問題児たちと一緒にただのオッサンも来るそうですよ? 作:ちゃるもん
誰かの心情を表すのって難しいね。
では、どうぞ。
「…………ぁ」
義仁は目を覚ました。ついこの間いたノーネームの部屋だ。頭が痛い。足が動かない。腕は動く。
取り敢えず起き上がろうと腕を動かす。だが、腕は動くとはいえ妙に動きが鈍い。起き上がろうにも何か掴めるものが必要だ。義仁は何か掴めるものを探そうと腕を動かし、指先に何かがぶつかった。それは細く暖かかった。
※
「おうリリ。起きてるか?」
ノックも無しにリリのいる部屋へと入ってきたのは逆廻十六夜。現在では木島義仁の病室となっているその部屋は、リリが付きっきりで看病をしているためリリを探している者は取り敢えずこの部屋を訪れるようになっていた。
リリは十六夜が部屋に訪れた事など眼中になく、ただ、慌てた様子で義仁と自分の腕を交互に見つめていた。
流石に付きっきりとはいえ誰かが訪れればこちらに返事を返していたリリの様子に十六夜は疑問符を浮かべる。だが、その理由もその視線を追いかけて行くとすぐに理解出来た。
「漸くお目覚めか。リリ、お前は黒ウサギを呼んでこい。この医療器具は黒ウサギにしか扱えないからな」
だが、リリは動かない。この手を振り払ってしまったら本当に義仁が死んでしまうのではないか? そんな一抹の不安がリリを動かせまいと働いているからだ。
しかし、そんなリリの不安なんかお構い無しに十六夜はリリを義仁から引き剥がした。
「いいか、このオッサンは重体だったんだ。それをなんとか繋ぎ止めて、丸二日目を覚まさずに今日漸く目を覚ました。リリ、黒ウサギと御チビ様、ジンを呼んでこい。出来ればお嬢様もだ。分かったらいけ!!」
リリは肩をビクッと震わせ急いで黒ウサギ達を呼びに行った。
「……たくっ。あいつ自身も消耗してるってのに。これで何か失敗でもしてアンタが死んだら本当にアイツの心が逝っちまうぞ? と、喋れるかオッサン」
「だ……ぃじょ……ぶ」
帰ってきたのは掠れた声。無理をしていることなんて一目瞭然だ。
「あー無理はすんな。俺が一方的に話せばいいだけだし、それに時間もないしな」
十六夜は義仁にそれ以上喋るなとジェスチャー込みで伝え、あの夜の一件の顛末を話し始めた。
「まず、あの野郎は〝フォレス・ガロ〟に人質を取られて泣く泣く誘拐してた連中だ。今回はリリが標的にされて、それをアンタが守った。屋敷の中に潜入していたのはアイツだけで、外には五人また別に潜んでいた。あと一人でも侵入して一緒に行動されていたらオッサンは何も出来ずにリリを連れ去られてたかもしれねぇな」
ヤハハハハハ 少しの感情もこもっていない笑い声が部屋に響く。
「そして、俺達がその五人をぶちのめし、オッサン達の所に辿り着いた時には血の海が広がってた。その惨状を作り出した侵入者を取っ捕まえて〝フォレス・ガロ〟の仕業だと言うことが判明した。オッサンは出血多量の重体。リリは叫びすぎたのか喉から血が出ててな。今でも声を出すのが辛いみたいだな」
一瞬義仁の体が強ばった。
「まさか、自分が弱かったからとか思ってないだろうな? だったらその考えは辞めといた方がいいぞ。少なくともアンタがアソコで体を張ってなけりゃリリは連れ去られていた。アンタを救ったのは俺たちかもしれないが、リリを救ったのは他でもないオッサン、アンタだ。まあ、俺からしたらわざわざ助けたやつが死にに行って気持ちのいいものじゃァないがな」
十六夜は椅子を取り出しそこに腰を下ろす。
「とまあ、俺がどう思っているかなんかはどうでもよかったな。んでだ、その後〝フォレス・ガロ〟をぶっ飛ばして無事ノーネームは対魔王コミュニティとしての第一歩を踏み出せました。その過程で春日部が怪我をしたがそこまで酷いもんじゃないみたいだ。って、春日部が誰か分からねぇか。自己紹介はオッサンが喋れるようになってからで大丈夫だろ。と、俺はもう行くぜ。バレたら面倒くさそうだしな。オッサンもこの事は黙っとけよ?」
