歯車戦記   作:アインズ・ウール・ゴウン魔導王

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なかなかヴィーシャとスネークの脱走劇が終わらない。
簡単な描写で進めようとするも、興が乗ったり途中保存したのを再び執筆し出したりすると、何故かどんどん文章が増えていく…。




※2018年3月21日

45ACP弾の表記ミスを45LC弾に修正しました。


第22話

【グロズィニグラード地下、用水路・北の通用口付近】

 

 

 

 

 

 

グロズィニグラードの牢獄から脱走し、要塞外への脱出を図るスネークとヴィーシャは、ようやくその脱出のための場所へと辿り着いていた。

 

 

「スネークさん、ここが通用口です」

 

「だが封鎖された。どうにかこいつを抉じ開けないといけない」

 

 

あの貯水槽区画の真下に逃げ込んだ時、ヴィーシャの言う"よく知るとある人"が案内としてスネーク達に送りつけてきたあの野良犬が現れた。そして犬は、あれだけの薄暗さと所々が崩れたり途切れたりしている広い用水路を、迷うことなく案内しきった。

 

そのお陰でスネーク達は無駄な体力と時間を消耗することなく放水路近くにある北の通用口に繋がる扉の前へと辿り着けたのである。そして犬はスネーク達を案内し終わると、最初に案内を始めた時のように一吠えしてから、再び元来たあの薄暗い用水路の奥へと消えていった。

 

だが次なる問題はその通用口の金属扉であった。スネーク達の脱走を受けてヴォルギンはグロズィニグラードやその付近一帯の施設全てに厳戒態勢を命令。

 

そのため脱出・侵入に繋がると思われる扉や通路は溶接や施錠、施設に繋がる道という道は兵士による封鎖線が敷かれたのだ。

 

EVAから無線で言われたように、その金属扉も命令を受けた兵士によって溶接されており、スネークとヴィーシャの持つ装備では抉じ開けるのは不可能であった。

 

 

「こいつをどうやって開けるか…蝶番を壊しても扉全体が溶接されていてはな…」

 

 

スネークが扉を抉じ開ける方法を模索していると、突然扉がガンガンと打ち鳴らされた。

そして扉越しに向こう側から大きな声が聞こえてきた。

 

 

<中尉!俺だ!居るか?>

 

「誰だ!」

 

 

謎の人物の声にスネークは即座に後ろに下がって、いつ声の主が扉を開けて攻撃してきても対応出来るように、AKを構える。しかしスネークの警戒の言葉に返ってきたのは、世間話をするかのように朗らかな男の声であった。

 

 

<おっと失礼!あんたはアメリカのエージェントだな?俺はあんたと一緒にいる女中尉の同僚だ!"とある人"からの命令で、あんたらを逃がしに来たんだ!>

 

「大尉!ノイマン大尉ですか?助かりました!」

 

<ああ!今からこいつを抉じ開けてやる!そしたらお前らは……っと待ってくれ、無線だ。…ああ俺だ、今エージェントの旦那と中尉を出迎えに通用口まで来てるんだが……あ?山猫の隊長が!?…それを足止めするのがお前の任務だろうが!ええいクソッ!>

 

 

ノイマンと呼ばれた男が扉の向こうで悪態をついた時である。スネークとヴィーシャの側に弾丸が撃ち込まれた。

 

 

「居たぞ!撃て!」

 

 

ヴォルギンが追跡のために送り込んだ部隊がとうとうスネーク達を見つけたのである。

 

 

「まずい!逃げるぞヴィーシャ!」

 

 

スネークはヴィーシャの腕を掴むと、敵とは反対方向───つまりは放水路の方へと駆け出した。敵に追い付かれてしまった以上、とにかく逃げなければならない。

手持ちの武器では敵部隊と真正面からやりあえるだけの火力が無いのだ。

 

 

<待て!おい中尉そっちは…!ああクソッ!!>

 

 

2人が駆け出した方向がどうなっているのか知っているのだろうノイマンは咄嗟に制止を掛けたが、空しく銃声と軍用犬の吠える声に掻き消され、2人は言ってしまう。

 

そして放水路の外へと向かって駆け出したスネーク達は、未だ薄暗い用水路を駆け抜け外の明かりが射し込む所へと飛び出そうとした所で、目の前に映った光景に慌てて動きを止めた。

 

