赤鬼転生記~クロスオーバーオンライン~   作:コントラス

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終盤で残酷な描写があります。お読みの際はご注意ください。


第十六鬼

 派手に響いた銃声だが、特にチンピラ達に反応はない。

 多分、感知範囲というか、意識の向く距離が決まってるんだろう。五m近付かないとこっちを認識しない、みたいな。

 そうでもないと、わらわらと寄ってきて、ウザいことこの上ないだろうし。

 

 

「さて、進むぞ」

 

「⋯⋯」

 

「⋯⋯小夜?」

 

 

 声を掛けても返答はない。転がったおっさんに唖然とした眼を向けたまま微動だにしない小夜。

 おっさんは白眼を剥いてガードレールに背中を預けてぐったりとしている。昏倒させたことによって経験値は俺と小夜二人に分配される。

 パーティーでの行動時は、誰が止めを刺しても影響はなく、均等に分配されるようになっている。

 昏倒させた敵は起きることはないらしく、後ろを気にせずに進める。

 

 

 〈シークレットミッションクリアにより4SPが授与されました〉

 

 

 眼前に現れたウィンドウに、小夜はビクッと肩を震わせる。

 これは、初戦闘とか? いや、撃破のほうか? どっちにしろ、初回はSPが貯まりやすいみたいだ。

 コンバットマグナムを買ったときに2SP。小夜とパーティーを組んだときに5SP貰えたからな。暫くはSP授与ラッシュが続くのかもしれない。

 

 

「⋯⋯どうした?」

 

「え? あ、いえ! その、人ってあんなに飛ぶんだなぁって思いまして!」

 

 

 わたわたと手を胸の前で振る小夜に、苦笑する。

 

 

「まぁ、ゲームだしな。他のVRなんかもっとブッ飛んだやつもあるぞ。殴り飛ばしたやつが、ビルにゴンゴンぶつかりながら跳ねる仕様は面白いって言うより、白けたのを覚えてるよ」

 

「そ、そんなゲームがあるんですか?」

 

「ゲームはしないのか?」

 

「はい、始めてです」

 

「そうなのか? 今時珍しいな」

 

 

 ステータスを開き、SPを振り分けながら問答する。小夜も俺に倣うようにSPを振り分けている。

 強力なスキルを得るのも良いが、まずはアバターの強化が先決だと俺は思っている。

 どんなに強いスキルでも、攻撃力が低ければ威力は出ないし、防御力が低ければ装甲も薄い。それに、速さだって出ない。

 逆に、ステータスが高ければ、普通の攻撃でもそこそこのダメージを与えることは可能だろうし、防御する以前に回避することだって容易になる。

 要は、序盤はアバター強化が重要だと思うって話だ。スキル面じゃなくて、地の強さみたいなのがな。

 

 それはさておき、俺のステータスもそこそこに上昇した。心なしか、動きが軽やかになった気がそこはとなくしないでもない。

 ぶっちゃけ、大きな違いはないように思う。

 

 ◇◆◇

 

 コーイチ(男)

 

 レベル1

 

 攻撃力──30

 

 防御力──20

 

 速さ──20

 

 知能──11

 

 SP──0

 

 《スキル》

 

 なし

 

 ◇◆◇

 

 攻撃力に10、防御力と速さに5ずつ、知能に1のSPを振り分けた。

 上三つは切りよくして、知能には余った分を振り分ける。スキルは⋯⋯習得できていない。まぁ、たった一度の戦闘で習得できたら苦労はしないか。

 

 

「振り分けたか?」

 

「は、はい! こんな感じですけど、どうですか?」

 

 

 そう言って小夜は俺にもステータスを見れるようにした。

 

 ◇◆◇

 

 小夜(14)(女)

 

 レベル1

 

 攻撃力──14

 

 防御力──23

 

 速さ──12

 

 知能──15

 

 SP──0

 

 《スキル》

 

 なし

 

 ◇◆◇

 

 ダメージを受けるのが怖いのか、防御力に集中して振られている。

 得たSP量は一緒だったんだけどな。こうも違いが出るのかと感心する。

 

 

「良いんじゃないか? 少し防御力に偏ってるけど、他を上げてないわけでもないし。あ、でも年齢は隠しとけ。今のご時世、いないとは思うが、変なことを考えるやつがいないとも限らない」

 

 

 変なこと? と、小首を傾げながらも小夜は設定を変更する。

 SPの振り分けがどの辺までアバターに影響を与えるのか分からないが、小夜のやり方もそう変なものじゃないだろう。

 

 

「いくぞ?」

 

「は、はいっ!」

 

 

 少し肩に力が入りすぎなように思うが、まぁ最初だしこんなものか。

 

 俺達は堂々と車道の真ん中を歩く。

 左の脇に止めてある赤い乗用車のボンネットに腰かけたチンピラと、そいつを囲むようにして立っている三人のチンピラが俺達に気付いた。

 距離は3mってところか。これぐらいが感知範囲だな。

 

