歯車戦記   作:アインズ・ウール・ゴウン魔導王

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最近モチベが上がらない。でもしっかり書き続けてはいます(低脳の言い訳)。


第36話

「さて、これからどうするかだが……ゴホッ、ゴホッ!」

 

「おい大丈夫か、キャンベル?」

 

「ああ、済まないスネーク……ふぅ……先ほどから頭痛や悪寒が止まらなくてな……」

 

「頭痛や悪寒?おいキャンベル、まさか……」

 

「まさか……いや、確実だろうな。マラリアだ……ツいてないぜ全く……」

 

 

スネークの予想は当たった。恐らくはキャンベルはサンヒエロニモで囚われてから、蚊を媒介して感染したのだろう。

 

マラリアは幾つかの種類に分かれ、潜伏期間は数日のものから1ヶ月ほどのものもある。また発症した場合、これも種類で分かれるが大体24時間周期から48時間周期、72時間周期で発作熱が引き起こされる。

 

放っておけば深刻な臓器不全を引き起こし、最悪の場合死に至る病気である。

 

 

「不味いな。一刻も早い治療が必要だ」

 

「そうだ……ゴホッ……だが、どうする?」

 

「任せてくれ、俺の"主治医"に聞けばどうにかなる筈だ。キャンベル、今はお前は休め。俺はあの通信基地に戻って何とか連絡を取ってみる」

 

「ああ、分かった。済まないなスネーク」

 

「待っていてくれ」

 

 

スネークは新しく仲間に引き入れたあのソ連兵にキャンベルの介抱を頼むと、輸送トラックから出て、通信基地に急ぎ向かい出していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<<こちら第3分隊、武器庫を制圧!>>

 

<<こちら第7分隊、宿舎を制圧!捕虜は13名!>>

 

<<こちら第2分隊、交戦中の敵部隊が降伏を申し出ました!>>

 

<<こちら第1分隊、各区の制圧を全て確認しました!現時刻を以て当基地を完全制圧!なお敵指揮官は発見出来ず、繰り返す、敵指揮官発見出来ず!>>

 

「了解した。各分隊は速やかに捕虜を連れ、指揮所に集合せよ……ふぅ、ここも外れか……」

 

 

サンヒエロニモ上陸から既に丸3日が経過した。捕虜から懇切丁寧な"お話"で情報を聞き出したところ、どうやら脱走者が出たらしく、各地に点在する敵基地は厳戒体制に入っていた。

 

だがまさか3個小隊分の敵戦力がMBTを連れて奇襲してくるとは考えていなかったらしく、上陸の沿岸防壁制圧から数えて3つ目の基地を難なく制圧出来た。

 

しかしそれなりに大きな基地を狙っているものの、未だ本命である敵の首魁を見つけるには至っていない。むしろ連日の戦闘で部隊に疲弊が見えている。

 

時間との勝負ではあるが、だからといって無理押しで勝てる戦いではない。取り敢えずはこの基地を仮拠点に兵に休息をとらせるのが妥当だろう。

 

そうしたらまた明日から作戦を継続すれば良い。

 

私は目の前の簡易的な机の上に載っかる無線機を掴むと、副官へと連絡を入れた。

 

 

「ヴィーシャ、私だ。今すぐに指揮所に来てくれ」

 

<<はい、かしこまりました。直ぐに向かいます>>

 

「ああ、頼む」

 

 

副官からの返事を受けて無線機を切ると、机の上のすっかり冷めてしまったコーヒーを手に、サンヒエロニモの地図とにらめっこを始める。

 

 

「はてさて、一体何処にいるのやら……名前も容姿も全く分からない。おまけに所在が全く不明……」

 

 

いつもの任務ならば、そういった情報は裏方の連中が調べて書類にまとめてくれていた。

 

しかし今回はそういったバックアップは一切無し。

 

武器・弾薬は敵基地を制圧していく過程で持てるだけ掻っ払っているため心配は無いが、逆にMBTとして持ってきたチーフテンに限っては心配しかない。

既に1台が対戦車ロケットの餌食になって、車内にいた連中ごとアポロよろしく月まで吹っ飛んだ。

 

残る1台ももうしばらくは使えるだろうが、燃料・残弾共に尽きれば撃てない大砲抱えた鉄の棺桶だ。

 

まあ、だからといって戦えなくなる訳ではないがな。ここは幸いにも基地だ。武器・弾薬は回収して味方の装備に組み込めば良いし、糧食・医薬品も必要な分が揃ってる。

 

