俺と君を繋ぐ音   作:小鴉丸

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次の話への架け橋みたいなので、今回は短いです。

それと、感想や評価をくださった方ありがとうございます! 感謝の気持ちでいっぱいです!


第二十二話 付き合い始めて

〜奏side〜

 

 

「みんな、すぐに帰っちゃったね」

 

練習と片付けが終わり俺と花音は外にあるカフェに居た。他のみんなは終わると同時にそそくさと帰ったので、二人だけ残されたのだ。

 

だけど俺達を思っての行動だろう。考えてくれた人物の顔が思い上がり、思わず笑ってしまった。

 

「奏くん?」

 

「いや、ちょっとな……」

 

頼んだ飲み物を飲んで何でもないように振る舞う。

 

カフェには時間も時間だからか俺たち以外に人は居ない、そのため静かだ。その為、少しでも音がすればそれは耳に届くわけで……。

 

カシャッ。

 

「ん?」

 

近く、というか目の前でシャッターの音が聞こえた。前に居るのは花音、つまり撮ったのはこいつという事で。

 

飲み物をテーブルに置いて花音を見ると、慌てて携帯を下ろした。

 

「ご、ごめんね? でもほら……せっかく彼氏彼女になったから、記念に撮りたいなって……」

 

「俺の写真なんていくらでも持ってるだろ?」

 

総士達や未来よりも花音は俺の写真を撮ってると思う。なのに何で今更撮る必要があるんだ?

 

そう言うと花音は頭を横に振って小さな声で話す。

 

「じゃなくて……恋人みたいな写真が欲しいなぁ〜、って」

 

……そういう事か。

つまり今までとは違う特別な写真が欲しいわけか。

 

それなら。と俺は席を立ち花音の横に並んだ。

 

「花音、携帯渡せ」

 

「え? う、うん……」

 

クラスの女子が見せてきた写真にはこういうのがあったな。これで花音が喜ぶかは知らんが。

 

俺は花音を少し抱き寄せて密着する。そして携帯のカメラを内側にして「撮るぞー」とひと声掛け、シャッターを切った。

 

「え? え?」

 

突然の行動に混乱する花音、そんな花音に写真が表示された携帯を返す。

その表示された画面を見て顔を緩ませたり、赤く染めて恥ずかしがったりと、ころころ変わる表情を見ていると楽しく感じてしまう。

 

「(ふむ……)」

 

彼氏彼女か。

そう意識すると、ちょっとした事でも花音が可愛く感じるな。いや、元々可愛いがそれが倍になったような感じで……。

 

──カシャッ。

 

「ふぇ? 奏くん?」

 

「悪い、可愛かったから撮っちまった」

 

「〜〜〜〜っ!?!?」

 

更に顔を赤くする、それは耳までなっていて相当照れた事が分かった。

 

昔なら絶対言えなかった言葉も今なら言える、それは自分達の想いを伝えあったから、そして結ばれたから。

 

「はは、ごめんごめん」

 

「もう……子供じゃないんだよ?」

 

まだお互いに子供だろ、というツッコミはやめておく事にした。俺は花音の頭に載せていた手を退かす。

 

「何かさ、俺達付き合ったんだな……」

 

頭では分かっていてもまだモヤモヤが残っているからか自然とそんな言葉が漏れた。

 

「今みたいなやり取りだって、似たような事はしてただろ? 抱きしめるのは別だけど……。中学の時とかよく言われてたし」

 

花音は自分の飲み物をストローで混ぜながら考える。

 

「んん〜……、でもあの時は今みたいに真正面からは言ってなかったよ。そう考えると変わったんじゃないかな、私達の関係」

 

「そっか? そっかぁ〜? 何かこう、恋人っぽい事すれば実感も湧くのかな……。ほら、恋人繋ぎとか飲み物の交換とか」

 

昔からの関係の延長線のように過ごしてきた俺達だからよく分からない。食べ物も俺が花音に食べさせる事だってあったし、食べ物の交換もした。飲み物は多分ない、と思う。

 

「あっ! じゃあさ──」

 

と、そこまで言いかけて急に止まった。

 

「何だ?」

 

「──あ。う、ううん! 何でもないよ!」

 

何でもないわけがない。そこまで言ったら何かあるだろ。

というかこっちが気になる、そんな中途半端で止められたら。

 

「言ってみろって、何か案が思い付いたんだろ?」

 

「う、うぅ……。奏くんと……──す、だよ」

 

モジモジとしながら言うから上手く聞き取れない。酢? 酢で何をするんだよ。ダジャレか?

