妹
ゴールデンウィークが終わり、休日ボケで物凄く寝たい衝動に駆られながら授業を聞いていると、教室の戸が開かれた。あぁ、比企谷か。あいつ、休日ボケで遅刻したのか?あ、休日ボケってのは長い連休があけ、物凄く寝たいと言う衝動に駆られることだ。特にゴールデンウィークや夏休み、冬休みあけによく見られる。
まぁ、俺の今年のゴールデンウィークは最悪だったがな。親父たちが死んだから無理はないが、咲がヤバかった。あれはSの俺でも躊躇う内容ばかりの注文だった。その一つが金属バットで頭を叩いてくれと言う内容だったため、さすがにやらなかったが。
そんなとてつもない壊れかたをした妹の面倒を見るため、部活は休ませてもらっている。平塚先生が理解のある先生で安心したよ。
まぁ、そんな事があってか、最近の咲の依存が半端なくなった。いうなら、重度のヤンデレブラコンってとこか。俺のSっ気は差異はあれど誰にでも発揮する。だが、それを咲が許せなくなったらしい。曰く『お兄ちゃんがドSになっていいのは咲だけだよ』とのことだ。あのときほど戦慄した瞬間はなかっただろう。元々その気質はあったが、あそこまでとは思わなかった。
そんなことを考えていると授業が終わった。だが、やはりというかなんというか、比企谷は平塚先生に呼ばれた。
そんな光景を眺めていると一人の女子、じゃなかった、男子が声をかけてきた。
「比企谷くん。何かあったのかな?」
「いや、それはないと思うぞ。多分休日ボケだろ。それより戸塚、比企谷に構うことを考えるより後ろでシャドー始めてる坂本をどうかしてくれ」
ほんと、こいつ女子力ないと思うな。いや、女子力(物理)はあるのかもしれんが。もう少しうちの妹を見習っちゃーだめだMが移ってもっとやばくなる。女子力(物理)と、一般的な女子力と、女子力(ドM)がついてくる。
そんな下らないことを考えていると、戸が開かれた。
入ってきたのは川崎沙希だ。こいつは意外、俺の記憶だと1年の時は早く来ていたはずだ。何かあったのか?まぁ、いいや、それよりもその高らかに挙げている拳を下ろそうとしないでください坂本さん。あなたの拳は下手すれば気絶しそうになるほどいたいときがあるんですから。
そうして俺の意識は刈り取られた。
俺が起きたときはすでに夕方だった。軽い頭痛を我慢しながら咲を迎えに行く。これが、最近の日常になり始める予感を感じながら。
咲のクラスメイトも咲の変化には勘づいているようで手を出そうとはしていない。言うなればボッチだ。正しくは違うかもしれんが今の咲を表すならそれが一番あっている。ただ違うのはクラスメイトが心配をしてくれていると言う点だろうか、まぁ、そりゃぁ心配にもなるだろうよ。ゴールデンウィーク明けに突然女子全員を敵視しているような状況となれば誰でも心配するだろう。
そうしてぼちぼち歩いていると咲のクラスについた。
「あ、お兄ちゃん」
「はいはい、お兄ちゃんだぞー」
そう言って咲の頭を撫でる。さっきまで仏頂面で本を読んでいた姿からは想像できないぐらいのとろけ具合だ。そんな表情を見ていた男子はうっとりとしているが、結構こいつの構ってアピールはヤバイからな。家じゃぁこの倍ぐらいはセットでついてくる。因みに内容は、一緒に風呂に入ろうとしてきたり、一緒に寝ようとしてきたり、今日はバットでしてくれるよね?とハイライトオフでいってきたり、サンドバッグにしてって懇願してきたりと頭痛の種だ。だが、これでも妹だある程度は承諾している。さすがにさっきあげた4つのうち3つはしてないが。そんな咲を見ていると、やはり思うところがある。
俺が両親の死にあまりショックを受けていないのはこれが、原因じゃないかと思っている。何せ、俺と咲は血が繋がっていない。言うなれば他人だ。どうあがいても血縁関係はない。このときほど血縁関係があればと思ったことはない。まぁ、その事を咲は知らないが。咲は知らなくていい。唯一の肉親が赤の他人の子でした。なんて、今の咲だとどうなるかわからない。求婚してくるのか、お兄ちゃんを殺して咲も死ぬと言うかそれがわからない。だが、妹として接してきたため、兄としてこいつを守りたいと思っている部分がある。家族の形なんて、人それぞれだ。だから、俺は異性としての咲を見ることはないだろう。あいつが色仕掛けをしなければの話だが。
