赤鬼転生記~クロスオーバーオンライン~   作:コントラス

18 / 19
第十七鬼

 俺と小夜(さよ)は二階へと続く階段の前に来た。

 ここに来るまでに使った弾丸の数は213発。最初のチンピラに200発使った。その200発を越えたとき、シークレットミッションの達成ログと、『銃技』取得のログが視界内に現れた。

 200発撃つことが取得条件だったらしい。シークレットミッションは初スキル取得だろうと思う。

 なにはともあれ、ステータスのスキル欄に『銃技』があるのは嬉しく感じる。

 しかし、小夜はまだスキルを取得できていない。

 最初に外しまくった所為で、109発しか撃てていないからか、オートマチックとリボルバーで差異があるのか⋯⋯なんであれ、小夜のスキル取得には少し時間が要りそうだ。

 

 閑話休題。

 

 そこはT地路の突き当たりのビルで、左右へと続く道は5mほどある鉄板の壁で封鎖されている。

 周辺は開けていて、車は一台もない。お誂え向き(・・・・・)の広場だ。

 などと、周辺の状況を確認していると⋯⋯。

 

 ガラララ──ガシャァンッ!

 

 

「ひゃっ」

 

 

 小夜が悲鳴を上げる。

 階段の入り口に鉄格子が下りてきて、閉ざされる。

 各階にはフロアボスが配置されている。ソイツとの決戦の場は、階上へ上がる前に設けられた広いスペース。

 つまり、ここだ。

 

 

「おいおい、オレサマに断りもなく上へいくのかよ? それはつれないんじゃないの?」

 

「ひぅっ」

 

 

 背後からざらついた声が俺達に浴びせられた。

 それにも小夜が悲鳴を上げて肩を跳ねさせた。身長に似合わぬ胸が、たぷんと重量感たっぷりに揺れた。

 それを横目で捉えつつ振り向けば、20mほど先に、鉄パイプで地面をコツコツと叩く金髪耳ピアスのチンピラがいた。全体的にノッポで、面長な感じだ。

 パワーはなさそうで、非力な雰囲気。強そうな感じはしない。

 

 そのチンピラの後ろにいく道は、乗用車が並べられて、塞がれている。

 引き返して逃げることはできないってことだ。

 

 

「お前がこのフロアの長だな?」

 

「あん? それがどうしたよ?」

 

 

 俺の質問にどこか小馬鹿にするように返すフロアのボスチンピラ。

 なんだか怖い人ですっ⋯⋯。と呟いて震えている小夜は置いておいて⋯⋯まぁ、問答も要らない。一応の確認さえ取れれば、後は討つだけだ。

 

 バン!

 

 スキルを得たことで、安定した姿勢、押さえられた反動、向上した射撃技術でチンピラに発砲する。

 

 

「うぉっと!?」

 

 

 大きなサイドステップを踏んで銃弾を躱すチンピラ。

 スキルを得てから何度か戦闘をしたが、銃弾を躱したチンピラはいなかった。

 大きく動いてはいるが、反応ができる程度には雑魚とボスとで、実力に差があるらしい。

 

 

「いきなり射つとか、常識がねぇのかテメェ!」

 

「問答無用」

 

 

 バン!

 

 蟀谷に青筋を浮かべて恫喝するチンピラに、再び発砲する。

 有益なゲーム情報が得られるわけでも、フロア攻略に繋がるわけでもないチンピラとの対話は、するだけ無駄だ。

 

 

「小夜、射て」

 

「え? ⋯⋯あ、はい!」

 

 

 チンピラの容姿に呆けていた小夜に声を掛け、グロック18を構えさせて、射たせる。

 フルオートのまま、ダダダダダッと弾丸を射出し、相変わらずのブレブレでチンピラには当たらないままアスファルトに穴を空け、ビルのショーウィンドウを砕き、車を大破する。

 

 流石に目を瞑ることはないが、標準がバラバラだ。

 近くを掠めるのもあるが、てんで明後日の方に飛ぶのもある。雑魚ならともかく、ボスチンピラには驚異にならない。

 

 

「あわわわわっ!」

 

 

 銃に振り回されながらも、なんとかボスチンピラに標準を合わせようと奮闘する小夜の横で、俺は落ち着いて1発ずつ射つ。

 散発される9mmパラベラム弾の中に、.357マグナム弾が紛れてボスチンピラを襲う。

 大きく躱せば小夜の銃弾に、その場で止まっていれば俺の銃弾に当たる。

 遮蔽物のないこの広場で、ボスチンピラが取れる手段は少ない。

 そう、例えばリロードの合間にできる空白とか。

 

 

「あわっ!? えっと、えっと!」

 

 

 グロック18の弾切れ。わたわたと慣れない手付きでインベントリからマガジンを取り出し、空になったマガジンを捨てて新しいのと入れ換える。

 その隙がボスチンピラの好機だ。

 躱す範囲を小さく押さえながら、銃弾を躱していたボスチンピラが前に出る。

 

 バン! バン!

