IS 一つの夏と結ばれた華   作:見知らぬ誰か

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第39話 作戦終了

 銀の福音と切り結んだ瞬間、一夏はにやりとした笑みを浮かべた。

 近接戦、それは白式だけでなく黒式も黒白式・雪風も得意な戦闘領域だからだ。領域支配万能型のこの機体であれば自身の領域内で有利な戦況に持ち込める。

 

(すげぇ……全部の機能の使い方が分かる……どのようにしてどうやって使うのか……)

 

 切り結んだ直後に福音が突如停止し動かなくなり、周囲から衝撃を受けたように全身の銀色の装甲が歪み光を歪に反射させる。

 雪風で発現した慣性干渉領域「打止(うちどめ)」による目標の停止と空間圧縮自立砲塔領域「鳳哮(ほうこう)」による全方位からの衝撃砲による攻撃だ。

 

「行けるっ!」

「Kiaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!!」

 

 異常なまでに甲高い悲鳴のようなマシンボイスを上げる福音は打止の静止を振り切り一度距離を取るが……雪風に死角はない。

 

「青翅(あおばね)、多兵装多重ロックオンシステム、矛盾、多重十字(フルクロス)起動」

 

 一夏がそう言った瞬間ISの音声認証システムが背部に浮かぶ6つの非固定部位に搭載された128連ミサイル兵装コンポジット「矛盾」のミサイル弾頭が露出し非固定部位にガトリング砲2門、大型スラッグッショット2門が展開され脚部についていた8つの青いフィン状のものが分離し周囲に停滞し非固定部位に存在する16門の砲口が青い光を帯び始める。

 

「ガトリング、スラッグッショット照準システム接続。ロックオンシステムとのリンク接続開始、ミサイル弾頭を分裂ミサイル選択――掃射」

 

 その瞬間、ガトリング砲から放たれる弾丸とスラッグッショットによって発射された炸裂散弾(エクスプローシブキャニスター)が放たれ、128*6の分裂ミサイルが福音に迫り、隙間を埋めるように青いレーザー湾曲しつつが24以上の数に別れ全方位から迫るが……福音は大きな翼を全方向に振るうようにして全てを防ぎ、それと同時にエネルギー弾を放ち反撃してきた。

 

「おいおい、これを防ぎきるのかよ」

 

 雪風に搭載されているほぼ全兵装を叩き込んでも未だに余力を見せる福音に一夏は右腕多用途武装に搭載されているエネルギー無効化防御『霞衣(かすみごろも)』と左腕多用途武装搭載のエネルギー吸収無効化防御『黒霧(くろぎり)』によるエネルギー膜を展開しエネルギー弾を防ぎつつそう愚痴を漏らす。

 第二形態と第四形態という壁を超えての拮抗それは福音の「銀の鐘(シルバー・ベル)」に特化したゆえの一点特化による汎用性の高さだった。一つの機能を突き詰めたがゆえに元の機能を基に機能発展向上させた……ISの自己進化機能があるからこその変化だった。

 

――コアネットワークより機体照合を終了、コアNo.027「銀鈴音の恩寵(シルバリィ・グラス)」と認識

 

 雪風から与えられた情報で一夏は、落とされる前とは違う銀の福音は形態移行したのだと断定した。だが、それが二次移行だけでは済んでいないのではないかとも思考する。そう考えるには当然なほど「銀鈴音の恩寵」と「雪風」の機体スペック差が無いのを感じた。

 そしてそれは見えるものとして顕現する。

 

「kiiiiiiluuuuuuaaaaaa!!!!」

「なっ……!?」

 

 福音が唐突に叫び始め、白銀の光を放っていた機体の色を黒銀へと色を変え、青白いエネルギー翼は赤黒い禍々しい色へと変わった。それは一夏の予想が当たっていたことを意味していた。

 

「三次(サード)……移行(シフト)……か……」

 

 二機の戦闘に入ることはままならないと判断し離れた距離で見ていた月忌は呟いた。軍用としてデチューンされていない機体を駆る月忌が介入できない程に濃い戦闘、それを一夏と福音は行っていたということである。

 

「月忌、俺の落ちてる間に……セカンドシフトがあったのは間違いないよな? それから大して時間も経っていないのに三次移行なんてするものなのか?」

 

 今回の作戦で唯一競技用リミッタの掛かっていないISを駆り、一人でISの開発を行っている月忌は質問された内容を後ろの方に待機し機体状況の回復を行っている結華の方を見つつ答えた。

 

「ああ、お前の彼女のお陰でな……二次移行も三次移行実質的に内容は変わらない……稼働時間と戦闘経験が蓄積されることによって搭乗者及びISコア・機体との同調が高まることにより発生する」

 

 壮麗な白銀を放つ機体から一転、禍々しい黒銀の鈍い光を放つ機体がそこには静かに……いや、エネルギー翼から発生するエネルギーが雷となり周囲にあることで轟音を鳴らしていた。

 

――コアネットワークより機体情報更新、コアNo.???「淀んだ銀鈴音の悪夢(スタグネイト・シルバリィ・ナイトメア)」

 

