Angel Beats!~ちょ、俺まだ死んでないんだけどオオオオオオオオ!!~   作:日暮れ

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休み明け一発目!

正直夏休み気分抜けないけどがんばります!!


第十四訓

★―学園大食堂 3F 裏―

 

 大きな音が鳴り響く。

 

 拳が何かにぶつかり、その何かが砕ける音。何度も、何度も。

 

 生徒は泣いていた。血の涙を流していた。何度も謝った。すみません。次こそは、と。

 

 それでも音は止まない。その代わりと言わんばかりに生徒の隣にいる人影は笑う。

 

 何度も何度も殴りつけ、何度も何度も虐げることに(よろこび)を感じながら――()()は傲慢に満ちた笑みを浮かべていた。

 

 ――大きな音が鳴り響く。

 

 ゆっくりと閉じる扉の音と、傍に立っていた紫の髪の少女にも気付けなくなるほどに。

 

★―学習棟A棟 廊下―

 

「……と、これからどーすっかな……」

 

 直井文人から逃げ果せた俺は、しばらく同じような所をふらふらとしていた。

 

 逃げてきたから教室に戻るわけにもいかねぇしかと言って職員室にいたらほかの教師どもに何言われるかわかったもんじゃねぇ。

 

 食堂に行ってメシでも食うかな……

 

「待って」

 

 授業中で誰もいない廊下に声が響く。ピアノのような、奏でるような声。

 

 その声のした方向に目を向けると、そこには複雑な表情の立華がいた。

 

「……テメー何してんだ? 授業中だぞ? 速やかに教室に戻りなさーい」

 

立華「あなたを探しにきたの。授業に戻って」

 

 立華はそう言った。

 

 校内では成績最下位のアホと言われて、挙句生徒会長の座を降ろされた。なのに立華はそう言った。生徒会長の時の癖なんかじゃなく、コイツがそうしたいから。

 

「ったく……お前はもう生徒会長じゃねーんだろ? そんなこと言われる義理なんかねーよ」

 

 立華は少しうつむき、眉間にしわを寄せる。だがしかしすぐに顔をあげまっすぐに俺の目を見て口を動かした。

 

立華「……だけど、あなたが言ったことよ? ……『どっちかが折れるまで、自分の正義貫くしかない』って」

 

立華「だから、私は私の正義を貫

 

 グゥウゥウゥーーー――――

 

立華「ふぁ………………っ……」

 

「……………………」

 

 …………えー……? ナニ今の音……

 

 立華の頬がほのかに紅く染まる。

 

「……何? ひょっとしてお前ハラ減ってんの?」

 

立華「減ってないっ…………」

 

 立華は少し怒ったように俺を見てそう言った。

 

 まー……かっこよくキメようとした途端腹が鳴りゃあ不機嫌にもなるか……ってかどんなタイミングで腹鳴るんだよすげぇな。

 

「ちっ……立華。丁度俺もメシ食いに行くとこだ一緒に来るか? 今日だけ奢るぞ」

 

立華「そんなのいい……それより、早く授業に」

 

「麻婆豆腐」

 

立華「何してるの? 食堂行くんでしょ?」

 

 早っ! 早いよ刹那で正義曲げんな麻婆豆腐そこまでか!?

 

★―学園大食堂 内―

 

「……いつ見ても禍々しいな」

 

 俺は立華の目の前に置かれた麻婆豆腐に若干恐怖を覚える。もうトラウマだこの赤いの。

 

立華「あなたの程じゃないと思うけど……」

 

 立華は俺の目の前に置かれたカツ丼ver宇治銀時を見てそう言った。

 

「うっせーよ。それよかお前それ食って平気なの? 俺は三途の川バタフライしてきたんだが」

 

立華「そんなことない……ただ、」

 

 立華はそこで一端言葉を区切り、皿から麻婆豆腐を一口食べてからしみじみと感じるようにこう言いはなった。

 

立華「……うまいわ」

 

 ……どうやらこいつの性格が変なのはこの麻婆豆腐を食べ過ぎて人格が変わってしまったかららしい。

 

立華「……――――死ーぬまーでにー♪ 食ーっとけー♪ 麻婆ー豆腐ー♪ ふふっ……」

 

「……何歌ってんだよ」

 

立華「麻婆豆腐の歌」

 

「……作ったのか? 自分で?」

 