これからのことを考えようと思っていた矢先に咲が声をかけてきた。
「ねぇ、お兄ちゃん。お兄ちゃんはいなくならないよね?」
その声は弱々しく一人の少女らしい。今までがドMという属性故に、こんな女の子の一面もちゃんとあるんだなと場違いなことを思ってしまう。
「あぁ、取り合えず咲が死ぬまでは死ねないな」
気休め程度のことを言った。だが、咲にとってはそれがよかったのか、笑顔で
「そっか、ならよかった。家帰ったら話したいことあるから逃げないでね?」
そういわれた。なぜかはわからないが得たいの知れない恐怖が俺を襲った。これがヤンデレ妹か。そんな場違いなことを思いながらだが。
そして家についた。因みに今は、咲と二人で住んでいる。親戚は皆県外に住んでいるため、そう簡単に集まれないし、俺もここから出ていくきはない。だから後見人として、叔父さんが名前を貸してくれている程度で、金や家のことは俺たちでやっている。まぁ、家事万能の咲と、外での交渉が得意な俺なら十分に切り盛りできるぐらい余裕だった。
まぁ、そんな中の話だ。そこまで考えなくていいだろう。
そう思っていた時期が私にもありました。
さて、現状を把握するためにひとつだけ言わせてもらおう。
なぜこうなった、と。
今咲の手には包丁が握られている。まさかここまでするとは。内心ハラハラしているのかワクワクしているのかわからないが、取り合えず云わせてくれ。
「なぜこうなった」
「それはお兄ちゃんがいったからだよ。咲が死ぬまでは死ねないって」
それか、それがトリガーとなったか。
「それに、こうやって死んでしまえばお父さんたちに会えるんだよ?お兄ちゃんも寂しかったんじゃないの?」
これが、大元となってるわけか。
「咲、ちょっとこっちにこい」
そう言って咲を近付けた。正直死ぬんじゃないかと心臓の刻む音がうるさい。だが、俺は咲の兄だ。兄として妹は守らなければならない。これが、弟でも同じだ。だからこそ、こいつは何がなんでも守る。そう、俺は決心した。
「咲、いいかよく聞けよ。俺はお前を死なすつもりはないし、死ぬつもりもない。何でかわかるか?」
「そんなのわからないよ。だってお父さんとお母さんが死んじゃって、そこに今までいた人がいなくなって、もしかしたらお兄ちゃんもそうなるんじゃないかって思って……」
「そうか、なら俺からお前に教えてやろう。人がなぜいきるのか。いや、正確には生物がなぜいきるのかってことだが、俺はこう思ってる。
これは俺の持論だ。十分に矛盾しているだろう。だが、それは結果だけを見た矛盾だ。
「そんなの、悲しいよ」
だから、これだけ聞くとそんな反応が帰ってくる。当然のことだ。そんなの、俺がこの持論を持った時点で言われることは百も承知だ。だから、そのための返しも用意している。
「そうだな。だが、生物はいずれ死に行く定めだ。そして死のその先に何があるかわからないから死ぬことが怖いんだ。だから、あるものを残そうとする。それがわかるか?」
そう、人は最終的には死ぬために生きている。だが、それと同時に別のものを産み出している。
「わからないよ」
やはり、というべきなのか、だがさっきまでの話を聞いてなお包丁が下を向かない辺りさすが、俺の妹と苦笑いしたくなる。
「そうか、考えさせる時間がもったいないから答えをいうぞ。それは家族を残すんだ。だから、俺は親父たちが残してくれた家族のためにも生きなきゃいけないし、お前を死なすことはできないんだよ」
だからその手に持っている包丁を下ろしてください。
その意思が伝わったのか定かではないが納得してくれたようだ。
「そっか、なら生きなきゃいけないね」
「わかってくれたか」
「うん。だからお兄ちゃん。今日は一緒にお風呂にはいろ?」
「一緒に寝るで手を打つので我慢してください」
やっと普段通りにと言っても恐らく風呂に誘うのは変わらないだろうが、過激な要求は減っていくことだろう。減っていくはず。減っていくよね?
そうして俺と咲、たった二人になった広い家での生活が始まった。
今回はオリジナルストーリーでした。俺ガイル関係あるか?と思うかた、本当に申し訳ないです。でもこの回挟まないと先に進めないんです。許してください。それではまた次回お会いしましょう