Angel Beats!~ちょ、俺まだ死んでないんだけどオオオオオオオオ!!~   作:日暮れ

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EPISODE.3 My Song
第五訓


―――えー突然入ってきたら何コレ?

 

 

ゆり「……なぜ新曲がバラード?」

 

 その前になぜ校長室で一曲きめこんでるの?

 

岩沢「いけない?」

 

ゆり「陽動にはね」

 

「陽動って……あぁ、トルネードのときの。てめーが弾いてたのか」

 

ゆり「えぇ。彼女は校内でロックバンドを組んでいて、一般生徒の人気を勝ち得ている。私たちは彼らに直接危害は加えないけど、時には利用したり、妨げになるときはその場から排除しなくてはならない。そういう時、彼女たちが陽動するの。」

 

「NPCのくせにウチのアイドルヲタクのような奴らだな」

 

日向「アンタの家庭の事情とかは知らんが……つまり、彼女たちのバンドにはそれだけの実力と魅力があるってことだ」

 

「へえー。今度オペレーションサボって聴きにいっていい?」

 

ゆり「殺すわよ?」

 

「すみません機会があれば聴きにいってよろしいでしょうか?」

 

岩沢「ふふっ……いいよ。いつでも来な。……で? ダメなの?」

 

ゆり「うーん。バラードはちょっとね……。しんみり聞き入っちゃったら、私たちが派手に立振舞えないじゃない」

 

岩沢「そ。じゃ没ね」

 

「うわヒドーイ。一生懸命書いた曲をそんなバッサリー」

 

一同「そうだそうだー」

 

ゆり「っ別に曲自体を否定しようとかそんなんじゃないわ! ただ作戦に不向きってだけよ! ってかアンタたち、先生が来てキャラ変わってない!?」

 

野田「貴様ら、ゆりっぺに歯向かうか!?」

 

ゆり「あーあなたはいいから。……さて、気を取り直して」

 

 仲村がひとつ咳払いをする。

 

ゆり「総員に通達する。銀時先生」

 

「あ? 何だよ」

 

ゆり「カーテン閉めろこの愚図が」

 

「先生を顎で使うなってか何かギルドのときから俺の扱い酷くない!?」

 

 渋々カーテンを閉める。何だよ! 俺が何したってんだ!

 

ゆり「今回のオペレーションは『天使エリア侵入作戦』のリベンジを行う。決行は3日後」

 

日向・大山「おおー!!」

 

「は? 天使エリア!?」

 

高松「その作戦ですか。ですが前回は…」

 

「ち、ちょっと待て! 天使エリアって何」

 

ゆり「今回は、彼が作戦に同行する」

 

 シカトすんなヨォォォォォォォォォ!!

 

「よろしく」

 

 あ? 誰だこのガキ。

 

大山「椅子の後ろから!?」

 

高松「メガネ被り…」

 

野田「ゆりっぺ、何の冗談だ」

 

藤巻「そんなのが使い物になるのかよ」

 

ゆり「まあまあ、そう言わないでくれる?」

 

野田「はッ!! なら、試してやろう!!」

 

「そんなんだから友達できないんだよ気付けよいい加減」

 

竹山「ふっ……3.1415926535897932384626433832795028841971693993751058209――」

 

野田「うぐっ!! やめろおおおお!!! やめてくれえええええ!!! ああああ!!!」

 

松下「まさか、円周率だとォ!?」

 

高松「メガネ被り」

 

大山「やめてあげて!! その人はアホなんだ!!」

 

ゆり「そう、私たちの弱点は――」

 

「うぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!! 殺せ!! いっそ殺してくれェェェェェェェエェェェェェェ!!」

 

ゆり「ってなんであなたまで苦しんでるのよ!?」

 

 

ゆり「……私たちの弱点は、アホなこと!!」

 

「リーダーが一番アhすいませんなんでもないです」

 

ゆり「前回の侵入作戦では我々の頭脳の至らなさを露見させてしまった。しかし!! 今回は天才ハッカーの名をほしいままにした彼! ハンドルネーム竹山くんを作戦チームに登用。エリアの調査を綿密に行う!」

 

高松「今のは本名なのでは?」

 

竹山「ボクのことは……クライストとお呼びください」

 

「うわまた出たよどんどん出るな中二」

 

竹山「……3.14159265358979323846264338327950288419716――」

 

「へっ! そう何度もウギグァァァァァァァァァァァァァ!!」

 

野田「あがあがががあああああああああああああ!! あひ、うヒヒヒヒヒヒあひ……」

 

ゆり「ちょっと竹山くん! 軽く精神崩壊しかけてるじゃない! やめなさい白いほうはもっとやっていいから!」

 

「お前どんだけ俺のこと嫌い!?」

 

ゆり「え!? べ、別に嫌いというワケでは……その……」

 

 何でそこで顔赤くすんだよ話しにならなくなるだろうが!

