戦女神×魔導巧殻 第二期外伝 -ハイシェラ魔族国興亡伝-   作:Hermes_0724

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【Prologue】

銀色の甲冑で武装した騎士たちが、絶壁の王宮に乗り込んで来る。麓の街は既に占拠されていた。散発的な抵抗は続いているが、既に勝敗は決していた。黒髪の聖女は、目の前の「青髪の魔神」に向けて勧告した。

『既に勝敗は決しました。これ以上の抵抗は無意味です。降伏なさい』

だが魔神は口元を歪めて嗤った。

«嘲笑わせよる。我が名は、地の魔神ハイシェラ!汝らに下るはずが無かろう!我の留守を狙ってこの地に土足で踏み入るとは、何が光の神殿か!ただの盗賊と同じだの!»

『…魔神ハイシェラ…青髪…』

聖女は眼を細めて呟いた。魔神の周囲を取り囲む騎士たちが、徐々に距離を詰める。ハイシェラは剣を奮い、魔術を放った。だがかつての力は失われていた。魔力も底を尽きかけている。聖女は瞑目して両手を天に向けた。

『仕方がありません。マーズテリアの威光を!』

天井が崩落し、光が降りてくる。白く輝く強大な魔力の中に、魔神の姿は消えた…





第一話:ケレース地方動乱前夜

…白い服を着た人間が、自分の周りを囲んでいる。眩しい光に、目を細めた。声が聞こえた。何を喋っているのかは理解できない。眩しい光が眼に痛かった。

 

『なんということだ。まさか生命体が送られてくるとは…』

 

『このままで、時空連続体に深刻な影響が出るぞ…』

 

『それにしても、この生物は何なのだ?見たところ、どうやら「雌」のようだが?』

 

『アリス!コレの正体を知りたい。スキャニングの後に解剖の準備を!』

 

(…指示を了解、スキャンを開始します…)

 

点滅する赤い光が見えた。手足を動かそうとしたが、全く動かない。頭も固定されている。そうするうちに、音が聞こえてきた。蟲の鳴き声のような嫌な音だ。恐怖が膨れ上がった。精一杯の声で叫ぼうとした。だが声が出ない。音が大きくなった。恐怖で、目尻に涙が浮かんだ…

 

赤髪の美女が跳ね起きた。肩で息をし、額には汗が浮いている。左手を貌に当て、呟く。

 

『何故じゃ?何故、今になってあのような夢を…』

 

青白い月明かりが射している。まだ夜半であった。女は本来、眠る必要がなかった。だが王という地位に就いてからは、臣下たちのためにも夜は眠るようにしていた。自分が起きていれば、周囲の者が眠れないからである。寝台を降りる。女は全裸であった。傷一つ無い白い肌が月明かりを反射する。全裸のまま、隣室に向かう。小さな岩風呂があるのだ。この城の前の主は、風呂好きであったのだろう。城の屋外には立派な露天風呂があるのに、部屋の隣にまで作っていたのだ。温めの湯に浸かり、顔を洗った。左足を持ち上げる。白い脚を見ながら、女は呟いた。

 

『我はあの頃よりも、遥かに力を得た…何を恐れることがある』

 

それはまるで、悪夢に身を震わせていた自分への叱責のようであった。

 

 

 

 

 

ケレース地方の大国ターペ=エトフの滅亡後、ハイシェラ魔族国は本拠地を王都プレメルに遷し、ハイシェラ自身は絶壁の王宮を居城とした。ハイシェラは芸術品などには興味がなかったが、それは無関心というだけであり、いたずらに破壊をするつもりも無かった。先王インドリトは実用性を重視していたようで、王宮の造りも機能的であったため、ハイシェラもそのまま使っている。

 

『シュタイフェ、街の様子はどうか?』

 

『ヘイッ、一時は民衆も不安がっておりヤしたが、今は平穏を取り戻し、飲食店なども開かれておりヤす。コレも全て、ハイシェラ様のスンバラシイ美貌の賜物かと…』

 

『追従は良い。兵たちを引き締め、民衆には手を出さないように徹底させよ。先日のようなことがあれば、次は一人では済まさぬ』

 

