転生するなら普通はこっち(神狩人)側じゃないの?   作:こんたそば

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4.【隙のないシユウ】

「ロシアの殺し屋、恐ろしやー」

 

「うん?すまん、聞いていなかった。何だって、アルク?」

 

「何でもない」

 

第2部隊に所属し、防衛班班長を務めている大森タツミは「そうか」と呟いて前方に視線を向ける。俺は彼に任務の協力を要請されて一緒にグボロ・グボロを討伐に来ております。

 

先日のイレギュラーウロヴォロスとの戦闘で追った傷も癒え、リハビリに丁度よかったことや同期の頼みでもあったので二つ返事で承諾した。

 

タツミは基本的にブレンダンと一緒に活動するのだが、先日のイレギュラーウロヴォロスの逃げた先にタツミたちがいたらしく、ブレンダンは『なにごtアッーーー』な目にあってしまって心に深い傷を負ってしまったらしい。うん、ご愁傷さま。

 

それと俺が療養中の間に『ドン引きの人』や『下乳』などの愛称で親しまれる2人目の新型神機使いアリサ・イリーニチナ・アミエーラが第一部隊に転入してきていた。すでに彼女の冷淡な物言いと第一世代の神機使いを軽視する発言で煙たがれている。

 

当然“転生者”たちからの人気も絶大でイレギュラーアラガミたちはほとんどがそっちに流れてしまっているので、普通のゴッドイーターたちは安心して任務に従事できている。

 

「と思った矢先にこれかよ!」

 

「あはははは!これが噂の女体化か」

 

鉄塔の森で通常種のグボロ・グボロ2体討伐という簡単な任務だったはずなのに、いつの間にか空気が桃色に染まったと気付いた時には同期のタツミが『ぼんきゅっぼん』のナイスバディの女性になっていた。元々中性よりの顔だったから女体化したらボーイッシュな女性としか見えん。

 

タツミは突如自分の胸部に現れた双丘を自身の両手で鷲づかみにして感触を楽しんでいる。快活な性格も相俟って、何の気兼ねも無く俺に触ってみるかと話題を振ってくるが触れたら確実に黒歴史になるので勘弁してもらいたい。

 

とりあえず、鉄塔の森上空に居た『振動式の大人の玩具』をスナイプしたけれどもまた当たる直前に避けられた。何、あいつ『射撃無効』とか持っている訳?

 

グボロ・グボロの討伐は恙無く終わったので帰ろうと思ったのだが、回収ヘリを待つ間にオペレーターの竹田ヒバリから緊急通信が入った。

 

『タツミさん、聞こえますか?』

 

「おー、聞こえているよ。ヒバリちゃん」

 

『え、えっと……タツミさんであっていますよね?少し声が高い気が……』

 

「気のせいさ。それで用事は何かな」

 

『そうでした。それが……』

 

どうやら煉獄の地下街にシユウ討伐へ向かった第一部隊と連絡が取れなくなってしまったようだ。リンドウは生憎と別の任務に向かっており救援に迎えるゴッドイーターとして白羽の矢が立ったのが俺とタツミのペアだったと。疲労感やアイテムの消費等もなかったので、俺たちはそのまま煉獄の地下街に向かうこととなった。

 

 

 

ヘリから飛び降りた俺とタツミは第一部隊と最後に連絡が取れた場所に向かって走る。その間、頭を出したコクーンメイデンや普通のサイゴートの頭を、神機を構えずに打ち抜いているのだが、その都度タツミが口笛を吹いて囃し立てる。

 

「さすが極東一のスナイパー。安定感が違うねぇ」

 

「すぐに俺よりも上の実力を持つ奴が台頭してくるさ」

 

俺はタツミの軽口に適当な返事をしながら突き進む。熱風と灼熱の溶岩がごぽごぽと蠢く地下通路内に到着した俺たちは周囲を警戒しながら先に進んでいく。

 

ヒバリからの通信によれば第一部隊は主人公ちゃんに加えて橘サクヤ・藤木コウタ・アリサの4人体制でシユウの討伐に来ている。近接と射撃を使い分けることが出来る新型神機使い2人と後方射撃のベテランと新人2人という理想的なパーティである。

 

これで苦戦するような相手だろうかと首を傾げたくなる事案に自然と眉が寄ってしまうのだが、壁に凭れ掛かって身動きが取れない藤木コウタを発見したことで俺たちの緊張感が最大限まで引き上げられる。

 

「おい、藤木上等兵。大丈夫……か?」

 

「周囲にアラガミやサクヤさんたちの気配はない。って、アルク……どうしたんだ、そんな残念なものを見るようにして?」

 

壁に凭れ掛かるようにして気絶している藤木の腹部が真っ赤に染まっていて最悪を想定した俺だったが、呼吸が安定していることと服が破けていないところを見て、もしやと思い彼の顔を見ると鼻から下が真っ赤になっていた。ご丁寧に男の象徴はズボンを押し上げて聳え立っている。

