「で、2人ともこの3週間・・・・・・何してたの?」
打鉄弐式が完成した日の夜中、一夏と結華は一夏とシャルルの部屋で正座させられ、シャルルに問い詰められていた。
「い、いやな?シャルル。俺たちは何も悪い事はしてないぞ?」
「そ、そうよ?何も悪い事はしてないわ」
いつも毅然とした態度の結華ですらもシャルルの普段とは異なる態度に戸惑っている。
「悪いも何も・・・・・・3週間も休んで何してたの?隠す事無く、正直に全て答えてね?」
シャルルは笑っていたが、目が笑っていない。今、一夏と結華の目にはシャルルの後ろに般若の面が見えている。
「分かった?」
シャルルに念押しされ、一夏と結華は2回頷いた。
「じゃ、何してたの?」
「お、俺と結華は俺の所為で製作が止まってた日本代表候補生の専用ISの製作を手伝ってただけだよ」
「ええ、まぁ・・・・・・製作のために3週間ほど休みを貰ったけどね」
「本当に?」
「「本当です」」
シャルルは目の笑っていない笑顔から普通の笑顔に戻った。
「まぁ、良いんだけどね」
「「ホッ・・・・・・」」
「で、どんな事があったの?」
「えっと・・・・・・・・・・・・」
一夏と結華はその日シャルルに打鉄弐式の説明をして眠れなかった。
・―・―・―・―・―・―・―・
次の日の放課後
一夏とシャルルは学年別トーナメントの練習をするために更衣室に向けて歩いていた。結華は用事があるといって少し後から来る。
「今日使えるアリーナは・・・・・・」
「第3アリーナよ」
「「うわっ!」」
2人で歩いていた筈の一夏とシャルルに声を掛けた第3者・・・・・・もとい結華に一夏とシャルルは驚いた。
「そんなに驚かなくたって良いじゃない」
少し傷ついたのかしょんぼりしながら結華が呟く。
その隣には簪も居る。
「すまん、いきなりだったから」
「ご、ごめん・・・・・・」
「ま、良いわよ」
4人が今日の練習メニューを話しながら歩いていると第3アリーナに向かっていたある女子生徒が気になる事を言った。
「第3アリーナで専用機持ちの代表候補生が2対1の模擬戦やってるって!!」
一夏と結華はそれを聞いて同じクラスのセシリアとラウラ、2組の鈴音が思い浮かんだ。
「行くぞ」「行きましょう」
一夏と結華は同時にそう言ってシャルルと簪を置いて走り出した。
「え・・・・・・?ちょ・・・・・・!?」
「・・・・・・・・・・・・はぁ」
アリーナに着いた2人が見た光景はセシリアと鈴音がワイヤーブレードのワイヤーで巻き付けて手繰り寄せ殴り蹴られ、嬲られている光景だった。
それによって機体が機体維持警戒域(レッドゾーン)を超えて操縦者生命危険域(デッドゾーン)に到達した瞬間一夏が白式を展開し、それと同時に雪片弐型と黒龍弐型も展開して絢爛礼奏零落白夜でアリーナのシールドを切り裂いてアリーナの中に入ると結華も蒼華を展開してアリーナに入った。
「その手を・・・・・・放せぇぇぇ!!」
一夏は瞬時加速で一気に距離を詰めて攻撃しようとするがラウラが手を突き出すと何か分からない力で止められる。
「クッ・・・・・・!」
「ふん、貴様など・・・・・・このシュヴァルツェア・レーゲンの前では有象無象に過ぎない」
ラウラがレールカノンを一夏に向けて放とうとするが・・・・・・・・・・・・
「簡単にさせる訳無いでしょう?」
一夏の脇の下からアサルトライフル『レッド・バレッド』を出してフルオートで撃った。
「チィッ!!」
ラウラが何かを解除しその場を後方に下がると同時にワイヤーブレードを放ち近付けないようにするが、一夏と結華はそのワイヤーブレードを躱し、時には弾いて攻撃をいなしていく。