 特に何を言うでもなく彼らは襲い掛かってきた。

 武器はない。拳を振り上げて、チンピラの一人が小夜に殴り掛かる。

 

 

「ひっ!」

 

 

 引きつるような悲鳴を上げて硬直する小夜の前に出て、振り下ろされた拳を左手で掴む。

 

 

「がっ!?」

 

「コーイチさんっ!?」

 

 

 ⋯⋯掴めたと思ったんだが、掌をすり抜けて諸に左頬を殴り付けられた。

 タイミングと掌の位置が僅かにズレた。その結果、顔面に直撃を喰らってしまう。

 後ろに一歩よろめく。頬がひりひりと傷み、視界が揺れる。首を左右に振ってなんとか体勢を整えた。

 

 

「ははっ、カッコ悪いところ見せたな。まぁ、大丈夫だ。負けないから」

 

 

 心配するような視線を背中に感じてそう言ってみるも、どうも調子が出ない。

 この反応の鈍さは、防御力が低いからか? と、考えを巡らせる余裕はないな。

 

 

「はっ、ダセェぞ、ガキが!」

 

 

 鼻で俺を嗤い、更に拳を繰り出すチンピラに合わせて、今度は左手の甲を相手の肘間接に合わせて外側に開く。

 そのまま前に押しながら肘間接に合わせた手を大きく円を描くように左に回し、関節を曲げて背中側に手がいくように持っていく。

 チンピラの身体に、歪な三角形の隙間ができた。

 

 ⋯⋯その形に持っていくのに、12秒の時間を使った。スマートに決められたとは言えない。これも体術のスキルがあれば改善されるか?

 

 

「い、いででででっ! ギブッ、離してっ!」

 

 

 どうも一階では、一度に一人しか襲い掛かってこないらしい。

 他の三人のチンピラは俺が関節を決めたチンピラの後ろに控えていて、手を出してくる様子がない。

 それは俺にとっては都合がいい(序盤はプレイヤーに慣れさせるために、そういう設定にしてあるんだと推測する)。身体の動かし方を把握しながら進めるからな。

 

 チンピラの身体にできた三角形の隙間に右手を入れた。当然手にはコンバットマグナムを握っている。

 こうすれば手のブレも少なくなるし、反動で腕が上がることもない。このチンピラを盾にだってできる。一石三鳥だ。

 

 バン! バン! バン!

 

 

「ぎゃっ!」「ぐふっ!」「ぶっ!」

 

 

 続け様に三発発砲すると、同時に悲鳴が三つ上がった。

 避ける素振りを見せることもなく、チンピラ三人は身体に鉛弾を受けて倒れた。一撃で昏倒だ。ここでは、コンバットマグナムは最強だな。わっはっはっは。

 

 これで射ち止めだ。コンバットマグナムの装弾数は六発。最初のおっさんに三発。今のチンピラに三発。これで全部使い切ったわけだ。このまま再装槇(リロード)しないと、ただのオブジェだ。

 が、このチンピラを離して即再装槇できるとは思えない。多分もたつくだろう。それは今までの動きで想定できる。なら⋯⋯。

 

 

「小夜、こいつを離したらお前が射て」

 

 

 もう一人、銃を持ってる人間に射たせればいい。

 

 

「え?」

 

「できるな?」

 

「で、でも⋯⋯」

 

「一、二の、三! で、離すぞ?」

 

「え、あの、ちょっと待ってください!」

 

 

 戸惑い、オロオロする小夜を無視して言葉を続ける。

 

 

「一、二の、三!」

 

「えっ、えぇいっ!」

 

 

 破れかぶれといった風に、小夜はグロック18を両手で握りしめて銃口を、俺が突き飛ばすように離したことでたたらを踏むチンピラに向けて射つ。

 真ん丸のお目々はしっかりと、ぎゅっと瞑られていた。

 

 ⋯⋯ダメだこりゃ。

 

 ダダダダダッ!

 

 

「ひぃっ!?」

 

 

 グロック18はフルオートで、引き金を引き続けると、装槇された弾丸が尽きるまで発砲し続けるようになっている。

 セミオートに切り替えることもできるが、どうやら今はフルの状態らしい。

 

 カランカランカランと薬莢が転がる。

 装弾数は33発。それが10秒も経たずに射ち切られた。

 ⋯⋯すごいな。何が凄いって、一発も当たってないのが凄い。

 

 

「ビ、ビビらせやがって、この下手くそがっ!」

 

「ひうっ!?」

 

 

 頭を抱え、しゃがみこんだチンピラが立ち上がって勢い付く。

 びくんと小夜の肩が跳ねて重量感があって柔らかそうな胸がゆさっと揺れた。

 

 それを視界の端で捕らえながられんこん状の弾倉(シリンダー)を出して薬莢を排出、時間を掛けて弾を一発ずつ丁寧に装槇、シャコッと軽快な音を響かせて弾倉を戻す。

 キリ。撃鉄を引いてセット完了。後は照準を合わせて⋯⋯。

 

 

「射ちまーす」

 

「ぇ?」

 

 

 小夜に近付くでもなく、その場でがなり立てるチンピラに宣言する。

 右手はグリップを握り、人差し指を引き金に。左手は銃を支えるようにグリップを握った右手の下に添える。

 

 ダァン!

