その日の昼休み。一夏、シャルル、結華、鈴音、箒、セシリアの5人はIS学園の屋上に来ていた。
「・・・・・・どういうことだ」
「何が?」
「結華は分かるが何故、凰やオルコット、デュノアが居る」
結華は一夏が作った弁当を受け取りながら言った。
「大勢で食べた方が美味しいじゃない」
「そうだぞ?てか箒、シャルルの事見捨てなかったか?」
「食堂で食べれば良いだろう」
「箒って薄情ねぇ・・・・・・」
鈴音がそんな事を言いながら小さいサイズのタッパーをいくつか一夏と結華に渡す。
「おお!酢豚にチンジャオロース、それに麻婆豆腐まで!」
「美味しそうね。それに温かいし」
「ご飯を食堂で買った時に温めてきたわ。料理は温かい方が美味しいしね」
そこにセシリアが割ってはいる。
「一夏さん、わたくし今日はお弁当を持ってきましたわ」
セシリアはバケットを一夏に差し出す。開けるとそこには見(・)た(・)目(・)だ(・)け(・)は美しいサンドイッチが並んでいた。
「あ、ありがとなセシリア」
「いえ、どういたしまして」
「さっさと言いなさいよ一夏」
「とは言えなぁ・・・・・・」
「あーんでもさせて自覚させれば良いじゃない。そんな事では嫉妬なんてしないから安心しなさい」
「前にも聞いたような気がするぞ、それ」
「さっさとやりなさい。そしたら私がセッシーに料理を教える大義名分が出来てあんたがそんなの食べなくても良い様になるんだから」
「そりゃごもっともな意見だが」
そこにシャルルが質問をする。
「あの、一夏と鉄装さんて付き合ってたりするの?」
「ああ、言ってなかったな」
「そもそも言う時間が無かったんでしょうが。後、結華で良いわよ」
「ごもっとも。ま、見て分かるかは分からないけど俺と結華は付き合ってるよ」
「そ、そうなんだ」
結華はそう言って一夏が作った弁当を貰い蓋を開けた。
「一夏って料理出来るんだね」
「ああ、千冬姉があんまり帰って来ないから自分で作るしか無かったしな」
「そ、そうなんだ」
「たまに結華作ったり、箒居た時は箒の家で食べたり鈴が居た時も鈴のところで食べたりしたな。どっちも旨かったな」
「へー」
一夏は結華の作った弁当を結華から貰いその蓋を開けた。
「今日も旨そうだな」
「なんで一夏は2つ作らなかったの?」
疑問に思ったシャルルが聞いた。
「・・・・・・結華に聞いてくれ」
「結華、どうして?」
結華は口にある物を飲み込んでから理由を言った。
「あえて言うなら自分の作ったものはあまり美味しいと思わないし他人が作ったものの方が美味しいと思うからね」
「何とも斬新な考え・・・・・・だね?」
「斬新かしら?皆そう思うんじゃないかしら」
結華はその後黙々と弁当を食べ始めた。
そこで箒が一夏の袖を引いた。
「箒、どうかしたのか?」
「わ、私も弁当を持ってきたのだが・・・・・・」
箒は弁当箱を一夏に差し出した。一夏は苦笑いして箒から差し出された弁当箱を受け取った。
「おう、サンキューな」
「一夏大変ねー・・・・・・あんたに非が有るけど私にも少しあるのよね」
「少しってどれぐらいだ?」
「1割かしらね?」
一夏は少し困ったような顔をして反論した。
「5割じゃないのかよ」
「一夏の方にかなりの非があると私は思ってるわ。だから1割」
そこに鈴音がダメだこりゃといった顔で割って入った。
「ていうか、そもそもあんた等の恋人意識が足りてないのが原因だと思うわ」
「「と言うと?」」
「――まず一夏ね。一夏は自分は誰の物なのかって言うのを自覚しなさい」
「?」
「分かってないようね・・・・・・要するに、あんたは結華の彼氏なんだから他人に取られないようにするのが普通でしょ!」
