シャルルの正体判明の翌日の昼休み。
「一夏、少し付き合いなさい」
結華が一夏の机の前に立って一夏の手を取る。
「他の奴は?」
「今回は別件よ」
「別件?」
一夏はいつも通り他の専用機持ち連中と昼を食べるものだと思ったのだが違かった。
「倉持の出来てない専用機の話よ」
「ああ、忘れてた」
一夏は丸っきり忘れていた。武器を探しに行った倉持技研で離していた日本の代表候補生の完成していないという専用機の話を。
「倉持の人の話を聞いたところと噂とか情報通のクラスの人たちに聞いたら簡単にクラスとその代表候補生の名前が分かったわ」
「結華の情報収集能力にはいつも驚くぜ」
「こんなの殆ど役に立たないわよ・・・・・・日常生活ならね」
「まるでここが日常生活じゃないみたいなことを言ってるな」
「事実よ」
一夏は結華に手を引かれるに従って立ち上がりクラスを出て4組の方に歩いていく。
「更に驚くのは行動力の高さだよなぁ・・・・・・」
「中学は苦労したわ・・・・・・アンタを遊びに誘いに行くのにどんだけ情報収集してどんなところが面白いのか調べるのに」
「映画であれは勘弁して欲しかったな」
「そうね、今度のデートは映画でも観に行きましょ」
「そうだな」
そうこうしているうちに4組の前に到着し・・・・・・
「一夏、アンタが声を掛けてきなさい」
「な、何で俺?」
「いいから」
「どうやって・・・・・・?てか誰に?」
「名前は更識 簪で、話があるとか何とか言って・・・・・・そうね、屋上に連れて来なさい。あそこは昼休み殆ど人が居ないから」
「分かった」
一夏は教室に入ると4組の女子が詰め掛けてきた。
「あれ?1組の織斑君がなんでここに居るの?」
「来る必要性がないよね・・・・・・彼女居るからもう1人とか必要ないし」
「でも、あの彼女結構寛大だって聞いたよ?」
などなど、そしてその後にクラスのまとめ役みたいなのが出てきて・・・・・・
「どうしたんですか?4組の人に用でも?」
そう言った。その言葉に一夏は答えた。
「えっと・・・・・・その、さらしきさんって居るか?」
一夏がそう言った瞬間、一夏の周りにいた全員が『えっ?』と言うような顔をして一斉にある方向へ目を向ける。そこには水色の髪で赤い瞳の眼鏡を掛けている少女が購買のパンを机の端に避けて空中投影スクリーンと睨めっこをしていた。
「ありがとう」
一夏はそう言って簪の方へと歩いていき、簪の机の前に立つ。
「あの・・・・・・更識さん・・・・・・だよな?」
「・・・・・・・・・・・・」
「あの・・・・・・専用機の事で話があるんだけど・・・・・・屋上に行かないか?」
「・・・・・・・・・・・・わかった」
更識さんが立ち上がって教室を出て行くのに一夏は着いて行き、出た後に結華と合流しお互い、話も無いまま屋上に到着する。
「何・・・・・・?」
簪がそう言うが一夏は何も答えられず、無言になってしまう。
「まぁ、一夏に代わって謝っておくわ。一夏の専用機『白式』の研究に掛かりっきりになってあなたのISの完成を邪魔してごめんなさい」
結華が頭を下げて謝ったので一夏も謝る。
「すまなかった。まさか俺のせいでISの完成が遅くなるとは知らなかったからさ」
「え・・・・・・っと・・・・・・」
簪の頭にははてなマークが幾つも浮かんだ。何故そうも真剣に謝るのかと。勿論、簪の心に一夏の専用機にほぼ全ての人員が割かれているのには苛付きはしたし、多少は一夏に対する苛付きもあった。だが、それと今のこれは全くの別問題なのだ。
確かに一夏の『白式』せいで簪のISの開発は滞っているがそれは一夏が意図的に起こした問題ではない。あくまでも『1人目の男のIS操縦者』が出てきた時点で起こると思われる・・・・・・言わば『想定内』の事だった。事実問題簪はこの事に関しては逆に好機と捉え、姉に追いつくための試練と思っていた。
それをこう謝られては・・・・・・どこか罪悪感が残る。
「あの・・・・・・」
簪が何か言おうとしたところに結華が口を挟んだ。
「まぁ、そっちに罪悪感があろうが無かろうが良いのだけれど・・・・・・罪滅ぼしをさせてくれないかしら?」
「結華、それ違うだろ・・・・・・協力って言えばいいものをなんでそう言ったんだよ」
「この方が良いかなと思ったのよ」
「なにも良くねぇ!!」
「っぷ・・・・・・」
簪が笑う。風の噂で聞いた話だと一夏と結華というカップルはこんなボケとツッコミのような事が起こらないようなお互いをお互いが支えあうようなカップルだったのだが印象が違った。
「お、笑った」
「そうね。で、どうしようかしら?」
「あー・・・・・・うん、そうだな・・・・・・」
