IS 一つの夏と結ばれた華   作:見知らぬ誰か

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第20話 新しき黒

 結華が銃4丁を腕2本で撃ち続けていると突然、ラウラの体から力が抜けて動かなくなった。

 ほぼ零距離射撃を連続で受けて気絶したのだが、結華は警戒を解かなかった。

 

「……ッ!?」

 

 結華はその直後、後方宙返りをしながら後方に退避する。

 地面に着地した結華の視線の先には白い光を放ちつつ黒い紫電を走らせている。

 

「結華?」

 

 緊張している結華に一夏が話し掛ける。

 

「二次移行(セカンドシフト)……だけど、普通の二次移行じゃないわ。

 警戒しときなさい」

「分かった」

 

 結華は銃4丁を腕2本で構え、一夏は雪片と黒龍を構える。

 その後、白い輝きと黒い紫電が収まるとそこには黒銀のシュヴァルツェア・レーゲンが居た。

 ラウラが口を開く。

 

「感謝するぞ。何も無い私にも、相棒が居た!さぁ、全力で勝負ッ!!」

 

 ラウラが突っ込んで来ると同時に結華と一夏も突っ込み、ラウラは両腕の銀色の実体ブレードで攻撃し結華は突っ込んでいる間に替えておいた日本刀ブレード『雲斬』で、一夏は雪片と黒龍で攻撃するが…………

 

ガギィィン……!!!!

 

 お互いの得物は当たらず、仲裁に入った千冬に止められた。千冬は打鉄の近接ブレード2本を生身で持って右腕でラウラの攻撃を受け、左腕で一夏と結華の攻撃を受けきっていた。

 

「「え…………」」

「…………」

 

 一夏と結華とラウラは思ってしまった。千冬は人間を辞めているのではないか……?と。

 そこに千冬が苦しい顔もせず、涼しい顔で言い放った。

 

「模擬戦をするのは構わん。だが、流石にアリーナのバリアーを破壊するような事態となっては教師として黙認しかねる」

「「「…………」」」

 

 千冬が息を吸って言った。

 

「この戦いの決着は学年別トーナメントで付けて貰う」

「教官がそう言うならば」

「俺もです」

「私もです」

「では、学年別トーナメントまでの私闘の一切を禁止する!解散!!」

 

・―・―・―・―・―・―・―・

 

 保健室にて。

 今、この保健室には怪我をしている鈴音、セシリアの他に一夏と結華、シャルル、簪が居た。つまり、アリーナでの件のほぼ全員である。

 

「…………」

「ま、ありがとうね。あのままじゃ負けるの確定だったし」

 

 セシリアは黙っているが鈴音は素直に謝った。

 この違いは意識の違いだ。セシリアは意中の相手に恥ずかしい所を見られて自分の評価が下がるのが嫌なため。鈴音は一夏にフラれた事によって吹っ切っているため友人以下には下がらないと確信しているためだ。

 

「り、鈴さん!?」

「時には未熟なのを認めるのも大切よ。セシリア」

「で、ですが……」

「まぁ、それも分かるけどね」

 

 鈴音は傾斜を付けたベッドに背を預け目を閉じる。セシリアは素直になれないのか未だに黙っている。

 

「にしても、千冬姉さんの人外っぷりには驚くわね」

 

 結華が唐突にそんな事を口走った。

 

「確かにな……何時から片手でISの武装を保持してそれで2方向からの攻撃を受けきれるようになったんだ?」

 

 実の弟である一夏もそれに頷き続けて言った。

 

「千冬さんって力だけは強いものね~」

 

 そんな事を話していると遠くから足音が聞こえてきて、揺れが近付いて来るのを感じた直後、勢い良く扉が吹き飛んだ。漫画などを良く見る簪としてはそれが現実で起こった事に驚きである。

 そして入って来たのは当然ながらIS学園の女子生徒たちである。それぞれ全員がプリントを持っている。

 

「織斑君!!」

「デュノア君!!」

 

 一番前の女子生徒が止まって、後ろの女子生徒が手を伸ばすというどこかの地獄とかの大叫喚地獄の光景のようになっている。

 

「なにこのカオス……怖い」

 

 結華がぼそりと呟いた。

 

「な、何だ何だ!?」

「皆どうしたの!?」

『これ!!』

 

 女子生徒達がが声と共に一斉にプリントを前に出した。

 一夏が1枚受け取り、その内容を読みあげる。

 

「えーと何々……?『今月開催する学年別トーナメントではより実戦的な模擬戦闘を行う為2人組での参加を必須とする。尚、ペアが出来なかった者は抽選により選ばれた生徒同士で組むものとする』……はぁ……」

