無に帰すとも親愛なる君へ   作:12

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「どういうことだ?誰を入れる気なんだ」

夜、ルルーシュの仕事を手伝っていたL.L.が唐突に言った。すぐにアッシュフォードの件だと思い当たる。返事をしようとして顔を上げ、目が合う。

ルルーシュは怪訝な顔のL.L.をまじまじと眺めた。

いつもの側近服に、覆面だけを帽子ごとすっかり外した姿。もうすっかり板についたようで、見る側のこちらも違和感はない。

思えば随分彼を部下としてこき使っている。対して彼は不平を言うでもない。

不満はないのだろうか。なんだか急に気になって、尋ねる。

「質問を質問で返すな。しかも全く関係ない話題だろうが」

「いいだろう?」

カタカタとキーボードを叩く音が響く部屋。

L.L.はディスプレイに顔を戻し、表情を変えぬまま、

「暇だからだ」

実にわかりやすい理由を述べた。

「それに、お前の行く末を見てみたい。行動の結果が、どんなものであろうとも」

「それは――」

ルルーシュは言葉の意味をしばし考えた。が、大半があまりいいものとは言えず。

迷った末に聞くのをやめた。代わりに、投げられた問いに答える。

「枢木スザク」

瞬間、L.L.がすべての動きを停止した。ぴたりと硬直する。眉間の皺が濃くなった。思いもよらない名だったに違いない。むしろ、この名を知らない可能性の方が高かった。ルルーシュは説明するつもりで待ったが、L.L.はそのまま固まり――その名に心当たりがないか、記憶を探っているのだろうか――やや間をあけてから、

「……日本最後の首相の息子か?」

「詳しいな。そうだ」

「話題性なんてあるか?何を企んで……」

L.L.はディスプレイを眺めたままぎゅっと眉を寄せた。しかし何かひらめいたのかはっとする。突然にがたりと音を立てて立ち上がり、ルルーシュの方を向いた。

 

「まさか、ランスロットに乗せる気か!?」

 

ルルーシュは目を見開いた。

L.L.が返してくる言葉は、十通りは想像できた。けれどもまさか、ルルーシュすらまだ決定していなかった、ぼんやりとした考えを言い当ててくるとは思わなかったのだ。

「どうしてそう思う」

「それは、」

L.L.が口ごもった。

「……首相の息子とはいえ、それだけだ。所詮イレブン。たいした話題にもならないだろう。だが、総督付きに大抜擢された名誉ブリタニア人ともなれば話は別だ。総督に一番近く、それでいて政治には関わらせない位置。戦闘員しかない。条件をクリアしつつ人の目を集めるなら、ランスロットに乗せて、ゼロ部隊に突っ込むのが一番だと思っただけだ。騎士にするのに反発が出ようとも、実験機用の使い捨てだとしておけば言い訳は立つ。それに特派だ。シュナイゼルの管轄に誰も口は出せない…………もちろんあれはピーキーな機体だし、素人が扱えるかは知らないが」

「大当たりだ、L.L.」

ルルーシュは素直に感嘆の声を上げた。その通りだった。初めて会ったあの日から、ルルーシュは枢木を利用するつもりだった。

「……本当に乗れるのか?」

「さあな」

「さあなってお前……」

「だが、あれにナイトメアに乗る才能があるらしいのは確かだ」

「どうしてわかる。いや待て、お前は枢木を知っているのか?」

「言ってなかったか?シンジュクで「オトモダチ」になったと」

L.L.の顔がこわばった。くつろげた高い襟の中にある、朱いタトゥの入った白い首。その喉が、ごくりと唾を呑む動きをしたのがわかった。

……何だ?