立華「? そうだけど……」

 

「……正直異常だぞ……何だその麻婆豆腐へのあくなき執念は。好物とかそんなレベル軽く吹き飛ばして別の次元に飛び立ってんじゃねーか」

 

立華「……? あたし、麻婆豆腐が好きなの?」

 

「いや知らねぇよ俺がそんなこと俺に聞くな。ってか歌まで作ってて気付かないって……何だ? お前は麻婆豆腐に呪われてんのか? 生前麻婆豆腐に恨みでも買ったのか?」

 

立華「初めて知った……」

 

 立華は蓮華にすくった一口の麻婆豆腐をもの珍しそうにいろんな角度から覗き見る。

 

 こいつの脳内は一体何パーセントくらい活動できないでいるのだろうか? 一度見てみたい。

 

「立華さん……」

 

 そんな脳内お花畑状態の立華を呼び止める一つの声。

 

 げっ……この声は……

 

直井「こんな時間に何をしてるんですか? 休み時間の食事は校則違反ですよ?」

 

 直井文人…………

 

「……好きな時にメシも食えねぇのかこの学校は? 何てつまんねぇトコだ」

 

直井「あなたの立場でそれを言いますか……あ、それと先生?」

 

 直井があたかも今思い出したかのようにわざとらしく俺に話しかける。

 

直井「他の先生方から……坂田先生の行動、言動には最近目に余るものがあるので僕からから注意しておくように、と言われていたんでした。……()()()()()()

 

「……実は俺って嫌われてる?」

 

直井「あなたから嫌われに行ったんでしょう……? 同僚にクズなんて言われたら僕だって不快な思いになる……おっと、無駄話が過ぎましたね。覚悟はいいですか?」

 

「じゃあせめてこのカツ丼食い終わってからで」

 

直井「連れて行け」

 

 

 立華と俺は、よくわからない独房のようなところに突っ込まれ閉じ込められてしまった。

 

 あのカツ丼楽しみにしてたのに!!

 

「オイテメーらいい加減にしろよ! いたいけな女の子と飢えたオッサンをこんな狭い空間に二人っきりにしやがって!! ただで済むと思うな!? もう一人の俺が黙っちゃいねぇぞ!!」

 

「闇のゲーム開くぞ!? 女の子と一緒に乱交という名のデュエルとしゃれこんじまうぞ!?」

 

 ……返事はない。おそらくこっちの声は完全に遮断されてるのだろう。

 

「ちっ……しょーがねー……こうなったら、もう一人の俺に打開策を教えてもらうしかねーな!」

 

 俺はズボンのベルトに手をかけると、勢いよくそれを外し出す。

 

 もう一人の俺の封印を解く時がついにやってきた!!

 

「いでよ! もう一人の俺ェェェエェェェェェェエェェェェ!!!!!」

 

 

 

立華「眠い……」

 

「……………………あの、立華さん」

 

立華「? なに?」

 

「……いや『なに?』じゃなくて……ツッコんで? こっちが必死にボケてんのにそのボケ総スルー?」

 

立華「……おぉ!」

 

 立華は少し考えた後、なるほどわかったと言わんばかりに手のひらを叩く。

 

 あの立華でもここまで言ったらわかってくれ

 

立華「なんでやねんー」

 

「いややっつけにも程があんだろぉぉぉぉぉぉぉおぉおぉぉぉお!!!???」

 

 俺の魂のツッコミが独房内に響き渡る。

 

 どっちがボケかツッコミかわかったもんじゃねぇこの女!!

 

立華「慣れないツッコミしたから疲れた……」

 

「お前あんな適当でよくそんなこと言えるな!!」

 

立華「眠るわ……」

 

「今度はこっちのツッコミ総スルー!? てかホントに寝るの!? 言っとくがお前今危険な状況だよいろんな意味で!!」

 

立華「おやすみなさい……」

 

「ちょ、オイ立華!?」

 

 立華は小さなあくびを零すと、そう言って眠りに入ってしまった。かすかに寝息が聞こえてくる。

 

 マジかよ……ロリコン歓喜じゃねぇかこんな状況……

 

 

 ――このまるで独房みてーな反省室……

 

 ただ校則違反を咎めるだけにはやりすぎてる。

 

 確認したがかなりの強度の扉……完全防音の壁……

 

 おそらく特定の()()を閉じ込めるためだけに作られた独房……

 