 

「もっかい言ってくれ。聞こえん」

 

「だ、だからぁ……──すだってばぁ」

 

ダメだ、“す”しか聞こえねぇ。

 

「なぁ花音、大きな声で言ってくれよ。分からな──」

 

「だからぁ……っ、キス! チューだよ! ううっ……、恥ずかしい……」

 

俺がそう指示したから当然だが、花音が大きな声で言う。ついそれに驚いてしまい、その場に固まってしまった。

 

は? キス? キスってあれか、昔でいう接吻か? 確かに恋人っぽい、というか恋人同士がする事だが……。

 

と俺は予想以上に混乱していた。

彼氏彼女になったとはいえ先程までは今まで通りの幼馴染みだったんだ、そんな子と急にキスというのはハードルが高いのではないか? そもそも花音の準備とかもいるだろうし……。いや、俺もだが……。

 

「な、何だ興味とかあるのか?」

 

「ふぇ!? な、無い──と言ったら嘘になっちゃうけどぉ……」

 

……そんな反応されると期待するだろ。

 

花音の素直さはこういう時に凶器と化す。普段から嘘をつくことが苦手な花音は、嘘をつく事になると一旦躊躇う。でも、その躊躇いは本心を表していて……。

 

俺はつい花音を見つめてしまう。その瞬間、花音と目が合ってしまった。

 

「もっと、先に進んでみるか……? お前が良ければだけど」

 

自然とそんな言葉を発していた。

 

「(あれ? 俺、何言って──)」

 

頭でそう思っていても体は動いている。

テーブルに身を乗り出して、ほぼ無意識に花音の両肩を掴んでいた。

 

「わ、私は……奏くんが良ければ……」

 

震えていても自分の意思をハッキリと伝えてくれる。

花音はしたいのだろうか、そう考えると胸の鼓動は早くなるのが分かった。

 

不安よりも期待。

 

ほんの数センチ先には花音の顔──唇がある。息づかいも感じ取れて、こんなに接近したのは初めてなんじゃないかと思う。

 

「奏、くん……」

 

するりと腕を頭の後ろに回される、これでもう俺は逃げれない。視界には花音しか写っておらず、それしか意識はできない状態になっていた。

 

「花音……」

 

もはや引き返せないラインに立っている。ここで振りほどいて逃げたら、意気地無しなんてレベルじゃない、男かと疑われるレベルだ。

 

──俺は覚悟を決めて前に進む。

 

「好きだ──」

 

そう言うと同時に距離を詰めて唇を奪う。

 

「んっ──、ん……ぅ」

 

ぎこちなくキスをする。

 

初めて感じる他人の唇。柔らかく、温かく……色々な感覚が流れ込む。

それよりも好きな人とこう出来る事が何よりも感じ取れて……。

 

「──っあ、っ……!」

 

「えへ、えへへっ……。奏くんと……しちゃった、ね」

 

ありきたりな表現だが、キスは一瞬だったが永遠にも感じれた。その言葉は本当なんだと実感した。

 

唇を離した後に目の前の花音を見ると、恥ずかしそうだが嬉しそうな表情をしていて俺は更に恥ずかしくなってしまう。

 

「俺達は、付き合ってる……」

 

口に出すと最初のような違和感は無くなっていて、そう実感できた。花音はそれに応えるかのように、俺の手に自分の手を絡めて握ってきた。

 

「うん。私達は付き合ってるんだよ、奏くん」

 

そうだな、と短く答えて俺は今の幸せを感じた。

 

それは、繋がれたこの手がそれを証明しているから。

 

 

 

 

〜???side〜

 

 

「ん? あれは……」

 

勉強会の帰り道、私はあるものを見つけて足を止めた。

 

「どうしたの藍?」

 

それはライブハウス前にあるカフェ、そこで口付けをしている男女を見つけたのだ。

別にそれが知らない男女がやっているのなら興味も示さずに流していただろう、但し二人共知り合いで仲もいい人ときたもんだ。

 

「ねぇ、ゆり」

 

「ん?」

 

親友の名前を呼ぶと反応してくれる。

 

「SPACEでのライブにさ──」

 

私は思い付いた事をゆりに話す。するとその提案に食いついてきた。

 

「いいわね、それ。久々に藍を見直したわ」

 

「なにそれー! 見直してよー、学校は違っても生徒会長なんだよ〜?」

 

はいはい、と流されながら再び帰り道を歩く。

その帰り道は、とあるライブを開催するにあたっての作戦会議になっていた。

 




次の話からは少しアニメに関係していきます。

今回も読んでもらいありがとです!


またまた宣伝
椿姫さんが書いている作品『夕焼けに誓う幼馴染達』にて、この作品『俺と君を繋ぐ音』の現在コラボ回が投稿されています。もし宜しければそちらもご覧ください。
遅れますが、勿論僕も投稿します。

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