問題児たちと一緒にただのオッサンも来るそうですよ? 作:ちゃるもん
次回辺りから漸く原作に戻れそう……
長かった……
では、どうぞ!
「あー、なんか予想通りの反応でつまらないな」
さっきまでの暗い雰囲気はどこに消えたか、十六夜は大きく欠伸をする。その反応をみて、義仁は十六夜の発言が冗談のものだと判断した。
「……冗談なら勘弁してくれないかな」
「冗談で俺が誰かを強いだなんて評価するとでも? なら何度だった言ってやる。俺はアンタが強いと思う。なんでかって? 誰かのために、愛する人の為にそこまで悩めてるからだ。迷えてるからだ。オッサンが見た幻覚のベクトルが違えばそんな評価出さないさ」
悩むことが強さに繋がる? 迷うことが強さだと? 分からない。
「納得してねぇな。たく……まあ、この事は気長に考えていけばいいんじゃねぇノ? 今までも散々考えているみたいだがな」
十六夜は小さく笑いを零す。何がおかしいんだ。君は何故私を認める。そんな万能な力を持つ君が、何故、私なんかを強いと言ってのける。
「そもそもの話だが、オッサン。アンタが居なければ俺たち〝ノーネーム〟はここに立つどころか、下手したら北側にすら行けていなかった」
何故?彼ら程の実力があれば、私がいても、いなくても何も変わらない筈だ。
「忘れたのか?俺達が箱庭に飛ばされたその日の事を。いやまあ、オッサンも色々混乱してる途中だったようだし無理もないか」
飛ばされたその日? 思考を巡らせる。この世界に来て、濃すぎた日常をかき出しながら思い出して行く。
「……あっ」
「その反応……マジで忘れてたのか……どういう思いでリリと接して来たんだか」
「いやでも、そうだとしても……きっと君たちならどうにかして」
「ああ。どうにかしただろうな。消えたリリ。フォレス=ガロの脅迫。アイツは拐った子供は直ぐ食い殺してたんだとさ。俺たちはその事実を知っていた。だから、恐らくフォレス=ガロを完膚なきまでに叩き潰しただろうよ。リリって言う犠牲の対価として。
そんなコミュニティが上手く回ると思うか? 良くて俺達が抜ける。最悪空中分離。ガキどもは身よりもなく箱庭の外で危険と共に過ごすことになったかもしれない。それを防いだのは他でもないアンタだ。
似たような話を当時話したと思うんだが?
ジンの支えに唯一なれたのもアンタだけだしな。俺たちはあくまでジンをリーダーとして支えるしかない。ジンにとってアンタは親父みたいなもんなんだ。
なんなら、もう1つ。今回の襲撃。最後の最後に大手柄を上げたのが誰だが知ってるか? 巨龍の心臓射止めた俺? 俺を運び、ゲームの謎の大元を解いた春日部? 巨龍を止めるべくディーンに力を注いだお嬢様とサラ?
誰も違う。ディーンが受け止めなければ俺達は巨龍の心臓を潰すことはできなかった。お嬢様はサラが居なければ巨龍を受け止めることは出来なかった。サラはお嬢様が居なければ打つ手なく潰されていた。そう、役者は揃っていた。勝てるはずだった。だが、土台は泥沼。歩く事ができなきゃ何にもできねぇ。もう、心当たりしかないだろ?
おっさんは、サラとお嬢様を守った。おっさんがいなければそもそもの土台が無かったんだ。土台が無いのにどうやって花が咲く? つまりは、そういう事だ
まだ言い足りないが……まあ、夜もふか……明けてきたな。ま、そう言うこった。取り敢えずは、俺がアンタを守ってやる。支えてほしけりゃ支えてやるし、押して欲しけりゃ押してやる。んじゃな」
十六夜は窓から飛び降りた。本来なら慌てるところなのだろうが、彼なら大丈夫だろう。彼が飛び降りた窓からは朝日が射し込む。まだ、理解が追い付かないでいる。追いつかないではいる……が、あれだ。
「年下にあそこまで言われて……私は何をしているんだろうな」
乾いた笑み……などではない。穏やかな笑みを浮かべ、義仁は前を向いた。支えてくれる人がいる、押してくれる人がいる、それが、理解出来た。わかってしまったのだから。目を逸らす暇もなく断言されたのだから。
前を向く。
その顔に、朝日が射し込むのに、そう時間は掛からないだろう。
お読みいただきありがとうございます。
ケータイ変わって変換しづらい……
誤字脱字等が多いと思いますが……何卒ご容赦を。
では、また次回〜