週明けの月曜日、クラスの席には一夏の隣の結華、すこし離れた場所のシャルル……いや、シャルロットの席に2人が居なかった。それに気付いた一夏以外のクラスメートがざわめく。
「あれ?鉄装さんは?」
「シャルルくんも居ないよ」
「どこに行ったんだろ?お休み?」
「でも織斑くんは居るよ?」
真耶が教室に入ってくる。
「み、みなさん……おはようございます」
真耶はかなりフラフラしていてかなり元気がなかった。
「今日は……ですね……転校生?これって転校生なのか分かりませんが……まぁ、紹介します。では、入ってきてください」
真耶がそう言い終わると教室のドアが開いて2人入ってきた。
一人は金髪にアメジストの瞳を持つ元は少年として編入した少女
もう一人は黒髪の中に一房だけ白く色が抜けてしまった黒い瞳を持つ一夏の彼女……
「シャルロット・D・織斑です。改めてよろしくお願いします」
「デュノアくんは織斑さん……ということでした。はて……私にもよく分からないのですが……」
『織斑……?』
クラスメート全員がハモった。
「一夏に引き取ってもらって養子になったからね」
『えぇー!!??』
クラスメート全員が驚くのも無理は無い。そしてそこでクラスメート全員の頭に思い浮かんだのが……『一夏が養父だとして養母は?』というものだった。
「デュノアくんが女だったのは良いとして……織斑くんが養父ってのもまぁ、良いとして……じゃあ、養母は?」
「いや、その2つも十分良くないでしょ」
「どれも十分に問題だよね」
「あれ?金曜日男子が大浴場使わなかった?」
「どうせ、問題無いでしょ。織斑くん相手いるのに手出すはずないし」
何気に男としての扱いが酷い一夏……そんなことを今は気にする必要はない。
「織斑 結華よ。一夏の妻になったから改めてよろしく」
『…………………………うん?』
「聞こえなかった?織斑 結華よ。一夏の妻になったから」
結華は左の手の甲を見せて薬指の指輪を見せた。
「本物?」
「もしかしたら鉄装さんが着けてるだけかも」
「だよねぇ~……」
「織斑くん着けてるよ?」
「「「………………」」」
結華が一夏を立たせて教壇に連れてきて一夏の左の手の甲を見せる。
『……マジ?』
「マジよ」
結華はついでと言わんばかりに婚姻届のコピーを取り出して見せる。
「認めん……そんなもの認めんぞ!!」
大声でそう叫んで立ち上がったのは窓際の一番前に座っている箒だった。
「第一、一夏はまだ結婚できる年齢でないだろうが!」
「一夏は今、国籍を持たない『無所属』の状態よ。今なら一夏が0歳児でも結婚できるわ」
「……日本の民法が適用されないなら一夫多妻制も問題ないだろう!それに結華はまだ未成年だろう!」
「私は16歳よ。未成年後見人という者がいれば結婚は出来る。それに一夏は一夫多妻なんてことをするつもりはないらしいわ」
「ええい!黙れ!私は……私は認めん!!」
箒は机に立て掛けていた篠ノ之家に伝わる日本刀『蒼刻』を手に取り篠ノ之流剣抜刀術『椿』……横一閃の居合抜きを結華に向けて放つが突然、縦一閃が閃き箒の蒼刻の上半分が断ち切られ教室の天井に突き刺さった。
「まったく……面倒を掛けさせるな……」
一夏・結華と箒の間に立っていたのは出席簿を振り上げた千冬だった。
「篠ノ之、その刀は可哀想だな。人を守るための篠ノ之流剣術が人を殺すために使われるとは……」
「千冬さん……ですが!」
「黙れ、一夏と結華が決めた……いいや、決めていたことだ。今更お前程度が何を言おうが変わらん」
「…………くっ……」
箒は手に持っていた蒼刻の下半分と鞘を床に叩きつけ席に戻った。
「……刀も哀れだな……丁寧に使われなかった挙句、使えなくなって捨てられるとは」
千冬はそう呟き天井に突き刺さった上半分を先に鞘に入れ、その後に下半分を鞘に戻した。
「さて……ここで臨時の理論……いや技術理論教師を紹介しよう。まずは席に戻れ、一夏、結華、シャルロット……ああ、これからはそう呼ぶからな」
「「「はい」」」
一夏、結華、シャルロットの三人は自分の席に戻った。
「では、入って来てくれ」
教室のドアが開いて入って来たのは30半ばの男性だった。
「倉持技研デュノア技術部のウラジミール・デュノアだ。しばらく理論講師として居るのでよろしく頼む」