 

ゆり「と、とにかく!! 天使エリアに入るには高度なハッキング技術が必要なの。そこで竹山くんの出番ってわけ」

 

竹山「ボクのことはクライストと」

 

「なぁ、天使エリアってどんなトコだ?」

 

竹山「…………」

 

日向「天使の住処で、中枢はコンピューターで制御されてるんだよ!」

 

ゆり「そのどこかに神に通じる手段があるの」

 

「ホントかよ……」

 

大山「こいつはとんでもない作戦だ!」

 

ゆり「2度目と言うこともある。天使も前以上に警戒しているはずよ。ガルデモにはいっちょ派手にやってもらわないとね!」

 

岩沢「了解」

 

TK「get chance and look!」

 

★―学習棟B棟 掲示板―

 

「よいしょ、よいしょ……」

 

「おい何してんの? 無許可で宣伝活動は校則違反だぞ」

 

「ふぇっ! す、すみませ――ってあ、あなたでしたか」

 

「んあ? 俺のこと知ってんの?」

 

「はい! いつもでかい斧持って歩いてる先輩が、『ヤツは災悪をもたらすから注意しろー』とか何とか言ってましたー!」

 

 あの野郎今度消す。

 

「おいコレ、体育館占拠って書いてあるけど許可とか取ってんだろうな?」

 

「とってるわけないじゃないですか! やばいです、前代未聞ですよ!! しかもゲリラライブじゃなく告知ライブですしね。先生たちもほおっておかないし、どんな邪魔が入るかわからないですよー!」

 

「オイ、俺一応先生だけど?」

 

「でも、今回の作戦はそうしてでも人を集める必要があると聞きました……」

 

 おい俺の話は無視か!?

 

 俺は手渡されたチラシを見てみる。Girls Dead Monsterね……

 

「ところで、お前ダレ?」

 

「同じ戦線の仲間なのに名前覚えてなくてナチュラルに名前聞ける非常識さも聞いたとおりです!」

 

「いい加減殴るぞコラ」

 

ユイ「ひっ……ユ、ユイです!」

 

「よろしい」

 

ユイ「ありがとうございます! まだ陽動班の下っ端ですが……あでも! それでも満足です! ガルデモのお手伝いですよ!? 知ってますか? ガールズデットモンスター、略してガルデモは!」

 

ユイ「女の子だけであの演奏力、そして何といってもボーカルアンドギターの岩沢さんの存在感!!」

 

 さーってと、飲みもんでも買ってくるか……

 

ユイ「作詞作曲までしてしまうんです!! 私のお気に入りはcrow song! サビの転調がですね、思い切りがよくていいんですよ! 歌詞もですね、まさに岩沢さんのことを

 

★―自動販売機前―

 

 えーっと、イチゴ牛乳イチゴ牛乳……っと

 

「……?」

 

 不意に歌声が耳に届いてくる。何だよ、噂のガルデモか?

 

 俺は音のなる方へと脚を運ぶ。

 

★―学習棟A棟 空き教室―

 

 へぇ……うまいもんだな。

 

ひさ子「……おっと」

 

 何だ、弦でも切れたか?

 

ひさ子「悪い、すぐ張りなおす」

 

岩沢「オッケー、んじゃ休憩……ん」

 

「ういっす」

 

入江「あ、あなたは噂の」

 

関根「非常識って有名な先生だー!」

 

「あーもういいからそういうの。あ、ちなみに岩沢以外の三人とここにいない遊佐ってヤツは紹介する機会ないから名前先にふっとくぞ」

 

ひさ子「なんかよくわからんがグサッとくるな今の言葉」

 

「それより、ライヴの準備もいいがしっかり授業も出ろよ」

 

入江「え!? あ、あなた戦線のメンバーじゃ……」

 

「まぁ違いねぇが、その前に俺は先生だからな」

 

ひさ子「ははっ何だよソレ……岩沢! お前の言ってたとおりだ、おもしろいなコイツ」

 

 おい俺先生って言ったよね? コイツってなんだコイツって。

 

岩沢「……で? なんか用かい?」

 

「別にそんなんじゃねーよ。さっき言ったろ。機会があったら聴かせてくれって」

 

岩沢「あぁ、あれ。生憎と今は休憩中だよ」

 

「そうかい、じゃあまた今度だな」

 

岩沢「あ、ちょっと待った」

 

 ん? 何だ?

 

岩沢「あんたとは一度二人で話したかったんだ。少し外出てもいい?」

 

ひさ子「さっさと戻ってこいよ」

 

関根「右に同じー!」

 

入江「あ、わ、私も……」

 

 おい俺の意見は無視かよ……何でこの世界のヤツは人の話を聞かないヤツばかりなんだ?

