問題児たちと一緒にただのオッサンも来るそうですよ?   作:ちゃるもん

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投稿です。

熱中症で部屋のトイレで気絶し、職場の上司から電話を貰い復活しました。
考えるのが辛かったので、殆ど原作挿入となりました。
導入辺りはただでさえ原作挿入増えるからなぁ……次は頑張りまする。

では、どうぞ。


第62話 風来坊

「僕の名前は蛟劉。姓は特にない風来坊なんで、お好きにお呼びくださいな。いやはや暇なんで散歩しとったんよ。お陰で暫くは暇しなくてすみそうやな」

「あ、どうもご丁寧に。木島義仁です」

 

 2人が軽く挨拶を済ませているとき、黒ウサギはふと小首を傾げる。

 

(あれ……この方、)

 

 ―――強いな、と。蛟劉と名乗る男に害意が無いにも拘らず、反射的に身構えていた。

 自然体で振る舞っているにも拘らず、緩やかな足捌きと隙のない立ち姿。何時如何なる時にでも臨戦態勢を取れるようにという心構えから来るものだろう。

 一見華奢な細身の体も、全身が想像を絶する修練で練り上げられている。

 強いて違和感を挙げるならば……覇気らしい物が一切感じられないことだろう。

 

(義仁さんに気を遣って隠しているのなら、大したものです。自然体で此処まで覇気を抑えられるものは少ないでしょうに)

 

 才能ではなく修練によって己を磨く者は、その厳格さが気配として滲み出てしまう。本来なら棒立ちしているだけでも彼の前に立つ義仁を威圧させてしまうだろう。

 しかし目の前の男―――蛟劉は、それだけのポテンシャルを完全に隠し切っていた。

 

「そちらさんは、〝箱庭の貴族〟殿で間違いないかな。さっきも言ったが名が蛟劉。姓はない風来坊。お好きにお呼びくださいな」

 

 義仁から視線を外し、黒ウサギへと移すと、胡散臭い笑顔のまま一礼する。

 全体的に胡散臭い雰囲気の男ではあるが……悪意のようなものは感じられない。信用しても問題はないだろうと黒ウサギは判断した。

 

「YES,よろしくお願いするのですよ!」

「はは、元気やね。それじゃ早速地下水路に向かおか」

 

 3人は地下書庫に向かうための渡し船に同席した。

 向かう先は大樹の根によって支えられる〝アンダーウッド〟の洞穴。道中に地下水路があるため渡し船が必須となる。泳いで渡ることもできなくはないが、もし間違って滝側の断崖に出てしまえばそのまま真っ逆さまである。

 

 やがて岸辺に辿り着く渡し船。河川が近く風通しも悪いこの場所は、湿気がこもりやすい。書庫としては最悪の環境と言っても過言ではないだろう。

 

「こ、こんなところに書庫があるのですか?」

「いやあ僕も初めはそう思ったやけどね。とりあえず扉を開けてみ」

「船の上ってのも案外楽しいものだねぇ」

 

 1人ほっこりしている義仁を置いて、蛟劉に促されるまま扉に手をかける。

 黒ウサギが

 書庫の扉を開くと、中から乾いた空気が溢れた。

 

(わっ……!)

 

 ブワッ、と乾燥した風が頬を撫でる。油断していた黒ウサギは胸一杯に乾燥した空気を吸い込んでしまい、ケホケホとせき込みながら扉を閉めた。

 

「な、なるほど。水樹の根が大気中の水分を吸収して、ドライルームを作り出しているのですね」

「そういうこと。僕は渡し船て義仁はんが落ちないよう見とくから、お友達呼んどいで」

 

 ヒラヒラと手を振り、愛用の煙管に火をつける蛟劉。船に寄り掛かり波に揺れるまったりとした時間に目を細める義仁。

 

 黒ウサギは最後に2人を一瞥し、十六夜を探すために奥へと足を進めた。

 




お読みいただきありがとうございます。

蛟劉とおっさんはすごく気が合うと思う今日この頃。
あと、たまにはおっさんをゲームに参加させてみたいのですが、どうなんでしょ? 嫌って方は感想なりメッセなり下さいな。
無かったらゲーム参加させます。 有ったら吟味した上で決めます。

では、また次回〜

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