……糧食に関してはあまり当てには出来ないがな………本当にソ連軍の食料事情はフルシチョフ時代から変わらない。何時まであのクソ不味い缶詰を採用し続ける気なのか、ソ連軍の兵站管理者を問い詰めてやりたいぞ。

 

 

「少佐殿、失礼致します。セレブリャコーフ中尉、参りました」

 

「ああ、来たか中尉。入りたまえ」

 

「はっ、では失礼します」

 

「さて、中尉。我々の今後だが、明日まで我が部隊は当基地にて夜営し、基地に備蓄されている武器・弾薬及び糧食・医薬品を回収。装備を整えた後、明日から再び敵基地の制圧及び首謀者の捜索に入る」

 

「かしこまりました。ではそのように各隊に通達致します」

 

「ああ、頼んだ」

 

 

指示を受けてセレブリャコーフ中尉が退出するのを見届けると、私は再び地図とにらめっこを始めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、少佐の指示を各隊に通達し終えたら、使える武器や弾薬を集めなければならないですね。

 

 

 

皆さんこんにちは、ヴィクトーリヤ・イヴァーノヴナ・セレブリャコーフ中尉です。

 

 

 

現在我々は敵首魁の捕縛ないし殺害のために、3日前にサンヒエロニモ半島に沿岸から上陸し、道伝いに各基地を制圧しながら前進していました。

 

ちなみに今回は少々激しい戦闘だったために、人員こそ戦死1人に軽傷3人で済んだのですが弾薬の損耗はかなり高いです。部隊のほとんどが割り当てられた弾薬を使い果たしたために、補給の目処が無いまま無理矢理に戦えば数日と持たない有り様です。

 

そのため今のうちに使える弾薬をかき集める必要があります。武器に関しては弾薬の互換性が無いため、幾つかの分隊の装備をソ連軍のと入れ替え、残りを元の装備の分隊に回せばとりあえずは良いでしょう。

 

そう考えながら隊が休息を取る宿舎まで来たところで、私に声が掛かりました。そちらを見れば、声を掛けてきた相手は第2分隊を率いる軍曹でした。

 

 

「中尉、失礼します。先ほどの戦闘で出た捕虜の処遇に関してですが………」

 

「ああ、はい。捕虜に関しては全員略式処刑して下さい」

 

「っ!?」

 

「あっ、処刑とは言いましたが、弾薬が勿体ないので銃は使わないで下さい。ナイフか銃剣、それ以外に石や鉄パイプなんかでお願いしますね」

 

「中尉!彼らは民兵や犯罪者ではなく降伏したソ連の兵士です!何の理由もなく処刑な……」

 

「理由はありますよ。まず我々には捕虜を抱えて作戦を遂行する余裕はありません。また彼らは我々に協力する気は無いのですから捕虜は邪魔なだけです。次に我々の目的は捕虜を取ることではなく、反乱の首謀者を捕縛するか殺害するかという事です。任務目的に関係しない不要なリスクは切り捨てるべきです。

そして何より………ここは非正規戦闘地域(ブラックオプス・フロント)です。この核ミサイル基地は表向きには存在しない。つまり、そこに勤務するソ連兵も居ません。よってここに居る兵士は国家にのみ認められた核という危険な兵器を違法に所持し、それを発射可能な基地を違法に建設しそこに居座る国際法の外側の存在です。そんなあやふやな敵に適用される国際法は"ありません"」

 

「中尉、貴女は………」

 

「以上です。また少佐から通達事項がありますので、各分隊長の集合をお願いしますね?」

 

 

少佐は良い顔をされないかも知れませんが、これで良いんです。

 

どんな人道を説こうとも、ソ連にとってここの基地は表沙汰にしたくない存在ですから、兵士が消えれば彼らは喜ぶだけです。

 

そして世界はそんな基地があることも知らないのですから、糾弾する人間も居ません。

 

勿論私だって必要無い人殺しはしたくありませんが、逆に言えば必要なら人殺しも辞しません。私の目的はただひとつ────

 

 

 

少佐が平和に暮らせる世界─────

 

 

 

その為ならば、祖国すら敵に回してみせましょう………。

 




ヴィーシャはターニャの為ならば普通に名誉も命も投げ捨てるし、ヤバいことも辞さないタイプ(ヴィーシャファンの皆さん本当にすいません)。


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