俺と君を繋ぐ音   作:小鴉丸

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お久しぶりの小鴉です。
さて、唐突ですが美咲誕生日回は絶賛執筆中です(キラッ)


第二十話 応援

〜奏side〜

 

 

「それでは奏様、今日はお疲れ様でした。松原様との関係……頑張ってください。応援してます」

 

「あ、ありがとうございます。それでは」

 

あの後、黒服の人に家まで送ってもらって家に帰ってきた。そして家の前に降ろしてもらった俺は挨拶をして別れた。

 

車が走っていった後に今日あった事を思い出していた。

黒服の人からのこころの心情、こころの告白、そして俺の決意……。

 

人生でこんなに疲れたのは久々だ。つい、達成感からため息が出た。

 

「──あれ、奏じゃん」

 

「あ?」

 

家に入ろうとした時に誰かに声を掛けられる。その声に後ろを振り向くと意外すぎる奴が立っていた。

 

「九郎? 何してんだ、暇人か?」

 

「あはは。暇じゃないよ、九莉を迎えに来たんだ」

 

俺に用だなんて珍しいと思ったが違うようだ。用事は九莉を迎えに来ただけらしい。

 

九莉というのはこいつの妹の事だ。

松橋九莉、未来と同じ学校で同級生。兄とは違って割としっかりしている性格で、いつも迷惑をかけている莉緒にしょっちゅう謝っている。

 

「それなら部屋で寝てるんじゃないか?」

 

「かもね。取り敢えず上がっていいかな、立つのも疲れるし」

 

「おっと、すまない」

 

そう言って俺は家の扉を開ける。

玄関にはやはり未来ともう一つ、別の靴が置いてあった。九郎が「九莉の靴だね」と言った事から確定だろう。

 

九郎にはリビングで待ってるように言って、俺は二階の未来の部屋へと向かった。

 

「未来ー、入るぞー」

 

そのまま部屋の中に入る。そして俺は暗くなった部屋の電気をつけ、やはり寝ていた未来の体を揺すった。

 

「う、うぅん……。くーちゃん……」

 

二人は制服のままでベットに寝ていて、九莉は未来の腕にがっしりと抱きついている。

 

あまり時間をかけると下で待ってる九郎に申し訳ない。少々強引だが寝ている九莉を未来の腕から話して、俺は抱き抱える。

 

そのまま階段を降りていると九莉が寝言を漏らした。

 

「みーちゃん……大好き、だよ」

 

二人は仲がいい。仲がいいのは兄として嬉しい、けど俺と九郎が手を焼いているのは九莉が本気で未来の事を好きという点だ。それで俺の事は『お兄さん』と言われるから尚更困る。

もはや結婚する勢い──いや、本人はそう言っているが、未来は遊び程度だと思っているから微妙に二人は噛み合ってない。

 

「九郎、連れてきたぞ」

 

「んー……あー……」

 

ぐったりとソファーに腰をかけている九郎はやる気のない返事をする。

 

「このソファー、気持ちいいね〜……。ふあ〜」

 

目を細めて爺さんのようにのんびりとしている九郎を見ると、中学の頃に戻ったような感じがして懐かしく感じた。が、勿論そのままなわけにはいかないので九郎を揺さぶって意識を戻させる。

 

「寝るなよ。ほら、九莉持ってきたから帰れ。外も暗くなるし、明日はお互いに学校もあるんだ」

 

「ぬぁ、僕は……。あぁごめん、気持ちよくて寝かぶってた……」

 

頭を掻きながらゆっくりと立ち上がる。そうして九莉をおぶってから玄関に向かった。

 

「ごめんね、急にお邪魔して」

 

「いや回収に来てくれたから助かった。それじゃ気を付けて帰れよ」

 

「うん」

 

短く返事をして扉に手をかける。そのとき「あ、」と何かを思い出したかのように俺に振り返り声を掛けてきた。

 

「頑張ってね。花音はずっと待ってたから」

 

どうしてその事を──。

 

そう聞く前に俺の口は動いていた。

 

「だな。待たせた分、しっかりと伝えるさ」

 

その言葉を聞くと、九郎はくすっと笑って家を出て行った。この事については龍斗ら辺から回ったりでもしたのだろう。

 

