職員室から帰って来たら、丁度飲み物を買いにいった比企谷が、帰って来ていた。比企谷が俺にMAXコーヒーを渡しながら聞いてきた。
「東山、お前どこいってたんだよ」
「職員室に行ってたけど、それがどうかしたか?」
「いや、ならなんで俺に飲み物買いに行かしたし。どうせ職員室行くならその時に買えよ」
「まぁ、職員室に行ったのは必要になったからってだけで、飲み物がどうこうには、関係ないから安心しろよ。それとこれMAXコーヒー代」
そう伝えたが、どこか納得できないのか少し複雑そうな表情になった。そして、由比ヶ浜の依頼内容を聞いて納得したような表情に変わった。
「よし、それじゃあ、行きますか」
「なぜあなたが仕切っているのかしら?」
なんか雪ノ下に言われたが気にせず家庭科室に行こう。
そして、家庭科室についてある程度の時間がたった頃ようやくクッキーを作り始めた。ん?お前はなんかしないのか?だって?俺は戦力外だよ、料理とかは愚妹に任せてるから、俺の料理スキルは皆無だ。そうして1人クッキー作りを静観しているが、料理できない俺でもわかる。これは失敗する。そうだな、こんなときはあいつを呼ぼうか。
「すまん、ちょっと電話してくる」
そして、電話をして戻ってきたら、どう見ても失敗作であろうクッキーをどう処理するか頭を抱えた3人が室内にいた。やはりこうなったか。
「お前ら、もうそろそろそれを処理してくれるやつがくるから―」
「来たよ、お兄ちゃん」
「ナイスタイミングだ、愚妹よ」
「え、えぇっと……」
あ、由比ヶ浜たちに事情を伝えれてなかったな。
「こいつは東山咲。俺の妹で、今回そのクッキー(木炭)の処理のために呼んだ」
「あなた自分が今、なにしようとしているかわかっているの?」
「わかっているから呼んだんだよ。という訳で愚妹よ、あのクッキー(木炭)を処理しろ。そして、感想も聞かせろ」
「了解。お兄ちゃん、帰ったら何かご褒美頂戴ね」
「わかった、一つだけ聞いてやろう」
そうして愚妹は、クッキー(木炭)を食べ始めた。最初はどうにか止めれないかと慌てていた雪ノ下と由比ヶ浜だが、段々愚妹の表情がおかしなものに変わってきたのに気づいたのか完食するまで見守っていた。そして、愚妹が完食したと同時に感想を述べた。
「不味いです。何が不味いって料理なめているんですか?ってぐらい不味いです。お兄ちゃんの命令じゃなかったら絶対に食べてません」
うわぁ、こいつにここまで言わせるとは、だいぶ不味いんだな。俺は卵割る時ぐらいしか見てないから、何が入っているのか全然わからんが、こいつが食べているときうわっ、苦って言ってたから、そう言うのが入っていたのだろう。ちょっと聞いてみるか。
「なぁ、お前ら、あのクッキー(木炭)作るのに余計な物入れたりしたか?」
「か、隠し味にコーヒーを……」
そう答えたのは由比ヶ浜だった。
「それにしても苦すぎですよ!!」
「落ち着け愚妹。お前、最終的には恍惚とした表情で食べてたじゃないか」
「そりゃ、もちろん、お兄ちゃんの命令だ、って思いながら食べてると興ふ」
「わかった。なんとなくわかった。だからこれ以上は言わせねぇからな」
これ以上は不味い。何が不味いって?俺の高校生的な意味で不味い。そして、それを見かねた雪ノ下が改善するにはどうしたらいいかと言ってきたから俺は
「「「由比ヶ浜(先輩)が二度と料理をしないこと」」」
あれ?被った?