ヴィーシャはスネークに腕を掴まれて引っ張られる形であったので、直ぐに止まれた。しかしスネークは勢いよく走り続けていたために、突然に眼前に広がった光景にすぐには止まれず、ヴィーシャが止まった位置よりも先───道が途切れている場所でようやく止まれた。

 

だがスネークは急に止めた足の動きに追従出来なかった上半身のバランスを崩し、あわや転落しそうになった。

それを寸でのところで救ったのはヴィーシャであった。彼女はバランスを崩して落ちそうになったスネークの腹部に両腕をまわして抱き着くと、全体重を後ろに掛ける。

 

ギリギリではあったが、ヴィーシャが勢いをつけて後ろに全体重を掛けたことでスネークはヴィーシャと共に真後ろに倒れ込み、尻餅をついた。

危うい危機の1つから脱したことで、少しばかり余裕が出来たスネークは眼前の光景を噛み締めた。

 

あの用水路から大量の水を放出している直径5mはある放水路───その先に広がっていたのは、遥か真下に大きな河が見える断崖絶壁であった。

放水路の側や崖伝いには通路や道らしい道などは一切存在していない。

 

スネークはここで、自分達が完全に追い詰められたのだと理解した。EVAが北の通用口が封鎖されたことに焦っていたのも、ヴィーシャの知る"とある人"が扉を抉じ開けるためにあのノイマン大尉という男を送り込んだのも、これがあったからなのだ。

 

とにかく放水路の側ならば整備や点検用のための通路くらいはあるだろうと目算していたスネークの考えは、浅慮であったと思い知らされる結果になったのである。

 

そして背後を振り返れば、丁度追いついたGRUの兵士達がスネークとヴィーシャに対して武器を構えており、軍用犬が獲物に飛び掛かる合図を心待ちにしているかのように唸りをあげている。

 

スネークは予備マガジンの無いAK−47を、ヴィーシャも同じく予備マガジンの無いマカロフと、頼りない銃剣を構えて応戦の姿勢を見せた。だが勝ち目は皆無に近い。

身を隠す所もないこの場所では、撃ち合いになれば数の多い方が有利だ。ヴィーシャのあの軽やかな動きも、実際には障害物や視界の悪い場所でこそ真価を発揮する奇襲戦法だ。雨の如く弾を降らせるアサルトライフルの前で弾を華麗に避けながら───なんて映画のような曲芸技ではない。

 

 

(だが…やるしかないか)

 

 

スネークは奇跡や運を完全に信じてはいない。しかし動かなければその奇跡どころか運すら向かないという事実は信じている。ゆえに例え可能性が億が一程しかないとしても、行動を起こそうとした。

 

だがスネークの持つAKはうんともすんとも言わなかった。銃身の詰まりか機関部の故障か、または給弾不良か…理由は分からないが、AKは撃てなかった。

本来AKはアサルトライフルの中ではトップクラスの耐久性を誇る。泥の中に隠してもきちんと作動するくらいだ。

 

しかしだからといって全てが全てきちんと作動するわけではない。どうしても中には僅かでも不良品が混じってしまう時があるのだ。そしてスネークが手にしていたAKは、その僅かな不良品枠に入る物だった。

 

 

「クッ!」

 

「銃を捨てろ!」

 

 

スネークの持つ銃が発砲出来ないと理解した敵兵士は、スネークに武器を捨てろと叫ぶ。その声に対してスネークは、大人しく武器を捨てた。なにせ壊れた銃など、刀身が折れたナイフ以下の武器になるのだ。振り回すだけが使い道の銃の形した鈍器なぞ、至近距離の乱戦でもなければ役には立たない。

 

ヴィーシャも頼みの綱であったスネークのAKが使えないとなった時点で、自らが持つマカロフと銃剣だけでは抗えないと考えており、スネークに続いてマカロフとナイフを敵の方へと投げ捨てた。

 

仮定だが、現状を楽観視しつつ都合よく考えた場合、今もっともこの危機を乗り切る術を有しているのは、ノイマンだとヴィーシャは思った。しかし自分が捕らえられたせいで既に残りの部隊員はヴォルギンから疑われているかもしれなかった。目的が果たせていない現状で、これ以上部隊が疑われるのは避けねばならないとその楽観視と都合はあり得ないと断じた。

 

 

「ようやく追いついたぞ」

 

 