『と言うわけで私と組んで!!』

「え、えっと……」

「うーん……」

 

 一夏とシャルルは悩んだ。一夏の迷った理由はシャルルの正体を隠すために結華を捨ててシャルルを選ぶかで、シャルルはどうすれば良いのか分からない状態である。勿論、シャルルの最善策は一夏か結華であるが、その2人を分けたくは無かった。

 その結果、一夏とシャルルが選んだ決断は……

 

「(すまん!シャルル!)悪い、俺は結華と組むから!!」

「(流石にあの2人は分けられない……それなら一夏と結華に近い人に頼むしかない!!)ぼ、僕は簪さんと組むよ」

 

 一夏はシャルルを捨てるという選択でシャルルは一夏と結華に近い者に頼ってみようという考えである。

 

「織斑君は頷けるけど……デュノア君が……」

「でも、デュノア君が決めた事だし」

「仕方ないかぁ……」

 

 女子が全員保健室から出て行く。もれなく最後の人は扉を丁寧に付け直してから帰って行った。

 

「すまん、シャルル」

「良いよ。結華は大事だもんね」

 

 そこに空気を読まない虫が保健室に飛んでくる。

 

「一夏!!私と組め!!」

 

 空気を読まない虫『篠ノ之 箒』こと存在が最近放棄されていた放棄である。

 

『…………』

 

 6人による無言の圧力である。箒を知らない簪ですらも無言の圧力を送っている。しかも殺気も織り交ぜつつ送っているのが鈴音、シャルル、セシリア、簪と4人も居る。

 

「な、何だ……?」

 

 結華が一夏に小声で一夏にしか聞こえないように喋る。

 

(早くしないとこの掃除用具が何を言い出すか分からないわね……)

(同じく俺も最近嫌になって来た……)

 

 基本的に人の事を嫌わない一夏が放棄の事を嫌い始めたようである。

 

(でもねぇ……)

(ここはどうにか……)

「一夏!!聞いているのか!?」

 

 一夏と結華以外の人が思った。

 

――一夏と結華、よくこんなのと付き合ってられたなぁ……

 

 と…………。

 

「聞いてるよ。それで何だ?」

「聞いてないではないか!!」

 

 一夏が若干、放棄に対して態度を変え始めた瞬間である。

 

「それで何だよ」

「1週間後の学年別トーナメント、私と組め!!」

 

 この時全員が思った。

 

――それぐらい、ここに来る途中で察しろよ……

 

 …………と。

 

「嫌だ」

「何故だ。ここから出て行った者達を断ったのは私と組むためだろう?」

『………………』

 

 今、全員の放棄の評価ががっくりと下がって来ている。一番高かった時の一夏の箒に対する評価が1000とするなら今は110~100といったあたりだ。無論、ギリギリとはいえ3桁を保持しているのは一夏のみで他の全員がもう既に2桁の前半で、結華とほぼ初対面の簪、人間関係(特に一夏と結華)に敏感な鈴音に関しては1桁だ。全員の数字を表してみよう。

名前:最大値/現在 *初対面の場合は100が基本で付き合いによっては数字が増えたり減ったりする

一夏:1100/105

結華:100/2

シャルル:400/20

鈴音:150/4

セシリア:200/30

簪:100/-10

 簪の評価が-10という新記録を打ち立ててます。

 

「俺は結華と組む」

 

 一夏はぶっきらぼうにそう言い放った。普通ならば『悪いな』の一言があるのだが、評価がほぼ初対面に近い状態だとこうなる。

 

「そうか……ならば鈴音やセシリアは?」

「あたしはパ~ス~。ISの損傷レベルがC超えてて稼動させると不具合が出かねないのよ」

「わたくしもパスで。損傷レベルが鈴さんと同じくCを超えておりますので」

 

 嘘である。セシリアも鈴音も先のラウラとの戦闘では損傷レベルがC以上にならないように出来るだけ本体へのダメージは避けていて、ブルー・ティアーズ、甲龍共に損傷レベルはBに抑えており学年別トーナメントに参加可能ではある。勿論、ダメージの高さゆえに性能は完全状態の1/4も出せないが。お互いに現在自己修復モードで待機中である。

 セシリアも鈴音も放棄とは組みたくないから、こう答えただけである。

 

「む……そうか。ならばデュノアは?」

「僕もパスで。簪さんと組むよ」

 

 一夏と同じく放棄に誘われた全員が断った。鈴音やセシリアの言い方は普通なのだが、シャルルの声には一切の抑揚が無くそこに居る放棄を除く全員が震えるレベルの怖さだった。

