俺は不意に目が覚めた。カーテンの合間からは月の優しい光が部屋を照らしていた。
そこは俺の自室。俺は中学時代と同じようにベッドに寝ていた……ある一点の違いを除けば……
その違い……それは俺の腕を枕にして寝ている一糸纏わぬ少女、結華だ。いくら幼稚園児の頃からの付き合いとは言えお互いに全裸で寝た事は無い……つまり“事後”という事である。
「…………こんなところまで来たんだなぁ……」
俺はそう小声で呟いた。
結華との付き合いを始めたのが中学2年のあの事があってから……俺の結華への想いはあの事があったからこそ伝わった。それまでは拒絶で全て説明できる。
俺は感慨に耽る……俺は結華の事を好きではあっても、結華の反応からこんな関係になるとは思ってもいなかった……だが現実は違かった。結華の拒絶……それが真逆の意味だったと知るのは付き合い始めて暫く経った頃だ。
言うなれば……そう『好きな子には意地悪をしたくなる』……そんな感じだ。今思えば結華が完全に拒絶していたのではなく拒絶したフリをしたときの俺の反応を見ていたのだろう。アレだけの罵詈雑言、毒舌が俺の反応を見るための意地悪だったとは……それが原因で俺が結華の事を嫌っていたらどうするつもりだったのだろう……考えるだけ無駄なのかもしれない……その答えは結華しか知らないのだから。
「……ん…………」
結華が寝返りを打ちこちらに更に寄ってくる……ふわりと結華の女子特有の甘い香りが鼻腔を突く……
時計を見れば午前2時……まだまだ時間はある。もう1度寝よう。
・―・―・―・―・―・―・―・
朝、俺は唇に感じる柔らかい何かを感じて目を覚ました。
目を開ければすぐそこには結華の顔があり、キスをして起こしたのだというのがなんとなく理解できた。
「おはよう結華」
「おはよう、一夏」
結華の姿はまだ着替えている途中なのか分からないが下着の姿だった……
「寒くないのか?」
「さすがにもう7月だもの。寒くは無いわ」
……それでも朝は肌寒いようで結華はクチュンッ!と小さくくしゃみをして二の腕を抱くようにして身体を震わせた。
時計は6時半を示している。何時も通り……だが今日は休みだしもう少し寝ていても構わないのではないだろうか。
「ほら、寒いんだろ?」
俺は布団を開いて結華が入れるようにする。
結華は特に何も言わずに布団に入ってきて俺の身体と密着する。
「暖かい……」
「それは何よりだ」
そこからしばらくお互いに沈黙の時間が過ぎる。
一体どれほどの時間が流れただろうか……もしかしたら1分かそこらかもしれないし、30分近く経っているかもしれない……そんな静寂を破ったのは結華だった。
「……ねぇ、一夏」
「なんだ?」
「私ね、ようやく決心がついたの」
一体何に対する決心なのか俺には分からないが口には出さなかった。言わずとも結華がそのまま話すと思ったから……一種の信頼だった。
「私は……自分の親がどうなったのか知りたい。こうして一夏との強い繋がりが出来た今なら……逃げることはないと思うから」
結華は何から一体逃げていたのだろうか……?親との別れだろうか?それとも何かまた別のものだろうか……だが、今まで結華と付き合って来て、結華が何かから逃げたと思ったことはない。むしろ自分のほうが色々と結華から逃げていたのではないだろうかとも俺は思う。いや、先に逃げたのは俺だ……結華の親のことをずっと黙っていたのだから。
「……逃げていたのは俺だよ。俺は結華の親のこと知ってたのに結華が変わってしまうのではないかと怖くて……」
「……そう……それなら……」
「話すよ。結華が望むなら」
結華がそう望むなら話そう。あの悲惨な出来事を……
「あれは俺達が中学2年の第2回モンド・グロッソの時だった――――
・―・―・―・―・―・―・―・
あの日、俺と結華は千冬姉のモンド・グロッソ決勝の試合を見るために結華の両親とともに会場に向かった。
俺、結華、結華の両親の4人で会場に入る直前、俺達4人は謎の黒服に誘拐されて連れて来られたのは使われなくなった廃工場……そこに俺達は拘束された。
黒服の奴らの目的は千冬姉のモンド・グロッソ2連覇を阻止するためらしいのが聞こえてきた話し声から分かった。
初めは日本政府と交渉をしていたようだったが、中々に日本政府が条件を飲まなかったようで後から分かった有能なIS技術者である結華の両親を殺して、ようやく交渉に応じた……らしい。その交渉の内容は千冬姉に俺と結華、結華の両親が連れ去られたことを伝える……という内容らしかった。らしいというのも日本政府の交渉どうのと言うのは千冬姉から聞いた話だからだ。
結華の両親は結華の目の前で眉間と胸を撃たれた……結華はその光景をモロに見てしまい、気を失ったようだった。当然の反応……なんだろうな……。
その後は、千冬姉がモンド・グロッソに出場するのを蹴って助けに来た……千冬姉は結華の両親の死体を見てその誘拐犯を殺して死者13名の誘拐事件は終わった。
・―・―・―・―・―・―・―・
――――これが結華の両親の死んだ日のことだよ」
「……そう、それが…………それが真実なのね……」
結華が俺に抱きついてくる。
「……真実って、悲しいことね」
「………………」
結華は泣いていた……静かに泣いていた。
俺には何も言えなかった。今、何を言っても無駄な気がしたから。
「でも、今は……今は一夏が居るから……ずっと居てくれるから」
「ああ、居るよ……ずっと一緒だ」
俺に抱きついている結華を俺は優しく抱きしめた。
・―・―・―・―・―・―・―・
「注文していたものはこちらでよろしいでしょうか」
一夏と結華は日曜日の夜、寮に戻る途中で指輪を注文していた宝石店に寄り指輪を受け取りに来ていた。
一夏の指輪はホワイトゴールドのリングに新緑のスフェーンがあしらわれた物、そして結華の指輪はトルコ石のリングに見方によって緑と赤の見えるスフェーンがあしらわれたものだった。
「問題ないわ。お金は昨日払ったわよね」
「はい、お持ち帰り頂いて結構です」
結華はトルコ石の指輪を手に取り一夏に渡した。
「嵌めてちょうだい」
一夏は無言で頷き結華の薬指に嵌めた。
結華はホワイトゴールドの指輪を手に取り一夏の左手の薬指に嵌めた。
「ふふっ……」
結華は左手の指輪を撫でて微笑んだ。
文字数がどんどん少なくなっていく……困ったなぁ……
あ、あと活動報告に新しく書いてみたい作品のプロローグを置くので興味ある方はどうぞ
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アンケート結果についての活動報告
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