そうして十六夜は立ち上がり、窓を開ける。冷たい夜風が頬を撫でる。首を動かしその様子を見守っていた義仁だが、次の瞬間その目を見開いた。それもそのはず、ここは少なくとも一階ではない。外の景色からして三階ぐらいだろうか? そんな所から飛び降りる男を見て驚かない方がおかしい。とはいえ、十六夜の身体能力は箱庭の貴族ですら舌を巻くレベルなので特に問題は無い。遠くに十六夜と思われる影を見て今度は口が開いたまま閉じなくなっていた。
十六夜と入れ替わるように扉を開けて入ってきたのは黒ウサギとジン。黒ウサギは息を切らし、ジンにいたっては大粒の涙を流していた。
「義仁さん……よかった…………本当に、良かったです。喋れますか? どこか痛いところは? 声聞こえますか?」
ジンの質問攻めにこれは一波乱ありそうだ。と、苦笑いを浮かべる義仁。
そして、おずおずと黒ウサギの後ろから姿を表したリリ。リリは顔を俯かせている。
外傷らしきものは見受けられない。俺はこの娘を救えたんだ。そんな実感が胸を支配し、見て見ぬふりをしていた恐怖が湧き出てくる。
(ナイフを刺されて、頭を何度も殴られて、ドンドン意識が遠のいて行った。本当に死ぬんじゃないか? 死にたくない、逃げたい、なんで今日あったばかりの女の子の為なんかに命を張ってるんだ俺は……? 馬鹿らしい。ちくしょう、チクショウチクショウチクショウ)
あの時の光景が、痛みが、思考が、鮮明に脳裏へとこびり付いていく。
(なんだってそんな必死に叫んでんだよ、痛いんだろ? もう諦めろよ、なぁ? 頼むから、どうせ助かりやしないんだから。あの時みたいに……チクショウ、なんだって動いてくれねぇんだよ。頼むから、せっかく助けられるかもしれないんだから、諦めたくねぇんだよ)
あの時の感情が、今更になって涙として流れ落ちる。諦めたくない。あの時、妻と娘を守れなかった、あんな思いはしたくない。
「よ……かっ、た」
義仁の口から零れた小さな声。その声にリリはハッと顔を上げる。二人の視線が重なった。
(足を掴んでやったぞ。ははっ……無駄な足掻きだな……俺……どうして、俺は誰も救えないんだろうなぁ……ちくしょう……チクショウ……!!)
「ほんとう、に」
リリは義仁に近付く。その腕を握り、啜り泣き始めた。
「ごめん、なさい……ッ わたしの、せいで……」
苦しげに声を出すリリを止めようとする黒ウサギ。リリは自然と声が出ているものの、実際はかなり痛いはずだ。喉の奥が切れているのだから治療のしようもない。ノーネームには痛み止めなどもないのだから。しかし、止めようとする黒ウサギをジンが止め、部屋の端へと移動した。
『まさか、自分が弱かったからとか思ってないだろうな? だったらその考えは辞めといた方がいいぞ。少なくともアンタがアソコで体を張ってなきゃリリは連れ去られていた。アンタを救ったのは俺たちかもしれないが、リリを救ったのは他でもないオッサン、アンタだ』
先程の十六夜の言葉。
(俺は弱い。今でもあの光景が怖い。だが、こんな弱くて臆病者な俺でも、誰かを救うなんて事が出来るんだな……)
「ほんとう……に、よかっ……た」
生きていてくれて、本当にありがとう。
私を救ってくれて、本当にありがとう。
お読みいただきありがとうございます。
読みづらかったと思います。ちゃるもんの表現力の低さ故です。申し訳ない。
もっと文才が欲しいのう。
誤字脱字報告、感想、アドバイス等ございしたらお願いします。
フォレス・ガロとの戦闘シーンはカットです。
なぜか?
主人公寝たきりでほとんど出てこなくなるからだよ。
では、また次回。