IS 一つの夏と結ばれた華   作:見知らぬ誰か

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箒好きの方には胸糞展開ですので注意してください。


第32話 妄言

 夕食が終わって少し経った8時15分。8時半の集合ではあったが呼ばれた全員+箒が千冬の部屋に集合していた。

 

「まぁ、少し早いが全員揃っているし始めるか」

 

 千冬が言ったその言葉に鈴音が反応する。

 

「せんせー、箒がいるけど良いんですか?」

「居てはいけないというのか!?」

「だってアンタ呼ばれてないじゃない」

 

 鈴音と箒の応酬がいつまでも続いていては話が進まないと思い千冬が割って入る。

 

「凰、篠ノ之にも関係のあることだ。別にいても構わん」

「織斑先生がそう言うなら……」

「いくつかの連絡事項を連絡するから質問があれば適宜質問しろ」

 

 鈴音は渋々ながら引き下がった。鈴音としては箒を好いてない以前に好くことは無いだろうと感じているからだ。努力をする鈴音、努力もしない箒……鈴音としては努力しない人間を好くつもりはなく、殊更箒に関しては性格も気に入らない。鈴音としてはあまり関わりたくない相手だ。

 

「今回の専用機持ちは一般生徒とは別の場所で装備の受け取り及び試験運用によるデータ取りを行う」

 

 シャルロットが手を上げて質問をする。

 

「上級生の話を聞くと専用機持ちも一般生徒も同じ場所で行っていたのに何故今年は別で行うのですか?」

「各国のISのデータを守るため……が建前だが他の代表候補生が居てはそれも通じんな。まぁ理由を話せば明日、篠ノ之束が来る」

「「「「「えっ!?」」」」」

 

 千冬が重大事実を話すが砂浜に行く時に会っていた一夏、結華、箒は驚かなかったが、他の専用機持ちであるセシリア、鈴音、シャルロット、ラウラ、簪は驚いていた。

 

「おそらく篠ノ之に専用機を渡すためだろう。コレが今回試験場所を隔離した理由だが……何か質問はあるか?」

 

 結華が手を挙げる。

 

「現在指名手配中の者が来るにも関わらず委員会への報告などをしないのは何故ですか?」

「ほう、良い質問だな」

 

 千冬は一息吐くと説明を始めた。

 

「恐らくだが、束は今かなり苛立っている……まぁ、理由は分からんが電話で話した時かなり苛立っているのは感じた」

 

 結華は心のなかで『それはISが本来の使い方をされていないからだろう』と思ったが口には出さなかった……というか口にだす必要も無いかなと感じたからだ。

 

「そんな状況で自分を捕まえに来る奴らに言って束が捕まってISの機能を停止させようものなら大事だ。だから今回は連絡しない」

「分かりました」

 

 結華としてはところどころ納得できない場所があったが納得したことにしておいた。どのみち言及したところで納得できる回答が得られる気がしなかったからだ。

 

「他に質問はないようだな」

 

 千冬がそこで一度話を切るが、一夏と結華、簪以外は特に何も話さずまるでお通夜みたいな状況になっていた。

 

「おいおい、何だこの静かな空気は?いつもの馬鹿騒ぎはどうした?」

「いえ、その……緊張しまして……」

「ふん、まぁ良い……篠ノ之、何がいい?」

 

 箒はいきなり声をかけられて何も話せなかったため、千冬は立ち上がると部屋の冷蔵庫からラムネ、オレンジジュース、紅茶、スポーツドリンク、コーヒー、チェリーコーク、ドクターペッパー、レッドブルを取り出した。

 

「私の奢りだ。飲め」

 

 簪は速攻でレッドブルを手に取り結華はチェリーコーク、一夏はドクターペッパーを手に取った。この3種類は千冬が出した中では異彩を放っていたが簪はよく夜更かしをするためレッドブルを飲み、結華は普段からよく飲むチェリーコーク、一夏は結華に進められてお気に入りとなったドクターペッパー……異彩を放っているがどれも不味いものではなく普通に飲めるものである。勿論人の好みにも依るのだが。