「だが、あれは異質だ。操縦者との同調のようには見えない」

「それでも、止めるしか無いんだよな」

 

 一度結華の方に目を向けてから一夏は両腕の白月と黒月を構えて福音に攻撃を仕掛けた。

 

・―・―・―・―・―・―・―・

 

 復活した一夏の駆る雪風と二次移行した福音による攻防、三次移行する福音、更にソレに攻撃を仕掛ける雪風を結華は両者から若干離れた場所で見ていた。その間に結華が入る隙間など無く入れば的になり、一夏の足手纏いになるだけ……ただ見ていることしか出来なかった。

 

(何なのよ、あれ……)

 

 結華の専用機である砲戦に特化した蒼華を遥かに上回る火力、結華の見たことのある白式以上の機動力・速度、長距離・中距離・近距離・近接格闘戦に於いて対応してのける汎用性。その全てが結華が目指す場所への妨げとなる。

 あの二機は機体性能的には雪風のほうが優っている、だがその機体スペック差を均一にする物があった。操縦者、動かしているモノの違いだ。片や軍用に作られたIS(福音)、操縦者がしっかりと乗っているが元々の情報であるAI(人工知能)が載せられても居るのだ……コア人格を使用した補助AIとも言えるモノが。対して雪風に乗るのは実戦経験の乏しい、操縦技能だけの一夏。軍用の戦闘に特化したAIと技術のみの一夏、その実戦の有無とも言えるモノが期待スペック差を埋めている。

 そんな中に技術は一夏よりも少し下、機体スペックはもっと下の結華が入り込めるわけはない。

 

(……私の、入り込める場所なんて……一夏の隣に立つことなんて……)

 

「ツマラナイこと考えてるねぇ……」

「っ!?」

 

 一夏と福音の戦闘から目を離そうとしたその時、結華の背後から聞こえた声に結華は振り向き声の持ち主を見た。

 空のように蒼い髪、透明度の高い水のようなアクアブルーの瞳。青と白の斑模様の外套を着た少女がそこには浮かんでいた。

 気づけば結華は蒼華を纏っておらずIS学園の制服を着ており、周囲には月忌も戦闘を行っている一夏と福音も居なかった。そこに居るのは結華と、外套を着た少女のみであった。

 

「アンタは誰なのよ」

 

 その質問に外套の少女は答えた「四月からずっと共にいるモノ」だと。

 その答えに結華は気づき、その名前を口にした。

 

「蒼華ね」

「正解ぃ~まぁ、正しくはそのコア人格だけど」

 

 ニヤリと笑う蒼華。そんな蒼華に対し、結華は何かを言い掛けるがやめる。

 

「今、何を言いかけたの?」

「……別に」

 

 無表情で答える結華。そんな結華に蒼華は滑るようにして結華に近づく。

 

「何よ」

「ねぇ君は"力"を欲するかい?」

 

 唐突に聞かれ結華はキョトンとした表情を浮かべる。

 

「何のために、力を欲する?」

「一夏と共に居るため。一夏の側で共に歩き続けるため」

「なら、なんで諦めかけていたのさ? 全部自分だけでどうにかなるわけ無いじゃん。なら助けを求めなよ」

 

 すぐに出て来た「一夏の側で共に歩み続けるため」という願い、それが思い浮かんでおきながら何故その力を体現する蒼華にそれを求めなかったのかと結華は内心苦笑する。

 

「そうね……そうだったわね」

「うん」

 

 結華は蒼華に手を伸ばしながら頼んだ。

 

「一夏と共に居られる場所へ……そのための力を、私に頂戴」

「もちろん、僕のパートナー」

 

 蒼華は笑顔で頷きその手を取った。

 その瞬間外套を着た蒼華の姿は消え、少し前方で福音と雪風の戦闘とそれを見ている月忌が見えた。

 結華は機体の状態を確認する。機体の各部は綺麗な直線で構成され、空のように蒼い装甲に各部の白色に光るラインセンサーがアクセントのように美しい。拡張領域には大量の武装が用意され、非固定部位が大型武装搭載用で片側二基の計四基、ミサイル搭載用で片側一基ずつの計二基。大腿前縁は展開式のミサイルコンテナと成っており、大腿後部は展開式の武装が搭載されゴツゴツしい感じになっていた。

 そして、機体名称。蒼華から変更された第二形態の名前を呼び結華は一夏と福音の戦う場所へスラスターを吹かして向かう。

 

「行くわよ、蒼天!」

 

 両手にガトリングの砲身を二つ持ち、背部の大型のドラムマガジン四つから伸びる弾帯が特徴のツインガトリングガン『AM/GGA-206T』を両手に装備し、肩部ハンガーユニットにライフルの『Au-B-A17』を装備前方に展開しつつ自由展開式非固定部位「風流」に砲身四つを有する弾幕を張るための武装オートキャノン『AM/ACA-218』を各一つずつ装備し、非固定誘導筒「嵐」に散布型ミサイル『MP-O200I』を各一つずつ装備させる。