 

★―空き教室前廊下―

 

「………………」

 

岩沢「………………」

 

 ………………え何!? 俺から振らないといけないの!?

 

「あー……すげえな。ガールズデットモンスター、だっけか? 一般生徒がハマるわけだ」

 

岩沢「ありがと」

 

「……………………」

 

岩沢「……………………」 

 

 …………えー話題終わらすなよ何なんだよお前よぉ!!

 

岩沢「あんた」

 

「あ?」

 

岩沢「記憶が、ないんだっけね」

 

 ………………

 

「生前の記憶は全部覚えてる。死んだときの記憶がどうも思い出せないんだ」

 

 正直俺死んでないんじゃないのか? みたいな受け止め方だしな。

 

岩沢「そりゃ幸せだ」

 

「そうでもないさ」

 

岩沢「……?」

 

「俺の一生なんて、ずっと泥まみれだったよ。これから何が起こっても後悔なんて出来なくなるくらいにな」

 

岩沢「……誰かの記憶、聞いた?」

 

「……あぁ。仲村のを、少々な」

 

岩沢「仲村って……あぁ、ゆりのか。あれは最悪ね。あたしのはそんなに酷くない」

 

「何だよそこまでって。誰かに暗殺でもされたのか?」

 

岩沢「ははっ何その発想……たいしたもんじゃないよ」

 

岩沢「好きな歌が歌えなかった。それだけ」

 

 

「両親は、いつも喧嘩ばかりしていた」

 

「自分の部屋もなく、その怒鳴り声の中隅で小さく丸まって、耳を塞いだ」

 

「自分の殻に閉じこもるしかなかった。どこにも、休まる場所はなかった」

 

「そんな時出会ったのが、SAD MACHINEというバンド」

 

「そのボーカルも私と同じ、恵まれない家庭環境にいて、精神的につらい時期は耳をイヤホンで蓋して、音楽の世界に逃げ込んだと聞いた」

 

「私もそうしてみた」

 

「全てが吹き飛んでいくようだった……。ボーカルが私の代わりに叫んでくれる、訴えてくれる! 常識ぶってるヤツこそが間違っていて、泣いているヤツこそが正しいんだと。孤独な私たちこそが、人間らしいんだと。理不尽を叫んで、叩きつけて、破壊してくれた!」

 

「私を、救い出してくれた」

 

コイツ(このギター)と出会ったのは、雨のゴミ捨て場」

 

「私は、歌い始めた」

 

「何もないと思ってた私の人生にも、歌があったんだ……」

 

《本気かい? 君の成績ならどこにだって……》

 

『もう、両親には頼りたくないので』

 

「バイトをして、お金を貯め、レコード会社のオーディションを受け続ける日々」

 

「卒業と同時に、私は絶対にあの家を出て、上京して、そして――音楽で、生きていくんだ」

 

「そう思った」

 

『ア、レ……? 疲れ、てるのかな……』

 

『こんなんじゃギター弾けない……今夜の路上は中止して、休も――か――』

 

「――次に目覚めたとき、私は言葉を話せなかった」

 

「頭部打撲、脳梗塞による失語症……」

 

「原因は、両親の喧嘩を止めようとしたときのとばっちりだった」

 

「運命を呪った」

 

「何処にも逃げ出せなかった」

 

「そのまま、私の人生は、ここで、終わった――」

 

 

ひさ子「岩沢ー? おせぇよ早くしろ!」

 

岩沢「あぁひさ子! オーケー」

 

ひさ子「待ちくたびれてるよ」

 

「おい」

 

岩沢「……何?」

 

「お前が倒れたとき――親は、泣いてくれたか?」

 

岩沢「…………泣いてくれた、と思う」

 

「そうかい。よかったな」

 

岩沢「……? 良いことなんて一つもないさ。私はアイツらのせいで」

 

「なんで止めに行ったんだ? 喧嘩」

 

岩沢「…………」

 

「親に喧嘩してほしくなかったからだろう?」

 

岩沢「………………」

 

「お前の失った声を代償としてそいつらが得たものは、多分無茶苦茶大きいものだと思うぞ」

 

「お前の人生は、無駄なんかじゃねぇよ。ま、お前にとっちゃなんの救いにもならねぇだろうけどな」

 

岩沢「……変なヤツだね、アンタ」

 

「よく言われる」

 

岩沢「ははっ……今から練習再開するけど、聴いてくかい?」

 

「あぁ、そうさせてもらうわ。どうせ暇だしな」

 

岩沢「アンタ教師じゃなかったっけ?」

 

「しっかり仕事やってると消えちまうんだろ?」

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