 残った飲み物は順番に箒、シャルロット、セシリア、鈴音、ラウラが手に取った。

 全員が蓋を開けて一口飲むのを確認すると千冬はニヤリと笑った。

 

「全員飲んだな?」

 

 そこで結華以外が頷いたが、結華は言った。

 

「飲んでないですよ?」

 

 結華はの蓋の方向を千冬に向けて蓋を開けた。結華が渡された直後に振ったペットボトルのチェリーコークは蓋を開けた瞬間炭酸の圧によって吹き出し、千冬は吹き出したそれをちょうど近くにあったコップの中に全て収める。

 

「やはりか……ほれ」

 

 千冬はチェリーコークの入ったコップを渡すと見せ掛け結華に掛けた。

 

「……はぁ…………」

 

 一夏以外が唖然とする中千冬が言った。

 

「教師をからかうからそうなるのだ」

「いつも家でやってることでしょう……」

 

 結華は畳まれてあったバスタオルを取るとチェリーコークの掛かった場所を拭くがベトベトした感覚は取れない。

 

「ほれ、さっさと風呂に行って洗って来い。一夏、一緒に行って流してやれ……大浴場使ってないだろう」

「分かったわ」

「分かった、千冬姉」

「織斑先生だ」

「良いじゃないか」

 

 一夏と結華は立ち上がって風呂道具を用意すると部屋から出て行った。

 

「あの、織斑先生……」

 

 簪が少し声小さめに言った。

 

「いくら結婚しているとはいえ男女を一緒に入るように言うのはどうなんでしょうか?」

「いや、別にあの二人なら間違いが起こっても問題ないだろう」

「そういう問題なのかな……?」

「そういう問題だ」

「……はい」

 

 簪は納得していなかったが納得したことにした。

 

「織斑先生!」

 

 今度は箒だった。

 

「私も大浴場で入ってきます!」

「まぁ待て篠ノ之、お前には話があるからな。風呂に入るのはその後でも良いだろう」

「な、なら……」

 

 箒はラムネを頭から自分で被った。

 

「汚れてしまったので大浴場に――」

「――ここのを使うと良い。話があるからな、遠い大浴場まで行かなくても良いだろう」

「……はい」

 

 他の者は自分の飲み物を飲んでわざとその光景を見なかった。それは何故か、ひどく醜すぎて見にくかったからだ。恋愛に疎いラウラですらも目をそらすほどに醜かった。

 

「まぁ、結華が漏らすとは思わんしな。大丈夫だろう」

 

 千冬は冷蔵庫からビールを取り出してプルタブを開けると中身を全て一気に飲んだ。

 

・―・―・―・―・―・―・―・口直し・―・―・―・―・―・―・―・

 

 一夏と結華は大浴場で露天風呂に浸かっていた。

 

「露天風呂は開放感があって良いわね」

「そうだな~」

 

 この二人、しばらく大浴場から上がるつもりはない。何故ならばコレは仕組まれていることだからだ。

 千冬が結華にチェリーコークを掛けたのは完全にわざとであり、更に今は大浴場の前には清掃中の看板が立てられ中には入れないようになっている。全て千冬と一夏、結華の仕込んだことだ。

 企画立案も実演も全て千冬、一夏、結華の3人によって仕組まれた先の茶番……その真意は一夏と結華の耳にある最小のイヤホン型トランシーバから聞こえる声だ。イヤホンからは千冬の部屋に千冬自身が仕掛けた盗聴器からの音が聞こえている。聞こえるのはセシリア、鈴音、シャルロット、ラウラ、簪の声だ。おそらくその内箒の妄言も聞こえてくるだろう。

 

「にしても俺たちの思っていることは言わないのにみんなの思ってることは聞けるんだから卑怯だよなぁ……」

「まぁ、これも必要なことでしょ。それに、あいつらの中に恋心がある奴は居ないし」

 

