IS 一つの夏と結ばれた華   作:見知らぬ誰か

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うーん……なんか、スランプ中に何とかひねり出した所為か少し適当な感じがする……もうちょっとどうにかならなかったものかねぇ……


第37話 オチテ

 ブリーフィング終了から約20分。その間に出撃する全員が用意を済ませて砂浜に立っていた。

 俺は白式を、結華は蒼華を晴雷装備で、篠ノ之さんはリミッターの外された紅椿をセシリアはブルーティアーズのストライクガンナー、鈴は甲龍の崩山、シャルロットはラファールのシルフィード、ラウラはズィルヴァシュヴァルツェス・レーゲンのダンクェルリリィ、簪は打鉄弐式の憑黄泉……そして倉持さんの赤い専用機。国の1つや2つ簡単に滅びてもおかしくないような戦力が整っていた。

 

「本来ならば男が女の上に乗るなど許さんのだが……特別だからな」

「……そうか」

 

 浮かれてるのが今の篠ノ之さんの声で分かる……

 

『一夏』『織斑』

 

 プライベートチャネル……結華と千冬姉から……なんだろうか、この作戦開始直前に……

 

「何ですか?結華も」

『篠ノ之は浮かれている。こういう時、何かしらのミスを起こす。何かあった場合には冷静に対処しろ』

「分かりました」

『同じくね。千冬さんに質問だけど』

『なんだ?』

 

 結華が千冬姉に質問か……大概何も聞かずに即行動するのに……

 

『あの屑が暴走した時はこっちの判断で対処していいのよね?』

『ああ』

『その許される範囲は?』

 

 どこまでしていいのか……って事だよな。

 

『戦況に合わせて対処して欲しいが、最悪の場合は撃墜も考慮しろ』

『了解』

 

 うわ……容赦無いな……でもこれって邪魔になったら切り捨てろって意味か?

 考える暇もなくオープンチャネルに切り替わり通信が聞こえてくる。

 

『では、作戦を開始する。全員出撃』

「「「「「「「「「了解」」」」」」」」」

 

 俺は篠ノ之さんの紅椿に掴まる。

 

「頼む」

「……任せておけ」

 

 そんな短いやりとりの後俺と篠ノ之さん、結華は一気に飛んだ。他もついて来てるけどもう遠くに見える……近くに見えるのは結華ぐらいだな。

 ここから銀の福音までの会敵までは約30秒。だがこれは俺と篠ノ之さんの計算であって速度の違う結華さらに後続とでは時間差がある。

 その時間差は結華と合流するまで12秒、第二陣が結華合流から27秒、完全合流が第二陣合流から約7秒。その合計46秒だけ篠ノ之さんは戦闘行為を許されてる……だが、そんな僅かな時間でも俺には心配でしか無い。

 そんな憂慮も置いていくようなスピードで篠ノ之さんは飛んでいた。

 こんなにしたのは俺が原因なんだろう。今となっては埋めることが出来ない溝が出来上がってしまっていてどうしようもないが……

 後ろを見てももう結華の姿は小さくしか見えない。勿論、ハイパーセンサーで確認すれば見えないわけではないし、結華の蒼華自体が遅いわけではない。篠ノ之さんの紅椿がオーバースペックなのだ。

 束さんの説明では現在各国が開発に勤しんでいる特化型ともいえる『第3世代型』とは真逆の思考である万能型の『第4世代型』はパッケージの必要としない機体らしい。その象徴たるものが『展開装甲』と呼ばれる白式の雪片弐型と黒龍弐型の完成型、そして黒翼の装備そのものらしい。

 だが、どれほど紅椿の展開装甲はエネルギーを喰うのだろうか? 俺の黒翼は1、2分そこらで100%の状態から半分以上を持っていった。展開装甲が装甲のほとんどの紅椿は一体何分ほど動けるのだろうか……

 

「一夏、見えたぞ!」

 

 そんな思考の不覚に潜り込もうとした俺の意識が篠ノ之さんのその声で現実に引き戻される。見える先には輝くような銀色の尾を引く翼を持ったIS、銀の福音……会敵まで残り数秒だ……

