まぶたを開くと そこに貴女が……   作:白犬

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本作は、先日アニメ「フレームアームズ・ガール」を見て突発的に書いた短編です。


主人公「源内あお」とFA:G「轟雷」のほんわかした雰囲気とはちょっと違った「キャッキャウフフ」感を楽しんで頂ければと思います。






それではセッション…………轟ッ!!


「幸子さんとお姉さま」 前編

 

 

 ── オペレーションシステム、チェック開始────異常なし、オールグリーン ──

 

 ── 機体各部の駆動系および、各種プログラム────異常なし ──

 

 ── 現在のバッテリー充電率100パーセント ──

 

 ── 全システムの基本チェック終了、パーフェクト ──

 

 

『ファクトリー・アドバンス社製、FAG タイプ001[轟雷]。セットアップ完了、

起動しま……ぶっ!?』

 

 

 期待に胸をふくらませながら、私はゆっくりとまぶたを開きましたが、なぜか目の前は真っ暗で何も見えませんでした。

 

『な、なななんですか、コレ?』

 

 自分の置かれた状況がまったく分からず、遮二無に両手を動かしますが、いまの

私に分かるのは、手に触れた感触から視界を覆っているものが、細い糸のようなもの

だということくらいでした。

 がむしゃらに両手をかき分けるように動かしていると、いきなり視界が開けました。

 

『ぷ、ぷはぁ……ひっ!?』

 

 起動したての私の瞳に映った風景は、二つの血走った大きな目。反射的に目を逸らすと、私はようやく視界を塞いでいた物の正体に気がつきました。

 

『か、髪の毛?』

 

 そう、片手ですくい上げたソレをまじまじと見るまでもなく、私の全身に絡みついて

いたのは、異様に長い黒髪でした。

 

 

 

「……起きた」

 

 

 聞く者のテンションをどん底に突き落とすような、なんとも陰鬱な声が私の耳朶を

うちました。

 また、あの目を見るのはイヤでしたので、ゆっくりと視線を私が横たわっていたテーブルにもどします。

 

 節の目立つ長い指から生えた爪が、半ば食い込むような形でめり込んでいます。

 さらにその先に視線を移すと、次に見えたのは血管の浮き出た枯れ木のように細い腕でした。

 

 

 

 もう、見たくない。

 

 

 

 心ではそう思っても、身体がいう事を聞いてくれません。これが「怖いもの見たさ」

というものなのでしょうか?

 

 なんだか泣きたい気持ちになってきましたが、私のカメラアイ()は、

なおも勝手に追跡捜査を続行しています。

 

『……きれい』

 

 意外なことに、次に私の視界に飛び込んできたのは、真っ白なワンピースでした。

 可憐な少女にこそ似合いそうなシンプルで清楚なデザイン……一瞬、身体に絡みつく

髪の毛の不快さも忘れ見とれてしまいましたが、むき出しになった不健康きわまりない

青白い二の肩をみたとたん、私の意識は現実へと引き戻されました。

 

 

 

 ── 死に装束 ──

 

 

 

 私は反射的に、そんなワードを検索していました。

 

 

 

 

 

 あっ、158000件Hitです!

 

 

 

 

 

 

『それにしてもこの部屋、ずいぶんと暗いですね……』

 

 内臓された時計によると、現在時刻は午後2時を少しまわっているはず。

 

室内が暗い理由はすぐに分かりました。窓は堅く閉ざされ、分厚いカーテンがさらに

その上を覆っていました。

 その上、室内の照明もついていなのでは暗いはずです。

 

 すこし心に余裕の出てきた私は、カメラアイを暗視モードに切り替え辺りを見回し

ました。

 

 6畳一間の部屋は、脱ぎ散らかした服やゴミが入っているらしい袋が散乱して、足の

踏み場もないという有様です。

 

 私が起動したテーブルの上は、かろうじて地肌をさらしていましたが、それも無理矢理スペースを確保したようです。

 テーブルの端のほうに、集団疎開させられた空のコンビニ弁当が押しやられ、うず高く積もっていました。

 

 そして、散乱したゴミの間からは、3億年前の太古からこの地上を闊歩していた

大量の“G”が、触覚をせわしなく揺らしながら、こちらの様子をうかがっています。

 

 

 

 

 先に言っておきますが、私は食べられませんよ。

 

 

 

「……だいじょうぶ?」

『は、はい、申し訳ありませんでした』

 

 わずかに首を傾けながら見下ろす女性に、私は慌てて謝罪しました。

 

『あらためまして自己紹介します。私はファクトリー・アドバンス社製、フレームアームズ・ガール[轟雷]です。えっと、貴女が私を起動された方……ですか?』

 

 わずかな希望を胸に遠慮がちに尋ねてみましたが、無情にも女性はゆっくりと首を

縦にふりました。

 

『ふぅ、そうですか……あ、では貴女のことは何とお呼びすればいいでしょうか?

これといってご希望がなければ「マスター」で……』

「……お姉さま」

『へ?』

「……お姉さまと呼べ」

 

 もはや語尾が命令調になっているあたりで、いっさい変更の余地がないことを私は

機敏に悟りました。

 

『わ、分かりましたお姉さま。これからよろしくお願いいたします』

「……うん」

 

『あの、お姉さま、私のパーソナルネーム(名前)はどうなされますか?』

 

 

 お姉さまは、しばらく腐敗が進んだ魚のような目を中にさ迷わしていましたが、

やがて口を開きました。

 

 

「……幸子」

『へ?』

「……幸子っ!!」

『ス、ステキな名前をありがとうございます、お姉さま!』

 

 お姉さまは、血の気の失せた頬をかすかに赤らめると、口角を耳元まで持ち上げました。

 

 

 

 あ、あの、ソレ、笑ってるんですよね?

 

 

 

 メインフレーム(脊髄)に電流が走り、恐怖にとらわれた私が後ずさりを始めると、

とつぜんお姉さまが両腕をテーブルにつき、髪を振り乱しながら這うようににじり

寄ってきました。

 

 

 その臨場感(迫力)たるや、『貞子3D』など目じゃありません!

 

 

 

 っていうか、マジで恐いですッ!!

 

 

 

 

『ぐぇ!?』

 

 

 逃げるまもなく捕らえられ、骨ばった手が私を握りしめ持ち上げました。

 お姉さまは視線を上げると、今度は触れ合わんばかりに顔を寄せ、舐め回すように

私を眺め始めます。

 

 

 

 ああ、お姉さまの熱い鼻息が、私の柔肌を焦がします。

 

 

 

「……あなた、可愛いわね」

 

 だんだん息が荒くなってきたお姉さまは、興味深げに私の頬を指先でつつきはじめました。

 

 

 

 ああ、お姉さまの爪、なぜ先がそんなに尖っているんですか?

 

 

 

 指でつつくだけでは飽き足らないのか、お姉さまは私の頬に自分の頬を何度も何度も

擦りつけてきました。

 その度に、私とお姉さまの頬の間から「ジョリッ! ジョリッ!」と耳障りな音が

響いてきます。

 

 

『あ、あのお姉さま、もう少しお肌のお手入れ(ケア)をなさったほうが……』

 

 

 まるで、180番のペーパー(紙やすり)で擦られているような不快感。

 

 

 

 

 いけません、このままでは顔のラインが変わってしまうのも時間の問題です!

 

 

 

 

『お、お姉さま、お願いがあります!』

 

 

 

 

 握りしめていた拳からフッと力が抜け、お姉さまの血走った目が私の指さす方に

向けられました。

 

 

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