 計六つの非固定部位を自身の背部から移動させ福音の周囲を周回するように機動させ多角的な攻撃を行う用意をしつつ、射撃管制装置(FCS)を高速で機動しながら戦闘を行う福音に照準を合わせるため高速モードに変更し蒼天専用「広域照準システム(Area Look on System)」で全武装の照準をし終えた所で一夏に通信を入れる。

 

「一夏、避けて。巻き込まれるわよ」

「分かった」

 

 一夏は返事をする前に直線による後退機動で蒼天の射撃範囲から逃れる。福音は退避した一夏を追おうとするが、結華の放った弾幕がそれを許さない。ガトリング四門、ライフル二門、オートキャノン四門、散布ミサイル多数によるほぼ全方位からの弾幕攻撃に加え、一夏が後退しつつ発射したガトリングとスラッグショット、BTエネルギー弾、衝撃咆、ミサイルの弾幕によって福音の展開する赤黒いエネルギー翼を削いでいく。

 だが、そのままやられるような福音ではなく残っているエネルギー翼からエネルギー弾を発射し弾幕とミサイルの雨、エネルギー弾を相殺させようとするが蒼天と雪風の弾幕火力に押され一時的にエネルギー翼が消える。

 

「一夏、今!」

「ああ!」

 

 一夏はそのエネルギー翼が消えた瞬間を見逃さず後退射撃から一転、展開装甲を全開にすることで加速しつつスラスターにエネルギーを収束させ開放することにより爆発的な加速を行いエネルギー翼の消えた福音に肉薄し、右の白月を右から左へ、左の黒月をその逆に振るう。その瞬間、白式の『零落白夜』と黒式の『絢爛礼奏』から発展した雪風の単一仕様能力であるエネルギー変換無効化領域『黒白霧天(こくびゃくむてん)』を発動させエネルギーシールドを無効化し絶対防御を発動させてシールドエネルギーをゼロにし福音を停止させた。

 

「これで……終わりだよな?」

 

 シールドエネルギーが切れ、装甲が消えた福音の操縦者を両手で抱えつつ一夏は誰に向けてかは分からないが問うた。

 

「終わりだと思いたいわね」

「任務としては終わりだろうな」

 

 その問に近づいてきた結華と月忌が答える。

 更にそこへ福音に落とされ各々ダメージを負ったものの応急処置を行い回復した簪、セシリア、鈴音、シャルロット、ラウラも近づいてくる。

 

「お疲れ様……一夏」

「終わりましたわね」

「結局私達って落とされただけじゃないの」

「まぁまぁ、結果オーライじゃないかな?」

「鉄装が福音の第二形態にするための足止めは行うことは出来たわけだからな」

 

 そんな戦勝ムードに包まれる中、一夏の周りの皆を……正しくは結華を睨む箒の姿が少し離れた場所にはあった。

 

「……」

 

 そんな箒にプライベートチャネルでの通信が入る。

 

「……誰だ」

『名乗るほどの名前じゃァねェな……まぁ、敢えて名乗るとするなら「N」とでも言っておくか』

 

 少しノイズ掛かったその通信の主に若干の眉根を寄せ箒は聞き返す。

 

「そのNとやらは私に何の用だ」

『鉄装結華から織斑一夏を取り戻したくはねェか?』

「……どうやってだ?」

『別にどんな方法でも結局的には「鉄装結華から織斑一夏を離す」ということに変わりは無ェ……』

 

 箒にとってそれはかなり嬉しい話ではある。だが、即座に乗ろうとは思えないような内容でもあった。故に、更に聞き返す。

 

「そんなことをしてどんなメリットがそっちにあるというんだ?」

『オイオイ急ぐなよ。そっちに対する提案を述べたんだ、こっちの要求も聞け。世の中ギヴ・アンド・テイクだろ?』

「……なら、そっちの要求というのは?」

『俺達の組織への加入。もちろん篠ノ之箒、今お前の乗ってる紅椿と一緒になァ』

 

 提案は結華を一夏から引き離すこと、要求は紅椿と共にNとやらの組織に入ること……その話に箒は……

 

「……しばらく、考えさせてくれ」

 

 考える時間を要求した。

 

『あァ、良いだろう。期限は……そうだなァ……九月、IS学園の文化祭の日にするか』

「分かった」

『良い答えを期待してるぜェ』

 

 そして通信は切れ、その直後にオープンチャネルで千冬から通信が入る。

 

『作戦終了だ。全員、福音操縦者を連れ帰投しろ』

「「「「「「「「了解」」」」」」」」

 

 千冬の作戦終了の宣言に月忌以外が答え全員旅館へと向かった。




はてさて……かなり遅くなってしまい申し訳ありません。
なんだかんだで福音戦終了となります。事後処理とかその他諸々残ってますが次話以降行います。
なんか、自分の文才の無さを実感したようなそんな文章の塊になって、スランプに成ったようなそんな感じで非常に執筆が遅くなってしまいました。しっかり勉強は必要ですよね……文才なんか無いのに小説なんか書くからこんなことになるんですがね。
とは言え頑張って続けていく所存ですのでこれからもよろしくお願いします。
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