九郎が帰って家の鍵を閉める。そしてリビングに戻っていると、丁度二階から未来が降りてきていた。

 

「おにーちゃん……くーちゃん知らない?」

 

「九莉ならさっき帰ったぞ。九郎が迎えに来てたからな」

 

「んー、そうなの? ……あ、おかえり〜」

 

これは相当寝ぼけてるな。何をしてたんだ、こいつらは。

 

「おう、ただいま。取り敢えず、飯作っとくから服を着替えて来い」

 

「うんー、分かった〜」

 

目を擦りながら再び部屋に戻っていった。……ふらふらしながら階段を上る姿を見ると、少々不安にもなるが。

 

俺はキッチンに向かいながら今夜のメニューを考えるのだった。

 

 

 

 

〜九郎side〜

 

 

奏の家から帰る最中に携帯で数時間前のやり取りを見直す。それは、総士、莉緒、龍斗とのLINEでの会話だ。

九莉が居なくなったから取り敢えず聞くだけ聞いたけど面白い情報も聞けたのだ。

 

まずは総士。

 

『店には来てなかったぞ。莉緒にでも聞いてみろよ』

 

そして莉緒。

 

『旅館には来てないぞ? 親父も来てないって言ってる。龍斗か奏なら知ってんじゃね』

 

それで龍斗。移動中だったのもありこれは通話にした。

 

『九莉ですか? 奏先輩の家で寝てるんじゃないですかね、ほらいつもじゃないですか』

 

「ん、でも未来は部活……」

 

『休みとかならこの時間でも有り得ますよ。総士先輩達じゃないなら、消していって奏先輩の家でしょうね』

 

「そっか。うん、ありがと」

 

そう言って通話を切ろうとしたら最後に、という感じで龍斗が言ってきた。

 

『あ、それとですけど。奏先輩ようやく花音さんと引っ付くそうですよ』

 

「……それは面白い事を聞いたね。二回目だけど、ありがとね。今度お礼するよ」

 

 

 

 

 

といった感じの会話だった。

 

随分遅かったけど二人が付き合ったらパーティーでも開くかな。皆と花音を呼んで、莉緒か奏の家で……昔みたいに──。

 

「……みーちゃん?」

 

「ん、起こしちゃったね」

 

考えながら歩いていると、背中の九莉が起きた。

 

「お兄……? どうして?」

 

「奏の家で寝ていたから、おぶって帰ってるんだよ」

 

聞かれたのでこうなった経緯を軽く説明する。すると「ごめん」と申し訳なさそうに謝られた。

 

「いや……いつも迷惑をかけてるのは僕だから。たまにはお兄ちゃんみたいな事もしないと」

 

そう言ってゆっくりと歩き続ける。そんな中で九莉に先程思い付いた事を話してみた。

 

「そういえばさ、奏が花音に告白するらしいんだけど……」

 

「奏さんが……花音さんに?」

 

「うん。……それで、急に世界が滅びない限りは付き合うから、お祝いのパーティーをしようと思ってね」

 

「お兄にしてはいい考えじゃない? 二人も喜ぶと思う」

 

二人の関係を知っている九莉は認めてくれた。

 

まぁ九莉じゃなくても莉緒達なら納得してくれるだろうけど。

 

「その時は、九莉も呼ぶよ。花音と最近は話してないでしょ?」

 

「うーん、嬉しいけどボクの予定が空いてたらね」

 

と、九莉は笑いながら言った。

 

確かにその日が部活と重なったら意味無い、か。それにいつ奏から連絡が来るかも分からないし。

 

取り敢えずは明日、莉緒に話を持ち掛けてみよう。祝う事はどっちにしても確定している。莉緒自身もあの二人の事は応援していたし、了承してくれるだろう。

 

「(僕らの中で……先に進んだのは、奏が最初か)」

 

今度、奏に色々と話でも聞こう。それで得られるものもあるかもしれない。……千聖に対する接し方も。想いを伝える事も。

 

「……お兄?」

 

考えてるうちに足が止まっていて、九莉が心配そうに顔を前に出してきた。

 

「ん……。ごめん何でもないよ」

 

僕は再び歩き出した。

 

心の中で奏の幸せを願って──。

 




九莉はボクっ娘。
それとちまちま出してるエタハピ関連のオリキャラはもう1人います。

今回も読んでくださりありがとです!

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