真剣で魔王さまに恋しなさい!   作:優雅

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今回の回では、はたらく魔王さま!で、ちょっと独自設定があります
ちなみに、「」表記内が日本語。『』表記内がエンテ・イスラ語と分けてあります


魔王と悪魔大元帥、ワン子に拾われる

 

 

 

 

日の光を浴び、魔王サタンは目を覚ました。

目を開けた際に入り込むのは見知らぬ天井。ふんわりとした布団。何故、このような所で寝ているのかと考えるも痛む体から現状を思い出すのだった。

 

(そうだ!俺たちは勇者一行に敗北し、異世界へのゲートを開いた…だが、何故かは知らんが俺たちは人間となり、魔力が使えなくなった…どうにか使おうとしたが、睡魔に負け眠りこけてしまったのか…人間の体とはなんて脆弱な…だが、何故野外で寝ていた俺たちが室内に?)

 

全てを思い出し、なお疑問が残るが魔王は、隣で未だに眠りについているアルシエルに目がいった。

銀髪で長身体躯のアルシエル。悪魔の姿にあった蟲を思わせる節くれ立った禍々しい尻尾も、鎧を思わせるような皮膚も長い耳も、今ではその面影すら見えていなかった。いや、その髪の色と長身な体型だけは、元のアルシエルの面影があった。

 

『アルシエル!起きろ、アルシエル!』

『う…ん……魔王、さま?……はっ!私としたことが、警戒を怠り眠ってしまうなど!申し訳ございません!魔王さま!』

『いや、気にするな。俺もお前と同じで眠りこけてしまった。お前だけの責任ではない』

『はっ!して、ここは一体?』

『わからん。俺も目を覚ましたばかりだ。異世界に来ている以上、勇者一行に拉致された可能性は低いが…』

 

目を覚ましたアルシエルと共に、現状について話し合う魔王。

立ち上がり、自身の体に何かされたいないか探る一方、寝かされていた布団の隣に、己らが纏っていたマントを見つけ、再び羽織るのだった。

 

『アルシエル、お前は今後どうすればいいと思う?』

『まずは情報収集を行うべきです、魔王さま。今現在、私たちの現状を把握できない限り、今後に支障をきたすでしょう』

『そうか…ならば、一度この部屋を出て、情報を集めるとするか』

『はっ!魔王さま!』

 

一度、自身たちが寝かされた部屋を離れ、ここがどこなのか?何者が自身たちをここまで運んだのかを探るため、部屋を離れようとする二人。

だが、その二人の行動は直ぐに止められてしまう。

---とたとたとた

部屋の襖に手をかけ、いざ外へ!と思った瞬間、何やら床を走る音が聞こえる。しかも、その音はこちらに近づいてきているように聞こえる。

いきなりの非常事態に、魔王とアルシエルはパニックになるのだった。

 

『あ、あ、アルシエル!どうする!?このままでは俺たちが目を覚ましたことがバレてしまうぞ!』

『ま、魔王さま!ここは、早急に寝たふりをしやり過ごすべきです!さ、さぁ早く!』

『お、おう!』

 

パニックになりながらも、現在での最善の手を考え、主に伝えるアルシエル。

二人は直ぐさま行動に移し、自身が横たわっていた布団に潜り込む。だが、その際にミスをおかしてしまっていた。

---スススッ

先程から聞こえていた足音は止み、何かが擦れる音と共に人が入ってくる気配を感じる二人。冷静に寝たふりをしているが、内心ではバレてないか冷や汗を流していた。

部屋に入ってきた者は、違和感を覚え顔をかしげた。

 

「あれ?私、ちゃんと着てたマントっぽいの畳んだわよね?」

(し、しまった!マントを着たまま先ほどの体勢に戻ってしまった!)

