山の翁、異世界に行く   作:新宿のショーター

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第5話

満月が輝く夜、白い髪をなびかせ目を閉じ立っている一人の少年がいた。

 

「おい、死音。こんなとこでどうしたんだ?」

 

「うん、あー十六夜か。ちょっと疲れてね。色々あったし」

 

「子供達に人気だったからな」

 

「あはは………………」

 

あのあと、コミュニティの子供達とあったのだが、他の異世界人と違い年が近いためかものすごい懐かれた。

 

遊ぶのはいいのだが、数が多いためとても重労働だったと言っておこう。

 

「そういえば、十六夜ありがとね」

 

「何がだ?」

 

「さっき、子供達を守ってくれたでしょ」

 

「気づいてたんならお前も来いよ」

 

「十六夜が向かってるのが分かったからね」

 

さっき、子供達の館の方に知らない気配が近づいていた。

 

おそらく、明日飛鳥達が戦う相手が送り込んでいたのだろう。

 

しかし、子供達を攫い人質にしようなどとは十六夜が対処したからいいものを、もし私だったら…………

 

「おい、ヤバいもん出てるぞ」

 

「!ごめん、つい」

 

想像しただけで殺気が出てしまっていたようだ。

 

「気をつけろよな」

 

「分かったよ。そういえば十六夜って結構面倒見が良いんだね、こうして話してくれるし」

 

「別によくはねーよ。ただ、あっちで弟妹みたいなもんがいたからな、こういうのにはなれてんだよ」

 

「へー、十六夜に……………」

 

「まぁそういうことだ、夜ふかしすんなよ」

 

そう言い十六夜は館に戻っていった。

 

「オカンかよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

 

 

「黒ウサギ!早くこちらに!耀さんが危険だ!」

 

「すぐコミュニティの工房に運びます。あそこなら治療器が揃っていますから。御三人は飛鳥さんと合流してから共に」

 

あっという間に時は過ぎゲームは飛鳥達の勝利で終わった。

 

ならなぜこんなに焦っているのかそれは耀が怪我を負ってしまったからだ。

 

ガルドは小癪にも指定武具でなければ倒せないという条件を付けた。

 

その結果、使い慣れない武器で十分にポテンシャルを出せず怪我を負ってしまった。

 

「待って、工房って昨日子供達が案内してくれたところでいいの?」

 

「そうですが、今はそれどころでは!」

 

「なら、私が黒ウサギと耀を運ぶよ」

 

「どうやって?!」

 

「限定展開」

 

瞬間、死音の手に大剣が現れ最初より抑えられてはいるが殺気が漏れる。

 

「今はそれどころでは!」

 

「いいから、掴まって」

 

しょうがないように耀を慎重に持ち上げ死音に触れる黒ウサギ。

 

「じゃあ、いくよ」

 

そういうと死音の体を蒼炎が包み込み、十六夜達の前から姿を消してしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「黒ウサギ、ついたよ」

 

「これは⁉︎」

 

「瞬間移動的な?」

 

「なんで疑問形なんですか!」

 

ほんとハサンさん便利ですね。

 

ゲームで瞬間移動的なものをやっていたので試していたらできたものだ。

 

でもさっきのように動かないなら長距離の移動が出来るが、戦闘中だったりいったことのないところは行けないという欠点もある。

 

「まさか、境界を操れるなんて………」

 

「黒ウサギ!考えるのは後にしてそれより耀の治療を」

 

「そうでした!」

 

そういい黒ウサギは中に入って治療を始めた。

 

死音は黒ウサギに任せ館で十六夜達の帰りを待とうと外に出る。

 

だがそれは叶わない、何故なら、

 

「あーーー!死音だ」

 

「死音にいちゃんがいるよーー!」

 

「遊んで!」

 

子供達が続々現れ死音のてを引っ張る

 

「ま、待って」

 

悲しいかな、無情にも死音の声は子供達の声にかき消され聞こえない。

 

十六夜達が帰ってくるまで鬼ごっこをすることになった。

 

ただし、死音が一人鬼で全員を捕まえるまで終わらないと記しておこう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

 

「ふー、疲れた」

 

「ヤハハ、ご苦労なことで」

 

「お疲れ様なのデス」

 

やっと子供達から解放され、十六夜と黒ウサギと一緒にソファーでくつろいでいた。

 

「そういえば、例のゲームはどうなった?」

 

「実は……………」

 

十六夜が昔の仲間が景品にされているゲームについて聞くと、黒ウサギは泣きそうな顔で話し始める。

 

どうやら、主催者側の都合で延期、このまま中止の線もあるそうだ。

 

私も元魔王の仲間というのに興味はあったので少し、いやとても悔しい。

 

「黒ウサギ、元仲間の人ってどんな感じの人?」

 