結華が20連ミサイルポッドを展開し隙が出来た瞬間に一夏はセシリアと鈴音を回収して戦いの余波に巻き込まれないところに連れて行くとラウラに近づく。
「一夏、突っ込みなさい!!シャルルも来たみたいだから後方支援は万全よ」
「分かった!!来い、黒翼!!」
一夏は速度特化オートクチュール『黒翼』を展開しそれに積まれている展開装甲を展開して通常の倍以上の速度でラウラに接近する。
「ぜらぁっ!!」
一夏は雪片弐型と黒龍弐型、腕部の展開装甲、脚部の展開装甲を攻撃にして連続でラウラに攻撃して、さらに視角外から迫るワイヤーブレードをラウラへの延長として弾いていく。
その一夏の攻撃をラウラは腕部のプラズマブレードでいなしていくが、一切攻撃する隙が無い。これが2刀による攻撃だったならば多少の攻撃も挟めたかもしれないが2刀に加え腕部の展開装甲、脚部の展開装甲によって反撃の隙が消されている。
「チッ!!」
ラウラは後方に下がろうとするが結華と合流したシャルルの正確無比な援護射撃と簪の山嵐の面制圧によって後方に下がる事もままなら無い。
ラウラは被弾覚悟で後方に下がる。
「シャルル、簪!悪いけど私と一夏の連携の邪魔になるから下がって!!」
「う、うん!!」
「わ、分かった・・・・・・!」
結華が一夏との連携に邪魔になってしまったシャルルと簪を後ろに下げる。
「一夏、あいつのAICに気を付けなさい」
「AIC?」
「アクティヴ・イナーシャル・キャンセラーの略称!ISが普段使っているPICの効果を相手に及ぼす事の出来るものと考えれば良いわ!!」
一夏はそれを聞くと一直線の機動でラウラに近づく。
「ふん、愚直だな」
ラウラが右の手を突き出した瞬間、一夏は多角瞬間瞬時加速でラウラの後方に瞬時に回り攻撃するがワイヤーブレードで迎撃される。一夏はそれを掻い潜り攻撃するが、ラウラには攻撃を掻い潜る時間さえあれば腕部のプラズマブレードで反撃する時間が出来た。
「そんなもの!教官の真似事に過ぎん!!」
「なら、これは?」
一夏は攪乱加速を行い6つの分身で零落白夜による攻撃を仕掛けた。
「クッ・・・・・・!!」
ラウラは腕のプラズマブレードとワイヤーブレードによって5つは防御するが1つだけ逃してしまうが一夏ならばその一撃があれば充分だった。
「グハッ・・・・・・!」
「まだだ!」「まだよ!!」
今まで一夏の援護に徹していた結華がアサルトライフルからショットガン『テスタロッサ』に換えて前に来た。
一夏はエネルギー消費の激しすぎる黒翼を解除して絢爛礼奏零落白夜を放ち、結華はテスタロッサによるゼロ距離射撃でラウラを左右から挟撃した。
「ぐぁ・・・・・・!」
俺は一時下がって結華に譲る。結華の銃撃は誤射の可能性が高いのを知っているため一気に下がる。
「眠りなさい、黒い兎ちゃん」
結華は右手にテスタロッサとライン・レインを強引に持ち、それを左手にもやる。人差し指をテスタロッサの引き金に中指をライン・レインに掛けて他の残った指で武器を保持して撃ちまくる。
「ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・・・・・・・・」
ラウラはそこで気を失った。
・―・―・―・―・―・―・―・
ラウラは夜空に月も、星の1つ浮かんでいない真っ黒い空の草原に立っていた。
考えている事は一つ、
何故、一夏と結華に勝てないのか?
それだけだった。
「勝てない・・・・・・何故、勝てない?
力が足りないのか?
