先日のラウラ襲撃から2日たった日のこと。一夏は部屋で勉強していてシャルルはシャワーを浴びている。
「あ・・・・・・ボディーソープが切れてるんだった」
一夏は部屋の棚から寮の購買で売っていたボディーソープを取り出し、シャワー室のドアを開けた。
「おーい、シャルル。ボディーソー・・・・・・プ・・・・・・切れて・・・・・・た・・・・・・ろ?」
「い、一夏!?」
一夏の視線の先には膨らんだ胸と股の部分を隠して顔を赤らめているシャルルの姿があった。
「これ、ボディーソープな?切れてただろ?」
シャルルは一夏かボディーソープを受け取って言った。
「う、うん。ありがと」
それを聞くと一夏はシャワールームを出てドアを閉めた。
「えーと・・・・・・結華を呼ぼう。うん、それが良い」
一夏は部屋を出て結華の居る隣の1026号室のドアをノックすると中からくぐもった稟華の声が聞こえてきてドアが開けられる。
「あ、一夏君。結華ちゃんに用事?」
「ああ、大丈夫だよな?」
「うん、問題ないよー。もーまんたい」
稟華さんが部屋に戻って代わりに結華が出てくる。
「どうしたの?」
「緊急事態だ」
「どんな?」
「シャルルの」
「分かったわ」
結華は出てきて部屋のドアを閉めると一夏の部屋に入った。そこには普段からシャワーに入った後に着ているジャージを着ているが普段とは違い胸元が膨らんでいる。
「ああ、女だったのね」
「そうらしい」
「どうやって分かったの?」
「えっ・・・・・・と・・・・・・」
一夏は結華にどのような事があったのか頭の中で考えながら話して行った。
「つまりはラッキースケベでばれたと言う事?」
「そう言う事です」
「にしても・・・・・・」
結華はシャルルの体を見回す。
「そんだけ胸があればコルセットしてても分かっちゃう気がするのよねぇ・・・・・・第一、ボディーチェックとかやったら即アウトだし」
「そうなんだよなぁ・・・・・・」
「で?オスカルは何でここに男装なんかして来たの?」
「えっとね・・・・・・僕は愛人の子なんだよ」
結華も一夏も一言も話さずに真剣に話を聞く。
「お母さんと一緒に暮らしてたんだけど、お母さんが死んじゃって、実家に呼ばれたんだ。
父に会ったのは2回くらい。会話は数回くらいかな? 普段は別邸で生活をしているんだけど、1度だけ本邸に呼ばれてね。
あの時は酷かったなぁ・・・・・・本妻の人に殴られたよ。『泥棒猫の娘が!』ってね。母さんもちょっとくらい教えてくれたら、あんなに戸惑わなかったのにね。
それから少し経って、デュノア社がね、経営危機に陥っちゃて・・・・・・」
「でもデュノアってISシェア第3位なんだろ?」
「デュノアで生産しているのは所詮は第2世代。要は型落ちなのよ。今は殆どの国が第3世代の開発をしてるけどデュノアのリヴァイヴは第2世代最後発で時間も第3世代のノウハウもないのよ」
「ああ、そっか」
「それで僕はそれを乗り切るために一夏のISデータをとってくるように命令したんだよ」
「それと広告塔・・・・・・」
「そう、同じ男同士なら日本に発生した特殊ケースとも接触しやすいからね・・・・・・これが僕がここに来た全貌だよ。僕がデータを持っていかなければデュノア社はどこかの企業の傘下に入るか潰れるか・・・・・・今のところ二者択一って所かな?」
一夏はそこで我慢なら無いとばかりに声を張り上げた。
「それで良いのか!?」
「っ!?」
「シャルル!お前はそれで良いのかよ!?」
「だって、一夏のISは日本のIS企業『倉持技術開発研究所』のものなんだ。一夏が持って行けと言ったところで僕は持っていけない」
