転生するなら普通はこっち(神狩人)側じゃないの? 作:こんたそば
鎮魂の廃寺にソーマ・シックザールを幼児化させた犯人がいるということだったのでやってきたら、滑り台やブランコ、ジャングルジムやスプリング遊具などを背中に刺したクアドリガっぽいものがいた。
原作での結合崩壊可能部位はミサイルポッド、前面装甲、廃熱器官であったかなと神機のスコープ越しに確認するとミサイルポッドには太いクレヨンっぽいものがダース単位で内蔵されていて、前面装甲はネコバスみたいな形。
普通の子供好きの転生者かと思いながら廃熱器官を見た俺はすぐに脳天直撃弾をセットして撃ち放った。俺の目に映ったのは物干しハンガーを使って干された彩り豊かで可愛らしい動物の絵がプリントされた幼児用パンツの山。
「子供は愛でるものだが、テメェはダメだ!」
クルイガミのクアドリガの攻撃方法は普通のそれとあまり変わりは無い。
ミサイルポッドから発射されるクレヨンによる攻撃。
ネコバスが迫ってくる突進。
ネコバスの前面がカパッと開き、幼児が落書きしたような歪な絵が描かれた極太のミサイルが飛んできて着弾すると広範囲に白い煙を漂わせる。
生憎と状態異常無効のスキルを持つ俺には物理的ダメージは通るものの、女体化も幼児化も効き目は無い。つまり、クルイガミの厄介な能力も俺の前には種が分かる手品のようなもので面白みは一切ない。
遠慮なく高火力のバレットを叩き込み、クルイガミのクアドリガをボロボロのボロ雑巾になるように痛めつけていく。ようやく自分が不利だと分かったのか逃げようとするクアドリガの前を陣取って、俺は以前クルイガミのウロヴォロスの触手を根元から引きちぎった徹甲散弾をクアドリガのネコバスに向けて撃った。
前面のネコバスを粉砕し、廃熱器官と頭の部分だけが吹き飛んでいく。何気にクルイガミのコアの剥離はこれが初だなと神機を捕食形態に変えてアグアグさせる。
しかし、手応えがない。
コアは吹き飛んでいった頭部の方かと、その場から離れたのだが落下地点にクアドリガの頭部は無かった。あったのは小さな人型の足の跡と何かを引き摺っていった跡だけ。
「え……まさか回収された?」
俺は痕跡を追って鎮魂の廃寺の奥地へと向かう。しかし、残された痕跡は降りしきる雪が隠し始め、俺はその姿を確認出来ぬまま撤退せざるを得なかった。敵はクルイガミのクアドリガだけという俺の慢心による失敗だと落ち込んでいたら、意気消沈した様子の竹田ヒバリから連絡が入る。
第一部隊が大変なことになったと。
『ミッション名:「蒼穹の月」』
任務中、戦闘区域が被っていることに気付いたリンドウたちであったが、その途中で催眠をかけられていたアリサの精神が不安定になり、リンドウを廃教会に残して撤退。リンドウはディアウス・ピターを初めとしたヴァジュラの上位存在の群れに襲われ行方不明になるものだ。
ぶっちゃけた話、クルイガミの猛襲を受けている現在、一般的なゴッドイーターの3.2倍の実力を持つリンドウを亡き者にするという無謀な計画を実行した支部長とオオグルマの考えが分からない。
他のゴッドイーターからは『死神』と恐れられるソーマ・シックザールは日によって女体化する不安定な状態だし。転生者から絶大な人気を誇る主人公ちゃんとアリサ・イリーニチナ・アミエーラは出撃する度、クルイガミの襲撃を受けて全裸か半裸か男になってアナグラに戻ってくるというルーチンワークになっている。
彼女らに巻き込まれると厄介だと、最近第一部隊のメンバー以外では誰も一緒に任務を受けてくれないらしい。
アナグラに戻った俺はオペレーターの竹田に任務失敗の旨を伝えて、自室に帰ろうとしたのだが第一部隊の皆のところへ行ってくれと言われる。何故俺なのかを尋ねるのは野暮な気がして、何も言わずに彼女らがいるという医務室へ向かう。そこで目にしたものは……
「きゃっきゃ」
「ぶーん!ききー」
「うえっ……えっぐ……ひっく」