 

危機に陥った仲間を助けるという胸が熱くなる展開でテンションが上がっていた俺のやる気が、一気に降下してどうでもいいレベルに達した。

 

「はぁ、タツミ。帰ろうぜ」

 

「おいおい……。一応、残り3人の様子を見て決めようぜ、な!」

 

「タツミ、お前は本当に良い奴だな。……これでどうして女にモテないんだろ?」

 

「一言余計だぞ、アルク」

 

タツミは苦笑いしながら戦闘音が聞こえる方へ足を向けている。俺はにやけ顔で気絶している藤木を背負って立ち上がると、タツミの後を追って歩いていく。

 

そして、藤木を除く女性3人のゴッドイーターと討伐目的対象である『亀の甲羅を背負った爺さんの門下生が着る様な道着』を身に纏ったシユウを発見した。

 

今まで見てきた転生アラガミと比べればマシな部類じゃないかと思った俺に飛んでくるブラスト系のバレットとスナイパー系統のバレットが2種類。俺が咄嗟に飛びのいてしまった為、その場に取り残されることになった藤木に全て着弾した。

 

短い悲鳴の後、目をぐるぐる回して完全に気絶した藤木を眼下に入れつつ、下手人へと目を向けると神機を持っていない方の手で必死に身体の重要な部分を隠しながら睨んでくる女性陣がいた。視線がすでに『こっち見んな』と物語っている。

 

「あー……どうする?」

 

「俺は藤木を連れてさっきのところに戻るわ。終わったら通信機で知らせてくれ」

 

タツミからの提案で男である俺は藤木を発見した場所に戻ることに。小声で正体がばれたら殺されるから気をつけろとタツミに告げ、俺はその場から撤退した。

 

やる気を見せていたタツミには悪いが、恐らくあのシユウもイレギュラーなんだろうなと諦めの境地に達した俺は煉獄の地下街をうろつくオウガテイルやコクーンメイデンをヘッドショットしながら待ち、“案の定”半裸にされた挙句シユウに逃げられたタツミたちに衣類を貸し与えたのだった。

 

ちなみに回収ヘリ内にて「結局あなたは誰なのか」という話題を振られたタツミは咄嗟に『小森タツキ』という偽名を名乗り、時々俺と組んで活動しているというカバーストーリーをでっち上げた。

 

おかげで俺はアナグラに帰って早々、シュンやカレルだけでなく所属している偵察班の仲間からも尋問を受ける羽目になった。

 

 

 

 

支部長室に呼び出された俺が見たのはダボダボの紺色パーカーを着た幼い褐色肌の少女に泣かれてオロオロしている支部長の姿だった。

 

「えっと、出直した方がいいですか?」

 

「待ちたまえ!違う……違うんだ、誤解なんだ!」

 

「Take2、行きますんで。次はビシッと決めてくださいよ」

 

俺は一度支部長室から出て扉の前で深呼吸すると再度入室しなおす。

 

「第七部隊所属程兎中尉、入ります」

 

「うむ。……すまないが無理だ」

 

「分かってました」

 

うるうると涙いっぱい目尻に溜めた状態の少女を抱いた支部長という驚愕の光景を見るしかない俺は、今度のイレギュラーはおかしすぎるだろうと脱力するしかない。

 

というかイレギュラーアラガミが闊歩する中、ソーマを単独で特務に向かわせんなと文句を言いたくなったがグッと堪える。

 

「それで今度のイレギュラーは何ですか?コンゴウですか、グボロですか、ボルグ・カムランですか、サリエルですか?」

 

「……察しがいいな。さすがは私の右腕だ。今、君が言ったすべてのアラガミのイレギュラーが出現した」

 

「友人がいるアメリカ支部に引っ越しますから、転属届ください」

 

「逃がすと思っているのかい?」

 

にこやかに怒るという常人には不可能な表情を浮かべる支部長の胸元に縋りつく褐色肌の少女。ほっこりできる光景のはずなのに、ほっこりできないのはあの少女がソーマ・シックザールだってことが分かっているからなのだろうか。

 

あはは、今度は子供ラッシュかー。

 

性転換に加えて幼児化って、転生アラガミはこの世界を狂わすことしか考えていなくて困っちゃうよー。イレギュラーアラガミって毎回言うの長いから、俺はお前たちのことを狂神(くるいがみ)って呼ぶことにするわー。

 




【シユウ師匠】

某亀の甲羅を背負った仙人の門下生が着る道着を着たシユウ。

無駄な動きの挑発行為をせず、かつて存在した空手や柔道、中国武術などの動きを取り入れ隙がなくなった戦い方をする。

女性ゴッドイーターを好んで狙い、衣服を剥ぎ取る戦い方をするようだ。

とあるゴッドイーターはこのシユウのことを「エロ親父思考だ」と言っていたが、若い少年たちも容易に考えつきそうなものだがどうして彼は断定したのであろうか。
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