと少年は思っていた。信じていた。しかし、少年には、獣人としての耳も尻尾もない。いつか生えるだろうと、少年は信じていた。しかし、とある日両親が口喧嘩をしていたのを少年は聞いてしまった。
『あの子を引き取ってからもう五年、流石にもう明かさないといけないだろ』
『ただでさえコンプレックスとして耳と尻尾がないのを悩んでいるのに、まだもう少し時間を置いても大丈夫よ』
『だが……あの子は人間だ。私達獣人とは生きている時間が違う』
まるで自分の全てが否定された気分。裏切られた。両親はそんなつもりはなくとも、当時の少年にはそう感じられた。自分に家族なんていない。なら、あの二人はなんなんだ? そんな思いが積もり積もって憎悪となり、二人が寝静まった夜、寝込みを襲い殺した。
(けど、ロオタスはずっと悔やんで…………苦しんできた…………頑張って、罪を償うって…………約束…………したのに…………)
そして、いつの間にか辿り着いていた病室。
Pi――Pi――Pi――
機械的な電子音と連動するかのように規則正しく上下する胸。その胸からは沢山のチューブが繋がれており、そこに寝ている男を生かしているのが分かる。
最期にロオタスが共に居たという男だということも分かった。
「どうして…………」
少女は壁を伝うように歩く。つまづき、ベッドの近くのテーブルに倒れ込む。テーブルの上にはお皿の上に置かれた林檎とフルーツナイフ。
少女はそのナイフを手に取った。取るまでに躊躇いなんて無かった。
「貴方さえ……貴方さえ居なければッ!! ロオタスは、ロオタスはぁッ!!」
そのナイフ握り締め、少女は男の胸へと突き刺そうと振り下ろそうとするが、目が合った。男と少女の視線が交わった。うっすらと開いた瞼。そして、何かを察したかのように口端が持ち上がった。男は笑顔を浮かべたのだ。
怖かった。ナイフを突き付けられているのに笑っていられるこの男が。
涙が流れる。なんで貴方が笑っているのに、弟は死んでしまったのか。違う。あれは諦めているのだ。受け入れているのだ、私に殺されることを。
ふざけるな
ふざけるな
ふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるな
ふざけるなッ!!!!!!
「弟が生きていた証の貴方がッ!!」
もう一度ナイフを大きく振りかぶり―――
「そんな簡単に生きる事を諦めないでよッ!!」
―――振り下ろす。
突き刺さった箇所からは赤い液体が流れ、ベッドのシーツを赤く汚していく。
「うううッ……うわぁぁああああん!!!!」
少女の瞳から止めどめなく涙が溢れてくる。声を押し殺すこともなく、少女は大声で泣き叫ぶ。
ベッドに横たわる義仁の瞳は閉じられていた。
※
止めに入ろうとしていた十六夜は目の前に広がる光景に困惑を隠せないでいた。
しかし、そんな十六夜を他所に少女は泣き叫ぶ。義仁は既に目を閉じて、ベッドの上は赤色で染められていた。
(どうすればいいんだよこれは……)
「いや、マジでどうすりゃいいんだ? 取り敢えず止血して……話し合えるのかこれ?」
流石の十六夜も、自ら自身の手のひらをナイフで突き刺す者を見たのは初めての事だった。取り敢えず止血はしないとなと、包帯を救急箱から取り出しながら、これからの面倒事を想像し十六夜は大きく、溜息をついたのだった。
「厄介事をふやしやがってこのオッサンは…………はぁー…………」
お読みいただきありがとうございます。
ええ、ええ。言いたいことは分かりますとも。設定が無理やりな上に雑じゃないか? ええ、書いてる自分が一番分かっておりますとも。本当ならこの少年ことロオタス君とキリノ(作中の少女のこと)ちゃんは無関係だったのです。本来なら適当な家族を出してオッサンにトラウマを植え付けるだけのはずだったのです。
しかしですね? この後キリノちゃんの故郷、南のアンダーウッドにオッサンを連れていきたいのですよ。ですが、ここまで傷付いたオッサンが果たして行くのか? そう疑問になってしまったのですよ。その結果、キリノちゃんと関係を持たせれば自然に出来るのでは? そう思った結果がこれです。
さて、長々と言い訳を書きましたが、要は…………
ネタがなかったから仕方ないね(・ω<) テヘペロ
ではまた次回〜