フェンリルにて厄介な性格を持つゴッドイーターたちを実力と注射で黙らせる百戦錬磨の医師や看護師たちが部屋の片隅で真っ白になっている中、医務室内を走り回る子供たち。赤茶色の髪を持つ男の子は何かヒーローっぽいものを壁に落書きし、赤い帽子を被った子は泣きっぱなし。ベッドに腰掛けてボーっとしている者も居れば、玩具の取り合いをしている子供たちもいる。
「なぁにこれぇ……」
医師や看護師から新しい生贄が来た的な視線を感じたので子供たちが気付く前に退散する俺。そういえばソーマっぽい褐色肌の少女もまたあり得ないくらい幼稚な行動をしていたなと今更ながら頭を抱えていると声を掛けられる。
「帰ったようだね、アルク君」
「榊博士……もボロボロっすね」
「成りは子供でもゴッドイーターだからね。はは、……まいったよ」
服はよれよれで髪はボサボサ、榊博士のトレードマークの糸目はさらに細くなっており、彼らに手を焼いたのが窺える。
「持続時間はどれくらいっすか?」
「ソーマくんは6時間28分くらいで元の姿に戻って、ヨハンにお姫さま抱っこされている状態に悶絶していたそうだよ」
「うへぇ……」
是非ともその光景はカメラに収めておきたかったが、もしもその場に居合わせていたら今頃、死んでいたかもしれないから脳内妄想だけに留めて置くことにする。俺は首だけ振り返って医務室の扉をじっと見る。
「彼らのことは我々に任せてくれて構わないよ。それよりもアルク君には頼みがある」
「何ですか?」
「先日のソーマ君のデータと今回の第一部隊の隊員全員のデータを解析したところ、この幼児化ウイルスに対して効果を発揮するだろうと思われる素材が分かったんだ。ただし、この素材を持つアラガミはイレギュラーである可能性がかなり高い」
榊博士は申し訳無さそうに話を振ってくる。俺は今まで戦ったり見てきたクルイガミを思い浮かべる。
「衣類を食べつくすオウガテイル、性転換させるサイゴート、尻を狙うウロヴォロス、半裸好みのシユウ、幼児化させるクアドリガ。もしかして、次は相手を老化させるアラガミですか?いや、それだと需要がないな……」
俺の発言を聞いてモノクルをきらりと輝かせる榊博士。
「察しがいいね、アルク君。老化というと怒られるから、ここでは熟成と表すけれどね。つまり青年をナイスミドルに、女性を妖艶で色っぽいマダムに変えてしまう鱗粉を振り撒くサリエルなんだけれど、今後もワクチンを作るのに必要となるだろうからそのサリエルは生かさず殺さず、羽を毟り取ってきて欲しいんだ」
「……俺以外は任務にならないから仕方ないっすね。報酬は高めに頼みますよ……それにしても、最近出撃しっぱなしだなぁ」
「君の“状態異常無効”体質の謎を解明できれば、負担は減ると思うのだが中々成果がでなくてね。報酬はいつもどおり口座に振り込んでおくよ。……しかし、あんなに貯めているのにまだ稼ぐのかい?」
「1回のバレットエディットで湯水の如く消費されるから、いくらあっても足らんのです」
原作と違って試行錯誤の連続でほとんどうまく行かなくて失敗して丸ごと廃棄したっていうのもザラだからね。試し撃ちなんて出来ないし、戦場で使ってみてダメだったら即廃棄だし。
それでもメテオは作りたい。けど、完成するまでいくら掛かるかわかんないんだよね……。
「とりあえず、任務受注して行ってきます。それにしても……リンドウが無事で良かった」
「……うん?何の話だい」
「いえ、独り言です。では……」
それ以上は何も言わず、俺は医務室の前から去る。次はサリエルか……また面倒臭いクルイガミなんだろうなぁ。
【クアロリガ】
かつて子供たちが遊ぶ場所である公園に設置されていたであろう遊具が背中に刺さった状態のクアドリガ。
ミサイルポッドにはクレヨン、前面装甲にはヴァジュラの顔のようなレリーフがあり、廃熱器官は物干し竿となっている。幼児の下着を干している理由は不明。
突進攻撃以外のミサイルを使った攻撃には相手を幼児化させる成分を含んだオラクルのミストが入っており、それを吸い込むことによって3歳から5歳くらいの幼児になってしまうことが分かっている。
これは10代20代の若者だけでなく、40代50代であろうと若返るため、一部地域では神格化の動きが出ているようだが、大抵の場合は元の姿に戻った際にショックを受けることが多いようだ。