ターペ=エトフを占拠して間もない頃、亜人族の兵士による婦女暴行という事件があった。ハイシェラは激怒し、民衆の前で処刑を言い渡した上で、自らの手でその首を跳ねた。峻烈にして苛烈、野蛮にして残酷、だが「無情」「卑劣」では無い。それがハイシェラの王としての在り様であった。

 

(インドリト様のように、安らぎや安心感を与えるような王ではないでヤすが、信頼は出来ると思いヤす…)

 

行政府の部下たちにシュタイフェが伝えた「ハイシェラ像」がそれであった。ハイシェラは先王インドリトとの約束を守り、毎日百名前後の民衆が、新たな理想郷「エディカーヌ王国」に転移している。十五万人となれば、三年以上(一年は四百二十日)の歳月が必要となる。シュタイフェが中心となって立案した移住計画は、ほぼ計画通りに進んでいた。一通りの報告を聞き終えたハイシェラは、ルプートア山脈西方に向かう旨を告げて、絶壁の王宮を飛び立った。

 

 

 

 

 

マーズテリア神殿総本山ベテルーラでは、聖女ルナ=クリアを中心に会議が続いていた。ターペ=エトフの滅亡とハイシェラ魔族国の勃興は、西方神殿勢力でも重大事態と捉えていた。

 

『クリア様、やはりここは大軍をもって西ケレース地方に攻め入るべきでしょう。先日は急襲ということもあり、わずか十二隻でした。カルッシャ、フレスラントの両国の協力があれば総兵力十万、一千隻の大船団を結成することも可能です』

 

鼻息の荒い騎士たちの発言に、ルナ=クリアは苦笑して首を振った。

 

『先日の急襲で、西ケレース地方を見ました。ケテ海峡は霧が出るとはいえ、監視されれば気づかれてしまいます。つまりケテ海峡があるという時点で、不意をついた急襲は不可能ということです』

 

『ですから、兵力の逐次投入を…』

 

ルナ=クリアは手を挙げて、発言をおさえた。

 

『陸続きであれば、それも選択肢の一つとなるでしょう。ですが船を使っての輸送となれば別です。敵は兵を殺す必要はないのです。船を沈めてしまえば良いのですから… 相手は魔神です。フレイシア湾入り口で純粋魔術による巨大爆発などが起きれば、十万の兵が全滅する可能性すらあります。数による力押しは、犠牲を増やすだけです』

 

『ではどうすれば…』

 

ルナ=クリアは、机上の地図を眺めた。考えを整理するように言葉を紡ぐ。

 

『ハイシェラ魔族国は強大ですが、その戦力は著しく不均衡です。魔神ハイシェラという一個人の戦力に頼っています。ですが、ハイシェラの身体は一つです。本拠地とハイシェラを引き離してしまえば…』

 

『戦力分断ですか。ですがケテ海峡を通過し、フレイシア湾に上陸し、さらに河を昇ってプレメルに攻め入るとしたら、最低でも五日は必要です。魔神ハイシェラは飛行能力を持っていると聞いています。ケレース地方の何処にいても、すぐに引き返して来てしまうでしょう』

 

皆が唸った。ルナ=クリアも改めて感心した。東西南を高い山に囲まれた天険の要害。この地に眼を付け、建国したインドリト王とディアン・ケヒトは、まさに慧眼である。沈思するルナ=クリアの横で、各人が意見を出し合っている。ケテ海峡を埋めてしまうという暴論まで出ていた。ケテ海峡を渡っての上陸は不可能である。千、二千人程度ならともかく、十万の軍勢が砂漠地帯を移動してケテ海峡を渡るなど無謀であった。またケテ海峡自体が断崖絶壁であり、上陸が困難であることは、自分の目で確認している。

 

『…フレイシア湾からの上陸以外に、この地を占領することは不可能です。そのためにも、魔神ハイシェラを本拠地から引き離す必要があります。それも数日以上… 何かしらの策を立てねばなりません。ですが現時点では、魔神ハイシェラについての情報が不足しています。まずは情報を集めましょう。できれば、この魔神と直接対面したことのある人から、話を聞ければと思うのですが…』

 

『他の神殿にも声を掛けましょう。バリハルト神殿であれば、何か情報があるかもしれません』

 

ルナ=クリアは頷いた。結局、「ハイシェラについての情報収集」だけがこの日の会議で決められた。

 

 

 

 

 