あいつらが強すぎるのか・・・・・・」
ラウラは突然の恐怖に襲われ体が震える。
「どうすれば・・・・・・どうすれば、あいつらに勝てる・・・・・・」
ラウラは震える体を押さえつけながら呟く。
「私に力が無いからか・・・・・・」
ドクンとその黒い空が震える。
「もっと、もっとだ・・・・・・もっと、力を寄越せぇっ!!」
そう言った瞬間、黒い空から声が聞こえる。
『汝、力を欲するか?より強い力を欲するか?』
その問いにラウラが叫ぶ。
「寄越せ!比類無き力を寄越せぇっ!!」
――機体損傷レベルD
――精神状態最大値
――意思を確認
――『ヴァルキリートレースシステム』起動――
ラウラに自分が狂いそうなほどの力が流れてくるのが分かるが、一瞬で分かってしまう。
「(駄目だ・・・・・・この程度の力では、あいつらには足りない・・・・・・圧倒的に足りていない)」
それを理解した瞬間には力の流れが止まっていた。
――エラー発生、精神状態計測不能。意思確認にエラー発生。システム起動にエラー発生――
「(足りない・・・・・・?力が足りないのか?私の求めているのは本当に力なのか?)」
ラウラの頬に涙が流れる。
その涙が悔しさから来るのか悲しさから来るのか、絶望したからかには分からない。
「(教官・・・・・・教えてください・・・・・・)」
だが、千冬からの声は聞こえない。絶対の信頼を置いている師の回答が、答えは聞こえない。
「誰か・・・・・・助けて・・・・・・」
そう呟いた瞬間、周りの景色が一変する。
そこは黒い雨の降る草原だった。
「だぁれも、助けちゃくれないよ?」
背後から声が聞こえた。振り向けばそこには黒いウサギの耳を付けた自分が居た。
「誰だ!!」
「ずぅっと・・・・・・一緒に居るのに、分からないの?」
「どういう意味だ?」
「答えはぁ・・・・・・自分で探すものさぁ・・・・・・」
ラウラには訳が分からなかった。自分の姿をしておきながら、自分とはまったく違う性格でまったく違う口調・・・・・・ラウラには訳の分からないことだらけだと。
「ふふ・・・・・・わかった。ヒントをあげよう。お前が求めている力は何だぁ?おまえ自身の力かぁ?
・・・・・・そして、何故力を求めるぅ?」
ラウラはこの問いに答えなければならない気がした。何故だかは分からなかったが答えなければならないと思った。
「決まっている!!教官の汚名を晴らし、教官に汚名を塗ったあいつを消すために!そうして教官と居るために」
「ふぅん・・・・・・でも、違うよね。君のやりたいのは?」
「・・・・・・っ!?」
ラウラはそう言われて動けなくなった。図星だった、考えていた事全て見抜かれたからだ。
「ほら、言っちゃいなよ。君のやりたい事を」
「わ、私は・・・・・・教官のように・・・・・・いや、教官になりたい!!」
「でも、分かっているんだろぉ?所詮自分は自分だとぉ・・・・・・他人になる事は出来ないとさぁ・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
「改めて聞こうか・・・・・・お前は一体何がしたいぃ?」
「私は・・・・・・私だけの力が欲しい。唯一無二の誰にも得られないような力が」
ウサギの耳を付けたラウラが笑う。
「あははっ!やっと理解したのかぁい?遅すぎるよぉ、私の相棒ぉ・・・・・・」
「そうか・・・・・・私は教官じゃない」
「そうさ、所詮人とは何か別の者にはなれないのさぁ・・・・・・
でも、だからこそぉ・・・・・・個々人の特別な力があるのさぁ・・・・・・」
「そうだな・・・・・・お前の力、私にくれるか?」
「そうでなければ出てこないよぉ?ましてや貸してくれなんて言われたら断ったねぇ・・・・・・
さぁ、幻想に浸る幼き時間は終わりだよぉ・・・・・・精々足掻け、そうして私の渡した『相棒の唯一無二』ではなく『自分の唯一無二』を手に入れろ」
ラウラは無言で頷き目を閉じる。
そして目を開け歩き出す。光のある方に・・・・・・
自分が自分であるが為に・・・・・・