「分かった」
「多分分かってないでしょうね・・・・・・次に結華ね」
「よろしく」
「あんたに言えるのは1つだけ。独占欲を持ちなさい」
「簡潔ね。理解しやすいわ」
「・・・・・・・・・」
鈴音はダメだこりゃといった感じで諦め、自分の昼食を食べ始めた。
「どうしたんだろうな?鈴のやつ」
「さあね?」
ここで一夏はセシリアが作ってきたサンドウィッチを1つ食べてみた。
「・・・・・・結華」
ここで一夏は結華に小声で話し掛けた。
「何よ?」
「もしお前がセシリアだったら俺の口つけた奴って食べるか?」
「もしもセシリアだったらね?嬉々として食べるわね」
「分かった」
一夏は意を決したようにセシリアの方を向いて。
「セシリア、これ俺の食いかけだけど食べるか?」
「よ、宜しいのですか?」
「ああ、良いぜ」
「では、いただきます」
一夏が差し出した食べかけのサンドウィッチをセシリアは何も知らずに食べた。箒はむすっとした顔で一夏を見たが、直後セシリアがむぐっと言ったのでセシリアの方を見た。セシリアは顔を真っ青にしてなんとかそれを飲み込んだ。
「・・・・・・すみません一夏さん。このような産業廃棄物にも劣るような物を食べさせてしまい・・・・・・」
「いや、良いって」
「ま、これからは料理を作らないか作ったらしっかり味見をすることね」
久しぶりの結華の毒舌が炸裂した。
「一夏、放課後の訓練にシャルルも入れたらどうかしら」
その直後結華がそんな事を行った。
「え!?」
シャルルは驚いて結華の方を見た。
「確か専用機持ってたわよね?」
「う、うん。持ってるけど」
「決まりね。今日から来なさい。第3アリーナでやってやってるから」
「わ、分かった」
こうしてシャルルも練習に混じる事になった。
・―・―・―・―・―・―・―・
放課後一夏、結華、箒、鈴音、シャルル、セシリアは第3アリーナに来ていた。
「来なさいって言ったのにまさか全員で一緒に移動って・・・・・・意味あるのかなぁ・・・・・・」
「良いじゃないか」
「まぁ、まずはオスカルと一夏の模擬戦をしてもらいましょう」
「お、オスカルって誰?」
シャルルが不思議そうな目で結華を見た。
「シャルルのあだ名だろ?でもオスカルって・・・・・・男に対して男装の麗人の名前付けるのはどうかと思うが・・・・・・まぁ仕方が無い。箒はモッピーだし・・・・・・仕方が無い」
「どうゆうこと?」
「結華の初めのあだ名は酷いんだよ。箒がモッピー、鈴がチャイニーズ、で、セシリアがライミー」
「・・・・・・うわぁ・・・・・・」
「まぁ・・・・・・結華の付けるあだ名なんて直感だから気にしなくても大丈夫だって・・・・・・多分」
「多分!?」
一夏は1つ頷いてから言った。
「大丈夫だって。俺の1番最初のあだ名なんて・・・・・・確か『蛆虫に劣る馬鹿』・・・・・・だったような・・・・・・」
「それがどうやって今の関係に?」
「どうなったんだっけ?なぁ、結華」
「私も忘れたわ。黒歴史だもの」
「黒歴史?どうして?」
結華は俯いてシャルロットの問いに答えない。
「結華?」
シャルロットが心配そうに結華に声を掛けるがなにやらぶつぶつと呟いていて返事は無い。そこを一夏が答えた。
「結華は俺にそんな罵倒を示すようなあだ名を付けたのが嫌になったらしいんだよ」
「そうなんだ」
「まぁ・・・・・・小さい頃はもっと口というか考え方が曲がっていたけどな」
「あくまでもどんな感じに?」
「んー・・・・・・良く覚えてないな」
「覚えてないの?」
