その日─────記者(読者)達が集まった総統官邸内にて、彼女は短い時間ながら記者(読者)達と会話を交わしていた。
皆さん、ごきげんよう。私は──────
失礼、小官はドイツ武装親衛隊第1SS装甲師団"LSSAH"にて歩兵中隊を率いておりますターニャ・フォン・デグレチャフ大尉であります。
は…中佐?いえ、小官はつい先月に大尉を拝領したばかりですが?
第0SS装甲師団?はて、小官の知る限りではそのような師団は存在しておらず、また私はLSSAH以外の武装親衛隊に所属したことはございません。
マーケット・ガーデン?あれは確か今から2年ほど後に起こりうる作戦では?
おっと失礼、小官はこれより総統閣下御自ら勲章を授与して頂けるとの事なのでこれにて…。
〜官邸内・総統執務室〜
「デグレチャフ君、大尉への昇進おめでとう。君は我がドイツの誇りある兵士の1人だ。これからもその卓越した技能を振るってもらいたい」
「はい、総統閣下!栄えある大ドイツと総統閣下の御為にも、その所存であります」
「うむ。他の者達も優秀だが、やはり本当に信頼出来るのは君やルーデル、ヒムラーやブロンディくらいだ。いや、その話はおいておこう…実は今日は君に相談したい件があるのだ」
「はい、お任せ下さい。御相談とはどのようなことでしょうか?」
「君は連合国が新しく編成したという特殊部隊について知っているかね?」
「はい、いいえ。その特殊部隊に関しましては初耳です」
「うむ、儂も数日前に報告されたばかりでな。通称"コブラ部隊"───連合国軍から特に優秀な兵士を集めて編成されたコマンドと聞いておる」
「特殊作戦部隊ですか…厄介ですね(つまり、対抗策の相談か…上層部ではなく一尉官の私にその話を振るのは、やはり史実通り前線経験者を信頼しているからか。つまり、もしここで堅実的な対抗作を提示出来れば、前線経験を持ちながら後方勤務の参謀としての資質もあると総統にアピール可能だ!)」
「うむ…そこで君に相談なのだがな…」
「はっ!(よし、やはり来たな。ではまず手始めに…!)」
10分後…
「ふむ…デグレチャフ君。つまり、敵の規模・編成が不明な現段階において、生半可な部隊では数・質共に圧倒される恐れがあると?」
「はい」
「ではどうするかね?」
「我々は東部における連戦で少なくない兵力を喪失しております。また人材も極めて限られる中では、特に優秀な兵のみを各師団や部隊から選抜するという対策では悪手となり得ます。よしんばコブラ部隊へ対抗出来たとしても、優秀な人材ばかりを引き抜かれた部隊がこぞって戦力低下を起こし、下手をすれば戦線維持そのものが危うくなるかと…」
「ううむ…やはり同じように特に優秀な人材のみを集めるという訳にはいかんか…物量に任せた戦いが出来る連合国が羨ましいよ」
「そこでですが、優秀ではなくとも高い技能や専門知識を持つ人間を軍・民問わず、我がドイツ以外の同盟国または占領地域からも我々に好意的な志願者を集め、彼らに対コブラ部隊を想定した特別訓練を受けさせるという案を提案致します」
「ふぅむ…つまりは特に優秀な兵を我がドイツの各軍から無理に集めるのではなく、一定水準を越える兵や民間人を我が軍や同盟国から募り訓練を施し、総合的に優秀な兵へ育てると?」
「はい、それならば戦線維持に過度な負担を課すことなく、コブラ部隊への対応も可能かと。民間出身の人間はSDのシェレンベルク殿辺りならば確実な身辺調査が可能ですので、彼辺りに任せれば良いかと」
「つまり、他国や民間に頼らねばならない…と?」
「っ…!?(しまった!マズイ、非常にマズイ!馬鹿な口を撃ち抜きたい!どうする?このままでは総統に不信に値すると思われてしまう!)」
「はい、いいえ!言葉の上ではその通りですが、何も平身低頭して頼るという訳ではありません!」
「ふむ…続けたまえ…」
「(…良し!総統の興味を僅かでも引く事に成功したぞ!これで不信に値すると見限られる可能性が減った!後は勢いで…!)我がドイツは枢軸同盟の中心であります!イタリアや日本は同盟国ではありますが、有り体に言ってしまえば我々に追従しているだけであります!むしろ彼らを活用するという形を私は構想しております!"枢軸同盟を維持し、連合国を打ち払うためには協力体制が不可欠であり、その為に矢面に立つ我々に兵を貸与し協力するように"と現実を示しながらも互いの立場を明確にする事で、我々が頼るという姿勢ではなく、未来の為の協力要請という絵図を作り上げる事が可能です!民間に関しても祖国の為や、輝かしい未来といったフレーズで印象づければ、志願者獲得は容易でしょう。その手の民間人は大体が夢見る若者や栄光を求める者ですので、大して疑問を抱くことなく身を差し出すかと!」
「うむ…成る程な…我がドイツの立場を上に立てながらも、協力を断りにくい現実を突き付け貸与に漕ぎ着けることが可能か…民間人も国民らは馬鹿だからな。印象や掲げる理想が高ければ私が党を拡大していた時のように簡単に取り込めるか…よし、それはさておき、編成するとして対抗部隊の規模は?」
「相手が物量に任せた部隊であることも可能性のひとつとして考えた場合、小隊や中隊では人員面から対応が後手に回る場合があります。しかし逆に連隊や師団では大規模故に人員を募集し集まったとしても十分な訓練を行わせるには人手が足りません。よって試験的運用を前提として、大隊が適切であると確信します!!(よしっ!これで!)」
「(相談とはいえ総統である儂に恐れなくここまで意見をぶつけられるとは…流石前線帰りの兵士だ…ルーデルもそうだが、やはり前線に立つ兵士は信頼出来る…しかもここまで熱心に語るのはやはり、自身で行いたいという熱意の表れか)」
「(さぁ、総統閣下!私は言い切りました!是非、私の案から後方勤務可能な参謀だという結論を出して頂きたい!)」
「(更に彼女は日本の文化に詳しく、いくつか好きな料理があると部下と話していたという報告もある。それはドイツの次にあの国を気に入っているからだろう…私は日本をあまり好いては居ないが、彼女のように好意を持つドイツ人はいる。それを本心ではなくとも貶してまでも、我がドイツの立ち位置を高く見据え、未来に繋げようとしている。いや、いかんな…幼いながらここまで愛国心と忠誠心に溢れる彼女の言葉…それをないがしろにしては彼女への侮辱となる!よしっ!!)成る程、君の構想は良く理解した。うむ!早速シュペーアに日本とイタリアに交渉させよう。民間のほうは儂に任せたまえ、君の希望に添えるよう手を打とう!」
「は!ありがとうございます!(…ん?"君の希望"…あれ!?)」
これが対コブラ部隊を想定した部隊創設と訓練────そして彼女の安全な後方勤務という未来が遠ざかる始まりであった…。
本編とはこれといって絡まないですが、ターニャは原作同様自身のアピールをミスりながらどんどん最前線への道を歩む話が書きたかっただけw