近日編集予定の次回と今回のどちらを先に公開するかでかなり悩みましたが、こちらを先にしました。理由としては書いてて辛いものは先に片付けてしまいたかったからですね
因みに途中で出てくる『エデン・トラゲオル』は今回だけのゲストキャラです
「おお!さすがハウンドキャット!噂以上の活躍だぜ」
アニスに買い出しを頼まれオイラックス村。こっちでも悪党を懲らしめることになるなんて思いもしなかった
らぶしぃこと奥知美麻の推測によると、この前私達が討伐したゼストアーク団は村を裏で仕切っていて、ある意味で抑止力になっていた。その箍が外れたから小悪党が増えたのではないか、とのことだ
なるほどと思う反面それだけなのかなぁと思うのも事実なわけで。例えば私達がアダラートの森に行ったから監視の目がなくなったとか。
「ねーカンナ、今日多くない?」
隣で氷結しまくってるらぶしぃが言う
「そういやザコ増量キャンペーンとかホームページに載ってたような」
ぶん殴りながら私も返す。あ、こいつ首折れたな
「お前ら、ペース落としてくれてもいいんだぜ?」
時間を止めて確実に縛り上げる阿修羅
何も知らない人が見たら相当な地獄絵図だよね、これ
……ペース落とせ、ね。無理だよ
ゲーム上の日付で今日、5月3日はアニスの誕生日。4人で祝うって決めてんだ。なんとか時間までに片付けないと
そのとき、ボコンという音が遠くから聞こえた。方角でいえば村から南西に位置するアダラートの森
アダラートの森!?
「らぶしぃ、阿修羅!」
森へは消防団が既に駆け付けつつある。悪党共は近くにいた警察に任せて私達もそれに続く。馬での移動にも慣れたものだ
道中、森がチラチラ視界に入る。やっぱり燃えてやがる
「君たちどこへ行くんだ!?」
「アダラートの森です!アンタたちも一緒でしょ?」
それを聞くと血相を変えた
「駄目だ!君達に何が出来る!?見た所、まだ未成年だろう!」
「トシでモノを語んな!俺達の服を見ろ!俺達はハウンドキャットのエージェントだ!」
特殊部隊「ハウンドキャット」
その存在意義は平和を守ること。森を守るということはつまり平和を守ることに繋がる
「森にはアニスが、『森の精霊』が取り残されてる筈なんです。アニスを助けさせてください」
「……分かった。死ぬなよ」
大袈裟に言うとハウンドキャットの行動を否定することは、平和への妨げになる。だから消防団は私たちの意思を尊重せざるを得ない。ざまみろ
森へ着く頃には山火事に拍車がかかったような感じで森全体が炎に覆われていた
「俺達は消火活動に専念する。エージェント諸君は……って、あれ?」
二人とも早いな。弱めとはいえグロウ・ブーストかけてるのに、それに追いつけるんだもん。それだけアニスのことが心配なんだね
そしてロッジ。既に燃え尽き、中に誰もいなかった。無論、アニスの痕跡もどこにもない
「アニスどこ……?」
「何はなくとも鎮火しようぜ」
「うん。らぶしぃは湖凍らせて。で、阿修羅はその氷の時間を止めてちょうだい」
「おめーは何すんだ?」
「その状態で弱めブースト・カノンを連打する。そうすれば氷が爆発、熱で氷が溶けて簡易的な冷水シャワーができるはず」
「カンナはこういう時のカンの鋭さは恐ろしいね。敵に回したくないや」
褒め言葉として受け取っておこう。結果的に作戦は大成功で、およそ半分は鎮火できた。残り半分は消防団の手柄。さすがだね
気になるのはアニスのこと。どれだけ森の中を捜しても見つからない
早めに避難……したんだよね……?
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数日後、ゲーム内で新聞が号外として配られた
『森の精霊、アニス・リアルローズは炎を操れる。そしてその炎でアダラートの森を燃やし尽くした』
そして明日、アニスは極刑に処されると書かれていた
そんなはずがない!森を愛し、共に過ごした彼女がそんなことする筈がない!
情報の出処を突き止め、なんとかアニスが捕えられている独房へと辿り着き、面会へと漕ぎ着けた。たった数日とはいえ酷い拷問を受けていたようで、身体中に痣や蚯蚓脹れができ、あの美しかったローブも埃まみれになっていた
「ごめんなさい、カンナ。出来ることなら貴女達を巻き込みたくなかった」
そういう彼女は、不謹慎極まりないけど、普段より数倍美しく見えた
「何があったの?」
「分からないわ。気付いたら森が燃えていて、捕えられていたの。でも、私じゃない。それだけは自信を持って言えるわ」
「それはなぜ?」
「"操炎"を発動すると、右手の甲に少なくとも一週間消えない火のような模様が浮かび上がるの。でも今の私にそれはない。ほら!」
病的に痩せこけたその手には、"操炎"の刻印はなかった。しかし。
「おエライさんがそれを信じるかどうかは別……ってわけか」
「ええ、そうよ。だから疑われても仕方ないわね。『炎を操るアビリティ』なんて存在しないのだから」
そんな会話をしていると、私達と同じ黒スーツの男が、ハウンドキャットのエージェントらしき男性が現れた
「突然の訪問失礼。諸君をハウンドキャット新人エージェントとお見受け致します」
「そうですけど、あなたは?」
「ハウンドキャット幹部、エデン・トラゲオルと申します。簡単に言えば貴女方の上司ですね」
「そんな人が、何故ここに?」
らぶしぃの疑問は私もすぐ感じたことだ
「率直に申し上げます。カンナ、貴女にアニスフレア・スタリアムの斬首をお願いしたい」
は?