「……イチから話せ。ぜんぜんわからない」

気のせいだったのか。次の瞬間にはL.L.は呆れたように目を回し、その姿はまったくいつも通り。自分が過剰に反応してしまっただけかもしれない。

気を取り直し、ルルーシュは従った。ことの発端、あのシンジュクの日を語り出す。もちろん仕事をしながら。

だいたいのあらましを話し終えると、L.L.はため息と共に「なるほどな」と吐いた。

「それは友達とは言わないし、何より今頃、枢木のほうはお前に激怒しているだろう。友好的どころか、次は刺されるかもしらんな」

「だから“オトモダチ“だと言ったろう?――で、その時枢木が渡してきた住所に咲世子を向かわせて、ばれないように家探しさせた。田舎のゲットーなんかに住んでも生きていけんだろうと思ってな。或る程度生活感があったから本当に住んでいるのかも――いや、それは今はいい。相当厳重に隠されていたが、日本式物置のドゾウに地下室があってな、テロリストとしての顔が隠されていたよ。痕跡を残さずに資料とデータを拝借した。で、そこから更にいろいろ調べさせてもらった」

「最近潰しているテロ組織――」

「情報提供者は彼だ。本人は知る由もないだろうさ。むしろ、裏切りやスパイを疑って疑心暗鬼になっているんじゃないか?」

ルルーシュは酷薄に笑った。自分の迂闊さで何人死んだか、それを教えてやる日が楽しみだ。

もちろんその盗みは咲世子だからこそできたことで、他の人間なら不可能であり、スザクにそれを予想しろというのも無理な話だった。気の毒に。

「……趣味が悪いな」

「敵に対してこのくらい、当たり前だろう」

「違うな。間違っているぞ?俺が言っているのは、知らないところで部下を殺していたと枢木に告げ、その反応を楽しむことについてだ」

「……お前も似たようなものだと認識していたが?」

「そうであろうとも、悪趣味であることに変わりはない。……部下にするつもりなら、なおさらやめるべきだ」

L.L.は達観した口調で言った。忘れがちだが彼は、ルルーシュよりもずっと年上らしいのだ。説教じみたことも言うだろう。おとなしく聞くかどうかは別として。

返事をしなかったルルーシュに、L.L.は言葉を続けた。

「しかしまあ、なるほど。経緯はだいたいわかった」

左足を上にしていた足を組み替え、背もたれに体を預け、ふーっと長い息を吐く。今夜はため息が多く聞ける夜だ。幸せが逃げると言ったのはユフィだったか。

「この前のハッキングはそこが元手か」

「そうだ」

「それで?その枢木スザクをどうやって引っ張ってくる?ランスロットに乗っての同胞殺し、引き受けるかな。舌を噛んで死ぬんじゃないか?」

「それももう考えてある」

ルルーシュはにっこりと笑った。他人からすれば、悪魔のような笑みと評されるものだった。

テロリストの親玉的存在である少年をブリタニアに取り込む。それは、水面下で大きな意味を持つものとなるだろう。

L.L.はやれやれとでも言いたげに頭を振ると、眠気覚ましのコーヒーを淹れるために席を立った。

 

 

 

 

きらびやかな会場が、客人を待ち受けていた。

高い天井に吊るされているのはシャンデリア。レースの美しいテーブルクロス。グラスひとつだって、職人が生み出した繊細な薄さを持つ良い品だった。すべてが品よく、上質な空間。

スザクと神楽耶は緊張しながら、そうとはわからせないように微笑んでいた。和服ばかりの二人も、今日ばかり洋装だ。神楽耶を包む淡いピンクのドレスは少女らしさをよく演出し、スザクの着る黒のタキシードは少年をほどよく大人に見せていた。

二人がいるのは賑やかな会場の隅。その中央で、主催――ルルーシュが、挨拶を述べていた。

篠崎咲世子というあの時ルルーシュとともに自分を騙した女が側についており、肌を一切見せない不審な覆面男もついている。副総督は今日はいないようで、ゼロ部隊というのだったか、それに所属しているヴィレッタが警護隊長として配備されている。

「急な申し出でしたのにも関わらず、これほど多くの皆様に集まっていただけで光栄です。私がエリア11新総督、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアです。――総督となって日が浅いが、若輩者なりに責務を全うさせて頂くつもりだ。お手柔らかに頼む」

