問題児たちと一緒にただのオッサンも来るそうですよ? 作:ちゃるもん
最近BO4に明け暮れています。
はい。関係ないですね(´・ω・`)
では、どうぞ。
受け止められた拳を勢いよく戻し、その反動を利用して海岸沿いまで後退する。
(まだまだお遊びだってか)
余裕の笑みで構えすら取らない蛟魔王。ただ、悠々と歩いてくるのみ。猫か狸で着飾っている状態ですら軽くあしらわれる。なら、その皮を剥がしてやれば一体なにがまち受けていることだろうか。熊か、猪か、はたまた蛇か蠍か……。
「どうしたん? たった一撃受け止めただけやん、もっと楽しませてーや。最強種を倒したんやろ? それやったら僕なんぞ相手にもならんはずやけどな」
なんと安い挑発か、胡散臭い笑みで飄々と肩を竦める蛟劉。
それに対し十六夜は嬉嬉として拳を構えた。
しかし、勝てるビジョンは浮かばない。それほどまでに実力の差がハッキリと伝わってくるのだ。
「シッ!」
大地を蹴り、一直線に拳を叩き込む。先程の奇襲モドキとは違う突進。そして、全身全霊の一撃。海水に足を取られ速度こそ落ちているものの、それでも常人を逸脱した速さ。並のものならば知覚すら出来ないだろう。
海を割り、山を砕き、残像を置き去りにした十六夜。その星の揺るがす一撃すらも―――。
「……これでもだめか」
蛟魔王は、片腕一本で受け止めた。
「十六夜くん、体の使い方がなっとらんで?」
十六夜の拳を握りしめ失笑する蛟魔王。その圧力にかつてない危機感を抱く。
「せっかくいいもん持っとるのに、そんなんじゃその天賦泣いとるで? これは授業料や。死んだら義仁はんに顔向けできんし、死なんでくれよ?」
掴んでいた拳を手前に引き込み十六夜の体を近付ける。それと同時に重心を落とし、隻眼の瞳を見開いた蛟魔王は、捻じり込むように心窩を掌底でかち上た。幾星霜の月日を重ねて研鑽された一撃は、十六夜の臓腑にかつてない衝撃を走らせる。
「ごフッ…………!!」
血液が逆流するほどの嘔吐感にさいまなれながらも、その激痛を全て噛み殺し。
十六夜は、体を捻って蛟魔王を蹴り抜いていた。
「何…………!?」
予想外の反撃に驚嘆の声を上げる蛟魔王。命を刈り取るつもりで打ったというのに、死なぬどころか反撃までしてきたのだ。彼にしてみればまさに驚天動地だろう。
二人は互いに吹き飛び、海面を転げながら離れていく。
先に立ち上がったのは蛟魔王だった。
(こ、これは驚いた。まさかの一撃を受けて、反撃までしてくるとは)
蛟魔王は最強種ではないものの、その霊格は並の神霊を遥かに凌駕する。
海で千年、山で千年を積んだ蛇は仙道を極め、〝仙龍〟という稀有な龍種に転生することができる。
彼はその過程を半分で済ませるために、海底の深海火山で修行を積んだ。生命が生きられぬ熱さと土石流の中で功績を得た彼は、地母神と海神の双方に匹敵する力を持つ。
大地と海から吸い上げた気を掌底に込めて打ち出した一撃を、人間が受け止められるはずないのだ。
「十六夜くん…………君、どんな体の仕組みしとるんや?」
「それは、こっちの台詞だ、この野郎……!」
口からの吐血を腕で拭い、ようやく立ち上がる十六夜。
確かに、蛟魔王は十六夜の全身全霊の拳を受け止めた。しかし、反撃の蹴りはモロに食らっていたのだ。だと言うのに、何事もないように立ち上がっている。
今まで二体の神霊と戦った十六夜だが、彼らは決して無傷ではなかった。超常的な回復力で無力化していたに過ぎなかった。
しかし、この魔王は……明らかに、十六夜の一撃が効いていない。
星を揺るがすその一撃を前にして、これは今までになかったことだ。
(分かっちゃいたが、とうとう現れたってことか)
肩で息をしながら、現状を受け止める。
いつか現れるだろうと思っていた。最大の難敵。
十六夜の身体能力を凌駕する魔王が、ついに立ち塞がったのだ。
(ハッ…………流石は箱庭の世界。こうでなくちゃ面白くねぇ…………!)
一切の小細工なし。間違いなく、真ん中ド直球に最強の敵だ。
(てか、こいつより強いって……白夜叉どんだけやべーんだよ)
だが、今は目の前のことだ。
十六夜は徐々に熱を帯び、喜色に染まり、勝利を掴むために思考を高速回転させる。
勝てるビジョンが浮かばない?
ならば、捩じ伏せ勝利をもぎ取るだけの事!!
取り敢えずもう一度突っ込んでみりゃぁなんかわかんだろ!!
お読みいただきありがとうございます。
血だ!血だ!ふっふーう!
けど、吐血程度じゃなんだかなぁ……(感覚麻痺)
では、また次回~