その時、スネーク達にジリジリと接近していたGRU兵士達の後ろから、青年の声が響いた。拍車を着けたブーツを履き、チャリチャリと音を響かせながら歩いてくる───そんな人間と言えば、ここには1人しか存在しない。

 

 

「…この時を待っていた」

 

 

そして現れたのは、やはりオセロットであった。彼は武器を捨てて丸腰となり、放水路を背後に逃げ道を失ったスネーク達を前に歓喜しているのか大袈裟な身振りをする。

 

 

「もう邪魔は入らない…誰も手を出すな、分かったな?」

 

「はっ!」

 

 

さらにやはりと言うべきか、オセロットは周りの兵士達に一切の手出しを禁じた。彼はどうしても自らの手でスネークを仕留めたいらしかった。

 

オセロットは自分の首に掛かるチェーンの先、そこに付けられたわっかに嵌め込まれたにび色の物体を掴むと、チェーンを引きちぎった。そして腰から取り出したのは愛用するSAA。

 

彼はそのにび色の物体をSAAのシリンダーに装填すると、自らの左腕を滑らしてシリンダーを回転させ、ハンマーをコックした。

シリンダーをわざわざランダムになるよう回し、弾の装填された場所を確認せずにハンマーコックしたのは、生来の彼のギャンブラー魂的なものなのだろう。

 

いつ発射されるか分からないリボルバーでロシアンルーレットのように標的を仕留める───それはオセロットの自尊心を満足させながらも、彼がもっともなりたいであろう"兵士"には不向きな性質だと示してもいた。

 

 

「これで終わりだ」

 

 

その言葉と共にオセロットはSAAをスネークに向けて構えると、ゆっくりと引き金を引いた…

 

 

 

 

ガチッ!

 

 

 

 

一発目は不発であった。しかしオセロットはまだまだ楽しめるとでも言いたげな顔で2発目を撃つべく、ハンマーをコックしようとした。

 

そして、それはまたもや裏目に出る。もはや後が無いと見えたスネーク達の現状───だがスネークはそこから新たな活路を見出だした。博打には博打をとでも表現出来るような手段ではあるが、それはオセロットにとってはこれまでと同じく、「まさか!?」と叫びたくなるものであった。

 

スネークはそばに立つヴィーシャの腕を掴むと、ギリギリのふちに立つ自らの身体のバランスを、後ろへと傾けた。

 

 

「っ…!?スネェーク!!」

 

 

追い詰められたスネークが何をしようとしているのかを理解したオセロットは、慌てて駆け出した。<折角ここまで追い詰めたというのに、逃がしてなるものか>と心中で叫びつつ、右手で構えるSAAのハンマーをコックしながら再びトリガーを引いた。

 

 

2発目…不発。

 

 

そしてスネークと彼に腕を掴まれたヴィーシャはオセロットが3発目を撃つ暇もなく、まっ逆さまに放水路から流れ落ちる水の先にある大河へと落ちていく。

 

スネークは落ちる手前で腕を掴んでいたヴィーシャを胸元に抱き寄せると、彼女の頭を抱えて着水の衝撃に備え───水柱を上げながら大河へと落下した。

 

 

 

 

 

 

【Side オセロット】

 

 

 

「っ…!?スネェーク!!」

 

 

自分の目の前で体重を背後に傾けたスネークを見て、奴が何をしようとしているのかを理解した途端、何も考えずに駆け出した。

 

右手で構えるSAAのハンマーをコックして今正に崖下へと消え行こうとしているスネークの心臓を狙いながらトリガーを引いて2発目、しかしながら不発に終わる。

 

そして崖下へと消えたスネークを見つけ出そうとハンマーを更にコックしながら放水路のふちギリギリまで進んで止まった。

 

急ぎ下を覗き込めば、そこにはあの女───ヴィクトリアを抱え込みながら大河へと水柱を上げて落ちたスネークを見つけた。

 

奴は流れの激しい大河に揉まれながら流されていく。今仕留めるならば奴が流されていく間しかない。そうと決まれば実行である。右手だけで構えていた愛用のSAAを両手を使って持ち、右の胸元に引き寄せる形で確実に命中させようとした。

 

しかしふと気になってしまい、シリンダーを覗き見た。いつもならば───本来ならばしない行為だ。"必ず"と獲物たる敵を選び仕留める時は、そいつの運を試すために様々な方法を取ってきた。