ウラジミール・デュノア……元『デュノア社』最高責任者(CEO)で、シャルロットの父親……なぜそんな男が倉持に居るのか……その理由は千冬の伝手によって実現した。
ウラジミール・デュノアはシャルロットに日本に行くように仕向けはしたが、それはシャルロットを日本に逃すために行ったことであってシャルロットに一夏のISのデータを盗ませるためではなかった。事実、その命令を下したのはウラジミールの本妻である『ジョゼ・デュノア』だ。
そのことを大まかに予測した千冬は倉持技研の知り合いに連絡しその後デュノア社CEOのウラジミールに連絡し事実確認を取った。
千冬が連絡した時、デュノア社はウラジミール派とジョゼ派に2分していた。多くの有能な技術者の大半はウラジミール派に付いた。それでもウラジミール派は少数であってかなりジョゼ派に呑まれつつあったが、そこに舞い込んで来たのが千冬が話をつけた倉持との統合だった。
倉持とデュノアの統合はデュノア社にはウラジミール派にのみ伝えられ、ウラジミール派のウラジミールはCEOを本妻のジョゼに離婚とともに委譲し、ウラジミールについた社員は全員が辞表を提出後ウラジミール派全員が日本に亡命、そして日本の倉持に入社しデュノア技術部として再び雇われた。
「と、父さん?」
「シャルロット……済まなかったな……スパイなんてさせるつもりは無かったのだ」
「信じられないよ……そんなの……」
「後で……詳しく話そう」
「……分かった」
こうして、親子2人は再開した……
・―・―・―・―・―・―・―・
その日の夜……箒は寮の屋上で自分の携帯端末を操作し一つの連絡先を表示させる。
表示された名前は『篠ノ之 束』……実の姉でありISを開発した張本人。
「………………」
その番号に箒は電話を掛ける。
2、3度コール音がなった直後に繋がる。
『もすもす終日ぅ~?何かな何かな!何の用なのかな箒ちゃん!!』
・―・―・―・―・―・―・―・
「あーあー……つまんないつまんないつまんないっ!どいつもこいつもISの使い方が分かってないんだから……!」
束は世界に……世界のIS開発者にとても落胆していた。
ISは宇宙進出を行うためのものであるにも関わらず目先の利益しか考えておらず、遠くの利益は考えていない……それが束にとって望まない状況を生み出していた。
突然の電話着信。音楽はゲーム『アーマード・コア4』より名曲『Thinker』……次作『アーマード・コアfor Answer』のあるミッションにて僚機に乗る人間が似たものを歌うことで有名になった曲だ。
「この歌詞はぁ!」
束は様々なものがごちゃごちゃと置かれた研究室のテーブルから着信音流れる自分の携帯端末を手に取るとすぐに通話に出た。
「もすもす終日ぅ~?何かな何かな!何の用なのかな箒ちゃん!!」
『……姉さん』
「何かな箒ちゃん」
『私に専用機をくれませんか』
一時興奮気味だった束は箒のその一言を聞いてクールダウンする。
「理由を……聞いても良いかな?」
『結華を……いえ、一夏を見返してやりたいんです』
「あのカップルを?」
束には箒の言いたいことが分かってはいたが敢えて箒の口から聞くことにした。
『……一夏は結華の強さが好きなようです……だから、私は結華よりも強くなりたい……』
「そうなんだ……分かったよ」
『本当ですか!?』
「うん、臨海学校があったよね?その時に顔を出すよ」
束は通話を切った。
「……何となく……そう、何となくは分かってはいたけど……」
束は葛藤や様々なものを吐き出すように小さく小さく呟いていった。
「……人間って自己中だよね……昔そうだった私が、そんなこと言えないんだろうけど……」
「……でも、それでも……私は自分のために……結局は世界のために……ISを作ったというのに……」
「……誰……一人として世界は思うように進まない……」
束は小さな……そうとても小さな声で丁寧に飾られた紅いそれを見ながら呟いた……
「……苛つくなぁ………………」
連日投稿……かな?
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緋宵が断ち切られたと先の物では書かれていましたが……もうすでに25話で細切れにされていたので新しく刀を作りました。