 

 躊躇なく引き金を引く。

 バシュッと着弾。弾はチンピラを逸れて背後の車のボンネットに当たって穴を空けた。

 硝煙を上げる銃口が上を向いていた。反動を押さえられず、腕が上がってしまっている。

 

 

「は、はっ! どこ狙ってんだ、へ、下手くそっ」

 

 

 声が震え、足が震えているチンピラに凄まれても怖くない。しかもその場を動けないでいる。

 汗も凄い。母さん、ちょっと敵キャラの恐怖の感情がリアル過ぎませんかね?

 目の泳ぎ方とか半端じゃないし⋯⋯イベントでもないのに、雑魚キャラがこんなに感情持ってるってどんだけだよ。

 

 そんな仕様もないことに思考を逸らしながらも、再び照準を合わせて撃鉄を引く。弾倉が回転する。引き金を引く。ダァン! 弾丸は再びボンネットに穴を空ける。

 照準を合わせて撃鉄を引く。弾倉が回転する。引き金を引く。ダァン! ボンネットに穴を空ける。当たりどころが悪かったのか、ボンネットから煙が出始め、数秒と経たずに火を吹いた。

 

 

「は、ははっ! 無駄射ちしてやがるぜっ!」

 

 

 笑って見せるも、チンピラの頬の筋肉は完全に引きつっている。つくづくリアルだなぁと思いながらも、照準を合わせて撃鉄を引いて射つ。ダァン!

 

 ボガァァンッッ!

 

 車が爆発した。尊い犠牲だな。

 まぁ、それは置いといて、照準を合わせて撃鉄を引いて射つ。ダァン!

 

 

「お、おい?」

 

 

 照準を合わせて撃鉄を引いて射つ。ダァン! 六発目だ。再装槇しなければ。

 

 

「き、聞いてんのか?」

 

 

 さっきよりはスムーズに装槇できた。

 照準を合わせて撃鉄を引いて射つ。ダァン!

 

 

「ちょ、ちょっと?」

 

 

 照準を合わせて撃鉄を引いて射つ。ダァン!

 

 

「あ、あの?」

 

 

 照準を合わせて撃鉄を引いて射つ。ダァン!

 

 

「ま、待って!」

 

 

 照準を合わせて撃鉄を引いて射つ。ダァン!

 

 

「ほ、ホント待って!」

 

 

 照準を合わせて撃鉄を引いて射つ。ダァン!

 

 

「わ、分かった!」

 

 

 照準を合わせて撃鉄を引いて射つ。ダァン! 六発目だ。もう一度装槇だな。

 

 

「あ、謝る!」

 

 

 照準を合わせて撃鉄を引いて射つ。ダァン!

 

 

「ひぃっ!? い、今、微風がし──照準を合わせて撃鉄を引いて射つ。ダァン! ──⋯⋯も、もうやめへぇっ!」

 

 

 泣いた。号泣だ。鼻水も酷い。

 腰が抜けたのか、膝から崩れ落ちて、正座を崩したみたいな座り方になっている。所謂女の子座りってやつだな。

 仕方ない、そんな顔をみせられると、俺も心が痛む。

 優しく微笑んでコンバットマグナムを降ろしてやると、チンピラは泣き顔をホッと安心したような笑みに変えた。

 

 照準を合わせる。

 

 

「へ?」

 

 

 射つ。ダァン! チュンッ。チンピラの足元に穴が開いた。

 一瞬でチンピラの汚い笑みは絶望に変わった。

 

 

「な、なんでぇっ!?」

 

「なんでもなにも、止めるなんて言ってないぞ?」

 

「うわぁ⋯⋯」

 

 

 小夜から哀れみの声と言うか、ドン引きしたような声が漏れる。

 

 

「あ、悪魔だぁっ!」

 

 

 照準を合わせて撃鉄を引いて射つ。ダァン!

 どんどん距離が近付いている。今ので合計何発だ?

 おっさんに三発、チンピラ三人に三発、目の前のへたり込んだチンピラに⋯⋯二回の装槇で十二発、今ので四発──ダァン! ──じゃなくて五発目だから、十七発だな。

 ってことは、合計二十三発──ダァン! ──違った。二十四発だ。

 再装填。照準を合わせて撃鉄を引いて射つ。ダァン!

 

 

「もう殺してくれぇッ!」

 

 

 命乞いをされてしまった。

 俺も当てたいんだけどな。どうも手ブレが酷くて当たらない。

 なので、照準を合わせて撃鉄を引いて射つ。ダァン! これしかできないだろ?




今作最多の文字数がこの内容⋯⋯チンピラには酷いことをした。
反省も後悔もないですけどね!
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