奴のアドバイスで自動拳銃からシングルアクションのSAAに持ち変えてからは、ロシアンルーレットを変形させたあの撃ち方で相手の運を試してきた。

たまたま見つけたKGBのスパイも、ソコロフ博士も例外無くである。

 

しかしその時ばかりは今ここで仕留めたいという欲求から、弾の位置を確認しようとシリンダーを覗いてしまったのだ。

 

SAAのソリッドフレームに固定されているシリンダー。そこには、コックしたハンマーの先にある空の装填口、そしてその左側の装填口に装填された45LC(ロングコルト)弾があった。

 

つまりは3発目の発砲は不発に終わる。そしてわざわざシリンダーを覗き見てしまうというタイムロス。これらが合わさった結果は言わずもがな…タイムオーバー(時間切れ)である。その間にも、スネークとヴィクトリアは瞬く間に流されていき、豆粒ほどになってしまっていたのだ。

 

今一歩自らが歩み損ねたのだ。だがまだ諦めてはいない。スネークは大河を流されていったが、まだ死んではいないのだ。奴はまた必ずこのグロズィニグラードへと侵入してくる。ならばその"次"を待てばいい。

 

そして例え周りから野次られたとしても、決して奴との運の戦いを止めたりはしないつもりであった。それに勝てなければ、自分は負けたままなのだ。

 

初邂逅となった廃工場でのマカロフの弾詰まり(ジャム)というアクシデントに、再びその工場で相まみえた時に起こった装填数と残弾数の読み間違えによる敗北、そしてザ・ボスから聞いた情報をもとにコブラ部隊より先に待ち伏せたというのに部隊兵士の1人ザ・ペインに居場所を発見されスネークとの決着を阻害された。

 

挙げ句には牢獄でのスネークによる妨害だ。奴の捨て身の妨害で自分とタチアナの運試しは、奴が右目を失うという散々たる結末であった。しかもそのトリガーを引けば弾が出るという時にである。

 

 

 

 

「まだ死ぬな…」

 

 

そう呟いてからSAAをホルスターに仕舞い、用の無くなった放水炉を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─グロズィニグラード、崖下の河・下流─

 

 

 

 

 

【Side ヴィーシャ】

 

 

遥か下の崖下を流れる河に落ちた時、最初に感じたのは冷たさだった。しかし冷たさに身を震わせる暇もなく、今度は身体をやたらめったらに振り回される感覚が襲いきた。

 

それからは体感時間は当てにはならないだろう。とにかく永遠とも思える長い時間、河に押し流され揉まれる感覚を味わい続けた。

口内に水は入るし、身体のあちこちを流木や岩に嫌というほど打ち付けながら流されていった。

 

そしてようやくといったところだろうか…ふと流れが弱まったことに気付いた瞬間、自分の足が水底に着くことが出来たのだ。これをチャンスと捉え、怠い身体に鞭を打って重い足を進めた。

 

そして足が完全に水に浸からなくなった場所───つまりは岸辺へと上がることが出来たのだ。本来ならば追っ手の危険性を考慮してより見付かりにくい地点まで移動するのが鉄則なのだが、流石に疲労困憊であった。

 

少しだけと言い聞かせながら上着の野戦服の前をはだけて、大の字で岸辺に仰向けに寝転んだ。

結構な距離を流されたのか、周りは自分が初めて見る密林地帯であった。

 

 

「…ハァー…」

 

 

思い切り息を吐きながら、頭上から降り注ぐ木々の葉で程よく遮られた暖かい日光を浴びて、疲れきったリラックスさせる───と、そこであることに気付いた。

 

 

「スネークさんは…はぐれた?」

 

 

一緒に飛び込んだ(というよりはいきなり引っ張られて道連れかと思うくらい躊躇なく放水路から崖下へと飛び降りさせられた)スネークの姿が見えない。

だがあれだけ流れの激しい河である。幾つもの小川が合流してるだろうし、そのどれかに入り込んだ可能性もある。

 

 

「…とりあえず探さないと…」

 

 

現状彼に死なれては困るのだ。それが上官の望みでもある。まだ若干の怠さは残るがある程度体力を回復出来たので、岸辺から起き上がって目の前の小川を上流を目指して川沿いに歩き始める。

 