穏やかな低い声。前から思っていたが、こいつ、ブリタニア皇族にしては腰が低いほうだ。

それとも、会場には貴族連中も交ざっているせいだろうか。

「――つきましては、エリア11のさらなる経済の発展を目指し、懇親会を開かせて頂き――」

狡猾なのだろう。スザクを騙したあの時のように。

ルルーシュは長々と話す気はないらしく、さっと纏めると乾杯の合図をとった。

総督自らがここまでする必要があるのだろうか。いや、きっとこれもなにかの策のひとつ。あの化け物が何を考えているのかなんて、スザクにはわかりっこないことだ。

立食形式のパーティーはとてもいい空気でスタートし、それぞれの会社の重鎮がそろってルルーシュのもとへ挨拶へ行く。スザクと神楽耶は打ち合わせ通り、ブリタニア人が一通り挨拶を終えてから行くことにする。角が立たないし、何よりスザクと神楽耶は表向きの理由でここに呼ばれたのではないことくらいわかっている。

スザクはちらと目で会場を見回し、の少女を目で探し当て、神楽耶に囁く。

「カレン、あそこにいるね」

「ええ」

紅い髪の少女、カレン・シュタットフェルトがそこにいた。パートナーとして娘を連れてきた人間はそういないが、シュタットフェルト氏にそのつもりがあるかどうかにかかわらず、ここにいる多くがカレンを跡継ぎと考えていると予想するに違いない。彼女は下品過ぎない着飾りで淑やかに壁の花となっていたが、それでいてもぐもぐ口を動かしているところにはこっそり笑いを漏らしてしまう。料理に罪はないし、何より彼女のいるテーブルの料理担当は名誉の、日本が存在したころにはかなりのランクの店なのだ。そのあたりがカレンのツボを刺激したに違いない。

 

 

「か、神楽耶、様。紅月カレン、参上致しました」

「そんなにかしこまらなくていいのですよ。スザク、お茶を」

「僕は侍従じゃないんだけど……はいはい、わかりましたってば」

あの夜から明けてすぐのことだ。スザクたちは東京からカレン・シュタットフェルト――もとい紅月カレンを富士に呼び寄せ、すぐさま事の次第を話した。突然呼び出されて着替える間もなかったらしく、トウキョウ租界にあるアッシュフォード学園というところの制服を着たままだった。ずっと登校していなかったのを、数か月前から桐原の指示で通わせるようにしていたのだ。大貴族・シュタットフェルトの名前があるのなら、利用しない手はない。彼女は積極的に家の事業に関わる様子を見せるという、少々特殊な任務を帯びていた。桐原から藤堂を通しての指示だったため、スザクがそれを知ったのは最近――藤堂と話したあの夜だったが。

「私も、そのパーティーに?」

「見ておいて欲しいのです。総督ルルーシュと、私たちを」

「見てるだけで、いいんですか」

「ええ。あなたにはまだルルーシュの疑いの目はかかっていません。できることなら、シュタットフェルトの人間として、彼と接触してみてください」

「でも――私なんか、組織の末端の人間で――」

「それなんだけどね」

スザクかカレンに湯呑を差し出し、言った。あつあつのお茶を受け取ったカレン。

「君には紅蓮の予備パイロットになってもらいたいと思ってる。シミュレートを見させてもらったよ。君なら、安心して紅蓮を任せられる」

「ぐ、紅蓮?」

「紅蓮弐式。壱式もあるんだけど、そっちは日本にはないから。インドで開発、国内で製作された国産ナイトメア。これまでの常識を壊す強力なナイトメアだ。まず第七世代と言っていい」

「どうして、私が」

カレンは混乱の極み、もうわけがわからないと困惑しきった声を出した。

「君の才能は藤堂お墨付きだし、僕もこれはいけると判断した。それに、年が近い方が何かとやりやすいこともある」

言外に六家の連中の頭の固さを愚痴るようになってしまったが、カレンはそうとはとらなかったようだ。

もちろんスザクだって藤堂の言葉だけで決めたわけではなく、カレン本人をきちんと見てから決めたことだ。こっそり東京の小基地に顔を出して、その動きをこの目で見ている。戦闘の勘というか、テクニックだけではどうにもならない天賦の才をありありと感じた。考慮の結果歴戦の軍人ではなく、素人同然の彼女に任せることにしたのだ。