 

 撃鉄を上げるまでの間が最初に比べてスムーズにできる。

 1秒ほどの感覚を空けて2発、駆けながら右に大きく一歩、左に大きく一歩、その動きで銃弾を躱してみせた。

 一階のフロアボスでもその程度の芸当はできるらしい。

 

 

「おらぁっ!」

 

 

 狙いは小夜だ。

 ようやくチャカッとマガジンを装填した小夜に、大上段から大振りに鉄パイプを振り下ろす。

 速くはない。雑魚とステータスに差はないように思う。

 

 

「させるかっ!」

 

 

 小夜とボスチンピラの間に入って鉄パイプを左手で受け止める。力は若干俺の方が強い。

 

 ただ、銃の対処が段違いに上手いってところか。攻略法は⋯⋯接近戦か。

 でないと強すぎるもんな。銃弾躱して近接戦闘もできるとか、初心者には勝てないって。

 

 

「そっ、装填できました!」

 

 

 後ろから声を掛けられる。

 掴んだパイプを引いて、ボスチンピラを引き寄せて腹に右膝を入れる。

 重心の安定が悪く、力が入りきらず、威力のない膝蹴りだった。

 俺が小夜の前から退いて、彼女が標準を合わせてトリガーを引くときには痛みが収まっていた。

 やはり、入りが甘い。

 

 ダダダダダッ!

 

 距離は2mも離れていなかったが、逃げることはできたらしい。

 銃で倒すのは無理なのかもな。そう思った。ひょっとすれば、身体を慣れさせるためのチュートリアルみたいなもので、銃で簡単に倒せないようになっているのかもしれない。

 

 

「しっ!」

 

「ぶっ!?」

 

 

 コンバットマグナムをブレザーの下にあるホルスターに仕舞い、三歩前に出てボスチンピラの顔面に右ストレートを打ち込む。

 体重の乗っていないパンチを鼻っ面に受けて、ボスチンピラがよろめく。

 更に身体を寄せて、腹に掬い上げる左拳を一発、続けて蟀谷に左ショートブロウ、右フック、二連続の左ジャブ、首に両手を回して頭を引き下げて顔面に膝蹴りを見舞い、二度、三度繰り返して、右足を軸に一回転、遠心力に任せて左足を振り切ってボスチンピラを蹴り飛ばす。

 

 

「ぐっ、調子に乗りやがって⋯⋯っ!」

 

 

 2m先で仰向けに転がったボスチンピラが口を拭い立ち上がる。

 鉄パイプは手放していて、両拳を胸の前で握り締めて構え、タタン、タタンとリズムをつけてステップを踏む。

 これから泥臭い殴り合いか? 残念だがそうはならないぞ。こっからも俺のワンマンステージだ。

 

 今出せる全力の踏み込みでボスチンピラの懐に潜り込み、蟀谷を左拳で殴り付け、振り抜いた腕を返し際に裏拳、苦し紛れのパンチを掻い潜ってボディに一発、落ちた頭を襟首を掴んで引き上げて頭突きを叩き込み、鼻を押さえて痛がるボスチンピラの顎を地面から飛び上がるようなアッパーで打ち付けた。

 

 

「へばっ!」

 

 

 かち上げた身体が落ちてボスチンピラが、空気が抜けたような悲鳴を上げる。

 起き上がる気配はない。気を失ったらしい。

 上手いこと入った。これは実力じゃなくてマグレみたいなものだろう。

 会心の一撃。クリーンヒット。呼び方がなんであれ、相手の芯を捉えた感じだった。

 

 キイィィッ、と後ろで軋むような音が聞こえた。

 ピクンと小夜が跳ねたのはご愛嬌だ。

 振り返れば、階上へ上がる階段の入り口を閉ざしていた鉄格子が上がっていく途中だった。

 

 

「さて、道が開いた。上へ上がるぞ」

 

「はっ、はい!」

 

〈“武昇石”がインベントリに送られました〉

 

〈シークレットミッションクリアによりSPが授与されました〉

 

 

 小夜が頷くのと、ログが出たのはほぼ同時。

 小夜の肩が跳ねたのを見るに、彼女にもログが出たらしい。

 シークレットミッションは、一階を攻略したことによるものだと思う。

 

 階段に足を乗せて上る。10段進むと出口に着いた。

 外に出れば並列するビル群と広がる青空。パッと見た感じでは、一階と風景は大差ない感じがする。通りの奥には広場も見えるしな。

 敢えて探すとすれば、車やらチンピラの配置と数か?

 

 

「どうする? もう帰るか?」

 

「あ、えっと⋯⋯」

 

 

 塔に入って十数分、ゲームを始めて2時間と少しだ。小夜も同じくらいだろう。

 リアルとゲーム内では時間の流れが異なる。

 リアルでの24時間はゲーム内での48時間で、リアルでの12時間がゲーム内での24時間になる。

 ゲームを始めて2時間ってのは、ゲーム内での時間だ。リアルではまだ1時間しか経っていない。

 でも、初めての戦闘だ。そこそこに消耗しているだろう。そう思っての提案だった。だが⋯⋯。

 

 

「⋯⋯もう少し、進みたい⋯⋯です」

 

 

 遠慮がちに、俺の反応を伺うように上目遣いで言う。

 

 

「分かった。行けるところまでいってみよう」

 

 

 頷いてブレザーの裏に手を入れてコンバットマグナムを取り出す。

 

 この日、俺達は四階まで進んで塔を出た。まぁ、出たと言うか、車の中に潜んでた狡猾なチンピラに不意を突かれて頭を強打され、二人とも気絶したから出ただけだけどな。




塔を出たときのステータス変化

コーイチ(男)

レベル1→6

攻撃力──30→35

防御力──20→25

速さ──20→25

知能──11→16

SP──0

《スキル》

銃技──E


小夜(女)

レベル1→6

攻撃力──14→17

防御力──23→30

速さ──12→17

知能──15→20

SP──0

《スキル》

なし
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。