「なんでその方向でしか考えないんだよ!?」
「っ!!??」
シャルルがビクッと震える。そして口から出たのは・・・・・・
「もう他に方法なんて無いんだよっ!!なんでそんな方向からしか考えない!?僕だって、ましてやデュノアの社長である僕の父さんはもっと考えたさ!!その結果が今の僕なんだよ!!??それが何で一夏には分からないのさ!!」
そんな、今までの我慢を全て吐き出すぐらいの勢いで出た言葉だった。
「他にどんな方法があるのさ!!僕が実際に行動できるのはあとどれくらいかも分からない!一夏や結華が黙っていてもばれない可能性が無いわけじゃない!!僕の事がばれてしまえばデュノアが潰れる!!もうどうしようも無いんだよ!!デュノアがあっという間に第3世代を開発するぐらいじゃなきゃ!!」
「別に1年そこらで開発できるものじゃ無いなんてこと私も一夏も分かってるわ。今は未だデュノア社を救う事は出来なくとも、オスカル・・・・・・アンタだけなら何とかなるわ」
「・・・・・・どういう事?」
シャルルが不思議そうな目を結華に向ける。
「『IS学園特記事項、本学園における生徒はその在学中にありとあらゆる国家、組織、団体に帰属しない。本人の同意が無い場合、それらの外的介入は原則として許可されないものとする』これさえあれば今は充分ね」
「一体どうするの?」
「オスカル、アンタや一夏が女性権利団体の過激派に襲われないか・・・・・・分かる?」
「え・・・・・・?」
「一夏は世界にただ1人のブリュンヒルデであり、その親友にISの開発者篠ノ之 束が居るから。アンタにはISシェア第3位のデュノア社があるから・・・・・・つまりは後ろ盾があるから。デュノアが潰れてしまうのなら・・・・・・潰れてアンタがフランスに戻らなければならない理由はデュノアがアンタのスポンサーで、それが無くなれば代表候補生から外されるからよ。専用機を持つ権限も無くなるでしょう・・・・・・じゃあ、アンタがここに残る方法は?と言われれば答えは単純、日本と言う国に帰結してしまえば良い」
「日本に帰結?そんなの・・・・・・」
「そうよねぇ・・・・・・IS学園には結婚して日本国籍を得るために男が今は1人しか居らずしかも彼女持ちだもの」
「分かってるのになんで・・・・・・」
「でも、わざわざ結婚して日本国籍を得る必要は無いわ。忘れたの?アンタの目の前には1組のカップルが居るのよ?この2人が今すぐにでも籍を入れれば・・・・・・養子を持つことだって不可能ではないわよ?」
シャルルは戸惑いを隠せない。何故、シャルルの味方をするために籍を入れるだなんて事を言い出すのかが・・・・・・理解できなかった。
「で、でも結華が認めるにしても一夏は・・・・・・」
「気にするなってシャルル。少し予定が早まるだけだからな」
「早まる・・・・・・?」
「そ、もともとは学園を卒業してから入籍して式を挙げるつもりだったのだけれど・・・・・・この際仕方ないわ。先に籍だけ入れて、式を挙げるのは卒業後にすればいいわ」
「ど・・・・・・うし・・・・・・て・・・・・・そ、こ・・・・・・まで・・・・・・」
「大切な友人だからな・・・・・・困ってたら助けなきゃそれは友人でもなんでも無い」
「う・・・・・・」
「回答は・・・・・・今すぐでなくても良いわ。ゆっくり考えてから決めなさい」
結華はそう言ったがシャルルの心はもう決まっていた。
「・・・・・・ううん、決めたよ」
「これは人生の転機よ?もっと考えなくて良いの?」
「うん、もう決めたから」
「じゃ、言ってごらんなさい」
結華の目は子供の決断を真剣に聞く母親のような目だった。