 ……立華を閉じ込めるための部屋か。

 

 野郎(直井)が立華の天使としての力を驚異と思っていたのは間違いない……そこで立華をここに閉じ込める計画を立てた……

 

 だがそこでとんだイレギュラーがこの世界に来ちまった。

 

 立華とサシで殺り合って生き残った存在……つまり、俺。

 

 せっかく立華を閉じ込める計画をコツコツ立ててたってのによりにもよってそんなタイミングで立華以上の力を持った奴が現れたんだ……しかもそれは教師……

 

 生徒会なんかの権限じゃどうにもならない……だから奴は俺が他の教師から嫌われるように仕向けたのか? 自分で俺を裁く権利を得るために。

 

 難しいことじゃない……俺は戦線の立場上好き勝手にやってきた。それを逐一他の教師に報告すりゃあ俺の教師間での評判はだだ下がりってか……そりゃあ他の教師にも嫌われるわ。

 

 だとすりゃあ――

 

「――みーごとに策にはまっちまったってことか? コレ」

 

 自分で笑えてくる……あの野郎――こっから出たら全殺し確定だな。

 

 ユーレイって殺しても罪にならないよね?

 

「っと……それより、野郎はここまでして俺らを閉じ込めていったい何を――」

 

 そこまで言った所で俺の思考は止まった。

 

 懐から妙なノイズが走ったからだ。

 

 白衣のポケットに手を突っ込む。何かに指が当たる。これは……

 

 ――仲村から渡されたトランシーバー……そういや持ってたな俺。

 

ゆり『――せ――? 先生!? 聞こえる!?』

 

「!? おい、仲村か? おい、オイ!」

 

 さっきからのノイズがはっきりとした声に変わる。やっぱ仲村か……

 

ゆり『……これを聞いてると信じて話すわ!』

 

 こっちの声が届いてないのか……くそっ!!

 

ゆり『よく聞いて……直井文人はNPCじゃなかったの! 人の魂を持った、私達とおんなじ――人間だったのよ!』

 

ゆり『おかしいと思わない? 元は副会長……模範的な行動をとっていたはずよ。……なら、存在を保っていられず、消えてなくなるハズ……』

 

ゆり『でも陰湿にね、陰で一般生徒に暴力を振るっていたの! 適当ないちゃもんをつけてね……』

 

ゆり『表で模範的な活動をし、裏で悪事を働く……それでこの世界でのバランスをとっていたというわけ』

 

ゆり『彼はずっと狙っていたのよ……天使を生徒会長から引きずり下ろし、自分が生徒会長となるチャンスを……』

 

ゆり『……皮肉ね。この世界を狙っていた私たちが、同じくこの世界を狙う者に大きな手助けをしてしまっていたなんて……』

 

ゆり『今、天使とゆう抑止力から解放された彼は、私たちに攻撃を仕掛けてきた。』

 

ゆり『彼は私たちが一般生徒を攻撃できないことも知ってる。だから、盾にも人質にもしてくるのよ?』

 

ゆり『私たちはいいなりになるしかない……それはもう、一方的な暴力――』

 

ゆり『次々と仲間がやられていってるわ……悲しいことに、私じゃ何もできない。仲間を助けることも……護ることもできない……』

 

ゆり『お願い……銀さん』

 

ゆり『――助けて――――!!』

 

 

 グラウンドに雫が落ちる。

 

 その雫がだれかの眼に落ちた。それでもだれかは動かない。

 

 雫が、そのだれかから流れる血によって赤く濁っていく。

 

 何もできずに……助けを求める暇もなく、ただただ殺されていく。

 

 死んで、不死になって忘れていた……

 

 あぁ、これが……絶望、ってやつなのか――

 

日向「ったく……つくづく雨はキライだぜ……」

 

 日向は赤く染まった瞳で周りを見渡す。よく馴染んだ人。口を交わす程度の人。よく知らない人。たくさんの人が血を流し倒れている。

 

 怒りを覚える。俺らをこんなにした奴らの主犯を――直井文人を、持っている銃で撃ち抜きたい、そういう思いが体をめぐる。

 

 でも力は入らない。何もできない……

 

日向「仲間の仇を……討つことさえできないなんて――」

 

 日向の目から一筋の雫が垂れた。思わず泣いていた。自分の無力を悔いて日向は涙していた。

 