「何せ結構昔の話だしな。でだシャルル」
一夏は話を切るようにシャルルの名前を呼ぶ。
「何かな、一夏」
「1戦、お相手願おう」
「模擬戦だね?良いよ」
一夏は『白式』を、シャルルは専用にカスタマイズされたオレンジ色の『ラファール・リヴァイヴ カスタム.Ⅱ』を展開しPICの制御によって宙に浮く。
「鈴、カウント頼む」
「はいはい、分かったわよ・・・・・・カウント3から始めるわよ~・・・・・・3、2、1、0!!」
「行くぜ!白式!!」
「行くよリヴァイヴ!!」
まだ武装を展開していなかったが一夏は突進する。
「展開に少し掛かると思ったら大間違いだよ!」
シャルルは右手にサブマシンガン『ラインズ・レイン』と左手に6連ショットガン『レイン・オブ・サタディ』を展開し弾幕を張って一夏を近付けさせないようにするが・・・・・・
「雪片!黒龍!」
両手に主武装である刀2本を展開すると自分に襲い掛かる弾幕を出来るだけ斬って弾いて躱していなしてほぼノーダメージでシャルルに接近する。
現在の一夏は名前を呼ばずに武器を呼び出すと0.5秒で展開出来るが名前を呼べばそれを0.01秒で展開する事が出来るため、授業では呼ばず実戦では呼ぶ形式にしている。一夏としてはいつかは名前を呼ばずにその展開速度を出したいと思っている。
「嘘だ!」
「嘘じゃねぇよ!!」
一夏が右の雪片で袈裟に斬りかかる寸前にシャルルは両手の武装を収納すると両手にブレード『ブラッド・スライサー』2本を呼び出し先ずは左のブレードで右の雪片を防御する。
「まだまだぁ!!」
一夏は左の黒龍で逆袈裟に斬りかかるとシャルルは右のブレードで防御する。
「まさかこの程度・・・・・・とは、言わないよね?」
「当たり前だ!」
一夏はシャルルに回し蹴りを入れて後退する。そこで一夏はふと思う、脛の部分に近接兵装でもあればこんな退避のための攻撃ですら1つの立派な攻撃手段になって手数が増やせるのにな・・・・・・と。
「ふふ、何をする気かな?」
「俺の常套戦術だよ」
一夏は白式のメインスラスターや方向転換に使うサブスラスター、姿勢制御に使うマイクロスラスターにエネルギーをチャージする・・・・・・その隙をシャルルが見逃すわけも無く・・・・・・
「そんな隙は与えないよ!!」
シャルルはブレード装備のまま突進してくる。一夏はシャルルが斬りかかった瞬間にサブスラスターを多めに吹いて90度、つまりシャルルを中心に半円を描くように“円の瞬間瞬時加速(ショートイグニッション)”を行った。これは一夏が独自に生み出した加速法で、全盛期の千冬ですらも行おうとはしなかった。その理由はいたって単純で『曲線の瞬時加速(イグニッション・ブースト)』は下手をすれば怪我どころの話では無くなるからだ。一夏はそれを類稀なる直感と恐ろしいほど高等なIS操作技術でそれを行ったのである。
「「「!!??」」」
その場にいた結華以外の専用機持ちは言葉を失った。実際に模擬戦をしていたシャルルですらそれを悟った瞬間に硬直した。一夏はその隙を見逃すわけも無く・・・・・・
「ぜらあぁぁぁ!!」
本気の二刀流4連撃をシャルルの背中に叩き込んだ。
そこで鈴音が止めに入る。
「そこまでよ!!一夏、デュノア!」
「ふぅ・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
2人は地面に降りてきてISを解除する。
「一夏!アンタあんなのどうやって習得してきたのよ!!」
「そうですわ!気になりますわ!!」
その降りてきた瞬間に鈴音とセシリアが詰め寄り強い口調で聞く。
「わ、分かった!説明するからさ」
