第1話
東京に本社を置くとある会社に勤めるエリートサラリーマンであった私は、ただ自由を愛する一個人として順風満帆な社会人人生を生きていた。
例え対象から恨まれる首切り宣告であったとしても、労働対価が支払われ続け、自身の評価とその先の将来に良い結果となるのであればと、私はその職務をこなしてきた。
そしてこのまま行けば、予定通り部長のあとを継げるだろう…まさに人生は益々順風満帆になる。
このまま帰宅したら、夕食とシャワーに明日の出社準備、その後はお気に入りのFPSでオンライン対戦である。
…の筈だった。
やはり程度の低い人間というのは、理性や知性よりも感情で動くのだろう。
実は本日を以てクビの宣告を突きつけた男がいたのだが、どうやら私を恨んで報復を決意したらしい。
私は突然背後から突き飛ばされ、今正に電車が迫る線路内へと転落した。
それからの一連の出来事は思い出したくもない。
突然古代遺跡のようなものが散在する白い世界に飛ばされたかと思いきや、"神"を自称する老人にやれ解脱に至る努力がないとか十戒を定めただとか説教される。
人生で学んできた合理性と論理と知性で反論したら「うっさい!!」と逆ギレされ、顔面に唾が掛かる勢いでさらに説教が加速。
とりあえず、この自称"神"──いや存在Xと呼称しよう。
存在Xは私の反論を逆手に取り、「逆境に放り込めば信仰心を抱くのか」と結論付け、私を転生させると言って問答無用で実行した。
そして、今──私は地獄にいた。
転生させられた先はというと、分かりやすく言うなら第二次世界大戦である。
皆さんこんにちは、存在Xの理不尽によって転生させられたエリートサラリーマン改め、ドイツ第3帝国所属SS装甲師団のターニャ・フォン・デグレチャフ中佐であります。
現在小官は西部前線において、オランダのナイメーヘンにて戦闘が一段落したので小休止を取っております。
事の次第はと言いますと、連合軍は空挺作戦にてオランダに3万の空挺隊員を投入、オランダを制圧してドイツの工業地帯への進路を確保──工業地帯を抑えドイツの戦争継続能力を粉砕しクリスマスまでの終戦を目指すというモンティおじさんの素晴らしい計画を(制止することが出来ずに)実行──そして我々オランダ駐留のドイツ軍は目下ナイメーヘン市内にて民家に立て籠っているフロスト中佐率いる英軍第1空挺師団を歩兵と戦車で包囲し、撃滅を目前にしているところであります。
何故敗北続きのドイツ軍が今正に連合軍を逆包囲してるのかはwikiを御覧になられれば分かりますので(目も当てられない事実が記載されております)
そんな小官を呼ぶ声がするので回想はここら辺りで失礼致します。
「中佐殿!デグレチャフ中佐殿!」
「聞こえているセレブリャコーフ大尉。どうした?フロスト中佐が降伏でも申し出たか?」
「いえ、敵空挺師団は未だに抵抗を続けておりますが、我がサラマンダー隊の損害は軽微!数時間以内に制圧は可能です!」
「では一体何事かね?」
「確定ではありませんが、グランツ中尉が戦場にて"コブラ部隊"とおぼしき敵を目撃したとの事です!」
「何!?クソッ、ついに来たか!」
私は即座に小休止を切り上げ、側に立て掛けてあったG43を手に取る。
「セレブリャコーフ大尉!私を案内せよ!本当にコブラ部隊であれば我々サラマンダー隊は即座にこれを迎撃、橋を防衛する!急げ!」
「はっ!直ちに!」
それでは皆様、どうやら雲行きが怪しくなってきたのでここいらでお別れを。生きていればまた何処かでお会い致しましょう。
現時点での世界観及び設定(ついでに次回辺りからの予定)
追加:HQさんから頂いた設定を取り入れさせて貰ったので、老化停滞理由をナノマシンから寄生虫に変更しました(寄生虫ってマジ便利w)。
・存在X健在(時折介入という名のちょっかいを入れてきます)
・ターニャが本来率いる筈だった隊員達はドイツ人及びロシア人として登場
【具体例】
※ヴァイス→ドイツ生まれのドイツ人
※ヴィーシャ→スターリンの粛清から逃れた白系ロシア人
・メタルギア世界なので魔法は無いですが、奇跡もしくは奇跡に類似する事象は発生
【具体例】
※ターニャは存在Xの加護と奇跡(呪い)によって、手刀を振るえばレーザーカッター並の切れ味を出し、蹴りを繰り出せばブルドーザー並の衝撃となる。
※ターニャら隊員達は某MADが存在Xに唆されて開発した寄生虫手術を受けており、病気や怪我で入院したり死んだりはすれど、寿命では死なないというミュータント設定
・世界大戦話は次辺りで終了予定。メインはメタルギアの話だから、だらだら大戦話を続けるのもあれかと思う。