光栄ですと、カレンは頬を紅潮させて答えた。その顔に未だ戸惑いが浮かんでいたので、スザクは言った。

「君には、戦う理由があると聞いた。――兄がいたんだろう?」

カレンが目を瞠る。

「どうして……」

「扇という男から聞いた。僕らは信念を持つ人間こそを選びたい。迷って座り込むより、先に進める人間とともに行きたい」

言い終える頃には、少女の顔からは、もう浮かれた様子は消えていた。

「これからやるのは戦争だ。死ぬ覚悟はあるか?」

彼女は背筋を伸ばし、スザクを半ば睨み付けるようにまっすぐ見つめ、頷き。

「とっくにあるわ」

鋭く返したのだった。

 

 

カレンは表の世界で力を握ることを目指しつつ、戦ってもらう。学校に行く暇がちゃんとあるだろうかと不安になったが、彼女の父も馬鹿ではない。まずは学校の勉強をきちんとしなさいと言うのだそうだ。カレンの父がカレンを邪険にしていないどころか継がせる気があることに、スザクは驚いた。そこまで環境に恵まれていてどうして、日本人であることを選んだのか。

ルルーシュは次々に会話する人間を変えていた。内容までは聞こえない。しかしルルーシュと会話を終えた後、固まった微笑みを浮かべたり、冷や汗をかいていたり、少しばかり呼吸が乱れていたりするものは少なくなく――少なくともスザクにはそう見えた――懇親会という名目の、事実上の監査の一端も兼ねているのだろう。

スザクと神楽耶は話しかけられてはそれに返し、腹の探り合い(こちらはスザクはめっぽう苦手であり、神楽耶がうまく対応していた)をし。少女は慣れぬ踵のある靴に、少年は妹姫を守らねばという使命感と、その緊張をあらわにせぬように気を付けながら微笑むことにやや疲れてきた頃。

 

「――スメラギ殿」

 

場がざわついた。

ルルーシュのほうから、二人に声を掛けてきたのである。

 

それは、大きな意味を持つ。

壱、ルルーシュが一目置くほどに皇は重要な企業なのか。

弐、あの娘はスメラギの経営者ではなく、どちらかといえば看板である。であれば日本の姫であった身分を重視しておられるのだろうか。

参、いやそれよりも、ルルーシュ総督はイレブンを、どう扱うおつもりなのか――。

 

とにかくルルーシュはじわじわとこちらに近づいて来てはいたのだが、それは会場の同線的にも人の流れからしても不自然なことではなかった。距離が二メートルまで縮まったところで、ルルーシュは長々と話す中小企業の社長の話を半ば強引に打ち切り、二人に声を掛けたのだ。そのままあろうことか、総督自ら近づいてくる。二人は仰天した。

「総督」

神楽耶の声が、さすがに、ほんのわずかに震えた。

気付いたのはスザクだけ――いや、彼も気付いている。スザクはルルーシュの顔を見て直感した。二人がはっとして皇族に対する最敬礼をしようとしたのも、神楽耶が決まりきった口上を述べ上げるのを、手で制した。

「私はこんなだから、見下ろしてはいけないと皆気を遣ってくれるんだが――そのような配慮、必要ないよ。こちらもかえって疲れてしまう」

「これは考えが及ばず、」

「皇殿。よいと言っている」

ルルーシュが少し強く言った。身分を感じさせる、威圧と威厳のある言い方だ。そうされれば、二人はもう黙るしかない。

ルルーシュはそのまま、普通に皇コンツェルンのエリア11における経済効果なんかについて話し始めた。先ほどまで他の連中としていたのと何も変わらないような内容だ。神楽耶は直接経営陣ではないとはいえ、何もわかっていないわけではない。自らの会社だ、そこらの社員よりよっぽどまともに理解している。そんな彼女が頓珍漢な答えを返すわけもなくて、打てば響くとばかりに会話が弾んでいく。ルルーシュはそれを受け、ひどく楽しそうに微笑んだ。