万が一を考えてちょくちょく川の底を覗きこんでみる。だが、川は底まで透き通っているがスネークは見当たらない。

もしかしたらとっくに目覚めて自分のように川沿いを伝いながら自分を探しているかもしれないという考えが頭をよぎり出す。

 

ならあと少しだけ歩いて見付からなければ、先ほどの岸辺へと戻って体力回復に努めながらスネークを待とうと決めた…とそこで、川底に人型の存在が漂っているのを見つけた。

 

それは紛れもなくスネークである。どうやら気絶しているらしく、ピクリとも動かない。というよりは死んでいると考えたくなかった。もし死んでたら困るからだ。

 

だがこのままでは本当に死にかねない。ヴィーシャは前をはだけていた上半身の邪魔な野戦服を脱ぎ捨てると、息を吸ってから川に飛び込んだ。

そのままスイスイと底まで泳ぎきると、水中を漂うスネークの両脇に腕を通して離れないようがっちりと両手を組むと、思い切り底を蹴った。

 

底を蹴った勢いを使い先ほど潜ってきた水中を今度はグングンと上がっていく。すると、その途中で腕の中に抱いていたスネークが口から大きく泡を吐き出した。どうやら意識を取り戻したらしい。

 

だが身体を後ろから抱き抱えられていることに気付いた瞬間に全力でもがいて、ヴィーシャの腕を払おうとする。

恐らくだが、敵かもしくは見知らぬ人物に拘束されたと思ったのだろう。

 

ヴィーシャは必死に暴れるスネークを押さえつつ、水中なので声が出せないため、肩を叩いたり振り向かせようとしたりと何とか自分だと気付いてもらおうとする。

 

十数秒ほどの攻防の末、スネークは背後から自分を抱き抱える人物の顔を見て、ようやくヴィーシャだと理解したのか、暴れるのを止めて大人しくなった。

 

ヴィーシャは暴れるのを止めたスネークにジェスチャーで上───水面を指す。その動作を見てスネークは上に顔を向けると、ヴィーシャの言いたいことを理解して頷いた。

 

ヴィーシャは抱き抱えていたスネークから手を離すと、一気に水面まで上昇を始める。そしてそれに遅れながらも、スネークも水面目指して水を掻き分けながら残る力を振り絞り、泳ぎ出す。

 

そして始めにヴィーシャ、続いて数秒後にスネークが小川の水面に顔を思い切り出した。互いに無事に水面へと出れたことを確認すると、今度は岸辺へと泳ぎ出した。

 

岸辺に辿り着いた2人は疲労で重い身体を引きずるように上がると、同じタイミングで息を吐きながら岸辺に大の字で仰向けに寝転ぶ。

スネークはそれなりの時間水中を漂っていたため、ヴィーシャは大の男であるスネークを抱き抱えて必死に泳いだために、互いに荒い呼吸を繰り返している。

 

 

 

「ヴィーシャ…無事か…?」

 

ようやく一息ついたのかスネークは軽く身体を上げて、未だに横で上半身裸のまま寝転んでいるヴィーシャから僅かに視線を逸らしつつ呼び掛けた。

 

 

「…今視界に広がる森林や鳥があの世の物ではないというなら…互いに無事ですね…」

 

 

対してヴィーシャはその呼び掛けに、水に濡れた顔や前髪を拭いながら軽口を返す。スネークは「そうか…」と返答すると再び荒い呼吸をしながら寝転んだ。

しかし次に放たれたヴィーシャの言葉に僅かに気まずい顔することになった。

 

 

「次…放水路から崖下に飛び込む時は1人で落ちるか…せめて一言下さいね…」

 

「…ああ…善処しよう…」

 

 

ヴィーシャの少しばかりトゲがある言葉に、スネークは気まずげな表情のまま疲労を含んだ返事を返すのがやっとであった。

 




【放水路でのロシアンルーレット】

せっかく追い詰めるも、いつもの癖でじっくり打ち倒そうとするからまたスネークに逃げられたオセロット。
ちなみにSAAのシリンダーの隙間を覗いて弾を確認するシーンは、実際に出来るのかと思い、タナカのSAAモデルガンで確認してから描写したという裏話が…。

【グロズィニグラードの放水路下を流れる大河】

拷問による負傷や疲労があったとはいえ、本編映像でスネークが浮き沈みしながら流されたり、最終的に小川の底で気絶していたりといった描写から、本作品でも流れが強く不規則な大河として描写しました。

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