問題児たちと一緒にただのオッサンも来るそうですよ?   作:ちゃるもん

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投稿です。

誰しも持つ感情です。

では、どうぞ。


第45話 感情の吐露

 微かなアルコール臭に目が覚めた。ここは、私は一体? ボヤけた視界が徐々に見え始め、それと同時に意識もはっきりとしてくる。

 

 あぁ、そうだ……そうだった……。私は、守れなかったんだ。

 

 レティシアが連れ去られた。守ろうとした、けど、守れなかった。その事実だけが、義仁の胸へと響く。

 言い表せない怒り、悲しみ、無力感、そして、またかという言葉。

 

 「悔しいなぁ……誰も守れないなんて……」

 

 悔しい、なんてものでは無い。もはや、言葉として言い表せないほどにそれ等の気持ちは膨らんでいく。しかし、彼の器から水が零れることは無い。不思議な事に、ボロボロの器には何故か水が溜まっていく。キャパオーバーなんて、既に達しているのだ。限界なんて既に通り過ぎている。けれど、器が壊れることも、高く高くありえない形で溜まっていく水が零れる事は無い。

 

 「手……ボロボロだなぁ」

 

 砕かれた右手には、包帯が薄く巻かれ赤く染まっていた。救命道具にも余裕が無いのだろう。

 

 「私に使うくらいなら、他の人に使ってくれれば良かったんだけど」

 

 辺りを見回す。小さいながらも個室。洗面台に、寝ていたのは上質なベット。手触りの良さそうな木製のテーブルに椅子……戦場でたった1人の怪我人を置いておくにはあまりに贅沢すぎる。

 

 義仁は立ち上がった。安静にしておく事よりも、他の怪我人をこの部屋に回して貰った方が良いと判断したからだ。その時、ふと窓が目に映る。必然的に、透明なガラスの奥……そとの景色が目に入ってきた。

 

 巨人は居なかった。しかし、代わりのように街を蹂躙するのは、異形の怪物達。巨大なカエルのようなものが建物を壊しながら進み、巨大な蜂が子供を攫い、ドロドロとしたヘドロが全てを飲み込む。頭が中途半端に別れた犬の頭がグパッと開き、自分の数倍のものを飲み込む。

 

 極めつけには、龍だ。〝アンダーウッド〟の巨大樹よりも巨大な真っ赤な龍だ。龍が体を震わすだけで地が揺れる。動いたら竜巻を作りだす。

 

 「は、はは……」

 

 乾いた笑いしか出てこない。

 

 ふと、ひとつの心当たりが生まれた。

 

 〝レティシアを守れなかったから?〟

 

 確証なんてない、ただの妄想。分かってはいる、分かってはいるのだが、それすらも、器は受け止めてしまった。器に大きな罅が入る。しかし、直ぐに直って受け止めた。

 

 心を埋め尽くす罪悪感。義仁は窓辺から離れ、ゆっくりと部屋をあとにする。廊下には誰もいない。あの怪物も、何もいない。とぼとぼと、1人歩く。

 

 程なくして、外が見えた。窓から見えたあの地獄が再び視界を埋め尽くす。

 

 機械仕掛けの巨人。飛鳥ちゃんのディーンだったかな。

 

 ディーンは百足のようなものを叩き潰していた。前よりもおっきくなったなー、ドンドン大きくなってるなー。場違いな事を考えてしまう。

 

 ディーンの近くには飛鳥ちゃんもいる。サラさんもいた。サラさんの赤い角は根元から落とされていた。飛鳥ちゃんは、サラさんを支えている。

 

 だから、後ろから近づく蚊のような異形達に気が付いていない。

 

 ピシッと器に罅が入った。

 溜まった水が本来の流れに乗り始める。

 

 限界を超え、感情の吐露なんて忘れていた。無意識のものはあれど、こうして、自ら他者に対して殺意を抱いたのは何時ぶりだろうか。

 

 ああ、家族を殺そうとするあの化物が憎い。殺したい。

 愛しい人を殺そうと動くアイツらが憎い。殺したい。

 そして、守れない自分自身が許せない。

 

 気が付けば走り出していた、俺は今、どんな顔をしているのだろうか? 般若? 笑顔? 歪んでる?

 

 そんな事はどうだっていい。

 

 今は、愛する人を守るべきだろうがァ!

 

 砕けた右手を無理やり動かし、握りしめ、驚く飛鳥ちゃんの横を通り過ぎ、一番前の化物を殴り飛ばした。

 

 「ふざけんなよテメェらァァァあああ!!!」

 




お読みいただきありがとうございます。

強化は入ってないです。人間のリミッターが切れただけです。おっさんはクソザコナメクジのままですのでご安心下さい。

あと、蚊みたいな化物は装甲なし、腕なしのミ=ゴみたいなやつを想像してもらえば。

では、また次回〜
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