 俺はいつでも篠ノ之さんから離れられるように準備する。

 

「――今!」

 

 すれ違った瞬間に俺は篠ノ之さんから離れ、右手の雪片弐型で銀の福音に一撃食らわせようとするが……

 

「なぁっ!?」

 

 避けた、紙一重どころか余裕で避けた。

 

「くっ……」

 

 連撃を行おうにも左の黒龍を一瞬で呼び出すほどの技能は俺にはない。鞘を装備しておくのを忘れた……なんて言い訳にもならない。

 俺は銀の福音に蹴りを浴びせようとしながら黒龍の形を意識して左手に呼び出すが蹴りは躱された。だが……まぁ、黒龍は呼び出せたから問題なし。

 

「おらっ!」

 

 俺は連続で雪片と黒龍を振るうがどうやっても当たらない……そこに赤いレーザーが降り注ぐ。篠ノ之さんの攻撃か。

 その攻撃の中に黄色い線が一本……恐ろしい速度で迫り、銀の福音に直撃した。

 それが飛んできた方向は俺達が向かってきた方向……つまりこの攻撃は結華の長距離支援だ。行動予測よりも遠くを通った銀の福音に当てる射撃技術……怖いな……

 

「この間に……ッ!!」

『敵機確認、破壊目標A及びアンノウン確認。戦闘レベルAに変更、『銀の鐘(シルバー・ベル)』稼働開始』

 

 篠ノ之さんが体制のぐらついたところに畳み掛けようとしたが銀の福音はそんな響のあるマシンボイス発し上昇しながら非固定部位のスラスター兼砲口から大量のエネルギー弾を撃ちだした。

 弾でありながらホーミング性のややあるそれは振り切りにくく、追尾してきた。

 俺は通常のように避けると当たると判断し一気に反転、弾の隙間を縫うようにバレルロールしながら弾幕に近いそれを突破し銀の福音に接近するが……

 

『La♪』

 

 余裕で距離を取られた。しかも後ろに下がると同時に弾まで撃ってくる。

 俺は一度後退し接近できる道を探す。

 

「遅くなったわ」

 

 銀の福音と会敵してから12秒、速度で負ける結華が到着。両肩に大きな大砲のようなものを装備し両手にはドラム型弾倉が2つ付いた6砲身ガトリングを持っていた。

 結華は肩の2つを展開しガトリングを構えた。

 

「道は作るから最速で突っ込みなさい」

「了解」

 

 俺がそう答えると同時に結華は攻撃を開始した。

 両肩のキャノン砲、両腕のガトリング……その4つによって形成される弾幕は銀の福音の対応射撃を難なく突破したが……銀の福音は更に大量のエネルギー弾を撃ち出し弾幕を形成し拮抗する。

 だが、結華が注意を引いたおかげで正面以外の道が開いた。俺は瞬時加速の準備をしながら一気に海面ギリギリまで落ちると銀の福音の下まで移動、瞬時加速で一気に距離を詰めようとするが……

 

「La? LaLaLa♪」

 

 結華の正面の弾幕への対処をしつつもこっちに弾を撃ってきた。

 

「嘘だろ!?」

 

 俺はそれを避けながら接近しようとするが……的を絞っているのかなかなか近づけないため瞬時加速のチャージをキャンセル……そこに帯状のレーザーが飛んできて弾を消し去る。再びの篠ノ之さんの援護射撃か……篠ノ之さんは注意を引くような攻撃をして――

 

「対角線上から撃つな! 味方に当てるつもりか!?」

 

 突然に結華の叫び声が聞こえる。

 いったい何が……そんな思考の時間を与えるつもりは無いかのよう再び響のあるマシンボイスと共に白い弾の雨が降り注ぐ。

 

『破壊目標B確認、銀色の鐘最大稼働を開始』

 

 俺は両手の二刀で自分に当たる弾を斬り捨て、なんとか攻撃を受けるのを免れる。結華もガトリングで対処し、篠ノ之さんは展開装甲で防御したようだった。

 そこで俺は気づく。二人の位置取りだ。

 二人の位置取りは銀の福音を中心として対角線にいる。結華は銀の福音の弾幕と自分の弾幕で対角線に居る篠ノ之さんには結華の撃った弾が届くことはないが、銀の福音の撃つ方向と同じ方向に撃っている篠ノ之さんの攻撃は結華に向かう。