直井「……まだ息がある奴がいるな」

 

 目の前の直井文人は、自分と同じように地面に伏している仲村ゆりに向かって歩いて行く。

 

日向「おい……ウチらのリーダーに何するつもりだ……っ!!」

 

直井「おや、もう一人いたか。丁度いい、見ていろ」

 

ゆり「……っ……!」

 

 直井文人は地面に倒れている仲村ゆりの元へ行き、まるで神にでもなったように両手を広げ笑って見せた。

 

直井「今から僕が――神だ」

 

日向「何を……馬鹿かコイツ……!?」

 

 直井文人はそう言う日向をあざけるように鼻で笑い、口を開く。

 

直井「愚かな……ここが神を選ぶ世界だと、誰も気づいていないのか?」

 

ゆり「……?」

 

直井「生きていた記憶がある……みな一様に酷い人生だったろう……何故?」

 

直井「それこそが神になる権利だからだ……」

 

直井「生きる苦しみを知る僕らだからこそが神になる権利を持っているからだ」

 

直井「僕は今……そこに辿り着けた――」

 

ゆり「……その、あなたの言う”神”になって……一体どうするつもり……!?」

 

直井「安らぎを与える……」

 

日向「俺たちにかよ……!! ここまでしておいて何言ってやがる!! ふざけんなよ!!!」

 

 日向は大声で怒鳴りつけた。自分が血反吐を吐いてもどうなってもこいつは許せない。だから怒鳴りつづける。今の日向にできるのはこれくらいしかなかったから。

 

直井「抵抗するからだ……君たちは神になる権利を持った魂であると同時に、生前の記憶に苦しみ、もがき続ける者たちだ」

 

直井「神は決まった……ならば僕は、君たちに――安らぎを与えよう」

 

 直井文人は足元にいた仲村ゆりを甲斐甲斐しく抱きかかえる。

 

ゆり「――――!? 何、を……」

 

直井「君は今から成仏するんだ……」

 

 その言葉に日向は衝撃を受ける。止めなければ、今すぐ!!

 

 だが他の生徒が日向を抑える。何もできない。彼は声にならない悲鳴を上げた。

 

直井「岩沢まさみを覚えているか……?」

 

 そんな日向の叫びなど耳に入っていない様子で直井文人は続ける。

 

直井「生前彼女は声を失い、歌う夢を断念」

 

直井「酷い家庭環境の元、みじめに死に至った――」

 

直井「だが彼女はこの世界で夢を叶えた……『歌う』という夢を」

 

直井「だから消えた……成仏できたんだ」

 

 日向とゆりは岩沢のことを思い出す。確かに彼女はこの世界で夢を叶えた。生前の悔いをここで晴らすことができたんだ……まさかそれで……

 

直井「君も今から成仏するんだ……幸せな夢とともに……!」

 

 直井のゆりを抱える手に力が入る。

 

ゆり「あなたは……私の過去を知らないっ!!」

 

直井「知らなくても可能なんだ……」

 

ゆり「……?」

 

 直井文人の目がおもむろに――赤く、赤黒く染まっていく。

 

直井「僕が時間をかけて準備してきたのは、今現在天使を閉じ込めてる牢獄だけじゃない――」

 

直井「――催眠術だ」

 

日向「っ!?」

 

 その言葉を聞き日向は自分を抑えてる者の顔を覗く。

 

 とてもうつろな目をしていた。口も半分開いている。

 

 そこで日向とゆりは納得した。いくら直井に脅されてるとは言えNPCがここまでのことをするはずがない。直井がNPCたちを操って従えていたんだ……

 

 テスト時の情報の漏洩も戦線メンバーを操って吐かせたと考えれば……

 

直井「さぁ……目を閉じるんだ――」

 

ゆり「……!? は……っ……」

 

 見たくもないのに直井の瞳に引きこまれるように目線が行く。

 

 何も喋れない。もはや簡単な抵抗すらできなかった。

 

 彼の赤い瞳に自分が写り、ゆっくりと……目を閉じる――

 

直井「君は今から幸せな夢を見る……」

 

直井「こんな世界でも、幸せな夢は見れるんだよ――」

 

 

ゆり(まさか……まさか、まさか――)

 

ゆり(そんな――――――)

 

 

 気付いたら白い空間にいた。

 

 何もない、ただただ広がるその世界に倒れていた……

 

 目を見開くと目の前に三人、人が立っているのが見える。

 

 どこかで見たような面影――

 

(あぁ……あの子たちだ――)

 

 目の前に映る彼らは……笑っていた。

 

 とても幸せそうに――

 

 お菓子を貰った子供のように。

 

 おもちゃを買ってもらった子供のように。

 

 めいいっぱい遊んでもらった子供のように。

 

 ――笑っていた。

 

(違う……嘘だ、そんな幸せそうな顔しないで……)

 

(あたしは守れなかったのよ……? 一人づつ死なせてしまったのよ!?)