一夏はそう言って頷くと簪の方を向いて、
「俺と結華に更識さんの専用機の製作を手伝わせてくれないか?」
右手を差し出しながらそう言った。
「え・・・・・・・・・・・・?」
「あれ?聞こえなかったか?」
「う、ううん・・・・・・聞こえた。けど・・・・・・何で?」
「それはまぁ、俺の所為で止まってるなら俺が手伝わないといけないと思うし・・・・・・」
「でも・・・・・・これは私がお姉ちゃんに追いつくために・・・・・・」
そこに結華が言う。
「お姉ちゃん?あなたのお姉さんがどうしたの?」
「お、お姉ちゃんは・・・・・・1人でISを作った・・・・・・だから、お姉ちゃんよりも無能な私は、お姉ちゃんに追いつくために・・・・・・」
「1人でISを・・・・・・未完成ISを完成させなきゃならない?」
「・・・・・・うん」
そこで一夏は疑問に思った事を口にする。
「でも、そのお姉さんだって1人でISを開発したわけじゃないと思うけどな・・・・・・」
「私もそう思うわ。ISは1人で製作できるものでは無いしね」
「だからさ、俺は更識さん1人でISを完成させる必要は無いと思う。俺と結華の所為でISの完成が遅れちゃったんなら手伝わせてくれないか?」
「・・・・・・でも、良いの?」
「何も問題は無いわ。ええ、何一つとしてね」
「な?良いだろ?」
簪はコクリと小さくではあるがしっかりと頷いてその話を了承した。
「さ、ご飯食べましょ?更識さんのISの完成度とかも知りたいし」
「そうだな、一緒に食べようぜ更識さん」
一夏と結華がお互いに弁当を交換してから屋上のベンチに座る。その間には簪が座れるように間が空いている。
「さ、更識さんじゃ、無くて・・・・・・簪で良い」
「そう?じゃ、よろしくね簪・・・・・・?」
「よろしくな、簪」
「よ、よろしく・・・・・・」
簪は一応持ってきていた購買で買ったパンの入った袋を持って、一夏と結華の間に座ってパンを食べ始める。
「それで、いきなりだけど簪のISってどこまで完成してるのかしら?」
「えっと・・・・・・はっきり言って、まだ4割程度しか完成してない・・・・・・」
「じゃあ、IS本体と武器、別々の割合を教えて頂戴」
「本体が5割完成済み、武器は2割程度・・・・・・」
「じゃあ、武装は?」
「超振動薙刀『夢現』、連射型荷電粒子砲『春雷』2門、マルチロックオン式48連ミサイル『山嵐』・・・・・・うち完成しているのは夢現のみ・・・・・・」
「マルチロックオンか・・・・・・ちょっと待ってて」
結華が手に持って食べていた弁当を足の上に置いて蒼華のコンソールを呼び出す。
「あ、あったわ。マルチロックオン」
「本当に・・・・・・?」
「考えるに一番の鬼門だったのよね?未存のシステム、マルチロックオンシステム」
「う、ん・・・・・・」
「あとは・・・・・・荷電粒子砲ね・・・・・・どこかに無いかしらねぇ・・・・・・って、私のオートクチュールの中にあるじゃない」
「結華、自分の武装ぐらい覚えておけよ」
「つ、使わなかったんだから仕方ないじゃない!!」
「使う必要が無かった・・・・・・だろ?」
「う・・・・・・」
結華が図星を突かれて固まる。
「まぁ、これで武装については良いとして・・・・・・本体が問題だよな」
「う、うん・・・・・・5割は完成してると言っても、残ってるのはかなり面倒なのばっかり・・・・・・」
「どんなのなんだ?」
「スラスターの根幹制御部分や火器管制システム(FCS)、PIC制御システムにシールドエネルギー発生範囲指定、シールドエネルギー密度の設定にスラスター通常出力設定、非固定部位の位置設定、・・・・・・etcなどのソフトウェアが多い。ハードは非固定部位の可動調整、各関節部の調整、各部のエネルギーバイパスのエネルギー流量調整かな・・・・・・」
「ソフトウェアね・・・・・・特に大変な部分ね」
「頑張れば、4週間後の学年別トーナメントに参加は・・・・・・可能。でも、たぶん調整無しのぶっつけ本番になる・・・・・・と、思う」
「でも、流石に調整無しのぶっつけ本番てのもきついでしょうね・・・・・・千冬さんに相談すれば何とかなるわ。時間外の整備室利用・・・・・・おそらく貫徹の毎日だと思うけど。幸いにして私と一夏の成績は良い方だし・・・・・・簪は?」
「授業を受けなくても・・・・・・困る事はない・・・・・・。でも、流石に貫徹の連続は駄目・・・・・・事故の原因になりかねないから・・・・・・」
「じゃ、最低でも5時間の睡眠を取って毎日IS製作ね・・・・・・目標は――」
「「「学年別トーナメント、1週間前までの完成!!」」」
一夏と結華が簪とはかなり気が合うんだと、分かった瞬間だった。