 結華の「対角線上から撃つな! 味方に当てるつもりか!?」という言葉はそういう意味だったのか……

 

「まだなのか……」

 

 この時点で作戦開始から52秒……第二陣との予想合流時間まで約10秒……このまま保てると良いが……

 俺は再び弾を避けながら銀の福音に突っ込むが分厚い弾幕を張られて近づくことすら出来ない……戦線維持か

 

『一夏』

 

 結華からのオープンチャネル……

 

「なんだ、結華」

『嫌な予感がする』

 

 どんな……と聞いても答えないだろう。そのことについては分からない可能性があるから俺は聞かなかった。

 結華は移動しながら弾幕、篠ノ之さんも結華の対角線上を取りながら攻撃をしていて俺は銀の福音の攻撃を両手で防いでいるが、それでも至近弾や掠りがないわけではないため結構なスピードでシールドエネルギーは減っている……

 

「嫌な予感……か……」

『どんなことかは分からないけど嫌な予感がするのよ』

「出来るなら後続が来る前に終わらせてそれを杞憂にしたいところだな……」

 

 とは言えこの膠着状態。これをどうにかしなければ先もなければ後もない……どうしたものか……

 

『一夏』

「こんどは何だ?」

『この状況を解決するのに手伝って』

 

 今度はプライベートチャネルでの通信……篠ノ之さんに聞かれたくなかったことなのだろう。

 

「分かった。何をすればいい?」

『あと十数秒だけど、これだと後続と合流しても私と一夏、屑のシールドエネルギーが持たない。だから、ちょっと荒っぽいことをするわ』

「具体的には」

『グレネードで一瞬だけ弾幕を消すからその間にこの膠着状況をどうにかして』

 

 そういうことか!

 

「分かった」

『カウント3から。3、2……』

「イィヤァァァァ!!」

 

 結華のカウントが終わる前に銀の福音へ篠ノ之さんが突っ込んだ。篠ノ之さんへの弾幕が強まっているのにこっちの弾幕は弱まっていない……まだまだ余裕があるみたいだな……流石は軍用機、底が知れない……!

 

『チッ! あの屑が……』

 

 結華は弾幕で銀の福音の弾幕を相殺しながら突っ込んでいる箒のそばまで移動すると思いっきり蹴るようにして篠ノ之さんを飛ばす。

 

「何をする!! 味方だぞ!!」

「邪魔なのよ! この状況を打破しようってのに……」

 

 一瞬、そう一瞬だけだったが結華も篠ノ之さんも攻撃をやめてしまった。その隙が命取りだったのだろう。

 

『銀の鐘、最大稼働。目標を破壊する』

 

 銀の福音が俺への攻撃すらやめてスラスターでもあり砲口でもある非固定部位をマシンボイスと共に全て結華に向けて居たのだ。

 またとないチャンスだが銀の福音との距離がありすぎる……だが、何もしなければまだまだ底の見えなかった銀の福音の全力攻撃が結華を襲う……

 

「くっそぉォォォォ!!」

 

 銀の福音の砲口が白く輝き始める……

 

(頼む! 黒式! 今は……今だけは力を……!!)

 

 俺はやるなよと言われていた黒莱と黒翼を同時に呼び出し全力で結華と福音の間に入った。

 その直後に放たれたのであろう銀の福音の攻撃を俺は背中で受けた。

 この行動を行う前の弾幕によって消費していたシールドエネルギーが響いたのだろう。一瞬でシールドエネルギーが尽き、衝撃により体が軋みを上げ、熱波が背中を焼いた。

 

「い……ちか……?」

「また……しん、ぱい……させる……な……」

 

 結華が手を伸ばしていた気がするが掴めなかったのであろう……俺は海に落ちた。

 すまねぇな……黒式……こんなことにしか使ってやれなくて……

 ごめんな……結華……また、心配掛ける……

 薄く残っていた意識はそこで途切れた。

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