「一夏、試し打ちだよね・・・・・・あれ」
シャルルが少し冷たい口調でそう言う。
「な、何でそう思うんだ?」
「少し動きがたどたどしいって言うか・・・・・・不自然だったから」
一夏は図星を突かれ1歩下がる。
「だから言ったじゃない。もうちょっとやり方に慣れてから実践投入しなさいって」
そこに言葉を入れたのは一夏とシャルルの模擬戦前まで黙って俯いていた結華だった。
「ったく・・・・・・一夏、アンタは実戦証明(コンバットプルーフ)もされてない武器を実戦で使う訳?」
「いや、そういう訳じゃ・・・・・・」
「いいえ、やるわ。一夏ならやりかねない。アンタの彼女である私が保証するわ」
「そ、そこまで言わなくても良いじゃねえか・・・・・・」
その会話を聞いてセシリアが鈴に聞く。
「鈴さん」
「何?セシリア」
「私が思うに何故あんなにも気の合わない御二方が恋人同士になれたのか些か疑問なのですが・・・・・・」
「セシリア、あの2人にも合う事合わない事とあるんだからそう言うことは言わないでくれる?事実、あの2人はそう言うことがあってこそ成り立ってるのよ」
「そうなのですか?」
「はっきり言って、まともに仲が進展したのは中学1年の真ん中辺りからよ?まさかあたしが中国に戻った2年の間にここまで仲が進んでるとは思いもしなかったけどね」
「そこまでなのですか?」
「ええ、結華は事実一夏の事なんか気にしてないって言うかもはや視界にすら入っていなかったような感じだったわ」
「それが何故恋人という関係になったのか・・・・・・」
「疑問ね」「疑問ですわね」
いきなり周囲にいた訓練中の生徒がざわつき始める。
「あれってもしかしてドイツの第3世代・・・・・・?まだ本国でトライアル段階だって話だったけど・・・・・・」
一夏と結華、箒、セシリア、鈴音、シャルルが周囲のざわつきの原因となっている方向に眼を向けた。そこには黒い第3世代型IS『シュヴァルツェア・レーゲン』を纏っている銀髪で左眼に眼帯をしている少女、ドイツ代表候補生のラウラ ボーデヴィッヒが立っていた。
「おい、お前も専用機持ちだそうだな。私と戦え」
自分に声を掛けられている事を自覚している一夏は答える。
「断る。戦う理由がねえよ」
ラウラが顔に皺を寄せていかにも不機嫌だと言わんばかりにまた声を発する。
「貴様には無くとも、私にはある。もう1度言う、私と戦え」
我慢ならぬとばかりに一夏が不機嫌そうに答える。
「もう1度言う。戦う理由が無い・・・・・・だから断る」
ラウラはフン、と鼻で笑い言った。
「ならば戦わざるを得んようにしてやろう」
ラウラはシュヴァルツェア・レーゲンの右肩に装備されているレールガンが弾丸を発射し・・・・・・一夏は白式の拡張領域に入っている日本刀『雪乱』だ(・)け(・)を展開し音速で迫る弾丸を斬ろうとしたが・・・・・・当たる数メートル前でそれはオレンジの火線によって影も形も無く粉砕された。そのオレンジの火線は一夏の右に居た結華が何時の間にかISを展開し拡張領域に格納されているガトリング砲4門を同時展開し4門同時斉射したためである。
「ドイツ人ってのはそこまで沸点低いの?液体酸素とかみたいに常時沸騰でもしてるのかしら?」
そこにアリーナの監督をしていた教師からのアナウンスが流れる。
『――そこの生徒! 何をやっている! 学年とクラス、出席番号を言え!』
ラウラがISを待機状態に戻すと・・・・・・
「ふん、興が削がれた。今日のところは退いてやる」
そんな言葉を残し去っていった。
いかがでしたでしょうか?楽しんでいただけたのなら幸いです。