 

そう、畳まれていたマントを脱ぎ忘れ、着たままの状態で布団に潜り込んでしまったのだ。

だが、ミスはそれだけではなく、もう一つあった。

 

「それに…ちゃんと別々の布団に寝かせたわよね?なんで、一緒の布団に入ってるのかしら?」

(『ま、魔王さま!何故、私の布に潜り込んでしまったのですか!?』)

(『す、すまん…焦って、失敗してしまった…』)

 

もう一つのミス、それは魔王がアルシエルの布団に潜り込んでしまったことだった。

声からして人間の少女。起きていることがバレてしまっては面倒なことになるのは必須。アルシエルは、布団の中でなんとかできないか、策を考える。

本来なら、二人別々で寝ていた筈なのに、突然一緒の布団で眠っている。入ってきた者は、多大な違和感を覚え、本来なら怪しむのだろう。だが…

 

「ん~………あっ、そう!きっと寝ぼけて一緒の布団に入っちゃったのよ!きっとその時に、マントっぽいのも着ちゃったんだわ!」

 

この少女は違った。

閃いた!と言わんばかりの表情で、そう完結させたのだった。

その独り言を聞いていた二人は心の中で、「それはないだろ」とツッコミを入れているのであった。

疑問も解消し、スッキリしたと言った雰囲気で去っていこうとする気配を感じる。

このまま行けばやり過ごせる。そう思う二人であった。だが…

---グゥ~~~

魔王の腹の音が鳴ってしまったのだった。

本来なら、魔族は食事を必要としない。つまりは、空腹がないのだが、いきなり人間となった二人にとって、突然腹が鳴る音を聞くのは初めてであった。

いきなり本来なるはずのない自身の腹が鳴る。それも、意識をなくし連れてこられてしまった場所で。そこから考えられる答えは一つだった。

 

『貴様ぁ!魔王さまに何をしたぁ!!』

「きゃっ!?え、あ、起きてたの?って、あわわわわ!日本語じゃない!外国語だわ!どどど、どうしよう!?」

『答えろ!私が眠ってしまっている間に、魔王さまのお体にどんな薬を飲ませたのだ!』

「あわわわわわ!何かわからないけど、怒ってるわ!!」

『何かわからないだと?貴様、ふざけるのも大概に…』

『待て。アルシエル』

『魔王さま!何故、止めるのです!』

『冷静になれ。言葉が通じていないぞ』

 

本来なら存在しない現象に、アルシエルは自身の主が何らかの薬を使われ、そう変えられてしまったのだと判断し激怒するのであった。

だが、言語が通じていないせいで、少女に意思を疎通できていないのだった。いや、表情と希薄から激怒しているということは伝わっただろう。

そんなアルシエルを魔王は冷静になるようにと告げる。

 

『何をおっしゃいますか!魔力を持つ魔族の言語がわからないなど…』

『今の俺たちは魔族ではない。不本意であるが、人間となっている。それも、魔力は虚弱になってな』

『はっ!そうか…今の私たちは、魔力が使えないほど虚弱に…』

『言うな。アルシエル…』

 

現在の状況、魔族から人間となり、矮小といえる程度の魔力しか持っていない自分たちはどれほど惨めなものだろうか?

先ほどまで激怒していたアルシエルも、冷静に状況を見ていた魔王もお互いに項垂れてしまった。

そんな光景を少女は見ていた。

起きていたかと思えば、いきなり怒りを向けられ、何かを話していたかと思えば、項垂れてしまう。

そんな様子を見て、なんとかしようと少女は行動に出る。

 

「ご飯食べましょう?お腹すいてるみたいだし。えっと、ぷりーず・いーと・かつどん?」

『『……カツドゥーン?』』

 

空腹を感じているなら満たせばいい。

そう考えた少女は、持ってきていた昨夜の晩御飯の残りであったカツ丼をさしだすのだった。

 

 

 

* * *

 

 

 

