問題児たちと一緒にただのオッサンも来るそうですよ?   作:ちゃるもん

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投稿です。

またもや、2週間ぶりです。無事合格してまいりました。これで、また暫くは1週間投稿が出来ると思います。

それと、正直今回何がしたかったのかよく分かっておりません。
原作を読み返すのが面倒くさくて、その部分をハブる事に尽力していた現実なんてありませんとも。ええ、ありませんとも。

では、どうぞ。


第38話 偽りの勇気

「サラ様、恐らくですが〝サウザンドアイズ〟からノーネーム宛に恩恵を預かっていませんか?」

「ああ、確かに預かっているが……それがどうした?」

「そうですか。それまでは予想通り。その恩恵は以前僕達が北側でクリアしたゲーム〝The PIED PIPER of HAMELIN〟のすべての勝利条件を満たした特別報酬でしょう」

「だとすればその報酬は……〝サウザンドアイズ〟から〝ノーネーム〟宛の小箱をここへ! 出来るだけ急ぐんだ!」

「よし……この様子なら小箱の中身はアレで間違いない。だとすれば、バロールの死眼とも相性が良い。これで、十六夜さんがくるまでの時間稼ぎが出来る……だけど、問題なのはそこじゃない……どうやって巨人族達が侵入してきたのかも問題じゃない……」

 

 ジンは顎に手をやり考え込む。幾つか上がってきた情報を当て嵌めていく。

 

 まず、巨人族は〝気が付けば〟壁を越え侵入していた。

 この時点で物体を移動させる恩恵か、一定範囲内の存在に幻覚を見せる毒又は精神干渉系の恩恵が使われたのが分かる。

 

 そして、盗まれたと報告が入った〝黄金の竪琴〟。これは、その音色を聞いた者に強い催眠能力を及ぼす。詳しい情報は知らないのであまり強くは言えないが、少なくとも巨人族に使えるほど大きなものではないらしい。

 

 幸いなのは、それを所持している存在のスペックを考慮しなければ最高と言っていいほどの人材がいる。

 

 そう。だから、問題なのは時間稼ぎでも、彼等の侵入を防ぐ方法でもない。もはや解決したも同然のものいくら考えても意味はないのだ。慢性してはならないが、そこに没頭してもいけない。今考えるべきは……

 

「……どうやっておびき寄せ、奪うかだ」

 

 

 ※

 

 

 義仁はジン達と共に貴賓室にいた。が、そこで話あっているサラとジンの話に付いていけず、途中サラに指示を受け部屋を出ていった獣人に付いていく形で部屋を出た。

 

 外に出ると、先程よりも大きくなった怒号が耳を貫く。さっきよりは巨人達が押し返されているように見えた。

 

 遠目からにも分かる阿鼻叫喚。地獄絵図。

 

 押し返されているように見えても、犠牲者は増えている。少し目を凝らせば……押し潰され、真っ赤な押し花になったのも見えた。数は一つ2つ度頃ではない。体の一部をもがれた者も居れば、今まさに口の中に放り込まれた者もいた。

 

 そして、巨人達も腕、脚、腹、胸、顔を貫かれ、抉られ、切り刻まれなお動き続ける者もいれば、内蔵をぶちまけ動かなくなっている者もいた。

 

 

 自分自身が何度も死に掛けもした。

 目の前で共に死へと立ち向かった者が死んだりもした。

 

 

 しかし、それとはまた別の絶望が目の前には広がっていた。

 

 胃から食道にかけ、食べた物が戻ってくる。それを必死に押しとどめ我慢する。

 

 ジンくんは、十六夜くんは、飛鳥ちゃんは、りりちゃんは、耀ちゃんは、くろうさぎちゃんは、さらさんは、ろおたすくんは、ろおたすくんのおねえさんは、妻と娘は―――

 

 

 ―――苦痛に歪んだ顔が、苦難に歪んだ顔が、泣き崩れる姿が、嘔吐し続ける顔が、怒りに捻れた顔が何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も―――

 

 生まれては消え、消えては生まれていく。

 

 そうだ……この程度の事で私が吐いてはいけない。弱音を吐いてはいけない。膝を付いてはいけない。

 

 

 薄れていたはずの恐怖が顔を出す。

 

 ただの痩せ我慢が偽りの勇気へと書き変わる。

 

 

 

 しかして、それは本当に悪い事なのか。

 

 少なくとも、その偽りの勇気は確かに―――

 

 

 

 

 ―――男を縛る新たな楔となるわけだが

 

 

 

 

 




お読み頂きありがとうございます。

来週の私がきっと上手いことまとめてくれることでしょう。

まあ、あれだ……がんばります……

では、また次回〜

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