は?
「断っても構いません。代わりはいくらでもいます。ただし、その場合は貴女にはハウンドキャットを降りてもらいます」
「…………やります」
『カンナ!?』
こうなることは全然予想できてなかった
でも、ここでハウンドキャットを辞めることになったら椎那は絶対帰ってこない気がする
それに、見ず知らずの人に処刑されるくらいなら、見知った人に……いや、冷静に考えたらそれも酷な話だね
でも、私の決意は固い。私がやらないと駄目なんだから
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「これより、『森の精霊』アニス・リアルローズ……いや、"半幻獣"アニスフレア・スタリアムの処刑を開始する!」
司祭だろうか、髭面のジジイが高らかに宣言する。気色悪い
私とアニスは少し奥まった位置に控えている。最大限の配慮を頂いてほんの少し談話する時間をもらった
「カンナ、私と出会ってくれてありがとう」
「それはこっちのセリフだよアニス。貴女と過ごせた時間は私達にとって宝物だから」
「そう言って貰えると嬉しいわ。本当にありがとう」
「……これなんて無限ループ?」
「ふふ、確かに。……あ、そうだ」
「なに、アニス?」
いきなり私にベーゼを。ほっぺだからのーかん!ってオイオイいやいや何してんの!?
「貴女に"操炎"の力を引き継がせたわ。この件のほとぼりが冷めてから使ってね」
「えっ」
「使う時は簡単。その手に炎を纏うイメージをすれば使えるわ」
「待って、アニス」
「被処刑人アニスフレア・スタリアム!並びに処刑人『ハウンドキャット』エージェント、カンナ!入場せよ!」
「行きましょう、カンナ」
アニスには聞きたいことが沢山あるのに
「この剣は選ばれし者にしか扱えぬ、邪悪なる者のみ斬ることが出来る神聖なものだ」
ご丁寧に絹の布で包まれた剣を鞘から抜く。なんだこれ、軽い。神聖なんて嘘っぱちだ。こんな剣で、私が、アニスを?
ふと見ると処刑台の麓には許可を得て来ている見物者と野次馬が沢山。阿修羅はいるけどらぶしぃはいない。そりゃそうだ、特に私とらぶしぃは親しく接してきたから、そんな人が死ぬところは見たくないだろう。できることなら私だってアニスの身の潔白を証明して処刑なんかしたくない
でも、できないのが現実なんだ
やらなきゃいけないんだ
軽くて扱いやすいはずの剣が震える
「ではカンナよ。卑しき者の首を撥ねるのだ」
嫌だ嫌だ嫌だ
「カンナ」
アニスが語りかける
「今まで楽しかったわ」
やめて
「さよなら」
ごめんなさい、アニス。貴女を愛してしまった私を許して
「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」
脳裏に浮かぶ、アニスの笑顔
私と、らぶしぃと、阿修羅と、アニス
もっと、もっともっと、一緒に過ごしたかった。
さよなら、アニス
バースデーパーティ、やりたかったなあ
ドサッって音。私の眼前には白くて長い髪の毛がついたサムシングと、首から上がない体。私の手には赤いモノが付いたナニカ。耳を劈く歓声と拍手
ああ、私はアニスを殺してしまったのか
脱力感と激しい動悸が私を襲い、意識を失った
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「神菜!大丈夫!?」
「……美麻?」
「うん!美麻だよ!良かった、上月呼んでくる!」
よく見ると、ここはどうやら私の部屋で、ベッドに寝かされているようだ
……よく現実世界に戻ってこれたな
俊一の話によると、ハウンドキャットの私は斬首のあとフラフラと控え室に戻り、ソファで眠りについた。そこで自動セーブとなり現実へ戻ってきたとのこと。
つまり、次回起動時はアニスがいない世界で、アニスが持ってた幻獣の力を引き継いでプレイすることになる
ゲーム的には進歩したのだけれど、なんかもやもやする
この蟠りを胸に、翌日私はハウンドキャットを起動するのだった
To be continued...
【こぼれ話】
ぶっちゃけアニスというキャラが出来上がった時からアニスは殺す予定でした。初期段階では自殺だったのに、どうしてこうなった