「貴殿は素晴らしいな。副総督である我が妹と同じ年だが、あれよりも賢いかもしれない。素晴らしい」

会場じゅうがルルーシュとスザクたちに注目していた。詮索する視線は居心地が悪い。本心がどうあれ、ルルーシュにそこまで言わしめた女ということになるのだ、神楽耶は。

「料理を摂っていないようだが、口に合わなかったか?」

「いえ。このような場には慣れておりませんので、聊か緊張しておりまして」

神楽耶が幼い表情を作ってみせる。ルルーシュはそうかと優しく言うと、いよいよスザクの方を向いた。

「この間は済まなかったな、騙すようなことをして」

「いえ、理解しております」

「もう親しくはしてくれないのか?スザク」

ルルーシュがスザクの名前を呼んだことで、今度は神楽耶ではなくスザクが目という目に視線で滅多刺しにされる。

「ルルーシュ総督、彼とお知り合いで?」

どこかの貴族らしい男が声をかけた。ルルーシュは頷く。

「以前、護衛とこっそりゲットーの視察に行ってな。その時偶然会って、案内してくれた男だ。その時は偽名を名乗るしかなくてな――」

「そうでしたか。いやしかし、危険なことを……」

「大丈夫さ。私の護衛は強いから」

なあ?ルルーシュが言って、咲世子を見上げ、手に持っていたグラスを揺らした。咲世子は心得たとばかりに無駄のない所作で新しいもの持ってきて取り換える。

一見ただの侍女にしか見えない彼女がルルーシュのSPだということはもう公に知られていて、周囲はただ驚きをもって見守るのみだ。確かに言われてみれば、彼女の身のこなしは只者ではないのだ。どうして気付かなかったのだろう。

咲世子が気づかせないようにしていたからで、熟練した技術は自分より数倍上手の人間だからと、スザクはまだ知らない。

「殿下はイレブンをどう扱うおつもりですかな」

また別の男が聞いた。日本人であるスザクたちがいるのをわかっていて尋ねており、いやらしい笑みを浮かべている。

「労働力の大部分は彼らだからな。無闇に使い捨てることなく、良い雇用関係が築けるといいと思っている。使い捨ては一見楽に見えるが、コストパフォーマンスは最悪だよ」

本気かそうでないのか――けれども彼の政策を見るに、その言葉は真実で。

日本という国を壊すのではなく、吸収する気でいるのだ、この男は。

「ルルーシュ殿下」

そこへシュタットフェルト氏がやってきた。さすが彼ほどの貴族ともなると、あっさり話しかけられるらしい。今度はカレンを連れている。

「これが先ほど話した娘でして。年は殿下と同じでございます」

「ほお」

ルルーシュは興味が移ったというように、スザクと神楽耶を見るのをやめた。

身体ごとシュタットフェルトの二人に向きなおる。とても器用に電動車椅子を動かしていた。

「彼女は学校には?」

「アッシュフォード学園に通わせております」

「へえ、そうか」

ルルーシュがことさら笑顔になった。それをシュタットフェルト氏が疑問を抱くと、

「アッシュフォードは私の後見だからな。ルーベンも、こんな聡明そうな女性を生徒にできて幸せだろうさ。カレンと言ったか?学校は楽しいか」

「は――はい。毎日とても楽しく――刺激的な毎日です」

カレンはうわずったこえで答えた。緊張のあまり、おかしな言葉になっていることに本人は気づいているだろうか。

ルルーシュはそうかと返し、励めよと言葉を残して、また別のテーブルへと移っていった。

カレンはスザクたちとほとんど目を合わせない。そのようにスザクが指示したからだ。

しかしこの同じ年頃の少年少女が、妙に意識し合っていてどこかぎこちない。

初対面だから、というものとはどこか違った。

そのことが逆にルルーシュの不審を煽ってしまったことには、気付かなかった。

かちり。

またひとつ彼らのあずかり知らぬところで、歯車がひとつ噛み合った音。

大いなる歯車の存在を――どこかのロマンチストな数代前のコード保持者が聞けば、それを運命と言うのだと笑んだかもしれないが――わずかでも察知できていたのは、後ろに控えていた覆面の男だけ。

別の未来を知る彼の仮面の下の表情は、誰一人として知ることがなかった。

 

 

 




ちなみにL.L.さんが着てる側近服は、ルルーシュ帝政下のギアス兵の格好から目玉要素を抜いたような感じのやつです あのシュンッてバイザー収納されるやつ 怪しい~!!


ていうか興道見ました……………………………ちょっとみんな見たほうがいいですね…………………ほんとにヤバイです……………………………………私の推しが…………………

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