ルプートア山脈西方は切り立った崖が多い。飛行能力を持つ者以外に、この地に入ることは不可能である。山頂に出たハイシェラは、眼科の光景に思わず声を漏らした。蒼く澄んだ湖の畔には、白い教会が建ち、石造りの家々が集落を形成している。背の低い森林や畑もある。教会の前にハイシェラが舞い降りた。頭上に光輪を持つ種族たちに囲まれる。

 

«天使族の縄張りに入るのは初めてだの。なるほど、確かに良い場所じゃ…»

 

圧倒的な暗黒の気配を放つ魔神に、天使族たちは最大級の警戒をしていた。光属性を持つ「聖槍」を構える。そこに、ハイシェラに匹敵する気配が出現した。六翼の美しい天使が出現する。秀麗な顔には若干、険しい表情が浮かんでいた。

 

«ターペ=エトフを滅ぼせし魔神が、私たちの地に何用です?この地は天使族の聖地…主を想いながら、この世界に生きる民たちを見守るための場所です。貴女は相応しくありません。お引き取りを…»

 

«熾天使にして第一位階を束ねし天使長ミカエラ… 汝と闘えば、さぞ燃えるであろうの。じゃが、今日は闘いに来たのではない。まぁ、暇つぶしを兼ねた挨拶だの»

 

«ならば、その気配を抑えなさい。この地で、主に祈りを捧げたいというのであれば、拒絶はしません»

 

ハイシェラは失笑しつつも、気配を抑えた。その様子を見ながら、ミカエラは首を傾げた。黄昏の魔神と激闘を繰り広げていた頃と比べると、まるで雰囲気が違っていた。かつてであれば、闘争を求めて自分に襲い掛かってきたはずである。ところが、目の前の魔神にはそうした闘志は全く感じない。何処か「穏やかさ」まで感じる。ミカエラも自分の気配を抑えた。

 

『それで、挨拶でわざわざ来た、というのですか?』

 

『そうじゃ。我はこれからケレース地方統一に乗り出す。汝らは手出し無用じゃ。我に干渉せず、この地に棲み続ける限り、我もまた汝らには干渉せぬ。それを伝えたくてな』

 

『元より私たちはターペ=エトフとですら、殆ど交流がありませんでした。貴女に干渉するつもりはありません。貴女がこれからどのように生きるのか…この地から見守りたいと思います』

 

ハイシェラは頷くと、後ろの建物を見上げた。純白の漆喰と石で造られた教会である。余程、大切に清掃をしているのだろう。壁にはシミ一つ無い。ハイシェラは小さく呟いた。

 

『「神」…か』

 

ミカエラの中で、ハイシェラへの疑問が膨らんだ。この魔神は一体、何者なのか。

 

『貴女は…本当に「魔神」なのですか?失礼ながら、「地の魔神ハイシェラ」という名は、私の記憶にはありません。イアス=ステリナの神族を全て知っているというわけではありませんが、貴女ほどの上級魔神が知られていないという点に、疑問を感じます』

 

『我は元々、ネイ=ステリナ出身じゃからの。汝が知らぬのも無理はない。さて、では我は行く。もう汝らと会うこともあるまい』

 

『私たちへの不干渉については、感謝します。願わくば、貴女にとって悔いのない未来があらんことを…』

 

ハイシェラは頷き、飛び立った。その背を見ながら、ミカエラは思った。

 

(魔神ハイシェラ…不思議な存在ですね。ディアンに聞いてみましょう)

 

 

 

 

 

ハイシェラはプレメルの街を歩いた。民衆たちは驚き、そして怯えたように顔を背ける。獣人族の子供が、自分にぶつかってきた。遊んでいて気づかなかったようである。転んで泣きそうな表情を浮かべる。ハイシェラは屈んで子供を立ち上がらせると、服の汚れを払ってやった。頭を撫でて立ち去る。子供は不思議そうな表情をして、それから笑顔になった。一軒の鍛冶屋に入った。鈴の音を聞いて、中年のドワーフが出てきた。

 

『頼んでいた我が剣を取りに来た。出来はどうじゃ?』

 

出てきたドワーフの鍛冶屋は無骨な表情のまま頷いた。鍛ち直され、綺麗に研がれた剣が机上に置かれた。

 

『お前さんの剣は、相当な名剣だったが、いささか疲れていた。魔術による豪炎で鍛ち直している。柄の糸も巻き直した』

 

