白雪へ。
拝啓。お元気ですか。
貴女は海軍本部からの出向という形で配属されてきた艦娘でしたね。
よく覚えています。
初の編成任務の報酬という形で、本部からの増援として送られてきた貴女のことも。
最初の戦闘で共に苦難の数々を味わったことも。
五月雨、磯波と共に鎮守府正面海域で戦った序盤の立役者。
最初こそ、軽巡ホ級の主砲に撃ち抜かれ、群がる魚雷の数々に大破させられた戦闘でした。
もっとも、駆逐艦の艦娘が揃ってからは、1-1で負けた記憶は偶にしかありません。
1-2での戦闘も、最初の航路を逸れるという問題を除けば、順調でしたね。
深海棲艦の全てを天に還すことは出来なくとも、安全な航路の確立は行えますから。
その後の戦艦ル級の恐ろしさを味わい。
羅針盤と渦潮に翻弄される日々が続いたのは苦い思い出です。
この期に及んでもドロップにこだわり続け、建造は最低値でしか回さなかった。
そんな愚かな私を殴ってくれて構いません。
私も当時を思い出すと自分を殴りたい気分でいっぱいです。
霞だったら、容赦なくひっぱたくのでしょうね。
ふふ、手紙を書いている最中ですが、思わず情景が浮かんできて、苦笑してしまいそうです。
そうした楽しかった日々を思い出せば、少しは気分も晴れるというものです。
思えば白雪という艦娘の配属はとても上手いものでした。
吹雪と組ませれば、とても頼れる相棒として活躍し。
叢雲と組ませれば、提督と良い意味で喧嘩しそうになる二人を仲裁し。
漣と組ませれば、ふざけすぎた彼女を姉としてやんわりと注意し。
電と組ませれば、心優しく健気で、深海棲艦とのことで悩む彼女を優しく励まし。
五月雨と組ませれば、ドジっ娘気質の彼女を必死に支えた。
最初の五人が秘書艦だとすれば、貴女は秘書艦の為の秘書艦ともいえる人物。
そういった意味で本部の采配はうまいとおもいます。
その本部の正体も知った今となっては、■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■、■■■■■■■。
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ええ、本当に申し訳ない気持ちです……
あの頃の私は本当にダメダメな新人司令官で、頼りない提督だった。
泊地の拡張を待たねば、物資の備蓄も満足にできない状況。
どうせ備蓄できないならば、輸送艦隊が集めてくる物資を使うべきで。
だから、積極的に建造してでも、戦力を拡張すべきだった。
昔に戻れるなら、もっと上手に艦隊を運用したのでしょうね。
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ふふ、すみません。少し愚痴を書いてしまいました。
貴女は吹雪型駆逐艦の二番艦で、生真面目で、しっかり者のお姉ちゃんだから。
深雪を初めとする吹雪型の妹たちが、頼りたくなるのも分かるくらい頼りになる子だから。
こうして頼りたくなってしまう。少し貴女に弱音を吐いてしまうことも多々あった。
五月雨が零したお茶を、淹れなおしてくれたのもいい思い出です。
でも、そんな生真面目で頼りになる貴女も、間宮や伊良子の和菓子で労ってあげると、子供の様に目を輝かせて喜んでいたのを今でも思い出せます。
個性的な妹たちに振り回されて大変だと、思いますが休めるときはしっかり休んでくださいね。
昔と違い、今では頼りになる艦娘たちがたくさんいるのですから。
まあ、問題児も多いので真面目組の苦労を思うと、居た堪れないのも事実なのですが。
ああ、今でも昔のことが昨日のことのように思い出せる。
ふざけ組がいつものように騒いで、それを抑えようと真面目組が奮闘して、いつものように巻き込まれる。
そして一緒になって騒いでいる光景が、思い浮かぶ。
また、あの頃に戻れたら嬉しい。■■■■■■。■■、■■■■■■…
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司令官へ。
いや、これを司令官への手紙と言っていいものか。
どちらかといえば、私の心を整理するための独白のような気がする。
この手紙は、いや、これを含む全ての艦娘に残された手紙は、司令官からの最後の言葉だ。彼の想いを残したものだ。
中には密かに司令官と文通していた子もいたので、手紙は複数枚あったりする。そういうときは司令官が元気だったころの時期もある。
この手紙も実を言えば一枚目と二枚目があって、くしゃくしゃになって捨てられた一枚目をを見つけるのに苦労した。
そう、一枚目を元に、二枚目を書いていて。だから、五月雨や磯波の手紙には綺麗な言葉しか書かれていない。
そこに存在する提督の本心が残されていない。
例えば====の部分は意図的に切り取られていた。
妖精さんと協力して探しだし、渋る明石さんにも頼んで復元してみれば、第八十一号作戦を思い起こさせる状況で、1-4海域に私たちを投入してしまったことに対する懺悔が書かれていたのを、部分的だが察せる文だった。
きっと最初で最後の手紙くらい楽しい思い出で埋め尽くしたかったんだろうと思う。
あの人はとても優しい人で、私たちにとって父のようであり、兄のようであり、人によっては手のかかる弟のような人だったから。
今でも持っている。間宮の羊羹の包み紙で作った折鶴を。
それを見れば、頑張ったご褒美だよ。と、微笑みながら手渡してくれた優しい司令官の顔を思い出せるから。
そして、いつもありがとうと頭を撫でてくれて、優しくしてくれるのだ。大抵の駆逐艦娘はそんな司令官の仕草が大好きだった。
身寄りを失い、家族を失い、本当の名前さえ失った私たちには。それは確かなつながりだったのだから。
きっと、塗りつぶされた場所には、あの人の真意が書かれている筈。司令官が私たちに何を残したかったのか。私はそれを知らないといけない。
それを復元できたら、私はちゃんとした手紙を書こうと思う。
今はまだ、心の整理がつかない。