 満点の星空を眺めながら鈴音たちの心の中を聞く。皆一夏にも結華にも感謝していることなどを言っているようで一夏としては少し嬉しかった。

 

「良かったわね」

「まぁ……な………………」

 

 ここで一夏と結華のイヤホンから千冬の声が聞こえた。

 

『さてお前たちの心の中を聞いたところで……お前たちにはこれから一芝居打ってもらいたい』

『え?』『ん?』『どういうことですか?』『何をするんですか?』『?』

 

 セシリア、鈴音、シャルロット、ラウラ、簪の疑問の声が聞こえた。

 

「さて、ここからが本番ね」

「あまりやりたくないけど……篠ノ之さんだしなぁ……」

 

 これから始まるのは専用機持ちと世界最強による世にも恐ろしい茶番劇である。

 一夏と結華は声を聞くだけだが。

 

「ん?結華どうしたんだ?」

「別に、ただこうしたかっただけ」

 

 結華がすぐ隣りの一夏に寄りかかる。一夏が結華の頭を撫でると結華は気持ちいいように目を細めた。

 

・―・―・―・―・―・―・―・

 

 2本目のビールを空にすると千冬は若干にやけた顔で5人に言った。

 

「お前たちには一夏に気があるように芝居を打って貰いたい」

 

 千冬の言ったその言葉に全員が頭にハテナを浮かばせる。

 

「気があるとは好意を寄せている……という意味で良いんですよね?」

「まぁ、そうだな」

 

 簪の質問に千冬が肯定する。

 それを聞いた全員が唸る。なにせこの中の殆どが恋愛感情を抱く前に諦めていたのだから。

 

「「「「「………………」」」」」

 

 全員が顔を見合わせると全員が同時に頷いた。

 

「やるだけやってみようか」

「ボロが出るかもよ?」

「その時は誰かがカバーすれば大丈夫でしょう」

「演技力に自信はないが……」

「……大丈夫だと思うよ?」

 

 全員の考えは決まった。誰かがボロを出したら積極的にフォロー……そう決まった。

 

「やる、ということでいいんだな?」

「「「「「はい」」」」」

 

 そこにちょうどいいタイミングで箒が風呂から上がってくる。

 

「お、上がったな。篠ノ之」

「はい、それで話って何ですか?」

「いや、お前だけじゃないさ。ここに居る全員に聞きたいことだ……お前たちはアイツのどこがいいんだ?」

 

 一瞬で箒以外の全員は『ああ、やっぱりこう来るのか』と思った。箒はあれもいい、コレもいい、それもいい状態だった。

 一番初めに口を開いたのは鈴音だった。

 

「わ、私は腐れ縁なだけだし……」

 

 スポーツドリンクをちびちびと飲みながらそう答えた鈴音。それに続いたのはセシリアだ。

 

「わたくしはクラス代表としてもっと強くなって欲しいだけです」

 

 髪をいじりながらそう言ったセシリア。

 

「ではそう一夏に伝えておこう」

 

 そう言った千冬に2人はぎょっとしたフリをし詰め寄って「言わなくていいです!!」と同時に言った。ここでリーグマッチの特訓の成果が発揮されるとは2人とも思わなかったが……

 

「僕は……その、優しいところかな……」

「……私も同じく」

 

 そう言ったのはシャルロットと簪だ。シャルロットはスパイをするために仕込まれた演技力を活かして、簪はさる理由によって心からそう言っているように見せかける。

 

「だがアイツは誰にでも優しいぞ?」

 

 千冬のバッサリと切り捨てるような声にシャルロットはあははーと笑いながら、対照的に簪は落ち込んだように言った。

 

「そこが残念かなぁ……」

「それでもいつか自分に振り向いてくれることを信じて……」

「いや、もうソレはないだろう」

 

 簪はがっくりと項垂れた。しっかりと演じる簪も簪だがそれを指示した千冬も酷く感じる。

 

「で、お前は?」

 