「そうですね………一言で言うと、スーパープラチナブランドの超美人さんです。指を通すと絹糸みたいに肌触りが良くて、湯浴みの時になれた髪が星のように光るのです」

聞く限りとてつもない美人だということが分かった。

 

「そんなに綺麗なら一度会ってみたいよ」

 

「おや、嬉しいことをを言ってくれるじゃないか」

 

「レ、レティシア様⁉︎」

 

「様はよせ。今は他人に所有される身だ、箱庭の貴族ともあろうものが、ものに敬意を払っては笑われるぞ」

 

そう言い、窓から入ってくる。

 

「すまないこんなところから、ジンには見つからず黒ウサギに会いたかったんだ」

 

「そうでしたか。今すぐお茶を入れてきます少々お待ちください」

 

黒ウサギは仲間と会えて嬉しいのか駆け足で茶室に向かう。

 

レティシアはソファーに座ると死音の視線に気づき小首を傾げる。

 

「どうした?私の顔に何かついているのか?」

 

「っ!すみません、じっとみてしまい」

 

「別にいいのだか何か気になることでも?」

 

ここは素直にいうべきなのだろうか?とてもタイプで一目惚れしていたことを、稲穂のように輝く黄金の髪、ルビーのような真紅の眼、そして何よりも十人中十二人は美人と答える美貌。こんなに綺麗な人がこの世にいるなんて」

 

「っっっっ!!」

「ヤハハハハハハハハハハハハ!!!!!」

 

顔を赤くし照れるレティシアと腹を抱えて笑う十六夜、十六夜の笑う声で自分の言葉が口から出ていることに気づき、死音は恥ずかしさのあまり顔を赤くして隠す。

 

「す、すみません!初対面でこんなことを!」

 

「い、いいんだ!世辞だと分かっているから」

 

「世辞じゃありません!本当です!」

 

「そ、そうか!あ、ありがとう」

 

「こ、こちらこそ」

 

何言ってんだ!どうした、私!平常心、平常心、平常心、平常心、平常心、平常心

 

「ところで、元魔王で仲間のお前が何の用だ」

 

「そ、そうだった」

 

レティシアは本来の用を思い出し黒ウサギが戻ってきてから話し始めた。

 

要約すると、最初は黒ウサギを説得して解散させるつもりだったが、神格級のギフトを持つ者が入ったと聞きその新人の実力を試そうとした。

 

飛鳥と耀はまだ未熟で判断に困り、十六夜の力を試したいようだ。

 

「私はいいの?」

 

「ああ、境界の操作を見させてもらったからね。あそこまで強力なのは箱庭でも珍しい」

 

なんだろう?いつもより嬉しい。

 

あれか!美人に褒められると男は嬉しいっていう」

 

「っっっっ!!」

 

「漏れてるぞー死音」

 

「す、すみません!」

 

「いや、私も君に美人と言われて嬉しいよ。でも、恥ずかしいからできれば人前では言わないでくれ」

 

「分かりました。すみません」

 

あーーー!何やってんだ、平常心、平常心、平常心、平常心、平常心、平常心、平常心、平常心、平常心、平常心、平常心、平常心、平常心

 

その後話しは進み外に出て十六夜とレティシアがお互いに一撃ずつ撃ち合いその時地に足が着いていた方の勝ちのようだ。

 

結果は十六夜が勝ち終わったが、レティシアのギフトが一つだけになっていることが判明した。

 

一悶着があったが館に帰ろうと歩いていると、空から光線が降ってきて、レティシアを石化させる。

 

「レティシア様!!」

 

「吸血鬼は石化させた!すぐに捕獲しろ!」

 

「邪魔をするのならノーネームも、切り捨てろ!」

 

死音は思考が追いつかなかった。

 

なんであんな者達の気配に気づかなかったのかーーーー油断していたからだ

 

レティシアが石化したのはなぜだーーーー私の不注意だ

 

俺は石化された時何をしたーーーー動けなかった

 

全部、全部私のせいだ、私が油断しなければ……………………

 

レティシアを石化させたのは上にいる羽虫と私の背後を通っている影の薄いやつだけか、ならば!

 

「黒ウサギも死音もまて」

 

十六夜が黒ウサギは耳を掴み、死音は肩を掴む。

 

「邪魔をするな十六夜!」

 

「落ち着け、ここで騒ぎを起こしたら本当にもう救えねえぞ」

 

十六夜の言葉で頭が冴えてきた。

 

「そうだね、ありがとう十六夜」

 

「分かったならいい」

 

そうだ、ここで問題を起こした方がレティシアを救えなくなる。

 

ピンチな時ほど冷静にならないと。

 

ジンは看病に残るといい、十六夜、飛鳥、黒ウサギの三人でサウザンドアイズの支店に向かう。

 

死音は自分から行くことを辞退した。

 

話し合いなら自分は邪魔をするだけと判断したためだ。

 

レティシア、待っていてくれ。

 

必ず助け出すからな

 

 

 




遅れてすみません

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