 

(一人づつ、一人づつ、一人づつ――)

 

(そして誰も残らなかった!!)

 

「なのに――」

 

『おねえちゃん』

 

 !!

 

『あのね、おねえちゃんがおねえちゃんでよかった!』

 

 やめて………………

 

『ありがとう、おねえちゃん!』

 

 やめて…………

 

『もういいよ、おねえちゃん』

 

 やめて……

 

『おねえちゃん!』

 

 やめて!!

 

 

 ――んなトコで何してんだ? 寝不足ですか?

 

 ……?

 

 ――お前はあいつら背負うって決めたんだろう? だったらもういいことなんかねぇよ。

 

 この、声は……

 

 ――さっさと起きやがれ。

 

 銀、さん――――!!

 

「その女に――触れんじゃねぇよ」

 

 ガラガラと大きな音を立て、自らを包んでいた白い空間が壊されていく。

 

 最後に見たのは――おそらく殴られて吹き飛んだ直井文人と、その目の前に立つ、私たちの……先生の姿――

 

 

直井「っ……あそこからどうやって出た?」

 

 直井文人は困惑していた。もちろん不意打ちで殴られたこともあるが、自分が何年も掛けて作った牢獄を脱出してきたことが一番理解できなかったのだ。

 

 しかも万一脱出された時にこの男の隣にいると推測していた天使がいない。この男一人で脱出してきたとでも言うのか――

 

直井「……まぁこの際どうでもいい。」

 

 直井文人は隣にいた一般生徒の胸倉を掴み、脳天に銃口を向けてこう言った。

 

直井「こっちには人質がいるんだ。下手に動かない方がいいですよ……先生?」

 

 こうすればこいつも、このイカれた集団も、天使も、何もできはしない……

 

 この僕にたてついた罪だ! 散々いたぶった挙句に殺

 

「撃てよ」

 

直井「!?」

 

 直井文人はまたも困惑する。

 

 コイツ、こいつらの仲間じゃないのか!? まして先生だろう!? 何故……

 

「こちとらテメー(自分)で背負ったルール(武士道)護んので精一杯だ。そいつらが勝手に作ったルールなんざ知るか」

 

「だから……俺は、俺のルール(武士道)に従って、テメーを――叩っ斬る」

 

 ……銀時は一歩、また一歩と直井文人に近づく。

 

直井「ま、待て! 来るな! 撃つぞ!!」

 

 直井はすかさず標準を銀時に移す。だがなおも銀時は止まらない。

 

直井「――――っっっ!?」

 

 直井文人に恐怖が走る。自分が……まるで、眠れる獅子の縄張りを荒らした小動物のような感覚にすら陥った。

 

直井「う……うあああぁぁぁああぁぁあああああぁぁ!!!!!!!!」

 

 直井文人は銃の引き金を引こうとする。しかし目の前に銀時の姿はない。

 

 ふと、直井文人は自分の懐に()()を見た。

 

 白銀の髪をなびかせる――夜叉の姿を。

 

「オオォォォォオオォォオォォォォオっ!!!」

 

 大きな音が響き渡り、直井文人の体が宙に浮く。

 

 数メートル後ろに吹き飛び、ピクピクとわずかに動いていた直井文人の体は、やがて動かなくなった――

 

 

「――俺の人生が酷い人生だった……? バカ言ってんじゃねー」

 

「確かに俺の人生は泥だらけだったさ、これ以上何を失っても後悔なんかできなくなるくらい」

 

「だがよ……」

 

「あいつらと過ごした時間だけは……魂に刻まれたこの記憶だきゃあ、誰にも文句なんか言われたくねーんだよ……」

 

 第十五訓に続く




やっと終わりました直井篇中篇!

感想コメントなどあると嬉しいです!

あと一話くらい続きます! 
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