「よろしくお願いします」
「ええ、承ったわ」
「ああ、よろしくな」
「あ、そうそうオスカル。電話貸して?」
シャルルが不思議そうな目で結華を見る。
「変な事はしないわ」
「分かった。ちょっと待ってて」
シャルルは自分の携帯を持ってきて結華に渡す。結華はそれを受け取るとアドレス帳を開いて目的の名前を探す・・・・・・見つける『父さん』。しっかりと電話番号がある。迷うことなく電話を掛ける。時差は9時間~8時間大体今が午後の6時であるためフランスは午前9時か10時あたりだろう。
『私だどうしたのかねシャルル』
「すみません。私、シャルル君の友人の鉄装 結華と申します。本日電話致しましたのは娘さんの事についてでございます」
『・・・・・・ふぅ・・・・・・要求かね?このネタでデュノアを揺さぶろうと言う魂胆かね?』
「そんな事ではございません。貴方の娘さんを此方で保護したいのです」
『お前のようなただの女に何が出来ると言うのだ?』
「失礼、言うのを忘れておりました。私、男のIS操縦者の織斑 一夏の彼女です」
『嘘ではないだろうな』
「嘘でなぜ、経済危機の会社のご令嬢を引き取らなければならないのでしょう?」
『そうだったな・・・・・・信じていいのだな?』
「ご心配無く。貴方の娘さんに不自由はさせませんよ」
『そうか・・・・・・シャルロットに伝えてくれ『大して親らしい事をしてやれず済まなかった。元気に暮らせよ』とな』
「ご伝言、お預かりいたします」
『シャルロットを頼んだぞ』
「ええ、では・・・・・・」
結華はそう言って電話を切った。
「父さんに電話を掛けたの?」
「ええ、伝言よ『大して親らしい事をしてやれず済まなかった。元気に暮らせよ』だそうよ」
「と・・・・・・う・・・・・・さ、ん・・・・・・」
シャルルはそこで泣き崩れてしまった。そこに結華が一夏に話し掛ける。
「悪いわね。勝手なことして。嫌いになったならそれで良いわ」
「結華、後半の心にも無い事を言うんじゃねぇよ・・・・・・さて・・・・・・」
一夏は立ち上がって結華に手を差し出した。
「千冬姉に言いに行かなきゃな」
「ええ、そうね」
結華は一夏の手を取って立ち上がる。二人は部屋を出て寮長室の前に来ると同時にノックした。すぐに中から千冬が出てくる。
「どうしたんだ?」
「プライベートな事よ。ここでは話せないわ」
「なら、中に入れば良い」
千冬は入り口から退いて一夏と結華を部屋に入れる。
「千冬姉」「千冬さん」
「何だ」
「俺たち入籍する事にしたよ」「私たち入籍する事にしたわ」
「ブフゥゥッ!!」
千冬はあんまりの驚きに口の中に入っていたビールを吹き出してしまった。
「げほっ、げほっ・・・・・・何でいきなりそんな話になった?」
「えーとそれは・・・・・・
《デュノアなどの話を説明中》
と言う事があって、シャルルを日本に帰結させるために俺たちが養子として取ることにした」
千冬は唖然とした。まさかここまでやるとは予想できなかったのだ。とはいえ千冬も助けたくないわけではない。
「分かった。良いだろう」
「サンキュー、千冬姉」
「ありがとう、千冬さん」
「話は終わりか?まだ生徒に見せられない仕事が残っていてな・・・・・・」
「ああ、悪かった」
「失礼しました」
一夏と結華が出て行った後、千冬は・・・・・・
「デュノア社か・・・・・・一夏と結華だけではあれは難しいだろう」
千冬は携帯を取り出し電話を掛けた。
「ああ、織斑 千冬というものだが・・・・・・社長に繋いでくれるか?」
千冬は個人で動く事にした。自分の持っている称号『ブリュンヒルデ(世界最強)』と『倉持』との繋がりを使って。