 それにシャルルは人付き合いが最高というレベルで、こういった相手が気分を害する場合の返事は『ごめん』などの謝ってから言うのだが、放棄にたいしては何も無かった。

 

「そうか……ではな」

 

 放棄はそう言うと保健室から出て行った。

 

「何様のつもりかしらね?アイツ」

「…………気持ち悪い…………」

「何か捻じ曲がっていますわね……」

「一夏、もう篠ノ之さんとは関わらない方が良いんじゃない?」

「私は一夏次第だと思うのだけれどね」

 

 順番に鈴音、簪、セシリア、シャルル、結華だ。

 一夏はうーん……と首をひねってから少し考え、そして答えた。

 

「もう少し様子を見てみるよ」

「まぁ、一夏がそれでいいのなら良いけどね」

 

 ここでセシリアが業とらしく咳を吐く。

 

「ンンッ!!一夏さん、よろしいでしょうか?」

「何だ?セシリア?」

「わたくし、セシリア・オルコットは貴方、織斑 一夏さんが好きです。わたくしと恋仲になっては頂けませんか?」

 

 セシリアの突然の告白だった。だが、放棄のように絶対に一夏を自分のものにするというものではなく、諦めるための……いわば玉砕覚悟の告白だ。一夏の結華に対する恋情はもはや愛情に変わっているのにセシリアは気付いたのである。もちろん、人間の機微に敏感な鈴音は2人が付き合っているという時点でそれが分かっていた。

 一夏はセシリアの前に来ると返事をした。その返事は勿論……

 

「悪いな、セシリア。俺は結華の事が好きだ……愛していると言っても良い。だからお前の事を好きになるのは無理だ。ライクは出来るけどラブは無理だ。だからこれで我慢してくれ」

 

 一夏はそっとセシリアの額にキスをした。

 

「あっ…………」

 

 セシリアの顔が真っ赤になる。

 

「本当にごめんな」

「い、いえ……これは諦めるためですもの」

 

 セシリアはフフッと笑った。土台、無理な話だったのだ。幼稚園の頃からの隣の家との付き合いから始まった関係に入ろうとする事自体、無理な話だったのだ。

 

「さ、一夏。夕食でも食べに行きましょ?」

「そうだな、シャルルと簪も来るか?」

 

 一夏は動ける2人を誘う。

 

「うん」

「行く……」

 

 4人は一緒に保健室を出て行った。

 その4人が出て行ったあとの保健室。

 

「どう?セシリア。告白してみたご感想は?」

「中々にドキドキしましたわ……断られると分かっていましたのに……」

「まぁ、一縷の望みに賭けた訳じゃないのね」

「近くで見ていれば見ているほど無理だと実感してしまいましたわ」

「で、あのとき告白しようと思った理由は?」

 

 鈴音にそう聞かれて少し考えるセシリア。考えた結果導き出された答えは……

 

「先ず一点が先に言ったように無理だと実感したから、二点が箒さんのようにしていれば評価が下がるのは自明の理自だから……この二点ですわね」

「妥当な判断ね」

「嫌われるよりはマシですから」

 

 保健室に2人の笑い声が響いた。

 

「ところでセシリア、機体のダメージレベルは?」

「損傷レベルはBで現在、自己修復モードで待機中ですわ。1週間あればギリギリ完全状態で可能ですわ」

「私もよ。どうする?アンタ出るんなら私も出るけど」

「鈴さんの見た目の損傷レベルは」

「損傷レベルはBで現在、自己修復モードで待機中ですわ。1週間あればギリギリ完全状態で可能ですわ」

「私もよ。どうする?アンタ出るんなら私も出るけど」

「鈴さんの見た目の損傷レベルはCに近かったような気がしますけど……」

「別に問題ないわ。外装に関してはやばかったけど内装は問題無いもの。それに、本国のほうからは破損したときのためにって丸々1機分組めるような予備パーツ受け取ってるしね」

「流石は中国ですわね……」

「流石に衝撃砲の予備パーツは無いけどね……別に入れてくれたって良いじゃないのよ。ここで使うISの兵装は公開されるんだから……変なところで秘密主義発揮して……」

 

 秘密主義大国はアメリカやロシアのことを言うのだと、セシリアはそのとき突っ込めなかった。自分のBT兵器に関してもさほど本国が公開しているわけでは無いから……。

 

「ま…………学年別トーナメントよろしくね」

「お願いしますわ。鈴さん」




放棄アンチ入りました~(笑)
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