ハイシェラは満足そうに目を細め、剣を手に取り、眺めた。

 

『二千年近く前に手に入れて以来、闘い続けであったからの。良い腕じゃ。まるで生まれ変わったかのようじゃ…』

 

革袋を無造作に机に置いた。鍛冶屋は呆れたように溜息をついて、袋から宝石を五粒取り、戻した。

 

『全く…魔神というのは金銭感覚が壊れているのか?俺の仕事を評価してくれるのは嬉しいが、限度というものがあるだろう。五粒でも貰い過ぎなほうだ』

 

『そうかの?まぁ汝がそれで良いというのなら、無理強いはせぬ。世話になったな』

 

出ていこうとするハイシェラに、鍛冶屋が声を掛けた。

 

『一つ伝えておく。剣はモノでは無い。持ち主との絆によって、その力を発揮する。お前さんとその剣には、強い絆がある。他の剣に目移りなどすれば、剣が嫉妬するぞ』

 

『この剣には色々と思い入れがあっての。他の剣を握るつもりはない。汝の言葉は覚えておこう』

 

ハイシェラは頷いた。扉の鈴が鳴った。

 

 

 

 

 

玉座に座るハイシェラの前で、御前会議が開催された。各部隊を束ねる中堅将校たちと共に、龍人族、悪魔族の族長もいる。床には、ケレース地方を中心とした巨大な地図が敷かれている。その横に立ち、シュタイフェは指し棒を持って説明を始めた。

 

『えー、それでは御前会議を開きヤす。超絶美魔神ハイシェラ様の目標は、ケレース地方の統一でヤす。その目的は、この地から西方神殿の影響を排除すること。布教を名目に侵略をするのが、連中の常套手段でヤすからねぇ。放っておけば、この地は神殿に輪姦されてしまいヤす。キャー!』

 

下品極まりない表現をしながら、シュタイフェは調子よく、ハイシェラ魔族国の現状を確認した。

 

『現有兵力はおよそ五千、オメール山からの移住者もターペ=エトフに来ていヤす。現状では物産も安定しており、かつてのターペ=エトフと同等の繁栄を維持できていると言えるでしょう。ですが、物産は徐々に減りヤす。恐らく一年後には現在の半分、三年後にはほぼ、物産は無くなると思ったほうが良いでしょう。無論、この地で生きる民たちは自給自足をしヤすから、飢えることはありヤせん。ですが各国に輸出をする余裕は無くなりヤす。軍の維持も厳しくなるでしょう。つまりそれまでに、ケレース地方を統一し、統治機構を構築し、この地で生きる民衆を安定させる必要がありヤす』

 

艶めかしい白い脚を組んで、ハイシェラは頷いた。続いて、シュタイフェは周辺諸国を説明した。

 

『かつてのケレース地方には、大きく五つの勢力がありヤした。ターペ=エトフ、ガンナシア王国、イソラ王国、華鏡の畔、トライス=メイルでヤす。そのうちガンナシア王国はハイシェラ様によって滅ぼされ、続いてターペ=エトフを吸収合併しヤした。残るはイソラ王国、華鏡の畔、トライス=メイルでヤす。このうち、無視をしても良いのがトライス=メイルでしょう。恥ずかしがり屋のエルフちゃんたちは、お家に引き篭もっていヤすからねぇ。放っておいても、問題はありヤせん。強引に股を開かせようとしたら、手痛い平手打ちを食らうかもしれヤせん』

 

『つまりは、イソラ王国と華鏡の畔を滅ぼせば、ケレース地方に敵はいなくなる、ということだの。さて、どちらから攻めるべきかの?』

 

『アッシとしヤしては、イソラ王国を先に滅ぼしてはどうかと思いヤす』

 

『理由は?』

 

『大きく三つありヤす。一つは、華鏡の畔に棲む魔神アムドシアスは、責めよりも受けの魔神でヤす。騎乗位で責めるよりも、正常位で受ける方ってことでヤすね。こちらから仕掛けない限り、動きそうにありヤせん。イソラ王国を攻めたとしても、背面を取られることは無いでしょう。二つ目は、イソラ王国とマーズテリア神殿の関係でヤす。ケレース地方において、現神神殿はこのイソラ王国にしかありヤせん。マーズテリア神殿や他神殿の拠点となり得ヤす。早めに潰しておいたほうが良いと思いヤす。三番目の理由は、レスペレント諸国への圧力でヤす。イソラ王国を抑えれば、レスペレント諸国も簡単には動けなくなりヤす。それからじっくり、ケレース地方を調理すれば宜しいかと…』

