「私は…どこで道を間違えたんだろうなぁ……」
太陽も沈み始め、辺りが暗くなっていく頃。
海辺の公園で1人、ブランコに座っている束。
右手に持った球体を握り締め、沈みゆく太陽をただひたすらに見続けている。
「私はただ……
左手を伸ばすその先に広がるのは、満天の星空。
彼女の……今は叶わぬ夢が、そこには広がっていた。
「先輩なら…こういうときどうしたら良いか、教えてくれるかな…」
そう言うと束は携帯を取り出し、たった3つしかない連絡先の1つを開く。
そして後1回ボタンを押せば繋がるというところで、束の手が止まった。
その手はプルプルと震えており、視線を上げるように顔を見ると、真っ赤に染まっていた。
「で、でもなんて言えば良いのかな……そもそもこんな時間だし、迷惑じゃないかな…」
独り言が続く中、やっぱり掛ける。やっぱり辞める。
それを繰り返しながらも、携帯を握る力が強くなる。
そして左腕に集中するあまり、右手に持っている球体を取り落としてしまう。
「…あ!」
だが人間と言うのは、集中が途切れた場合両手で同じ事は出来ない。
そして寸前まで力いっぱい握り締めていた携帯は、咄嗟に右手を使った為か……
通話状態になっていた。
それを見て大慌ての束だが、既にコールされているため切ることは考えていなかった。
「も…もしもし、せ、先輩ですか?」
『久し振りだな。元気にしてたか?束。』
「は、はい。体調の方は、相変わらずすこぶる元気です。小鳥遊先輩。」
その電話に出たのは、束の先輩である小鳥遊拓也だった。
小学校を卒業して、中学校へと入学。
その当初から若干浮いていた束は、入学式もそうそうに校庭の桜の木の前で座り込んでいたのだ。
その当時からPCを広げてISを製作していたが、その時に後ろから声を掛けたのが当時中学3年生の拓也だった。
当時の拓也も束同様自由奔放な性格で、自身に直接関係ない入学式など出席していなかった。
そして校庭をぶらぶらと歩いていると、束と出会ったのだ。
「せ、先輩もお元気そうで何よりです。」
『まぁ、日々忙しいけどな。最近うちの会社のお偉いさんが、良いマルチフォームスーツが手に入ったとかで。正直てんやわんやだわ。』
「あ、あの!……そ、その事についてご相談が…」
勇気を出して、口を開く。
その言葉を言うのに…かなりの時間を使っている気がする。
だが…
この一言が…束が語る、人生の分岐点となった。