始めは単なる好奇心だった。

差し出された食べ物。その名は、カツドゥーン。

謎の力強い響きに興味を抱き、感じる美味なる匂いに涎を我慢しながらも食さず警戒していた魔王とアルシエル。その際、ずっと少女は笑顔だった。

邪気なき純粋な笑顔を向けられ続け、ついに二人は善意で渡されたものではないか?と考え、カツドゥーンを口にするのだった。口にした際に感じるのは、今までに感じたことのない旨み。その旨みに、二人は夢中になり、カツドゥーンを完食するのだった。

カツドゥーンを完食した魔王は、いち早くここの情報を得るために催眠魔術で少女から情報を聞き出そうと考えた。けれど、先程から浮かべられている満面の笑みに毒気を抜かれ行動できずにいたのだった。

そして、少女も言語が通じないため何もできずにいた。

まず、行動を移したのは魔王だった。

 

「俺タチ、外ニイタ。何故、室内ニ?」

「えっ、日本語?えっと、あなたたちが多馬大橋で寝むってたの。それを、私がたまたま見つけて、ここに連れてきたんだけど…」

 

魔力を持つ魔族は言語が通じづとも意思疎通ができる。それには、相手の言葉がわかるというのと同意でもある。

魔王は少し聞いた日本語を、それで理解し、拙いがこうやって話すことだできた。

ちなみに、それが出来ずにいるアルシエルはただ黙って聞くだけだった。

 

「何故、俺タチ。連レテキタ?」

「だって、外で眠ってたら風邪ひくもの。それに、怪我してるようだったし、手当もしなくちゃ」

 

怪我の手当。

その言葉を聞き、自身の怪我の治療が行われていたのを今気づく二人だった。

 

「ソウ、アリガトウ。ダケド俺タチ、スルコトアル」

「そうだったの!?じゃあ、玄関まで案内するわ」

 

魔王たちが食べた食器を持ち、立ち上がる少女。

魔王とアルシエルは、その少女の後ろをついていった。

しばらく歩き、扉をくぐると大きな門についた。

 

「あっ、靴なかったからこれ使って」

 

そう言って渡して来たサンダルを受け取る二人。

だが、二人の本来の姿は人のものでなかった。つまりは、履物を履いたことがなかったのだった。渡されたサンダルの使い方も知らないふたりは、手にはめてみたり、頭に乗せてみたりと珍プレーを行ってしまっていた。

そんな二人を見て、少女は笑い、二人に履き方を教えていた。

 

「それじゃあ、元気でね。あ、困ったことがあったら近くの交番に行くといいわ!きっと力になってくれるわ」

「ワカッタ。困ッタラ、交番トヤラニ行ク」

「あっ!!すっかり忘れてたわ。私ね、川神一子(かわかみかずこ)って言うの!あなたたちは?」

 

突然の自己紹介。

川神一子と名乗った少女に、魔王たちはあることで困ってしまっていた。

 

(『どうします、魔王さま?さすがに本名を名乗れば、何時こちらに来るかもしれないエンテ・イスラの者に気づかれますよ!』)

(『だ、だが、魔王たるもの。名乗りを無視する訳にも行かんだろう!こう、威厳的な意味で!』)

(『で、ではなんと名乗るのですか!?』)

 

どうにかこの窮地を脱出せねば!

そう考える、魔王は頭を捻りなんとか偽名を考えようとする。そして、思いついた名を告げた。

 

「俺、マオウ。真央貞夫(まおうさだお)。こっち、アシヤ。芦屋四郎(あしやしろう)

「真央さんに芦屋さんね。それじゃあ、また会いましょう」

 

そういい、にこやかに手を振る川神一子。

そんな少女に見送られながらも、二人はその場を後にするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『魔王さま…その、真央貞夫と芦屋四郎という名前より良い名前はなかったのでしょうか?』

『し、仕方ないだろう。とっさに名乗っちまったんだから』

 

なんて一幕があったりなかったり。

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