俺が奉仕部に入って2日目の放課後、まぁ、要するに由比ヶ浜の依頼の次の日、俺は奉仕部の部室の前にいた。いや、結構気まずい。依頼の途中で帰った手前、どんな顔をして会ったらいいのか。よし、ここは、いつものノリで入ろう。
「邪魔するでー」
「どこの新喜劇だよ」
「さっすが比企谷、ナイスツッコミ。できれば、邪魔すんならかえってやー、って言ってほしかったけどな。ま、そんなことより昨日の依頼どうなった?」
「自分なりに頑張ってみるそうだ」
そうか、ならよかった。やっぱり比企谷残して正解だったな。まぁ、雪ノ下がいる以上帰らしてもらえないと思うけど、そういう役目は俺だけで十分だ。他の誰にもやらせない。そう改めて自分のやることを認識した時に戸を叩く音が教室に響いた。平塚先生でもきたのか?
「やっはろー」
それは予想外の人物だった。え、えぇとなんで?なんで由比ヶ浜がきてんの?あ、そうか、こいつの依頼は比企谷にお礼のクッキーを渡すことだったな、なるほど。まぁ、その挨拶?みたいなのだいぶ頭悪いと思われるからやめた方がいいよ。そんなどうでもいいことを考えてると雪ノ下が盛大なため息をついた。
「……何か?」
「え、なに。あんまり歓迎されてない……?ひょっとして雪ノ下さんってあたしのこと……嫌い?」
由比ヶ浜が雪ノ下の小声を聞いてひくっと肩を揺らす。それを見た雪ノ下が考えるような仕草をして平素と変わらぬ声で言った。
「別に嫌いじゃないわ。……ちょっと苦手、かしら」
「それ女子言葉で嫌いと同義語だからね!?」
女子言葉ってなんだよ。女子専用の言葉かなにかか?ま、そんなことはどうでもいいが由比ヶ浜があたふたしている。さすがに嫌われるのは嫌なんだな。
「で、何か用かしら?」
「や、あたし最近料理にはまだているじゃない?」
「じゃないって……初耳よ」
「で、こないだのお礼ってーの?クッキー作ってきたからどうかなーって」
さぁーっと雪ノ下の血の気が引いた。あれ?雪ノ下ってあのクッキー(木炭)食ってたっけ?まぁ、あの見た目なら食いたくもないのはわかる。なるほど、要するに見た目的に食べたくないんだな。
「あまり食欲がわかないから結構よ。お気持ちだけ頂いておくわ」
食欲がわかない理由を言わないのは雪ノ下なりの優しさからなのだろう。固辞する雪ノ下をよそに由比ヶ浜が鼻歌交じりに鞄からセロハンの包みを取り出す。かわいくラッピングされてるが中身は黒々としているのだろう。ちゃんと食べるんだぞ、雪ノ下。そこからは由比ヶ浜のマシンガントークが炸裂した。雪ノ下が比企谷に助けを求めるが、無理だろう。俺に助けは求めないだろうから傍観しておこう。やっぱりこの部は面白い。
一段落ついたのか由比ヶ浜がこちらに来た。
「なんか用か?」
「いやー、その昨日のことなんだけど……」
「それ、あとでいいか?俺近くのサイゼにいるから」
「うん」
「それじゃ、ちゃんとお礼済ますんだぞ」
「わかった」
そうして俺は、部室を後にした。
今回はここまでです。次回はオリジナルストーリーになります。