問題児たちと一緒にただのオッサンも来るそうですよ?   作:ちゃるもん

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投稿です。

今日は見回りだから許して……許して……

では、どうぞ。


第70話 練習

 蹄に水掻きを持ち、鬣に鰭を持つ幻獣・ヒッポカンプ。

 水上・水中を駆ける彼らの足跡は激しい水飛沫が飛んでいるが、その四足は前進し続けている。

 

 義仁は背を借りたヒッポカンプの首筋を撫でた。

 

「どうや? 僕のヒッポカンプは。日頃好きにさせてるけどそれでもそこらのヒッポカンプよりは長生きしてて、かなり乗りやすいはずやで」

「確かに、乗馬なんて初めてなんですけど、全然難しく感じませんね」

 

 そうやろそうやろ。と、満足げに頷く蛟劉に答えるように勇ましく鳴くヒッポカンプ。こんな時、耀ちゃんみたく動物と話せたらいいんだろうけどな。と、ぼんやり思いひと息入れる為岸へとヒッポカンプを走らせた。

 

「とまあ、基本的に乗馬と似た感じやね。馬乗ったことあるか知らんけど。右に手綱を引けば右に、左に手綱を引けば左に。速度調整は3段階で抑えるよう言っとくからな。両足で腹を軽く叩けば上げていくようにするから。試合前にそれの簡単な調整で終わろうか」

「分かりました」

 

 義仁はヒッポカンプから降り、お疲れ様と軽く撫でる。それに満足したのがヒッポカンプはその場から走り去っていった。

 今回のゲームでは勝ちに行くより、完走を目的とした人も多く。義仁もその1人。やろうと思えば七大妖王である蛟劉からの恩恵を受けたヒッポカンプであれば、義仁だけでも十二分勝ちを狙えたりもする。

 

 練習も終わり、大きく伸びをする義仁。乗馬の経験なんて無いのだが、素人のど素人である義仁ですらなんら問題なく走らせることが出来るのだから、ヒッポカンプも、蛟劉も凄いのだと改めて実感していた。

 

「よし、それじゃデートにでも行きましょか」

「何処に行くんですか?」

「適当に時間までうろつこうや。そういや、義仁はんは水着はきーへんの?」

 

 水辺を離れ、水着の貸出とヒッポカンプの貸出を行っている建物を横目に蛟劉が問い掛けた。今年の〝ヒッポカンプの騎手〟では、公式からヒッポカンプを借りる場合水着の着用が義務付けられた。

 しかし、義仁の場合は蛟劉のヒッポカンプを借りる為水着の着用は義務付けられない。まあ、理由としてはそれだけではないのだが。

 

 義仁は今まで多くの事件に巻き込まれてきた。箱庭に来た当初には侵入者に襲われ、北側の祭りでは黒死病に命を脅かされ、捻った足で無理やり走り続けた。そして、南側では、頭部損傷、腹部貫通etcetc……

 人に見せるには如何せん不愉快にさせてしまう傷が多くできてしまっている。

 

「そこでさせてしまうって言うのが、義仁はんらしいってことなんかね〜。ま、それなら無理強いはせんよ。けど、周りに気を遣いすぎてまた狐ちゃんに怒られても知らんけどなー。義仁さんはもっと我儘を言ってください! もしかしたら、義仁さんの水着姿を期待しとるかもな〜」

「……蛟劉さん、遊んでますよね?」

「さて、なんの事やら」

 

 とぼける蛟劉に、苦笑いを浮かべる義仁。その足は既に水着売り場はへと向いており、義仁はしてやられた。と、自分の分かりやすさに小さく溜息をついた。

 けど、嫌じゃないって思えるから。いい事なんだと思う。

 




お読みいただきありがとうございます。

……一応ヒッポカンプには触れたらかセーフ……セー……フ?

では、また次回〜

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