 

『なるほどの…良かろう。ではイソラ王国から攻めるとするかの。侵攻にあたっては、我が自ら赴く。なお、ターペ=エトフの住民たちの参戦は不要じゃ。龍人族はフレイシア湾の棲家に戻りたいそうじゃな…汝らの好きにせよ』

 

龍人族、悪魔族の族長が一礼した。シュタイフェは地図を見ながら、考えていた。理屈としては、自分の読みは正しいはずである。だが漠然とした不安が過る。何かを見落としている気がしていた。

 

(アッシは、インドリト様を裏切った…あんな想いは二度とゴメンだ。この地が争いに巻き込まれることだけは、避けなくては…)

 

「王太師」の助言が欲しいと思った。だがそれは叶わぬことであった。ハイシェラの宣言で、シュタイフェは思索の海から出た。

 

『イソラ王国に侵攻するっ!各自、出陣に向けて準備せよ!』

 

覇気を漲らせ、ハイシェラが命を下した。

 

 

 

 

 

ルナ=クリアが住む「聖女の館」は、まるで大国の行政府のような状態になっていた。ルナ=クリアが指名した神官たちが情報を整理する。魔神ハイシェラとは何者なのか、西方の各神殿にも協力を要請し、膨大な情報を掻き集めていた。やがて注目すべき情報がバリハルト神殿総本山スペリアから齎された。

 

『クリア様、スペリアからの情報に、気になる部分がありました』

 

ルナ=クリアは、手渡された紙に目を落とす。五十年以上前に起きた「マクル動乱」以前の情報であった。

 

『バリハルト神殿は、神器「ウツロノウツワ」の調査について、ナーサティア神の信徒サティア・セイルーンに協力を要請…』

 

次の紙を捲る。クリアの眉間が若干険しくなる。

 

『サティア・セイルーンなる女性の調査を行う。赤髪の女性信徒は、ナーサティア神殿には存在しないことが判明。サティア・セイルーンについての情報は得られず、彼女の正体は不明のままである…』

 

『遠見の鏡により、ウツロノウツワについて、ディジェネール地方の龍人族が知識を持っていると判明。調査団を派遣するが、青髪の魔神によって龍人族は攻撃を受けており、詳しい情報は得られず…』

 

バリハルト神殿からの情報はここまでであった。この続きがあるはずだが、出し渋っているようである。クリアは沈思した。「赤髪の女性」と「青髪の魔神」という部分である。魔神ハイシェラは「赤髪」であった。このサティア・セイルーンが魔神ハイシェラなのであろうか?だが報告書では、青年騎士と行動を共にしており、その様子は人間そのものである。ターペ=エトフを滅ぼした魔神とは似ても似つかない。むしろ青髪の魔神のほうが印象に近かった。

 

『…この続きの情報を知りたいですね。バリハルト神殿が開示を拒否しているということは、恐らくマクルの崩壊に関わることでしょう。動かすには政治的な力が必要です。私から猊下にお願いをしてみましょう。猊下からの要請とあれば、バリハルト神殿も拒否はできないでしょう』

 

ルナ=クリアは立ち上がり、紙に眼を落とした。神官騎士「セリカ・シルフィル」という名前が目に入った。

 

 

 

 




※少し時間があったので、外伝第一話を書きました。次話投稿は五月になります。

【次話予告】
ターペ=エトフの滅亡は、ケレース地方の小国「イソラ王国」にも緊張を与えた。魔神ハイシェラに対抗すべく、イソラ王国国王クケルスは二人の王子を呼び戻した。ケレース地方に再び、戦雲が起ころうとしていた。
一方、ルナ=クリアはバリハルト神殿からの情報から、魔神ハイシェラの正体を推理する。聖女クリアは、イソラ王国からの援軍要請に対して、ある決断を下すのであった。

戦女神×魔導巧殻 第二期外伝 -ハイシェラ魔族国興亡伝- 第二話:ルナ=クリアの推理
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