「全否定された!?」
「三人ともそれは最後の解決方法よ」
「されで解決しちゃうんだ!?」
なるほど俺と比企谷と愚妹が同時に言ったからか。まぁ、あれ見て料理させようなんて、絶対に思わない。そんなことを思っていると、由比ヶ浜が口を開いた。
「やっぱりあたし料理に向いてないのかな……。才能ってゆーの?そういうのないし」
それを聞いた雪ノ下はふぅっと短いため息をついた。それに関しては同感だ。なんだ、こいつクッキー作り初めてなんだろ?それを隠し味だなんだってやってくとそりゃ、失敗もするだろ。それを才能のせいにするのは筋違いってもんだ。俺と同じ事を思ったのか、雪ノ下が口を開いた。
「……なるほど。解決方法がわかったわ」
「どうすんだ?」
比企谷、お前はわからんのか。
「努力あるのみ」
まぁ、そうなるか。俺なら慣れるまで家族と一緒に作る、だな。実際、家の愚妹はそうやって料理が上達していったし。そんなことを思っていると比企谷が、
「それ解決方法か?」
はぁ、こいつはほんとに何も分かってないな。家の愚妹も努力してやっと今の家事スキルになったんだからな。
だから努力も立派な解決方法だ。それをわかっているのか、雪ノ下は俺が思っているのと同じ事を言った。それに続けるように
「由比ヶ浜さん。あなたさっき才能がないっていったわね?」
そう言った。こいつはおそらく才能がないやつは最低限の努力をしたことがない、みたいなこと言うんだろうな。ちょっとなにも言わずに聞いておこう。
「え。あ、うん」
「その認識を改めなさい。最低限の努力もしない人間には才能がある人を羨む資格はないわ。成功できない人間は成功者が積み上げた努力を想像できないから成功しないのよ」
その言葉は辛辣だったが間違いじゃない俺は会って数時間しかたってないがこいつは間違っていることは言わないのだろう。だが、正しいだけだと相手に伝わらないときがある。今の由比ヶ浜がいい例だ。何かをごまかすようにへらっと笑顔を作ったのだから。
「で、でもさ、こういうの最近みんなやんないって言うし。……やっぱりこういうの合ってないんだよ、きっと」
さすがにここまで来ると腹が立ってきた。
「なぁ、俺もう帰っていいか?」
「ダメよ。なぜ帰ろうとしているのか答えなさい」
「こいつが依頼を放棄しようとしたからだ。だから帰る」
「そう、わかったわ」
「感謝する。それと比企谷。お前は残れ。俺が残るよりお前が残るのがいい。もしお前も帰るんだったら……。」
「帰るんだったら、なに?怖いんだけど」
「それぐらい自分で考えろ」
「咲、帰るぞ」
そう言うと愚妹は呆けた顔をしたあとすぐについてきた。
帰り道、俺と愚妹が並んで歩いていると、愚妹が話しかけてきた。
「やっと、名前で呼んでくれたね」
「なんのことだ?」
「もう照れなくてもいいのに。それに帰るって言い出した理由も咲が関係あるんでしょ?」
「いや、関係ない。俺が由比ヶ浜に腹が立っただけだ」
「そういうことにしといたあげる。それじゃあ、お兄ちゃんあのクッキー(木炭)を食べたんだからお願い1つ聞いて?」
「わかった。で、なにがいいんだ?」
「名前で呼んでくれないかな?」
「は?なに言ってんだ?」
「だってお兄ちゃんいつも咲のこと愚妹って呼ぶじゃん。いい加減名前で呼んで欲しいよ」
そういった愚妹の表情は沈んでいた。はぁ、仕方ないこれからはちゃんと名前で呼んでやるか。
「わかったよ、咲」
そういった俺の口元は少し上がってただろう。
「よし、それじゃあ帰ったら、また虐めてね?」
「やだよ、めんどくさい」
「わかってるよ、お兄ちゃん。放置プレイの一環なんだよね」
「ちげえよ」
さっきまで愚妹って言い続けていたことを反省してた俺を返しやがれ。やっぱり咲は愚妹だった。
その時の俺は奉仕部に由比ヶ浜が居座るようになるとは思わなかった。
今回はここまでです。ここまで読んでいただきありがとうございました。次回も読んでいただくとありがたいです。
本文中にある(木炭)は、誰も口に出していません