 何も喋っていないラウラに千冬が聞く。本命(と言っても狙いは1人だが)の箒は最後だ。

 

「つ、強いところでしょうか……」

「まぁ、確かに強いな」

「私は強い心に惹かれました」

「そうか」

 

 元教え子の無い演技力をあとで褒めてやらねばなと千冬は思いながらラウラの演技に強く頷いた。

 

「で、篠ノ之はどうだ?」

 

 そして本命、箒……千冬、一夏、結華はこのために、箒の真意を聞くため、妄言を聞くため、妄想を聞くためにこの茶番劇に代表候補生に演技するようにしたのだ。お陰で面白いものが聞けそうだと露天風呂の2人は思っているに違いないだろうと千冬は思った。

 

「私は……一夏が私に惚れているにも関わらず結華で遊んでいるところが嫌いでソレ以外は好きですね。あ、でも……もしかしたらあれでしょうか?『好きな子には悪戯したくなる』とかそういうのなんでしょうか……いえ、きっとそうなのでしょう。でもそんな一面も好きだったり私一人で遊んでほしいとも思います。でも、それだけで結婚までするのはどうかなと思いますけどきっとあれも私の姿を見て可愛いなぁとかきっと思ってるんですよ。

 そして結華だけは絶対に許せないですね。遊びであるにも関わらずあんなに『自分が愛されてるんだ』みたいなアピールしてくるのが……ほんとに嫌いです。高々幼稚園の頃からの付き合いで何良い気になってるんですかね?アイツは自分が一夏の遊び相手だっていうのを自覚してないんですよ。ほんとにイラツキますよ……

 それに結華は自分が弱いのを一夏に守ってもらってる分際で調子に乗りすぎですよ。結華は全然強くなんか無いのに一夏の後ろに隠れるように『自分は強い』アピールして本当にアイツは嫌いです。そして私は気がついたんです、一夏は騙されてるだけなんだって。だから私は結華を倒して一夏と結華の結婚をなかったコトにして私と結婚すればいいんですよ。なんで私は気付かなかったんでしょう?」

 

 全員、全員が顔には出さないが呆れ顔だった。何より箒の妄言に呆れていた……その場に居る5人の専用機持ちは呆れ、千冬は内心爆笑していた。

 

「まぁ、そうかもな……まぁ、アイツと付き合える女は得だぞ?家事全般できるしマッサージも上手い。マッサージは姉である私が保証しよう。どうだ、欲しいか?」

「「「「「「くれるんですか?」」」」」」

「私に聞くな……というより、奪う気持ちで行け。もう結婚してるのだからな」

 

・―・―・―・―・―・―・―・

 

 その頃露天風呂では……

 

「アハハハハハハハハハハハハハハハ!!」

 

 結華が大爆笑していた。それはもう、普段の結華からすれば頭のネジ数本どころか百本単位で抜けたんじゃないかというレベルで大声で笑っていた。

 

「ハハハハ……はは……ははは……はぁ、はぁ、はぁ……」

 

 笑いすぎて息を切らした結華。

 箒の話を聴き終わった直後に立って腹を抱えながら笑っていたため、はぁと息を吐く度に胸がぷるん、ぷるんと揺れる。

 

「だ、大丈夫かよ?」

「いやぁ……あの屑の妄想具合というか妄言具合と言ったら某腐食少女みたいなレベルだったわ!」

「たしかにな……」

「ね?あれを相手にしない方がいいと言うのは事実だったでしょ?」

「ッ!?」

 

 いきなり一夏に抱きつく結華。胸が直接一夏の顔に当っているが結華は気にしないし気にする必要もない……が、一夏はすぐに結華を突き放した。それは自分の問題だ……息ができなかったし……

 

「もしかして興奮した?」

 

 結華の視線の先にはいきり立ったソレの姿があった。

 

「いや、その……」

「相手してあげるわ」

 

 結華は腕を組み、胸を持ち上げながらそう言った。

 




最後、ヤっちまったぜ
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