問題児たちと一緒にただのオッサンも来るそうですよ? 作:ちゃるもん
短いですが、ご了承ください。
本来であれば、予告通り飛鳥たちの話でした。しかし、原作1巻が行方不明のため、先におっさんの話です。
では、どうぞ。
窓から見える風景は砂が広がるばかりの大きな砂漠。さらに、それより遠くに視線を移せば緑豊かな森林。その光景に、ここが自分のいた世界とは違う世界なんだな。と、嫌でも理解をしてしまう。
もはや義仁には笑う気力すらも無かった。
ついさっきまでは、何で俺がこんな事に巻き込まれてるんだ。何で俺だけがこんな目に会わなければいけないんだ。なんて卑屈になっていたが、今では何もかもがどうでも良くなっていた。
そんな状態の義仁に対しても、リリは健気に話しかける。
「義仁様は前の世界ではどのような事をなされていたのですか?」
「普通のサラリーマンだよ」
「さらりーまん?」
「あー、知らないのか。えっと、会社や組織に所属し労働する。そして、設定された金額の報酬を定期的に受け取り生計を立てる人のこと……かな」
なるほど? と、リリは分かったような分からないような複雑な表情を浮かべたまま、義仁の寝ているベットの近くに椅子を持ってきて椅子に座った。こころなしか、そのきつね耳も垂れ下がっているように見える。否、垂れ下がっていた。これでは、何処か居心地が悪いと義仁はもっと簡単に言い直した。
「簡単に言うなら……なんだ?生活するために働く人。になるのかな?」
リリのきつね耳がピコンッ!!と真っ直ぐに伸びた。どうやら分かってもらえたようだと、安心する義仁。そこで、ふと疑問に思った事を聞いてみることにした。
「……その耳や尻尾は本物なのかい?」
「本物ですよ?」
「異世界とやらは、凄いんだな」
人ならざる者。本来受け入れ難い存在ではあるものの、義仁の精神状況に加え、リリが悪い子ではないからか、特にこれと言った嫌悪感などは感じられなかった。
「義仁様の世界では珍しいのですか?」
「珍しい以前に存在してないからね。こういった耳を持った人は。リリちゃん以外にもこんな耳を持った子がいるのかな?」
「はい。ノーネームに住む子供の半数が獣人です。猫や犬。蜥蜴の獣人なんかもいますよ」
「そう言えば、大人の方はいられないのかな?」
「はい……リーダーのジン君も、黒ウサギのお姉ちゃんも今は外にいて、ノーネームには居ないんです。多分もう一刻ほどもすれば帰ってくると思います」
君?黒ウサギ?お姉ちゃん?呼び方に違和感は残るものの、その二人がリリの両親だろう。だから、軽い気持ちで確認してみた。
「そのジン君と黒ウサギさんが、リリちゃんのお父さんとお母さんなのかな?」
「あ、いえ。私の家族は三年前魔王に連れ去られて行方不明なんです」
「あ、その……ごめんなさい……」
「いえ、気にしないでください。まだ、立ち直ったとは言えないけど、前を向く程度には元気ですから!!」
両手を胸の前で握り、元気アピールをするリリ。そして、家族の話が出たからか、義仁にある質問をする。
「義仁さんは間違って召喚されてしまったんですよね?なら、やっぱり前の世界に帰りたいのでしょうか」
その質問に義仁は考える。
(帰りたい……帰りたいか……どうなんだろうな。もう、どうでもいいな。帰りを待つ妻も娘もいなくなって、父さんと母さん、妻のご両親にも迷惑をかけ続けてる。会社にもだ。俺があの世界で生きていく価値はあるのだろうか、いやない。なら、ここに残りたい?分からない)
一分程じっくりと考え込んだ末、義仁が出した答えは、
「分からない」
だった。
両親や会社には心配されている事だろう。だが、戻っても、最愛の妻と娘はいない。会社も今回の仕事が最後のチャンスで、それを落としてしまったのだ。確実にクビになる事だろう。
「分からない……ですか?ご家族の方に会いたいとかは」
「帰っても……おかえりと迎えてくれる家族はもういないからね。二年前に妻も娘も死んだよ」
その時の光景は、今でも義仁の記憶に根付いている。忘れるわけがない。後部座席で潰れた我が子の顔を。ぐチャリと、無残に潰されたザクロのような光景を。そんなことを知らない妻に、ベットに横たわり冷たくなっていく妻に『あの子をお願いね?』と手を握られたことを。
「気にかけていた人達には悪いけど……どうせなら、このままひっそりと野垂れ死ぬのが、一番楽なのかもしれないな」
「……ごめんなさい」
「こっちこそごめんね。こんな、暗い話聞きたくなかったよね」
リリは何も答えない。ただ、その瞳は揺れ動き、どう返事すれば分からない。私のせいだ、私が不用心に質問したから。自分で自分を責め続ける。言い知れない恐怖から、その瞳には涙が溜まり今にも決壊しそうだ。
それを、義仁はこんな見ず知らずの人間の為に涙を流してくれている。と、勘違いをしてしまう。
「ありがとう。君は、妻と娘の為に泣いてくれるんだね」
「あ、いや、これは……ごめんなさい」
「……うん。もう少し、頑張ってみようかな」
しかし、今回はそれが幸をそうした。
「え?」
「理解出来ないことが起こって、少し考える余裕が出来た。それに、このまま野垂れ死んでいたら妻と娘に愛想を尽かされるだろうからね。それと、助けてもらった恩も返さないといけないね。だから、どうにかこうにか生きていくよう努力してみることにするよ」
「???」
「ありがとう。君は私の命の恩人だ」
頭を下げる義仁に、頭の疑問符が取れないリリ。色々と噛み合っていないところばかりではあるが、まあ、これで良かったのだろう。
お読みいただきありがとうございます。
原作1巻が無くなって焦って結果、文字数が少なくなりました。もとより多かったわけでもありませんが。1巻は既に見付けているので、次回は飛鳥たちのお話となります。
誤字脱字報告、アドバイス、感想があれば、よろしくお願いします。
では、また次回。